資本主義経済の気持ち悪さ

夏野剛氏(以下、夏野):いま佐藤さんの最も気持ち悪いものはなんですか?

佐藤夏生氏(以下、佐藤):僕が気持ち悪いのは……資本主義です。資本主義というか経済というか、株価ファーストの経済が気持ち悪いなと感じます。

夏野:ではそこに可能性があるということですね。

佐藤:そうですね。

夏野:トランプキャラが使える感じですね。

佐藤:そうですね。クリエイティブ資本主義と僕はよく言っております。別に経済の仕組みのなかにどのようにクリエイティブが入っていくか、というのにはとても興味がありますね。

夏野:しかし、現在日本のGDPのなかでサービス環境が占める割合が8割近くありますが、そのなかではもうほぼクリエイティブが価値を作っているように感じます。GDPの考え方というのは、物を仕入れて、売った値段との差額が付加価値になるという計算をしますから。そうすると、現代都市で組み立てることにはあんまり価値はないと思います。クリエイティブが価値を持っていると思うんですよ。

佐藤:そうですね。わかりやすい例で言うと、コンビニエンスストアでは売れ筋が逐一チェックされているので、売れ筋のものしか置いていません。売れているものを売っている状態ですね。

夏野:繰り返している。

佐藤:繰り返して、効率化しているんですね。

一方で、ドンキホーテはよくわからなくなりますよね。でも外国人は、東京でドンキホーテに行こうとします。多様性はまさにダイバーシティが魅力を持つということで、おそらくドンキホーテが最初にできたときに、百貨店の人やコンビニエンスストアの幹部は「わけわかんねえよ」「気持ち悪い」と感じたはずなんですね。いま魅力となっているのは、そういった無作為性。

夏野:おそらく、利益率はドンキホーテの方が高いと思います。

佐藤:高いですよね。

夏野:それがクリエイティブの差です。

佐藤:ああいう状態をクリエイションとして作り出せるところに興味があります。無作為という部分にパワーがあるなと思い、惹かれます。

テレビにりゅうちぇるが出てくることのクリエイション

夏野:テレビ番組としては、りゅうちぇるが出ている番組はその最先端ではないですか?

りゅうちぇる氏(以下、りゅうちぇる):いや、どうなんだろう。この「気持ち悪いの可能性」って、自分の立場や今までの経験に置き換えて考えたら、すごいわかるなって思いました。僕がバラエティ番組に出させていただいたときは、みんなから「何者だ?」って感じの反応をたくさんいただきましたので。

こういうかわいい喋り方を自分で研究しているんだけど、女の子が好きで、自分の着てるファッションは原宿で最先端で人気って言われてるのに、80年代から90年代の古着を着てる。

すべてのことに、みんなの思っている「普通」とは違うような感じの出方でした。だけど、それをずっと「これが自分だから」と続けていたら、「気持ち悪い」が「普通」になる瞬間を自分で感じたんですよね。

僕がテレビに出ることによって、僕みたいに「可愛いものが好きだけど女の子が好きな子」たちが、「あ、りゅうちぇるといっしょね!」って言われて生きやすくなることもあるかなって。その気持ち悪いっていうことが、誰か1人がメディアに出て、1人が自分らしさを貫くだけで本当に世の中で変わっていくのを感じました。

夏野:確かにりゅうちぇるが出てきて変わりましたよね。その前にも違うかたちで「気持ち悪い」を変えてきた人はたくさんいましたが、りゅうちぇるはすごいと思います。若い年代にとって、男の子にとって、非常にシンフォニックな存在になっていますよね。

りゅうちぇる:そうですね。僕が、それこそ学生時代に悩んでいたこととか、自分らしさを出したらほかの人にからかわれないか、とか。みんなからしたら気持ち悪いところを僕1人が表現することで、同じ悩みを持った子が自分らしく活躍できる。そういう意見をいただいてはじめて、ようやくこの仕事を好きだなって本当に思いました。

同じ世代の人が若い人を変えていく

夏野:それはいつから出ようと思いましたか? 『徹子の部屋』みたいな。

りゅうちぇる:そうですね、でも最初は本当に「自分らしくいよう」と思いました。

夏野:それはいつ頃……何歳くらいのときですか?

