夜間観光には経済的な伸びしろがある

梅澤高明氏(以下、梅澤):これまで文化的な意義の話をしてきたんですけど、少し経済のほうも話したいと思います。例えばヨーロッパで夜をテーマにして観光振興している町、けっこうありませんか?

齋藤貴弘氏(以下、齋藤貴):そうですね。例えば、一番有名なのはベルリンですよね。ベルリンはクラブツーリズムという言葉があるくらい、ベルリンのクラブに行くために、ヨーロッパ中心に観光客が来ていて。2、3年前のデータですが、宿泊を伴う観光者が年間3,000万人で、そのうち3割くらいでしたっけ?

梅澤:そうですね。

齋藤貴:3割くらいがクラブツーリズムというところに来ていますし、イビサ島もビーチリゾートですけれども、ビーチでは食事をするくらいで、あまりお金を使うということはないわけですよね。そこでなかなかお金を消費してもらえないというところで、夜のエンターテインメントというものを打ち出して、すごく高単価でのビジネスをそこで作っていたりします。

観光資源として夜を使うというのは当たり前の話で、そこから先に、「みんなどこで競争力をつけるのか」というフェーズでしのぎを削ってるのが、今の状況だと思いますね。

梅澤:ベルリンだと、有名な「ベルグハイン」というクラブが文化施設として認定されて。ヨーロッパの場合は付加価値税がありますよね。ベルリンは通常19パーセントのところが、文化施設と認定されたから7パーセントに減税になりました。そういったことを、市の政府が先頭を切ってやっているというケースもあります。

齋藤貴:そうですね。OECDの2016年の調査ですけれども、外国人観光客の消費の割合はだいたい、飲食と宿泊と移動、これが20パーセントずつなんです。だいたいどこの国でもそんな感じで、娯楽、エンターテインメントに対して費やしているお金が、観光先進国と言われているアメリカやフランスで10パーセントとか8パーセントくらいなんですけれども、日本で見ると、1.1パーセントなんですよね。

少ないんですけれども、逆に言うと、観光文脈で見るとそこは一番伸びしろがあるのかなと。官公庁も今、ポスト爆買いでの「コト消費」とか、ちょっと今さら感はありますけど、そういうことを検討しています。そういう意味でもナイトエンターテインメントと夜間観光というのは熱いのかなという感じがします。

日本には夜に行けるエンタメが足りない

軍地彩弓氏(以下、軍地):今、夜に行けるエンタメがないですよね。ニューヨークの場合はボックスオフィスへ行けば必ずミュージカルのチケットが買えたりというのがあるんですけど、日本だとたぶん、ロボットレストランとKAWAII MONSTER CAFEに集中しちゃっていて(笑)。もしくは花魁ショーみたいになっちゃって。

いわゆる芝居だったりエンタメ、例えば劇団四季なんかを夜やればおもしろくなると思うし、歌舞伎を夜にやるとか、そういうことだけでも、ずいぶん様子が変わってくると思うんですよね。

だからお酒だけじゃなくて、そういうちゃんとした文化的なエンタメ自体を、けっこう夜12時ぐらいまで見せるということも可能だと思いますし、そういうことをどんどん推進していく。

やはり彼ら、私なんかも海外へ行って夜通し遊びたいわけですよね。限られた時間を東京で費やしていて、「眠るのもったいない!」と思って外に出たはいいけど、何もやることがない。それで、コンビニでお酒を買って飲まれてしまうと、それこそ費やすお金の量も少なくなってしまう。

なので、彼らからどんどんお金を引き出させるためにも、東京版のムーラン・ルージュを作ってもいいだろうし、そういう劇場をもっと作っていけばずいぶん変わるのになと思います。コンテンツはあるのに、それを知らせる手段がなかったり、あとは単純に観光のホームページがすごくお粗末というか。

韓国だと、「オールコリア」というホームページがあるんです。そこで、観光からファッション、交通手段、何から何までワンストップで全部ホームページでシェアできるんですけど、日本はそういうワンストップで見られるようなページがなくて。それもなかなか、みんなトリップアドバイザーとかを見るのかもしれないですけど。

そういうものも変えていかないと、「日本やっぱりつまらなくない?」ということで逃げていってしまうような気がします。

みんなが協力すれば何千億円の夜の市場が作れる

梅澤:ニューヨークはブロードウェイが有名ですけど、ブロードウェイの経済効果ってみなさん、どのくらいあると思います? なんと、ニューヨーク市に対しての経済効果だけで1.4兆円。

軍地:ええ!

