乙君から『少女革命ウテナ』の質問

乙君氏(以下、乙君):1つだけ! 

久世孝臣氏(以下、久世):お願いします。何ですか?

乙君:その前にね、(桐生)冬芽がイヤリング、ピアスを、(鳳)暁生に言われて買って行って。自分で選んだやつを付けてうれしがってるわけじゃん。「暁生さんからだ」みたいな。あ~と思って、冬芽いいよねぇ!

山田玲司氏(以下、山田):冬芽な!

乙君:俺ね、あそこでようやくこの物語、俺キャラ萌えしかしないなっていうのが初めてわかった。

山田:そうだね。だからあなた女子なんだよ。

乙君:キャラ萌えできないものはぜんぜんダメなんですよ。だから初めてそこで「うわぁ、こいつ」って。健気というかさ、いつも格好つけてんじゃん。

久世:自分の代弁者が来た?(笑)。

乙君:「俺の中の冬芽がいた」と思って!

久世:見つけた?(笑)。

乙君:見つけちゃったな!

久世:『ウテナ』の中の奥野を見つけた(笑)。

乙君:ということだけ、ちょっと言わせてほしかったんです。「冬芽ありがとう」「がんばれ」と。

山田:たぶん俺、後ろにいる作家たちをずっと見てるんだよ。アニメ見ながら。

乙君:そうそう、見方だね。俺はどっちかと言うと、どっぷり入りたいんですよ。中に。その住人になりたいんですよ。

だからキャラ萌えできないものはちょっと入れなくなっちゃう。構造的だったりとか象徴的過ぎたりすると。そのへんで。だから『エヴァ』も後半はちょっとついていけなくなったし。

久世:そういう派だったっけ?

乙君:そういう派だよ。

山田:俺はポエナミ回(注:『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイのポエミーなセリフ)くらいからすげぇおもしろかったけど。

久世:ねぇ? おもしろかったですよね。ポエポエポエポエ~。

山田:ポエポエ(笑)。

乙君:でしょ。だからここ(山田玲司氏と久世孝臣氏、乙君氏とアニメ探偵フジイ氏の間に)にはもうガンジス川っちゅうか、長江が流れてる。ポエポエってお前(笑)。

久世:訳すとね、そんな感じだよ(笑)。

乙君:ということで1時間なんですけれども。

『少女革命ウテナ』回、有料放送では…

山田:やばいな、どうしようかなぁ。もうしょうがないか。有料にいくしかないか。すげぇおもしろいんだけどなぁ。

乙君:フジイちゃん、この前半どうですか? 玲司さんの読み解き。こういうふうに見てんの? 自分も?

フジイ:いや、もっと俯瞰して見てますね。僕そこまで頭良くないんで、そんなに(笑)。これがなんの象徴とかどうとかよりも、今回はね……

山田:これがさ、たまんないじゃん! こいつとこいつ。そしてこうなって、こうなる。

乙君:めっちゃうまいこと描きましたね!

山田:これ後半やりましょうね。

乙君:あ~図解も含めて。

山田:あとこれだね。なんと言ってもラストシーンのこの件。薔薇の扉とは何か? そしてそれを見てるこの2人はどういうことなのか? そしてあの謎のトロピカルドリンクは誰が持って来たのか(笑)。

乙君:あれよ! あれ! なんなの、あのリゾートの(笑)。

山田:なぜあそこはいきなりリゾートになるのか(笑)。

乙君:音の演出がすごくうまいアニメですよね。決闘のときに雨が降って来て、車がボーンってなってるところの、地面に落ちる音とボンネットとかにパンパンパンって当たる音を変えているとか。

山田:あの車のはこだわってんぞ。あれは男性脳だぞ。

乙君:そう、デティールが。

山田:あの車大好きだぞ。あの人(笑)。

久世:(笑)。

乙君:クラッチ変えるのとかもすっげぇ、「グゥン」みたいな。おぉ! と思って。

山田:だからこそ車の意味を考えちゃって。

乙君:あ~。

山田:ずっとあの車の意味は何なんだろうなと考えてしまう。その話も後半して、本当の王子は誰かという話もします。間に合わなかった~。

乙君:そんな感じで後半いろいろ深いところまでいきたいんですが。へい!

山田:へいへーい!

久世:イエイ、イエイ、イエイ。

次回のお知らせ

乙君:お知らせです。9月4日まで実はマンガワンで『CICADA』が配信されておりますのでぜひぜひ。『CICADA』1巻分くらいはやるんですかね。たぶん。

山田:そうです。

乙君:そして次回のお知らせからいきますか。次回9月6日水曜日になるんですけれども、こちらはなんと手塚るみ子さんをお迎えしまして!

山田:すごいですね。

乙君:今月の頭に行きました宝塚の手塚治虫記念館。初めてロケをみんなで見ながらあーだこーだ言ってワイワイやる感じで、姉さんがいらっしゃってくれます。そしてさらにはその手塚治虫記念館でやっていた初音ミクと手塚治虫展というところから、玲司さんこの1ヶ月ずっとそのことばかり考えていたと。

山田:そうですね。俺が初音ミクをディスってるんじゃないかって話をこの間聞いたんだけど、そんなことないよ。「初音ミク嫌いなんじゃなんですか?」って言われたんだけど、そんなことぜんぜんなくて。

2007年にあそこにあれが登場したことがおもしろいと思っているので。そこからのボカロカルチャーに関しては、この間ジョン・ドゥにすごく教わりましたけど(笑)。

乙君:ジョン・ドゥに!

山田:ジョン・ドゥに。勉強させてもらいましたけど。

乙君:ピッチあってました?

山田:ピッチあってました。なんかね、うちのファミリーはけっこうボカロPとかいるじゃん。カルロスとかもいるしさ。それはそれでいいんだけどさ、そこに至るまでの流れに関してはわかってるわけ。

ああそうかぁ~! と思って。治虫、そしてミクの間に誰かすげぇヤベェ奴いたなと思ったら、吾妻ひでおです。

乙君:言っちゃった(笑)。

一同:(笑)。

乙君:ほら、も~。

山田:いつか吾妻ひでおという人間が、どうしてもうちょっとフューチャーされないのかっていうかね。わりとある世代までは知ってるんだけど、今こういう萌え萌えしてるものはあのおっさんがいなかったらないからね!

乙君:へ~。

「少女の人形化」は手塚治虫が発祥

山田:あのおっさんがスタートさせた文化でもあるわけだよね。少女の人形化。女を人形化してそこに男が入るっていうやり方みたいなものがあのあたりからスタートしてるんだけど、それのスタートはやっぱりまたしても(手塚)治虫なんです。

久世:あらららら~。

山田:お嬢さんが来てくれるのでその話もしつつ、手塚さんからのミクまでの流れ、そしてって話をしたいと。

乙君:なるほど。人形的なクロニクルってことですか?

山田:ここにいるキャラクター、イケメンも美少女もみんな人形。これは少女漫画なので内面ありますけども、でも萌えキャラ、イケメンキャラみたいなものは基本的に人形なんです。その内面というのは見る者が補っていくというカルチャーなんだよね。これね。批判できない。

どうやって生まれたかというのと、一方でその格闘の歴史がまたおもしろい。葛藤もあって、なかなか。『ふしぎなメルモちゃん』の話もちょっとしよう。

乙君:ほっとくと全部言いそうだから(笑)。そんな感じで予習を。