LPWAとはなにか?

藤岡雅宣氏(以下、藤岡):エリクソンの藤岡でございます。よろしくお願いいたします。

今日は「LPWAと5G」ということで、まずはLPWA(注:Low Power Wide Areaの略)とはなにか、というところから入りまして、現状のセルラー系のLPWAの導入状況のお話をしたいと思っております。そのあと、5Gの動向と今後の動き、そのなかでIoTを含む5G関係のさまざまなトライアルをやっていますので、そのあたりもご紹介したいと思っています。全体をとおして、製造業におけるIoTの利用の話も含めていきたいと思っております。

まず、IoTは大きく2つに分かれます。1つが、いわゆるセンサー系、メーター系、スマートハウス、フリートマネジメント等です。低コストで低消費電力。そしてデータ量は小さいですが、非常にたくさんの端末量があるという世界です。これがいわゆるMassive IoT、専門用語的にはMassive MTC(Machine Type Communications)と言っています。LPWAは、ほぼこのMassive MTCに相当します。

もう1つが、ミッションクリティカル系です。例えば、遠隔で重機を動かしたり、あるいは交通関係ではITS(注:高度道路交通システム)など、さまざまなミッションクリティカル系のIoT・MTCがあります。こちらは超高信頼、超低遅延、超高アベイラビリティなどの特徴を持っています。

今日はLPWAのお話がメインです。これはエリクソンの予測です。

IoTデバイスの数を見てみると、現状、こちらの下の黄色っぽいところが、人が使うPCとかスマートフォンなどの端末。こちらの緑側の部分は、いわゆるIoTデバイスです。

今はだいたい70億個ぐらいのデバイスがつながっていますが、このIoTが今後どんどん増えていき、2023年ごろには合計で200億個になると予測しております。

そのうちの多くが実はショートレンジ、いわゆるBluetoothやWi-Fi、Z-Wave、ZigBee等です。これが174億。一方、広域IoTは24億。LPWAはほぼ広域IoTのことを指します。我々は、このうちだいたい7割ぐらいがセルラーであると見ております。

主なLPWAの特徴

LPWAは大きく2種類に分けられます。1つは非セルラー系です。いわゆるアンライセンスバンドを使ってやるような非セルラー系。日本でもLoRaやLoRaWAN、SIGFOXですね。最近ソニーさんが発表しているような技術もございます。これは、先ほど言いましたようにライセンスバンドではなくて、ライセンスを使わない、免許が不要なバンドを使う技術です。

もう1つがセルラー系です。これはいわゆる携帯電話事業者が持っているライセンスバンドを使う技術です。

その中にはいくつかあり、GSM系の技術。これは日本ではないので今日は省略します。あとはLTE-Mです。最近Cat-M1という言葉が出てきてますが、Cat-M1やCat-M2など、そういったものがLTE-Mです。それからNarrow Band-IoT(NB-IoT)。この2つは、LTEという技術をベースに作っているのが現状でございます。

このセルラー系に関しても、去年あたりから徐々に入ってきます。日本でも今年、今まさにこの技術が試験されています。来年ぐらいから入ってくるという段階でございます。

これは細かいので見るだけにしますが、非セルラー系の技術ですね。

使っている周波数は、日本の場合は920MHzがメインです。帯域が非常に狭くて、ビットレートも非常に低いんですね。数百bpsというビットレートになっております。

ただ、デバイスに電池を入れて使うんですが、その電池の寿命が非常に長いのが特徴です。単三電池1個で10年。ソニーさんではコイン電池1個で10年など、非常にバッテリーの寿命が長いですね。

それからカバレッジが広いです。例えばSIGFOXだと30キロや50キロ。LoRaの場合は15キロ。ソニーさんは100キロとおっしゃっていました。これらがいわゆる非セルラー系の技術です。

セルラー系はどのようにコストカットしているか?

一方でセルラー系に関しましては、これは従来からあるLTEの1つのカテゴリーで、Cat-1がすでに世の中に広く入ってきています。ビットレートはIoTにしては大きいです。全二重ということで、上り下り同時に通信できる特徴を持っていて、帯域も広いです。

これをもう少しIoT向けに、とくにLPWA向けに作ったのがCat-M1やNB-IoTです。こちらは帯域をかなり狭く使っています。例えばNB-IoTでは200kHzという非常に狭い帯域を使っています。パワーも非常に小さく、バッテリーの寿命も単三電池2本使って10年以上を目指しているということでございます。カバレッジに関しても、障害物が無い自由空間の場合で従来のものよりも7倍や10倍距離が伸びます。

非常に単純化していますが、2つの技術に関して、1つはセルラー系の技術を使いながらも、コストを下げるという目標がございます。

例えばNB-IoTの場合、半二重通信に限定されています。普通の携帯電話は上りと下りを同時に使います。「上り」というのは端末からネットワークへ、「下り」はネットワークから端末方向です。これを同時に使います。NB-IoTの場合は半二重ということで、ある時点では片方だけ使います。ですから、上りを送って、次に下りを送るという、そんなイメージですね。半二重にすることで回路が簡単化できます。

