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ナイトタイムカルチャーの可能性(全2記事)

2018.01.16

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新しい文化は“夜”に生まれる--都市にダイバーシティを生み出すナイトコンテンツの役割

提供:DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会

新しい社会のスタンダードと向き合う都市型サミット「DDSS(DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA) 2017」の中で、セッション「ナイトタイムカルチャーの可能性」が行われました。登壇したのは、株式会社gumi-gumi クリエイティブ・ディレクター軍地彩弓氏、ニューポート法律事務所弁護士の齋藤貴弘氏、株式会社ライゾマティクス代表取締役の齋藤精一氏。海外と日本のナイトカルチャーの違いなどについて触れ、変わりつつある東京のナイトシーンについて議論を交わしました。

世界各地のナイトタイムカルチャー

梅澤高明氏(以下、梅澤):みなさん、こんにちは。今日の最初のパネルセッションで、(テーマは)「ナイトタイムカルチャーの可能性」ということです。

今日は、齋藤さんという方が2人いらっしゃるので、齋藤弁護士と、それからライゾマの齋藤さんという呼び方をします。あとは軍地さんをお迎えして、この4人で約1時間、お話をしたいと思います。

まず最初に、パネリストのみなさんがそれぞれ「夜とどういう関わりをしているのか?」という話と、それから今までにご覧になってきた、あるいはご自分で仕掛けられてきた夜の印象的なシーンを、いくつかシェアしていただくところからスタートしたいと思います。

では、まずは最初に齋藤弁護士、お願いします。

齋藤貴弘氏(以下、齋藤貴):はい。よろしくお願いします。

弁護士をしておりますが、夜との関わりだと風営法という「夜に踊ってはいけない」という、あの法律の規制緩和に関わりまして、ずっと夜との関わりを持っています。

今だと、夜をどう活性化するのかという、ナイトタイムエコノミー議員連盟のボードメンバーにもなっていたりします。もう、写真を見せながらでいいですかね?

梅澤:はい。

齋藤貴:いろいろな国際的なネットワークなども併せて作っていまして、夜の市長というのがヨーロッパ、アムステルダムやパリ、ロンドン、最近だとニューヨークにもできたりしました。

ナイト・メイヤー、夜の市長のサミットがあって、今出ている写真が、ナイト・メイヤーサミットで行ったアムステルダムの写真です。夜というと、いろいろな都市開発に関わってくるところなのかなと思うんですが、この写真はウォーターフロント、港ですね。

もともとは海賊ラジオ局、海賊テレビ局……海の上って電波法の規制がかからないので、昔のヨーロッパではけっこう海の上にラジオ局があったんですけれども、それが今だと夜のレストランに変わっていたりします。スタジオがあってワークショップなどもできます。

梅澤:むちゃくちゃかっこいいですね。

齋藤貴:はい、なんかかっこいいんですよ。東京都も今、港湾をもっと遊びに使えるようなことを、今朝の会議でもやっていたみたいですけどね。こういうものも参考にできるといいかなという感じです。

梅澤:今ちょうど、海外のデザイン事務所が「東京湾の上に仮設の建築物を作りたい」と言うので、いろいろなところへ連れまわしています(笑)。

(一同笑)

齋藤貴:もう少し時間、紹介できますかね? 次の写真いいですか? 

これがまさに梅澤さんと一緒に行ったニセコですね。ニセコの町のなかに雪のかたまりがあって、突然、冷蔵庫の扉があるんですけれども、「冷蔵庫とか自動販売機なのかな」と思って開けると、このなかにバーがあるんですね。けっこう広いバーで、DJがいたり、バンドのライブをやっていたり。こういうニセコの夜もおもしろいなと思って紹介しました。

梅澤:けっこうお客さんの半分ぐらい外国人でしたよね。

齋藤貴:そうですね。なんかすごくおもしろいなと思いました。(別の写真を指して)これが2ヶ月くらい前に行ってきたイビサのハートというレストランなんですけれども、世界一予約が取れないと言われているエル・ブリのシェフの人たちがいて、シルク・ドゥ・ソレイユの人たちのショーですね。

