自分の感覚、直感を信じること

サム・アルトマン氏前回の講義の後、講義でカバーしきれなかった部分を皆さんからメールで質問をいただきました。今日の講義を始める前に皆さんの質問にお答えしたいと思います。前回の講義について質問があれば今手を挙げてください。ではあなたからどうぞ。

生徒A:市場の現在の成長率と10年後の成長率をどのように見極めれば良いのでしょうか?

サム:皆さんに良いお知らせです。このポイントについて学生である皆さんはとても有利です。皆さんの直感を信じてください。皆さんより年配の人々は若い人がどんなものを喜んで使っているのか頭を使って想像しなくてはなりません。

その反面、皆さんは今皆さんがどんなものを気に入って使っているか、周りの友達がどんなものを使ってどんなことをしているのかを観察することで年配の人々よりもより優れた感覚・直感を得ることが出来るからです。

今の質問に対する答えは「自分の感覚、直感を信じること」です。皆さん自身がよくやること、よく使っているもの、同世代の友達がどんなものを使っているか、これらに着目すれば自然と今後の市場を予期することが出来るでしょう。

今日の講義の前にもうひとつだけ質問を受け付けます。

とにかくやり続けるなかでストレスと向き合っていく

生徒B:生産的に頑張りながらストレスと向き合う方法を教えてください。

サム:とにかくやり続けるしかありません。他に良いアドバイスがあればよいのですが。学生であれば、ストレスで疲れ果ててしまえば諦めることができます。「もうこれ以上は無理だ。今学期はもうよい成績を取ることは諦めよう」と。スタートアップをやっていく中で最も困難なことのひとつは、会社を経営していることが現実であり、とにかく進み続けるしかないということです。

「疲れたら少し仕事を離れて休めばいい」というよくあるアドバイスはスタートアップ創設者には当てはまりません。とても消耗しますが、創設者はこれを理解せねばなりません。

とにかく前に進み続けるしかありません。周りの人に頼りましょう。創設者のうつ、気分消沈はシリアスな問題であり、周りからのサポートが必要です。燃え尽き・疲労困憊・消耗を乗り越えるには、自分が消耗しきっている事実とその原因をよく認識するしか方法はありません。そうするうちに物事は良くなっていくはずです。

スタートアップにおける共同創設者の位置づけ

サム:前回の講義では「アイデア」と「プロダクト」についてお話しました。もう1度言います。これらをしっかりと固めておかなければ何も上手く行きません。今回は誰を雇うか、そして誰をチームから外すかについてお話します。皆さんが雇った人を解雇することがなければ1番良いのですが。

(会場笑)

辞めてもらうことが避けられないこともあります。まずは共同創設者についてお話します。共同創設者との関係が会社の中でもっとも大切なポイントのひとつです。共同創設者とぎくしゃくすることに気をつけ、わだかまりがある場合にはすぐに話し合いの機会を設けることだとよく言います。

これは事実で、YCでもスタートアップが初期の段階で失敗する原因のひとつとして共同創設者同士の対立が挙げられます。しかし、なぜか多くの人が共同創設者を選ぶよりも、新しく人を雇う時のほうがはるかに慎重です。これは絶対に真似してはなりません。

スタートアップ経営人生において、誰を共同創設者として選ぶかは最も重要な決断です。これを理解し慎重に決断しましょう。正確な理由はわかりませんが、学生は誰を共同創設者とするかの判断を下すことがとてもヘタです。あまり考えることなしに「誰か」を選んでしまうのです。

「私はスタートアップを始めたい。あなたも同じようにビジネスを始めたい。それなら一緒にスタートアップを始めようじゃないか!」「ねぇ、実は共同創設者を探しているんだ。お互いのことをよく知らないけれど、まぁ一緒に会社を始めてみようじゃないか!」とこんな様子です。

これは本当にバカげています! こんな風に簡単に新しく人を雇い入れたりしないでしょう? しっかりと検討するでしょう? しかし多くの人がビジネスパートナーをこのように選んでいます。これは絶対にやってはいけません。考えなしに適当に選ぶ、あるいはよく知らない・深い信頼関係を築いていない友人とも呼ぶことが出来ない人を共同創設者に選ぶと、何か問題が起きた時に最悪な状況に陥ります。

どんな人を共同創業者に選んだら良いのか?

75の会社のうちの9つが新しい共同創設者を迎え入れた会社であったことがYCのある1期にあったのですが、その9つすべてが1年後には失敗に終わりました。お互いをよく知らないもの同士が共同創設者になった場合の失敗率はかなり高いです。

大学内で共同創設者と出会うのが良い方法です。もしも大学に行っていないのであれば、面白い会社に勤めてそこで出会うのも良いです。もしもFacebookやGoogleに代表するような企業に勤めていれば、そこはスタンフォードと同じ程度に優秀な人が集まる場所でしょうから。

相性が合わない・優秀ではない共同創設者と一緒にやるよりは、ひとりで会社をやるほうがマシでしょう。しかし、ひとりで創設者をやるのもまた大変なことです。ここに来る前にある統計データを見ていました。YCの中で最も成功しているトップ20の会社のほぼ全てにおいて、少なくとも2人の共同創設が存在します。私達YCが創設者1人でやっている会社に投資する割合は、10あるうちのひとつ程度です。

最も良いケースはよく知っている人を共同創設者にすること。それが叶わない場合には1人でやる。多くの学生起業家がするように、適当に共同創設者を選ぶのは最悪です。

共同創設者について考える時に皆さんの頭に浮かぶ疑問は、「ここまでは理解したが、現実としてどんな人を選んだら良いのか?」ですよね。YCの皆が知っているフレーズがあります。それは「情け容赦なく手厳しく、様々な能力がある人を」。

ジェームズ・ボンドのように行動出来る人が理想

そしてこれはその通りなのですが、もう少し具体的な例を挙げます。ポール・グレアムが最初に使い始めた例なのですが、とても良い例なので私もいつもそれに倣って多くの場でこの例を使って話をしています。

揺るがない、冷静で、簡単に動じない、タフで、あらゆる状況に対応することが出来る人が共同創設者として望ましいです。行動・決定が早く、クリエイティブで、どんなことにも対応する覚悟がある。実はポピュラー・カルチャーの中にまさにこのような人が存在するのです。ふざけていると思われるかもしれませんが、大真面目です。少なくとも覚えやすいし、長いことYCでも同じ話をしてきました。

その人とは、ジェームズ・ボンドです。先ほども言いましたが、ふざけていると思われるかもしれません。でも覚えやすいでしょう? 共同創設者には、何かひとつのことに特化して優れている人を選ぶより、ジェームズ・ボンドのように行動出来る人が望ましいです。

先ほども言った通り共同創設者として選ぶのは、しばらく付き合いがあり皆さんがその人柄を知っている人、理想的には数年間の付き合いがある人です。これは会社設立初期段階で人を雇う場合も同じです。

現状は、多くの人が初期段階で人を雇う場合はきちんと人柄を知っている人を選ぶのにも関わらず、共同創設者選びでそうしない場合が多すぎます。学生であること、学校に在籍しているという立場を利用しましょう。

「情け容赦なく手厳しく、様々な能力がある人」という条件に加え、タフで冷静な人を共同創設者として選びましょう。頭脳明晰な人を選ぶというのは一般論として当然ですが、タフで冷静であるということは、頭脳明晰であることと同じくらいに必要なパーソナリティーです。皆さん自身がタフで冷静ではないという自己認識がある場合には特に。