堆積物からわかる未来の地球

オリビア・ゴードン氏:自然博物館で恐竜の化石の展示物を見たときのことを覚えているでしょうか。たとえそうでなくても、教科書やインターネットを通して写真などで見たことがあるでしょう。

石の骨や爪、そして歯が化石の生物の一部で、その時代がどんなふうにできていたのか想像するだけで楽しくなります。

しかし研究者が本当にその過去の時代に戻りたいときは、化石だけに頼るわけではありません。非常にわずかですが、魅力的な資料として古代の花粉の粒子から氷に覆われていた気泡が、その時代の生態系として結びつける手がかりとなっています。

この分野の研究は科学の世界に新しい風を吹き込み、古生態学として誕生しました。古生態学はただ過去について研究するだけでなく、未来を推測することにもできます。

研究者は湖の底の堆積物の層に閉じ込められたものも含め、多くの場所で絶滅した生態系の痕跡を見つけ出します。新たにできた堆積物の面は、近くの石や鉱物が粉々に砕けたものが集まるにつれ絶えず嵩が増していきます。

なので層が深まるにつれ堆積物も古くなり、研究者はこの地層を利用することで、どのように状況が変化していったかの全貌を知ることができます。

例えばインディアナ州の湖で採取された堆積物の中に含まれていた花粉は、8,000年以上も前にアメリカの五大湖周辺のブナの木が激減したであろうことを教えてくれます。

ブナは簡単に燃えますが、一部の堆積物コアでは花粉、木炭そして鉱物の形態から、干ばつがむしろブナを全滅させたのではないかという手がかりを与えてくれます。しかしながらこの未解決問題を紐解くことによって得られる情報は、過去の出来事だけではありません。

堆積物コアの材料を利用することで、気候変化と生態系全体の変化の関連性を解くことも可能です。またそれは来るべき何世紀もの世界に、我々人類が行ってきた行動や人為的に引き起こされたもの、また気候変化がどのように影響してくるのかを教えてくれる重要なカギとなります。

湖沼堆積物の木炭粒子を例であげると、世界の中でも北極圏にある常緑樹林である北方林は、中世の気候異常によって森林火災が発生していたことがわかります。この異常は1,000年以上も前から何世紀にも渡り続いた温暖気象でした。

当時の温度上昇は強い海流の変動が原因とされ、現代の大気の変動とはまったく異なる熱が全世界を覆っていました。しかしながら中世の気候異常がもたらした温暖化は、現代のそれとある程度近いと言われています。

この共通点により当時の森林や生態系が影響を受けていたものは、今日の気候変動によって影響を及ぼしているものと似ていると研究者は考えました。

なので北部の森林は、さらなる火災に警戒し備えるべきかもしれません。今年発生した大火災が最悪の出来事だと考えるのなら、状況はさらに悪化する可能性を過去の歴史は指し示しているので注意が必要です。

年輪からも推測が可能

堆積物コアのすぐそばの箇所にも、手がかりは隠れています。

大きい古木からコアとなる部分を抜き取り、その年輪を調べることで時の経過に伴った気候の変化を見ることができます。それによって雨を受けてきた年輪が、どのように広がっていくかを見ることができます。

年輪と歴史的な気候記録を比較することにより、アメリカ中西部の熱帯のオークの木が過去20世紀で干ばつに対して敏感であったことがわかります。これは二酸化炭素量が日に日に増していることにちなんでいます。

CO2が増えれば木々や他の植物の光合成に役立つのですが、植物の気孔と呼ばれる穴は二酸化炭素を吸い込み、蒸発して水分を失います。しかし多くの植物は水分を蒸発させることなく、CO2を取り込むことができるよう順応してきたことがわかりました。

このことから、なによりも気候の変化だけでは、必ずしも予測可能でないというややこしい解釈が出てきました。

分厚い北極氷原に閉じ込められた気泡から、大気中の二酸化炭素の量が過去に類をみないほど増えていることが分かりました。

色々な場所から抽出された氷床コアは驚くことに80万年以上も前に遡ることも可能です。そして大気中の二酸化炭素量は急激に増したわけではないことも分かります。この件に関しては、大気変化は生態系の適応能力を凌いだといえるでしょう。

ゾッとする響きですが、知識をもとに備えれば先の試練に対して対応することができます。地球上の生態系が気候変動と付き合ってきた過去のことを学べば学ぶほど、我々の適応能力も上がっていくのです。

古い言い伝えにはこうあります。「歴史を忘れるものは、それを繰り返す羽目になる」と。

過去を知るための知識をもって準備を整えるならば、姉妹サイト「Eons」を調べてみてください。46億年前の地球上で起きていた数々の驚きの世界に飛び込むことができます。