お酒を飲むと胃は消毒されるのか?
マイケル・アランダ氏:あなたの好きな屋台に置いてある消毒用アルコール液や、診療所にある使い捨てのウェットティッシュなど、アルコールは常にものを消毒するのに使われています。
そうなると、あなたがいつもアルコール飲料を飲むたびに、それは微生物を殺すジュースの役割を果たしているということなのでしょうか。そうなるとあなたの胎内にいる有益な微生物にとっては恐ろしい話です。
しかし実際、適量のアルコールを摂取することは食中毒や下痢を引き起こす微生物を殺し、有益なバクテリアを助けてくれるのです。
アルコールが極小細菌を殺すことは何世紀も前から知られていました。
ギリシャの医者であるガレノスは西暦150年に剣闘士の傷をきれいにするのにワインを使いました。
しかしビールやワインに含まれるエタノールはアルコールの一種です。
科学的にいうと、アルコールは少なくとも1つのヒドロキシルのグループの混合物で、それは単に水素と酸素が少なくとも1つの炭素により結びついているものです。
濃度の高いアルコール、抗菌ウェットティッシュに含まれる70パーセントのイソプノパノールなどは細胞膜を溶かし、それに触れるバクテリアやウイルスを殺します。しかしウォッカのショットはたったのエタノール40パーセントですし、グラスワインの平均は12パーセント、そしてビールは5パーセントです。
これらアルコール飲料は細胞膜を破壊することができるほどの濃度はありませんが、たくさん飲めばバクテリアやウイルスを殺すことはできます。しかしそれがどのようにしてかについては、はっきりとしていません。
我々は低い濃度のエタノールでも細胞膜を不安定にすることはできるのを知っています。それは反応的酸素の代謝物を作り出すのを促進し、それが大事な細胞の一部にダメージを与えるのです。ですからアルコールは胃や腸の上位にいるよくない微生物が体に害を加える前にやっつけることができるのです。
例えば、ビールやワインはコレラ菌、コレラを引き起こす原因となる細菌をやっつけることができるのです。
コレラという病はひどい下痢を伴います。それゆえに、ジャックスパロウ船長だけでなく、長い船旅で多くの人にアルコール飲料が好まれるのかもしれません。汚染された水を飲むよりはラム酒やビールを飲む方が安全というわけです。
しかしやはり飲み過ぎは禁物
アルコール飲料はコレラ菌を殺すだけではありません。研究によれば、ワインはとくにサルモネラやノロウイルスなどの食中毒を引き起こす菌が腸内で増え広がる前にそれを殺すことができるというのです。
他の研究によれば、ワインやアルコール度数10パーセント以上の飲料を飲む人のうち80人が、肝臓の病気を引き起こす、汚染された牡蠣を食べてもA型肝炎にかからなかったというのです。
もちろん、我々の体内には有益なバクテリアも住んでいます。ですから私たちがテキーラのショットを飲むたびにそれらを殺すことになるのは嫌ですよね。実際にはそんなことは起きません。なぜなら微生物のうちの多くは結腸にいて、胃にはいないから、というのが1つの理由です。あなたが飲んだアルコール飲料が胃酸と混ぜって腸の上部に到達する時までに、ほとんどのアルコールは吸収されてしまうのです。
しかし科学者たちの中には毎晩グラス1杯のワインを飲むと、腸の下部に良い影響を与えると唱えている人たちもいます。ワインの中に含まれるアルコール成分ではない、ポリフェノールと呼ばれる混合物は有益なバクテリアの餌になり、より小さな有効な分子へと分解されます。