梅澤:そうなんですよ。ちなみに、日本のインバウンド観光はこれだけ「盛り上がった」と言っていて、2016年で経済効果が3.5兆円ですから、ブロードウェイ1発で日本のインバウンドの半分稼いでいるという話なんです。

軍地:(笑)。すごいですね。

梅澤:これはもちろん、アメリカ人が落としているお金も含めてですけど、でもその何割かは間違いなく外国人ですから。なので軍地さんが今言われた「劇場が夜ぜんぜん開いてないよね」「歌舞伎も夜やってないよね」ということを、みんなで寄ってたかってやれば、間違いなく何千億の市場は作れるかもしれないという話ですよね。

軍地:やはり日本にも、ブロードウェイはないにしてもいろいろ劇場は点在しているので、それをネットワークしていくこともできると思うし、それはすごくもったいないと思います。あとは、今ある劇場ではなくて、もっとどんどんゲリラ的なイベントもできるような環境になっていくといいですよね。

梅澤:そうですね。ハロウィン1発はすごいんだけど、年に1回しかないですからね。

軍地:そうですね(笑)。ハロウィンもここ数年の話ですので、渋谷区はあそこのスクランブル交差点を解放したから日本の代表となって、世界でもあのビジュアルがすごくシェアされるようになった。日本に逆にハロウィンに遊びに行こうというぐらい、ここ数年で変わったので、ああいう規制を1個外すだけでできちゃうんですよね。

そういうことで「東京はもう夜遊びもおもしろいよ」というイメージを作っていかなければいけないんだと思います。

コンテンツ面では日本も負けてない

梅澤:経済効果で言うと、ハロウィンの経済効果は2年前に、バレンタインデーを越しました。

軍地:ははは(笑)。

梅澤:なので、実はあのイベント1発でそのくらいの破壊力もある。

梅澤:齋藤さん、コンテンツ面ではどんなものがこれからできるといいなと思いますか?

齋藤貴:コンテンツ面はどうしても、風営法改正というとナイトクラブが焦点になってしまうんですけども、世界的なマーケットで言うと、ナイトクラブよりももっとぜんぜんおもしろいものがどんどんできています。

例えば、冒頭に紹介したイビサの「ハート」というエンタメレストラン。エル・ブリとシルク・ドゥ・ソレイユのハイブリットなレストランですけれども、ちょっと思ったのが、エル・ブジはもちろんすごいですけど、日本食でもぜんぜん負けてないというか、クレイジーさだったり、クリエイティブさで言うと、日本食のほうがすごいのかなと。

日本食と、あと日本のショーパフォーマンスのコンセプトはなにかというのは、なにかを新しく作るというよりも、単純にそれを掛け合わせればいいだけの話ですし、場所がないというところも、今再開発でいろいろな場所があるので、仮設で十分いいものが作れると思うんですよね。シルク・ドゥ・ソレイユの劇場なんて、それこそ仮設テント。移動式サーカスみたいな仮設テントなのにあれだけ立派なものが作れるので。

場をいかにクリエイティブに活用するか

齋藤貴:渋谷区でも今いろいろやられているのかなと思うんですけれども、駐車場にするよりもポップアップのお店を作って賑わいを作るとか、それをもう少し広げていくと、なんて言うんですかね……。

例えばシンガポールだったら、シンガポールもある時点からIRを誘致して作って、観光型、体験型の格好を作っていきましたけれども、日本より歴史がぜんぜんないなかであれだけの観光産業を作り上げているわけですから。もともといろいろなコンテンツがある、食もエンターテインメントもある日本が、今ようやく同じベクトルを向いているところなので、そうすると、意外にハードルはそんなにないのかなというのは思うところですね。

梅澤:場をいろいろクリエイティブに使いましょうという話は間違いなくありますよね。公園とか。

軍地:あと市場ですよね。なんか築地市場がちょうど今、すごく話題になっていますけど、さっき言ったメルボルンの話にまた戻っちゃうんですが、あそこはもともと昼間はクイーン・ヴィクトリア・マーケットというすごく有名な、本当に大きいただの市場なんですね。