エル・ブリの料理とシルク・ドゥ・ソレイユのショーパフォーマンス、エンターテインメントが融合したようなお店です。夜というと、どうしても都市型の遊び方や、観光のようなイメージをされる方も多いのかなと思うんですけれども、イビサみたいなリゾート、ビーチリゾートでのナイトエンターテインメント、夜間観光という例としておもしろいなと思って紹介する次第です。

梅澤:さすが、世界の夜遊び番長が集まるところですね。

(一同笑)

町を盛り上げるファッションイベント

梅澤:では、日本の夜遊び番長を代表して、軍地さん。

軍地彩弓氏(以下、軍地):そこまで夜遊びは(笑)。私はファッションの仕事をしていまして、ファッションの編集者をやっているんですね。今は、『Numero TOKYO』というところで、エディトリアル・ディレクターをやっています。

もうファッション編集者を25年ぐらいやっていますので、その間でいろいろな各都市でファッションイベントが行われて、まさに、夜にすごく盛り上がりを見せていたりするんです。

エクスクルーシブに、ファッション系の方だけが来るパーティーもあるんですけれども、私は前職で『Vogue』を出しているコンデナストという会社にいたんですが、ちょうど私がいるときに「FNO」というのがはじまったんですね。「FASHION'S NIGHT OUT」というんですけれども、みなさん行かれたことありますか? 表参道で今年も、だいたい9月の頭にやるんですが。

これは、一番最初は2009年、ちょうどファッションがディプレスしているというか、すごくだめなときに、アナ・ウィンター(注:アメリカ版『Vogue』編集長)の提案で「ファッションで町を盛り上げよう」ということで、ニューヨーク発信ではじまりました。最初から『Vogue』を出版している各都市全部でやって、今はもう20か所ぐらいで同時にやっています。

2011年の東北の震災のときに開催が危ぶまれたことがあったんですが、9月はまだ難しいということで、日にちを11月に変えて、世界各国の『Vogue』の編集長を呼んで、「震災後を盛り上げよう」「震災後の東京に元気を取り戻してもらおう」ということで来ていただいたりしました。

これはもう世界的なイベントになっています。今年はYOSHIKIさん(X JAPAN)が表参道ヒルズで、クリスタルピアノを弾いたり、いろいろやっていただいているんですけれども、実はニューヨークはもうやめちゃったんですよね。

梅澤:そうですか。

軍地:はい。やはり町の治安の問題だったり。東京も今すごく盛り上がっているんですけれども、なかなか物販には繋がらなくて、遊んでしまって、シャンパンをタダでもらったりして終わってしまうということもあるんです。

逆に今はSNSの社会になってきているので、ものを渡すというよりは、そのあとのインフルエンサー、だいたい30万人ぐらいの人が来ているんですけれども、そういった経済活動として、すごく盛り上がっています。

ナイトエコノミーに力を入れる世界各地の事例

軍地:あとは私、今年の1月にメルボルンに行ったんですけれども、今メルボルンは町で、ナイトエコノミーというものにものすごく積極的に取り組んでいます。「ホワイトナイト」というのは2月に行われるものなんですけれども、これは町中が、もうアートもシアターも、すべてが朝まで開いていて、エンタメがものすごいですね。

私は普通の週末に行ったんですけれども、朝までトラムが動いていたり、クラブも朝9時までやっているという感じで、とても刺激を受けた体験になりました。

メルボルンではちょうど2月ぐらいに「ウィンターナイトマーケット」というのがあって、これもすごく盛り上がっています。ここで行われているのは市場なんですが、夜の市場、普通は午後の2時ぐらいに終わってしまうところを朝まで開けていたり、食べ物だけじゃなくて、いろいろなエンタメが入っていたり。

