新規雇用を決める3つの基準

サム・アルトマン氏(以下、サム):もうひとつ創設者からよく質問をいただくのは、新たに雇う人の過去の経歴を考慮することがどのくらい重要かということです。

簡潔に言えば、経歴は雇おうとするすべてのポジションにおいて重要なわけではありません。会社の大部分を運営するポジションであればおそらく過去の経歴をよく考慮すべきです。

スタートアップにおいては、初期段階で雇う人々を経歴で見るよりも、彼らの素質やどれだけ皆さんの会社の可能性を信じて一緒にやろうとする意思があるかを考慮すべきです。

私が過去に雇った最高の人々の多くは、私がオファーしたポジションとまったく同じ役割で過去に仕事をしたことがありませんでした。経験よりもその人がどんな役割を組織内で担うことができるかを考えることがポイントです。特に初期段階で人を雇う場合、彼らの過去の経験は重要ではないことが多いです。

候補者を以下3つの点から考慮します。「賢いか?」「仕事をしっかりやり遂げるか?」「多くの時間を一緒に過ごしたいと思うか?」。この3つに対する自分の答えがすべてイエスである場合に、その人を仲間として迎え入れたことを後悔したことは1度もありません。

3つの「イエス」がある場合のほとんどの場合、物事はスムーズに進みます。面接でもこれらの答えを導き出すことは出来ますが、1番良いのは一緒に仕事をしてみることです。つまり過去に一緒に仕事をしたことがある人を雇うことが理想的です。

その場合、おそらく面接は必要ないでしょう。もし一緒にしたことがない人を候補としているのであれば、1日2日の短いプロジェクトで一緒に働いてみると良いです。そうするとお互いのことがよくわかります。初めてスタートアップを始めようとしている創設者は多くの場合面接が上手ではないですが、実際に一緒に仕事をしたことがある相手を確実に評価する目を持っています。

過去に候補者が仕事をした会社に照会する

サム:YCでは、新規雇用候補者の面接をするよりも一緒に働いてみるようにアドバイスしています。いずれにしても面接の機会を設けることにはなると思います。その時にはその人が過去に携わったプロジェクトについて特に詳しく聞くようにしましょう。

難題をふっかけて候補者を試すよりも、その人についてはるかに多くのことがわかります。若い技術畑出身の創設者の多くが、面接時に新規雇用候補者に難しい質問をふっかけて試そうとします。そんなことよりも、過去に何を経験してきたのか、どんなプロジェクトに携わってきたかについて質問しましょう。

そしてレファレンス、過去に候補者が仕事をしたことがある照会先に連絡をしてみましょう。これがもうひとつ初めてビジネスを興す創設者がよく飛ばしてしまうステップです。候補者と過去に一緒に仕事をしたことがある人、照会先に電話をするのです。そして話す時には、「彼、彼女はその時どんな風でしたか?」と上辺だけの話をするのではなく、深く突っ込んで聞いてみましょう。

「この候補者はあなたが一緒に仕事をしてきた人々の中で最も優れた人トップ5%に入りますか?」「この候補者をもう一度雇いたいと思いますか?」「なぜこの候補者をもう一度雇い入れようとしないのですか?」。電話をする際には判断材料を得られるようにしっかりと質問をしましょう。

コミュニケーションスキルの重要性

サム:もうひとつのポイントです。候補者のコミュニケーションスキルは、その人と上手くやっていけるか否かに大きく比例します。昔の私は候補者のコミュニケーションスキルには特別着目していませんでした。

初期段階のスタートアップにおけるコミュニケーションスキルの重要性については追ってお話していきます。話づらい、明確なコミュニケーションを取ることが出来ない、これは一緒に仕事をする上で大きな問題となります。

初期段階では、リスクを取ることを恐れない人を雇うのがよいでしょう。スタートアップに入ろうとする時点で大抵の候補者はリスクを取ることを恐れない人々であると言えるのかもしれませんが、最近スタートアップが「流行」になっていて、それに流されてやってくる候補者もいます。

リスクがあることにわくわくする人かどうかを見極めましょう。もしもその候補者がマッキンゼーに入るか、皆さんのスタートアップに入るかで迷っている場合、その候補者はスタートアップのようなリスクだらけの環境では上手くやることが出来ないでしょう。

成功する為にリスクを取る覚悟があることと、リスクと上手く付き合うことができるスキルは違います。両方の能力が欲しいところです。

ポール・グレアムが考案した有名なテストで「アニマルテスト」というものがあります。これはその人の仕事ぶりが動物的かどうかに着目すべきであるという考え方です。英語で上手く説明できる言葉が見つからないのですが、要は動物のように「走り出したら止まらない」人を雇うということです。