それから、従来LTEの場合は端末に最低2個アンテナが入っているのですが、それを1個にします。これもコスト削減につながる。それから帯域幅の削減で、回路が簡単になります。それからピークレートを低減することによって、回路が簡単になったり、メモリサイズが減る。こういう特徴があります。

それから低消費電力に関しましては、パワーセーブモード、いわゆるディープスリープといいますか、ネットワークからなにか送っても、ページングしてもなにも反応しない。そういう状態を作ってあげる。それで消費電力を減らすということですね。

それから、アイドルモード。従来の携帯電話でもほとんどの時間はアイドルモードですが、そのアイドルモードの中で眠る時間をより長くする。従来ですと5.12秒や10.24秒だったのを43分ぐらいまで、あるいは2.91時間まで長くしてあげる。これが低消費電力のための技術になっております。

そして、カバレッジ拡張ですね。これは基本的には同じデータを繰り返して送るということです。Cat-M1の場合ですが、例えば同じ制御信号を8回繰り返して、データのほうは16回繰り返している。しかも周波数ホッピングしています。こんなイメージのものでございます。

こうしたことをやりながら、LPWAをLTEで実現しています。

セルラー系と非セルラー系の比較

セルラー系と非セルラー系の比較でございますが、いわゆるコスト削減とか低消費電力、あるいはカバレッジの拡大ですね。この分野に関しては非セルラー系のLPWAはすでに実現していますが、セルラーでもCat-M1やNB-IoTで徐々に開発が進んでいます。

周波数帯はライセンスバンドを使いますので、セルラー系は干渉がないんですね。あるいは干渉制御ができます。ですので、非常に使い勝手が良く信頼性が高くなります。

非セルラー系はアンライセンスバンドですから、どうしてもシステム間やシステム内での干渉があります。なので品質低下の可能性があります。

ネットワーク構築のコストですけれども、基本的にセルラー系は既存のLTEのネットワークをそのまま使って、ソフト的にCat-M1やNB-IoTという機能を入れているのが現状です。なので基本的にはインフラの基本部分のコストはあまりかかりません。一方で、非セルラー系は新たなネットワークを作りますので、このコストがかかってきます。

あとは、システムの持続性、サステナビリティです。セルラー系は標準化されているということもありまして、世界中でものを作る人がいます。ですので、グローバルエコシステムが構築しやすい。非セルラー系でも、もちろんエコシステムはできてきてるんですが、いかんせん特殊な技術ですので、その部分に不安があります。

以上のような比較ができると思っております。

セルラー系LPWAの市場動向

セルラー系のLPWAの現在の市場の動向です。北米に関してはCat-M1をメインに導入が進んでいるところでございます。それからNB-IoTは中国が力を入れてやっています。大規模展開をしようとしているということで、全国隈なくNB-IoTをやろうとしている。もちろんアメリカも全国的にCat-M1を入れている、というのが現状です。

また、Cat-M1は音声が使えます。ですので、例えばエレベーターの非常ボタンや、独居老人がボタン1個押すだけでヘルパーと喋れるデバイスなど、そういったデバイスができてきています。あるいは最近ですと、ペットの首輪にCat-M1のモジュールをつけて、迷子になったときにそこから人が音声でしゃべることができる。そんなことも含めてやっております。

現状、チップセットつまり無線信号処理のLSIですけれども、Cat-M1とNB-IoTのデュアルモードのものと、NB-IoTではシングルモードのものが出てきているということで、コストも数ドルになると見られております。

これが世界的に導入が進んでいるCat-M1とNB-IoTの現状です。

この青い点は商用導入が進んでいるところです。緑の点は、導入計画というかトライアルをやっているところで、日本もそういう意味では計画中ということになります。ここに、先ほど言ったように、北米ではCat-M1が、中国ではNB-IoTがどんどん入ってきています。

エコシステムという意味でも、いろいろなベンダーさんで、チップセットやモジュールの開発が進んでいます。どんどんモジュールの数も増えてきています。なので、エコシステム的にもいろいろ使い勝手がよくなっていくと考えております。

これはエリクソンがサポートするユースケースです。例えばAT&Tですね。工場のパレットの荷物の管理や、あるいは自動販売機や水道メータなど。

中国の場合は工場で使っている例も出てきていますし、レンタル自転車やスマートメーター系ももちろん登場しています。また、レンタル・リースの器具にCat-M1のモジュールをつけてその管理をする、といったことも出てきています。

あるいはスマートシティですね。例えばマンホールにNB-IoTのモジュールをつけて、マンホールが開くとそれがわかったり。ヨーロッパではマンホールが盗まれるケースが多いようでして、セキュリティの面でもそういうことをやっているということでございます。

あとはTelstra。これはタスマニアのワイナリーなどでCat-M1を使った、いわゆる農業IoTをやっています。それから、Vodafoneはスマートメーター。これはメインが水道です。