魚屋さんもあるし花屋さんもあるし、お肉屋さんもあるし、全部あるような市場を、夜その市場の人たちが引いたあとにフードトラックが入って、お洋服を置くフリマが入って、ぶわーって週に1回やっているんですよ。週末にそれができちゃうんですよね。

確かに市場って昼間で終わってしまうので、そのあとを有効活用するとか、築地だと食もあるし、そこに私たちがエンタメを持っていくだけでずいぶん活性化した1つのナイトマーケットができる。

梅澤:築地、確かにね。早朝に見に行く外国人の観光客がすごく多いから、そこに接続する時間帯にうまくやると、たぶんものすごく賑わいますよね。

軍地:すごく大変そうですけど、「発想の転換でそういうこともできますよ」とか。要は、ただ単にエンタメだけではなくて、これからは複合的なエンタメを作っていったほうがいいと思うんですよね。子どもも行けるし、大人も楽しめるようなことをやって、しかもお金が落とされるような仕掛けをたくさん作っていかなければいけないのかなと思います。

ナイトライフは少子化対策にもなる

軍地:あとは私が思うのは、やっぱり恋ですよね。婚活に勝ちたい。

梅澤:恋?

軍地:海外へ行くと今、大阪もそうなんですけど、夜、クラブとか酒場でもナンパしてるんですよ。東京って今は、相席酒場みたいな少し暗いイメージになっちゃうじゃないですか? だからナイトマーケットが活性化すると、いろいろな人が出会って、それは1つ、婚活にもなると思うんですね。

みんな女の子は言うんですよ、「どこで知り合ったらいいの?」って。

梅澤:女の子に言われる。

軍地:言われます。「どこで知り合ったらいいんですか?」「クラブですか?」って。クラブでも今、そんなにナンパもされないし、そういうナンパがいいわけじゃないんですけど(笑)。出会いの場ですよね。健全な出会いの場をより広げるために、婚活をするためにも、そういうマーケットを作ったほうが、女子のためにも、独身男子のためにも。

「こんなに出会いがない町はない」とすごく言われるんですよ。みんな自分のコミュニティだけで動いてしまっているので。ナイトマーケットやナイトライフというものは、その一つひとつのコミュニティのタガをバーンと枠を外せる手段だと思いますので、そういう意味でも、ナイトライフを充実させるということは少子化対策にも、私はなると思います(笑)。

梅澤:ナイトライフは少子化対策。

軍地:はい。

梅澤:はい。齋藤さん、政府に伝えましょう。

軍地:(笑)。そう思うと、政府もグッと身を乗り出してくれるんじゃないかなって。

梅澤:ちょっとやってみないと自信ないけど、トライしてみましょう。

軍地:自治体がやる婚活パーティーなんか、つまらないじゃないですか。FNOもそうですけど、ああいうマーケットや夜のイベントを作ることで婚活にも活かせるんじゃないかなと思っています。

財源を確保するための入出国税

梅澤:あと、コンテンツのベニュー(開催地)をどう作るかということも大事なんですけど、それを取り巻く全体のインフラ。先ほどUberの話はありましたけど、斎藤さん、今ほかにどんな論点が挙がっていましたっけ?

齋藤貴:論点、まあ……情報ですよね。あとは都市開発のなかにどう売り込んでいくのかというところと、コンテンツもそうですし、たぶんそれを作っていくにあたっての財源をどう確保するのかという部分がないと、やはりやろうとしてもなかなか進まないということになるのかなと思うんですよね。

またイビサの話で恐縮ですけれども、入国するときに入出国税と言って、円で言うと8千何百円の税金を取られるわけですね。日本人の感覚から言ったら高いんですけれども、富裕層向けのリゾートなので別にそれを高いと言う人はいなくて、たぶん取られているという感覚すらないのかな、と思います。

梅澤:今度日本がやろうとしてるのは、1,000円でしたっけ? 10ドル?