りゅうちぇる:そうですね……高校生くらい。

夏野:高校生ですか?

りゅうちぇる:はい。

夏野:いやあ、この話をなぜするのかというと、僕らはおじさん組じゃないですか。

りゅうちぇる:はい。

夏野:おじさんになると、「いいじゃん、そういうの!」「ぜんぜんいいじゃん!」「変わってていいんだよ!」と言っていますが、よくよく考えると中学・高校時代に「あいつ変わってるね」と言われるのは相当つらいことでしたよね。

水口哲也(以下、水口):それは確かにありますね。

夏野:ですから、無責任におじさんたちがそういったことをたくさん言うのではなく、りゅうちぇるがいつ、どのようにそこを克服したのか、というのが今の中学生とか高校生、あるいは小学生にとって最も力になると思います。『徹子の部屋』やっているんですけど。

りゅうちぇる:あはは(笑)。

夏野:どうして、どういうときに克服するの?

りゅうちぇる:そうですね、それは僕のテーマのなかにもあるんですが。

夏野:じゃあいっちゃう? でもまだ時間や早いので。では、そのときにしましょうか?

りゅうちぇる:そのときでお願いします。

パーソナリティのなかのダイバージェンス

夏野:では、もう少し佐藤さんの「気持ち悪い」を掘っていきましょう。

水口:佐藤さんが作られたCMありますよね。その許容性といいますか、平野啓一郎さんも『私とは何か――「個人」から「分人」』という本で書いていましたが、人間は社会的に1つのパーソナリティで接していますが、実はみんないろいろなものを持っています。夏野さんも大学で教授をしながら、こんなこともあんなこともたくさんなさっているんです。

例えば「私の肩書きはこれです」とあって、それが非常にストレスになると思います。実はこれほどダイバーシティの人なんだと。

夏野:1人の人格のなかにもダイバーシティがたくさんある。

水口:そうですね。

夏野:それにも関わらず、社会的存在としてそれはあまり認知されない、といったことでしょうか?

水口:そうですね、または表に出す機会がないなども考えられます。例えば会社員として仕事をしながら、実はボランティアもやっていて、こういったことも挑戦したいけれど会社が許さないということです。

夏野:だから静かにユーチューバーでお金を稼いでいるんですね。

水口:でも今、これがぜんぶ取り払われていくのが世の中の流れですよね。

夏野:そうですね。

水口:そうするといろいろなパーソナリティを持てるようになります。あのCMを見て、そんなことを思いました。

佐藤:それなら今日は持ってきております。

夏野:はい、ぜひ。

佐藤:その前に少し説明させてください。自分のなかのダイバーシティです。客観ではなくて「自分のなかにもダイバーシティがある」という今ちょうどオンエアしているCMです。

夏野:はい。お願いします。

(動画が流れる)

佐藤:少しだけ説明しますと、社会には多様性、つまり、いろんな価値観があるということを理解するために、気持ち悪いものと付き合うために、自分のなかにも多様性があるというのを強く意識できたらと思い制作しました。

リアルタイムで出ていた人、リアルなキャラクターなんです。医者としては上から目線に思っていても、医者だってあるときは患者になります。付き合ってる部分でなにかが見えても、その裏では母親かもしれないこともあります。自分だけ見ても自分のなかに多様性がある。

many to manyというか、自分のなかの多様性を知ると人のなかの多様性も発見しやすいのです。同時に、それが多様な付き合い方を生むのではないかと思い、これを作ってみました。

夏野:これが「気持ち悪い」ってことですか?

