求められるのは「やり切る力」と「適応性」を持った人

小澤政生氏(以下、小澤):ちなみにこの中で東京以外からお越しの方はどれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

けっこういますね。

フシェ・ステファン氏(以下、ステファン):福岡の人いるかな?

小澤:九州、福岡?

(会場挙手)

ファンさんは福岡に?

ステファン:僕はちなみにハーバードと九大の出身です。

小澤:ハーバードから九大。もともと日本語を学んだのはどこでしたっけ?

ステファン:石川県の小松市です。

小澤:地方のほうがいっぱい成長できる?

ステファン:そうですね。

小澤:なるほど~。

ステファン:方言でしゃべってしまったらすみません。

小澤:日本語ペラペラですね。本当にお上手ですね。方言もしゃべれちゃう?

ステファン:方言のほうがやりやすい。

小澤:方言入れたら6ヶ国語くらいですね(笑)。ありがとうございます。加藤さんいかがですか? モテ学生(注:企業モテ学生になる方法)。

加藤信介氏(以下、加藤):基本的には、みなさんが言っていることとほとんど同じだと思います。業界それぞれだと思うんですけど、うちで言うとやっぱり大前提として、どこかにエンタテインメントやアーティストに対する愛とかリスペクトがあるのがまず1つ、当たり前かなと思います。

ただ現場のマネージャーたちにも聞いてるんですけれども、音楽オタクやエンタテインメントオタクが必要か、現時点でどのくらいの知識が必要かって言うと、実際はあるに越したことはないですけど、必要というわけではぜんぜんないんです。

それよりもさっきの目ヂカラの話に似てるんですけど、やり切る人かどうかという部分と。やり切る仕方にもいくつかあって、「ダメなやり切る」はたぶん自分の中に全部を囲っちゃって「全部1人でやるんで、誰の言うことも聞きません。自分はこう思うから自分でこれやります」っていう人。

これからは自社だけ、1人だけで完結する時代じゃないです。オープンイノベーションでいろんな人とタッグを組みながら、コラボレーションを起こしていくのがすごく大事だと思います。

そういうことで言うと、やり切る力と、自分の目標を達成していく上での柔軟性を持っているかどうかは、これからの市場ではすごく重要なんじゃないかなと思います。

小澤:なるほど。各社共通するところで言うと、やり切ること、状況に応じてバランスよく変化に応じて適応していく、あとはそれを本気でやり切るみたいな部分かなと思いました。

自分を動かすパッションがないと、選考通過は難しい

諸戸友氏(以下、諸戸):小澤さんのところでもそうでしょう?

小澤:サイバーエージェントもそうですね。子会社もいっぱいあっていろんな事業をやってるので、明日どんな新しい事業が始まるかわからない会社なんです。僕が入社した8年前って広告とアメブロ、ガラケーのゲームが中心の会社でした。でも今はAbemaTVもあったり、それこそエイベックスさんと一緒にAWA(音楽ストリーミングサービス)って音楽のアプリをやっていたり、いろいろしています。

「何かわかんないけどおもしろそうだな」と思って、とりあえず乗っかってやっちゃうみたいな部分が、ITベンチャーやWeb系には共通するかなとは思いますけどね。ありがとうございます。

ちなみに諸戸さんから、面接中には目を見たらだいたいわかるという話がありましたけども、モテ学生かどうかとか、この人いいなと思う学生に共通するポイントや、あるいは面接中に工夫しているポイント。「こういう質問してますよ」みたいなものは何かありますか? 加藤さん、よく聞く質問みたいな。

加藤:そうですね。これ賛否両論あるんですけど、僕はやり切ったことをけっこう聞くようにはしています。やり切ったことの内容の質はあまり重要ではなくて。

90パーセントまではできるけど最後のツメの10パーセントができない人って結構いると思います。でもこの残りの10パーセントをやり切ることができるかどうかって僕はめちゃくちゃ大事だと思っています。

なので、なるべく面接でも、その最後をやり切れる人かどうかを何度か、僕らは面接だけじゃなくてグループワークとかもあるので、わりと一人ひとりを見る長期採用のスタイルを取ってるんですけど。選考の過程を通してそこの部分をなるべく見極めたいな、と思いながら意識してやっていますね。

小澤:それは働かせてみることもしているんですか?