齋藤貴:1,000円です。

梅澤:1,000円。

齋藤貴:1,000円ですね。1,000円の観光推進税、入出国税を徴収することが今、検討されていて、日本人もそこに入れるかどうかという議論もあるんですけれども、それで400億円の財源ができるわけです。今の官公庁の予算が210億円なので、3倍規模になっていくという話ですが。

もちろん税金、財源を確保して、それをどう使うのかという議論が本当に慎重になされないと、ばらまいて終わってしまうというよくありがちな話になり得るので、そこが一番重要かなと思います。

梅澤:なるほど。

民間企業が出資しあって作られるコミュニティ

軍地:財源の話で言うと、この間ニューヨークに行ったときに、今ウォールストリートのあたりが新しく開発されているんですけれども、ちょうどあそこの海岸部というか、ハドソン川に面した港湾に、日本で言うと横浜の赤レンガ倉庫みたいなものを作っているんですよね。

それが急にできたので、どうやってできたのかなと思ったら、近隣の銀行だったり、金融系の会社が出資して、そこのエリアを作って、場を作って、ウォールストリートで働いている人たちの憩いの場にもなったり、そこに新しいコミュニティを作って、ポップアップレストランとか、いろいろな新しい取り組みを入れ込んでいるんですよね。

財源も、中国もそうなんですけど、けっこう各企業が出し合って場を作って、コミュニティを作って、そこで住みやすい環境や働きやすい環境を提供しているようなことも、すごく見受けたんですね。日本はやはり、大手の会社が街を作ろうというところにお金を出しづらいというか。

丸の内だと、三菱地所とか、不動産関係で出しているところがあるんですけれども、「企業も一緒に街を作りましょう」「人を楽しませましょう」「観光客をどんどん入れましょう」という空気が、海外のほうが大きいかなというイメージはあるんですけどね。

梅澤:日本だと、確かに不動産会社はね。渋谷で言うと東急電鉄と東急不動産はたぶんそういうイメージで動いているけど、でもそれは本業だから。そこにテナントとして構えている会社が、どれだけ町にコミットして、町の活性化にいろいろなかたちでお金を出したり、人を出したりしているかというと、ちょっと寂しいですよね。でも渋谷って、そう考えると、それができそうな町ですよね。

軍地:そうですね。

観光立国をやるなら昼も夜もセットで考えるべき

軍地:やはり、本当に渋谷だけを夜の観光立国として、すべての規制緩和ができるような新しい町作り、渋谷ナイト特区みたいなものを。

梅澤:渋谷ナイト特区。

軍地:ナイト特区(笑)。みたいなものを作って、もう1ヶ所で集中してはじめないと、東京都でまとめることも難しいだろうし、そこに国が絡んできてもまた面倒くさいだろうし、渋谷区がどんどん独自の法整備していくというのは……勝手なこと言ってますけど(笑)。「こういうことができる渋谷」というものを、世界に伝えていけるんじゃないかなとは思いますね。

梅澤:「エンターテインメントの街と言っているんだから」と。

軍地:はい。

梅澤:「当然、ナイトエンターテインメントやるよね?」という話ですよね。

軍地:そうですね。夜もあっての観光なんですよ。昼も夜も両立しての観光だと思っているんです。どうしても昼のところばかりスポットライトを当てられますけれども、やはり観光があって人が来てくれないとファッション業界も大変なので、そこも活性化しないと。オシャレをしてくれないとファッションも落ち込んでしまうので。そこは、昼・夜合わせた観光立国というところをやっていきたい、やってほしいと思います。

梅澤:夜の魅力のある町だと、そこに泊まろうとも思うから、泊まるんだったら、そこでご飯を食べようということにもなると。そうすると、お客さんの単価がぜんぜん上がりますよね。

軍地:はい。

梅澤:だから観光立国をやるなら、そこまでセットで考えようよ、と。

働き方改革が進むと夜のコンテンツがもっと必要になる

齋藤貴:観光だと、間違いなくそうだと思いますね。観光ではなくて、今のお話で、そこで働いている人だとか、もしかしたら企業がそこで、人材獲得競争のなかでどうやって魅力的な人材に来てもらうのか。そこで働くということのインセンティブをどう作っていくのか。

かつ、働き方改革でアフターファイブの時間が空いていくなかで、アフターファイブにどれだけ楽しいものがそこにあるのかということは、企業にとっての1つのPRポイントになるんじゃないかなと思うんですよね。

あそこで働き方改革がある、5時に仕事を終えて遊びに行きたい、だからそこの会社で働きたい。そこで夜に遊びに行って、飲み食いするだけじゃなくて、いろいろなネットワークを作って、またそれを自分のインプットとして昼間の世界に持ち込んでいく。そういうふうに昼と夜をうまく接続しつつ。