目の前の課題に必死に取り組み結果を出せる人を。このような人を初期段階で雇用することが出来た場合、多くの創設者が「彼らは最高に優秀な人々だ!」と手放しで褒め、彼らがチームにいることを誇りに思っています。

マーク・ザッカ―バーグは、一緒にプライベートの時間も過ごすことが苦にならない、そしてもしも雇用者・従業員の立場が逆でであった場合でも良い関係を築くことが出来そうな人を雇おうと努めていると言っています。とても良いフレームワークだと思います。

全員と友達になる必要はありませんが、少なくとも一緒に働くことを楽しめる人を選ぶべきです。もしそれが叶わない場合には、深く尊敬できる人物であることが雇う条件です。しかし、この人とは一緒に時間を過ごしたくないなと感じたら、その直感を信じましょう。

投資者には少なく、仲間には多くのエクイティを与えるべき

サム:雇用についてお話するこのタイミングでエクイティについてもお話しておきたいと思います。創設者はよくこのポイントで間違いを犯します。おおよそ会社全体の10%のエクイティを最初に雇った10人に分けるべきです。

いずれにせよ実際に彼らがそれを得るまでに4年かかるのですから。その10人が会社の成長に貢献してくれれば、リターンは分け与えるもの以上になります。彼らが会社の価値をエクイティの10%以上上げてくれることになるのですから。もしもそうでない場合、彼らはいずれにせよその時組織には残っていないでしょう。

創設者の傾向として、初期メンバーへのエクイティにはとてもケチになるのに投資者へのそれには寛大になります。私は、それは逆であるべきだと考えます。初期メンバーは時間と共により多くの価値を生み出します。投資者はどんな約束があったとしても、大抵の場合、小切手を切る以上のことはしません。例外もありますが、会社の成長の鍵を握るのは社内の仲間です。

私は投資者には出来る限り少なく、仲間には出来るだけ多く分け与えられるようにすることが大切だと思います。YCの中ではこれに成功した会社が最も成長しています。

創設者は一度雇った人に留まってもらう努力を怠りがちです。このコースでこのポイントについては今後細部までカバーする予定なので今回の講義では深く話しませんが、本当に多くの創設者がここを失敗するので少しだけ触れたいと思います。創設者は雇った人々の満足度を上げ、会社に必要とされていることを感じてもらえるようにしなければなりません。

これはエクイティの分け方が大切である理由でもあります。スタートアップに入って仕事を初めてすぐの段階では皆新しいチャンスに興奮し、特に会社からの扱われ方が意識に上がることはないのですが、もしも時間の経過と共に不公平に扱われていると感じることが増え始めると、彼らは会社に敵対心を持ち始めます。

初めての経営者はマネジメントスキルがないことを自覚すべき

サム:それ以上に、初めてCEOとなる人はマネジメントがとてもヘタです。それにも関わらずわかったような気になっていると間違った方向にいきます。今年の夏にYCで登壇したあるスピーカーは、今でこそとても成功していますが、初期段階で何回かチームを大失敗に導いたことがあると話をしていました。

彼は「メンバーに毎日お前は使えない奴だな、と言い続けてはならない。本当に彼らに辞めて欲しいと願わない限りは。なぜなら彼らは本当に辞めてしまうからだ」と言っています。

(会場笑)

しかし創設者としては、そうしたくもなるのです。自分はすべてに全力を注いで完璧な仕事をしていると思うが故に、他のメンバーが同じように最高の仕事をしていないと思ったらそれを指摘したくなってしまう。

皆さんが少しでもマネジメントを学ぶことがチーム崩壊を防ぐことに繋がります。そして創設者にはチームを褒めることが身についていません。私も「チームを褒めること」を学ぶのに少し時間がかかりました。皆さんがやるべきは、成功はチームの皆のおかげだと考える傍ら、彼らの失敗の責任を取るのは自分であると覚悟を決めることです。

マイクロマネジメントはしないこと。チームの皆にもそれぞれ少しずつ責任のある仕事を任せるのです。多くの創設者がこのようなことまで考えが及びません。初めて会社を始める皆さんのマネジメントスキルは最悪であるという事実を認め、それを乗り越えようとする意識を持つことが大切です。

ダニエル・ピンク氏は人々が最高の仕事をする為には「自主性」「熟達」「目的」が必要だと説いています。自分で会社をやっている時には考えも及びませんでしたが、彼の話を聞いてその通りだと思いました。皆さんもこのことについて良く考えてみてください。加えて、私がメンバーひとりひとりとしっかり向き合ってフィードバックするようになるまでにも時間がかかりました。

今お話したようなことは初めて会社を経営するCEOが自然と出来ることではありません。皆さんには他の人と同じような失敗をしないように心構えをしていただきたい。