加藤:もちろんあります。インターンからの流れで働く、というのもありますし、これからどんどん採用に関して新しい試みも広げていこうと思っているので。ただ基本方針としては、一人ひとりちゃんと見ながら採用するのは前提としてあります。

小澤:ファンさんはどうですか? 普段面接でよく聞くクエスチョンはなにかあったりしますか?

ステファン:「What do you want to do?」「やりたいことは何ですか?」という質問には意外と答えない人が多いです。「とりあえず会社に入っていい経験を得て、それで次の段階に行って……」。「でもやりたいことは何ですか?」「パッションは何ですか?」。パッションがないと(選考に通るのは)ものすごく難しい。

例えばプロジェクトをやるときにがんばるための力が出てこないから、「パッションは何ですか?」と訊く。 最近は「What do you want to do?」と聞いても、おもしろい返事がどんどん減ってきました。

新卒採用はポテンシャルで判断する

小澤:過去に「What do you want to do?」と聞いて、「これ、おもしろいな」と思ったものはどんなものがありましたか?

ステファン:僕がほかの面接で聞いたのは、アフリカのときなんですけれども、ほかの人がアフリカというときに、よく日本人は「アフリカという大陸……」と言うことが多いんですね。

でも、日本人はアフリカの情報があまり入ってこなくて、「テレビ見てもNHKはグルメリポートしかない。だから日本人に外にある関係を知らせたい」ということを言われました。

だから「海外に関することを自分でやってみたい、そもそも海外がわからないから、海外に関することをやってみたい」と。それが終わったら「経験を得てから日本人に外にある世界を見せよう」と言われたことですね。いいなぁと思って、「オッケー、採用」ってなりました。

小澤:なるほど。楽天さんもグローバルで、それこそ清水さんもグローバルの人事だと思うんですけれども、「この人は世界でも羽ばたいて活躍しそうだな」みたいなタイプの学生ってどういう人が多いですか?

清水香織氏(以下、清水):うちも面接で別に奇をてらった質問をすることはぜんぜんなくて、すごくスタンダードな面接方法をやってるなと思います。さっき加藤さんがおっしゃったみたいに「学生時代に何をやり切ったか?」みたいなところはすごく聞きますね。

普通だと思うんですけど、それでなにを見ているかと言うと、中途採用であればみんなスキルとか経験があるので、実際の事実、スキルベースで何ができるかを私たちは知りたいんです。

学生ってやっぱりポテンシャルの部分を見るので、何か困難にぶつかったときにどう乗り越えてきたのかと、さっき諸戸さんがおっしゃった「目」みたいなところで、どれだけそのことを真剣に語ってくれるかみたいな。

目を見て、会社に入って仕事にあたるときにこの目をしてくれるんだなとか。こういう物事の乗り越え方をしてくれるんだなということをすごく見て判断しているので、学生の姿勢をすごく見たいですね。

あと、さっきもグローバルっていう言葉がありましたけど、本当に言葉だけではないと思っています。いかにして仕事に向かう姿勢を持っているかっていうところは、海外も日本もそんなに変わらないかなとは思いますね。

あとはさっきおっしゃっていた、楽天もどこの国に何のビジネスで出ていくかは、本当明日どうなるかわからないので。「これしかやりたくありません」じゃなくて、そのチャンスを積極的に貪欲に取りに行けて、楽しめる人がいいなと思います。

熱中したものの話を聞くと、その人の素養がわかる

小澤:就活生で多いのが「僕はこれがやりたいです!」とか「私はこれがやりたいです!」って1つだけ明確に持っているんですけど、「じゃあそれをこの会社でできなかったとき、どうするの?」って言うと「うーん……」となってしまう。「わからない」と思っている学生が多いと思うんですけど。

諸戸さんのところもそういう学生とか、やりたいことへのこだわりが強すぎて逆にどうしようって悩む学生っているんですか?