佐藤:そのような意味では、今ちょうどオンエアしているので言われるのは、さっきみたいにCMの世界は全員リアルなんですね。17年の今もですよ。全員本物の人というか、リアルな人にインタビューしたときに。

でもこの映像見たときに、例えばあの中に父親なんて、みなさん「え!?」と思いませんか。だから、そこが社会のリアルでも進んでいるんです。僕らがダイバーシティに対して持っているパーセクションや実際に知っている情報よりも、もはや社会のほうがよりダイバーシティが進んでいます。

このギャップが「気持ち悪い」というように、僕らが1番学ぶべきというか。アップデートすべき自分のなかの考え方だと思うんですよね。

夏野:確かに。

佐藤:これはリアルなので、もう今の社会そのものですよね。

水口:例えば、最近ヘッドホンをして電話で会話している人、いますよね。少し前に見たときは「気持ち悪い」と思っていましたが、最近は1人でなにかペラペラ喋っている人が向こう側から歩いてきても「電話しているのね」くらいで「気持ち悪い」と思わないですね。自分たちの、人を見る感覚が変わってきていますよね。

夏野:でも一人ひとりのなかにいろいろなものがあって、それを出す機会もできてきたことが新しい社会ですよね。それが気持ち悪くなくなってきつつあるというのが、今ですよね。

演じることに慣れてしまった自分の「色」を取り戻す

夏野:りゅうちぇるさんのキーワードいきましょうかね。

りゅうちぇる:はい。お願いします。

夏野:「自分の色を取り戻す」。繋がっていますよね?

りゅうちぇる:(笑)。

夏野:台本もないんですよ? たまたまやっているんですけど。

(会場笑)

夏野:自分の色ってなんですか?

りゅうちぇる:そうですね……みなさんが先ほどおっしゃったみたいに、学生時代って自分の色をしっかり持つのが大変なんですよ。学生時代を終わって卒業しちゃえば、「なんで学生時代にあんなに悩んでたんだろう」って思うこともあります。

でも学生時代のときは目に見えてる社会がすべてだから、社会のことや将来のことなんてゆっくり考える時間もない。どんなことがあっても学校に行かないといけない。明日も同じクラスメイトと一緒に学校に行かないといけない。

見えてる世界が学校でぜんぶになっちゃうのが学生時代なんですね。それで僕は、ずっとちっちゃいころからかわいいものが大好きで、ピンクだったりパープルだったり女の子が大好きな色合いも大好きだし。お人形でよく遊んでたし、おままごとも本当は大好きだったんですけど。

人と違うっていうことを、幼稚園とか幼いながらわかって、自分を隠すのに慣れちゃってて、親にも家族にも兄弟にも、自分にも隠すことが慣れてしまいました。違う色で自分のことを塗りつぶして、違う自分を表現してたんです。

でも僕にとって違う自分は、みんなの普通の男の子だったんですけど、違う自分をずっと表現してきたんです。

中学生のとき、50メートル走になってバーッて走ったとき砂ぼこりで「前髪くずれるからちょっと待って」って立ち止まるとか、給食で牛乳を飲むときにパッて飲んで無意識に小指立ってるとか、人と違うところが違う自分を演じていても、たまにはみ出ちゃうの(笑)。

そんなときに人にからかわれるわけですよ。「なんで小指立ってんの?」とか「立ち止まんないで走れよ、比嘉!」みたいな(笑)。「やばいばれるばれる」と思って違う自分で接していました。

そんな学生生活を中学校3年生まで続けていたら、頭のなかに違う自分を作るようになったんですね。「ちぇるちぇるランドの王子様りゅうちぇる」という違う自分を妄想で作るようになっちゃったんです。それが今に繋がってるんです。

偽りの自分でいることで、自分を表現できないから偽りの仲間ができちゃうんですよ。本当の自分をさらけ出したらどっかに行ってしまうようなオトモダチ、偽りのオトモダチができちゃったんです。そんな人たちが話している会話、誰かの文句も、その状況で思っていることがまったく噛み合わないし、ぜんぜん楽しくないんです。

それでもその場に合わせるんですけど、そういうときにちぇるちぇるランドの王子様のりゅうちぇるだったら「今どういうこと言ってるんだろう」「今この場をとめてるのにな」「みんな違うよ」ってちぇるちぇるランドの王子様のりゅうちぇるなら言えてるのにって思ってました。違う自分を作って、違う自分の妄想というか、かっこいい自分のなりたい本当の自分を頭のなか心のなかに描くようになったんですね。