今、働き方改革で、5時に仕事が終わって、やることがないから公園でスマホで遊んでるみたいな(笑)。

梅澤:働き方改革が進むと、夜のコンテンツがもっと必要になるという話ですね。

齋藤貴:そうですね。

軍地:プレミアムフライデーで3時にあがってはみたものの、行き場所がなくて結局お家に帰るとか、結局、経済効果までいっていないのが現状だと思うので、やはりそこは「コンテンツをどんどん一緒に作っていきましょう」「プレミアムフライデーのあとに美術館に行きましょう」とか。

そういう流れを作っていくということが、働き方改革のなかにも入ってくることだし、今度はその夜に働く人も増やす、夜に働くことを魅力的にするということもすごく大事で。今「いい店が夜に営業できるのになぜやらないの?」というと、だいたい「働く人が確保できないです」ということを、すごくおっしゃる。

それはやはり、定時に帰さないとタクシー代が出せないからということも大きい。また、先ほどのUberの話に戻りますけれども、そういう交通の便もよくすると働きやすくなる。そうすると、また人がそこに巡ってくる。これは全部一環していると思うんですよね。

それから、観光というだけではなくて、私たち住んでいる人間がそこで夜も楽しめることで人生が豊かになったり、楽しくなったりする。インバウンドもあるけれども、住んでる私たちが街をどう愛せるかということも、両方すごく出てくると思うので、その両方を見ていかないといけない。

住民や企業、観光客にとって重要なナイトライフ

軍地:おもしろかったんですが、メルボルンで私が泊まっていたフィッツロイというところがすごく盛り上がっているので、朝までクラブがすごく開いているんです。だけど、「こんなに音を出していて近隣住民から怒られたりしないんですか?」と聞いたら、もうそこはわきまえていて、「そういうクラブのあるところに人は住まないんです」って。

そういう住み分けができていると言っていました。だからクレームが起きにくいし、クレームがあったところで、街の利益に対してクレームが下がってくるんですってね。それがやはり日本だと、どうしても1人、2人のクレームでいろいろなことが規制されてできなくなったり。

今は「お店の前で喋るな」「車のエンジンを吹かさないでください」とすごく言われますけど、あれもたぶん近隣の人たちのクレームからそうなっていると思うんです。でも、そこはお互いに享受し合って、お互いに譲り合っていかないと。法規制だけではなくて、住んでる人の住民エゴみたいなものもやはりなくはないので。

そういうこともある程度、理解を醸成していかないと、ただ単にナイトライフで、というのも現実的にならないのかなと思ったりもします。

梅澤:街のキャラに合わせて、逆に企業も住む人も自然に選ばれてくるようになって、それで「渋谷は渋谷ならではの、ここまでやっちゃえ」みたいなものができる街になるといいですね。ということですよね。

軍地:やはりそこは、お互い譲り合える社会。今回のダイバーシティということもそうですけれども、お互いにいろいろなものを認め合える社会というものを、住民一人ひとりが理解していないと成立しにくいのかな、単純にナイトライフだけを推し進めても、とは思います。

梅澤:はい。ありがとうございます。議論は尽きないんですが、今まさに、最後に軍地さんにまとめていただいたダイバーシティという意味でも、「実はナイトライフは1つの重要な要素だよ」という話。それから「ナイトライフって、インバウンドの議論が先に出やすいんだけど、住民にとっても生活の質を上げていくという意味でとても大事だよね」という話。

それから風営法を改正して「ナイトライフが豊かになります」って、これは別にクラブが朝まで開いているというだけの話じゃなくて、いろいろな劇場だったり伝統芸能だったり、あるいはマーケットだったり。いろいろなコンテンツを作って、いろいろな文化の品揃えを増やしていこう、という話が大事ですねという話。

そして最後に、先ほど話題にもあがったように、やはり不動産会社以外のそれぞれの町に立脚する企業に「もう少し、町作りにコミットしてください」と。いい町になれば、いい従業員も集まってきて、それが結果的にはその企業の競争力にもなっていくので、その企業も含めた、官民共同で町作りを一つひとつやっていく。

「そのときに、渋谷ってどういう街になっていくんだろう?」ということをみんなで考えましょう、というのが今回のイベントの企画でもあるということかなと思います。

それでは、このナイトタイムカルチャーのセッション、ここで終わりにしたいと思います。軍地さん、齋藤さんに大きな拍手をお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)