諸戸:そうですね、けっこういますよね、こだわりが強い学生。でも僕はあんまり気にしないですかね。「やりたい」というすごく強いこだわりを僕らが提供できなかったら、ミスマッチが起こるので違うかなと思いますけど。その範囲内であれば、そういうこだわりを持って語ってくれるとすごく好印象を持てるなと思いますね。

がんばったこと、努力したこととかを聞くと、ゼミがどうやらとか、サークルがどうやらとか、留学がどうやらみたいな話をしてくれます。それが本当にがんばったことだったらいいんですけど、どちらかと言うと熱中してることがやっぱり聞きたくて。

自分がすごく好きなもの、こだわりがあるものを語っているときってどんどん素が出てくるし、そこを深掘りしていくとどんどん、どんどんその人の素養が出てくるから。

最終的に話を聞いた中で「この人はコミュニケーション能力が高いな」とか「こういう志向性があるんだな」みたいなものを私たちが決めて拾っていくものなので。なるべくその人のこだわりとかは、どんどん話してもらったほうがいいんじゃないかなとは思いますけどね。

学生さんも「こういうエピソード話したほうが有利なんじゃないか」って思ってる人けっこう多いですよね。海外にバックパッカーで行ったほうが一次面接通りやすいとか、そういうのあるじゃないですか(笑)。でも実際はぜんぜんないですよね。「アルバイトしました」「家庭教師してました」「大学でTA(ティーチングアシスタント)やってました」とかなんでもいいと思うんですけど。

ため息つきながらも、ちょっとニヤニヤしながらやってるような感じの人。「マジしんどいな」と思いながらもニヤッとしながらやってるっていうのは、本当にやり切りたいと思って、自分で決めたことを突き抜けてる。そういう学生はけっこう多いかなと思います。そんな感じですかね。

内定獲得の手法よりもっと大事なこと

小澤:わかりました。ありがとうございます。企業にモテる……モテるって何なんでしょう? 10社、20社から内定が出ることがいいのかというところだと思うんですけど。

諸戸:なんか手法みたいだから嫌ですよね。

小澤:そうですよね。今は売り手市場と言われてきていて、「5社、10社とりあえず内定取る」みたいに思う学生も増えてきていて、テクニックに走っているような学生もちらほら見える気もするんですけど。

どんな感じですか? そういう学生増えてるなとか、ここ数年で学生の傾向が変わったとか。加藤さんとか何か思うことありますか?

加藤:僕は正直、人事領域を担当したのが本当に今年からなので、それまでずっと事業側にいて過去との比較はできないんですけど、わりとインターンの数みたいなことや、今おっしゃったテクニックに走る人っているんだなっていうのはすごく思っていて。僕ら見てるのはそこじゃないんだけどな、ってすごく思いますね。

だから僕もなるべくこういうところでは、もちろん手法とかも語ったり、「モテ学生になるためには」ということも話せることは話そうと思っています。

でもそうじゃなくて僕らも「なんで新卒採用をやってるのか?」ということだったり、みなさんにも「なんでここに入りたいのか?」「こういうことをやりたいのか?」っていう“WHY”の部分をお互いにちゃんと共有できることをしゃべりたいなと、最近すごく強く、今朝もすごく思ってたんですけど。

小澤:今朝ですか?

加藤:はい。ふと思った。

小澤:何か特別なことがあったわけではない?

加藤:今週いろいろなイベントに出させていただいているんです。出てるときにやっぱり手法的なところ、HOWみたいな部分を話すことが多いなと思っていて。それは嫌だなと思ったので、WHYを語ってそれに共感してくれる人が、「なぜうちの会社」に入りたいのか、そのWHYみたいなところを知れるのができればいいなと思ってます。

小澤:なるほど。