あとは、最近アジアもよかったので、香港でも「シンフォニー・オブ・ライツ」という、海岸のところでライティングを行うイベントがあるんです。

梅澤:ビル全体のライトアップ。

軍地:ライトアップイベントです。(スライドを指して)あそこにある中国銀行とかに映し出して、(会場全体では)音は鳴らさないんですけれども、iPhoneでダウンロードしたアプリを使って、それで音楽を聴く、どこにいてもみんなで音を共有する。こういうイベントを楽しむようなこともありました。

あといくつかあったかな。(スライドを指して)これはニューヨークのリトルイタリーというところで、ちょうどコレクションのときにあわせて開催されていたんですけれども、びっくりしたのは町の真ん中にライトアップされた観覧車が出てきちゃうんですね。

普通、日本だったら道路規制などですごく怒られそうなものが、もうビュンビュンまわっていたり、コーヒーカップが動いていたり。日本で言うと夜市みたいな感じなんですけれども、イタリア人街を全部使って、突然オペラが歌われていたり。

梅澤:大阪の観覧車みたいな。

軍地:大阪の観覧車(笑)。そうそう。そういう町中観覧車の、本当にオシャレ版みたいなものがあって、こういう町で突発的にやっていたり。

「ファッションイベントで実はこういうものもある」ということでお遊び的に入れているんですけれども、これはトム・フォードのパーティーですね。トム・フォードのショーのあと、ショー会場がいきなりパーティーになる。こういうファッションパーティーは多いんですけれども。

上半身裸の男子が出てきたりするのも、「ニューヨークっぽいなあ」ということでピックアップしています。

梅澤:こうやって見ていると、あまり東京で見慣れない、いろいろなシーンがありますよね。

軍地:そうですね。もっといろいろあるんですけれども、ほんの一部だけですね。

町のあるべき姿を作るにはどうすればよいか

梅澤:はい。ありがとうございます。では、ライゾマの齋藤さん、夜との関わりは。

齋藤精一氏(以下、齋藤精):はい。とくに渋谷に関しては、ライゾマティクスは今、恵比寿にあるんですけど、そもそもがクラブで遊んでいた人たちが集まってできたような会社で。

昔、渋谷にもたくさんクラブがあったんですよ。

軍地:そうですよね。

齋藤精:そこで遊んでいて、いろいろな人と出会って、それこそ、うちの税理士もその頃クラブで遊んでいた友達で。そんなみんなで会社ができているんですけど、そういう学生時代からの記憶みたいなものが頭のなかに残っているんです。

(スライドを指して)これは、僕が2012年に作ったKDDIさんのCMで、渋谷のスクランブル交差点のど真ん中でパーティーがはじまってしまうというCMを作ったんですけど、実はご覧いただいているのはCGなんですね。

行政に勤めている僕の友達から「おいおい、渋谷の交差点でこんな撮影しちゃだめだよ」と言われて、「いや、これCGだよ」という話をしたんですけど(笑)。

(一同笑)

この頃から、僕は比較的、コンテンツを作ってどうやって楽しいイベントを……それは企業さんのイベントであったりアートのイベントであったり、もしくはDJのライブであったりしますが、それをどう演出するかということを考えていたんです。ですが、これがきっかけで「じゃあ、町ってどうやって使っていったらいいのか」と。たぶん今の事例もそうだと思うんですが、あるべき姿がなかなか見えないじゃないですか? そのあるべき姿を作るために、どうすればいいのか。

僕みたいなものを作る人と、あとはみなさんみたいな、例えば規制緩和をする齋藤弁護士、企画する軍地さん、それをいろいろ調整していただく梅澤さんとか、「やっぱりみんなが集まってやらなきゃいけないなあ」と作ったあとに思いました。

次のスライドにいっていただくと、それこそ一昨年からですかね。渋谷区のほうでも、ハロウィンのときにスクランブル交差点に規制をかけて、パーティーまではいかないですけど、DJポリスという方々が出てきて、このなかでも楽しめるようになった。

だから、ああいうCGの絵や、そういったイベントをやることによって、実は現実がついてくるんじゃないのかな、と僕はすごく思っているんですよね。

梅澤:ハロウィンの日の渋谷って、ほとんど仮想現実ですよね。

齋藤精:そうですよね。

梅澤:町全部がね。

齋藤精:そのときにおもしろかったのが、ちょうど今、渋谷の駅前は東急さんが建設の工事をやっていますけど、「今日は日本代表戦なので夜は工事をやらないんです」とか、やはりそこまで波及しているというのはすごくあるのかなと思いました。

梅澤:いいですね。

キャンペーンの実現にあたってぶつかる条例

齋藤精:次のページへいっていただいて。

梅澤:あとは、動画を。

齋藤精:動画ですね。

梅澤:お願いします。

(動画が流れる)

齋藤精:これ、覚えていらっしゃる方がいるかわからないですけど、先ほどのCGの渋谷のスクランブル交差点が第1弾で、これはそのあと、2013年の1月にやったものです。

これもKDDIさんのCMで、きゃりーぱみゅぱみゅをフィーチャーしていて、これはCGなしでやっているんですね。例えば、第1弾のCMに出てくる、スマホで噴水が操れるとか、そういうことを実際にやってみたというものです。

これも東京タワーも一緒に使っちゃったんで、やはり実現するために景観条例や屋外広告物条例などもたくさん出てきて、それでも実現にこぎつけた、と。

これ自体も、けっこうな電波を買って、年末年始のキャンペーンでやったんですけど、みなさんからいろいろな反響をいただいて、やはり東京ってこういう夜のイベント、とくに僕みたいな光ものばかりやっている人間としては「夜をもっと楽しむようなイベントをやっていかないとおもしろくないよね」という意見をすごくいただいたんですね。

梅澤:なるほど。まさに「ナイトタイムカルチャーを盛り上げようよ」という、先駆けのイベントだったりするんですね。

齋藤精:そうですね。はい。

梅澤:がんばりましょう。

齋藤精:はい。

制度として夜を支えるナイトメイヤー

梅澤:では、海外でとくにこのあたりに注目している、というお話を。先ほどメルボルンの話をしていただいたんですけど、斎藤さん、ヨーロッパでナイトメイヤーのサミットにも参加されて、どんなところに注目していますか?

齋藤貴:どうしても日本だと、風営法に代表されるように、夜のエンターテインメントというとみんなリスクを感じたり、あるいは国が関わったり、なかなか難しいのかなということがあったんですけれども。

ヨーロッパだと、積極的にそれをおもしろいコンテンツ、国にとってもメリットがある観光資源といった捉え方をしていて、そういうことをちゃんと組織化、制度化して夜のショーを作っていたりします。

これは今世界中に広がっていて、「日本でも作らないか」という話があったりするんですけれども、注目するのは、先ほどのライゾマ齋藤さんの話でもありましたが、いくら作り手がすごくおもしろいものを作ったとしても、それを町のなかで展開するのにいろいろなストレスがあって、なかなか広がらない。すごく難しい。

そういったときに、国や自治体が「これ、おもしろいからどんどんやってみよう」という前向きなものを、ちゃんと制度として作っているのがすごくいいなと思いました。

また、こういうカンファレンスで夜を取り上げてもらうというのも、少し前だと考えられなかったので、渋谷ってなんかすごいなと思いますよね。

梅澤:ちなみに、ナイトメイヤーってどんな人が、どんなことをやっているんですか?

齋藤貴:いろいろなんですけれども、インターネットの選挙で選ばれた人がナイトメイヤーとして任命されます。そこは夜の産業で、アムステルダムだとプロモーターの人ですね。国からの給料が半分と、あとは民間からの給料みたいなものが半分で。

仕事としては、それこそ規制緩和だったり、夜が持っている価値、またあとで出てくると思うんですけど、そういった価値のプロモーションだったり、あるいは国際的なネットワーク作りだったり、夜の価値を最大化していくために本当にいろいろな活動をしていますね。

梅澤:なるほど。実際に昼の市長とも会談しているんですよね? 月1でしたっけ?

齋藤貴:そうですね。昼の市長に、例えばナイトメイヤーサミットにも出てきてもらって、夜のおもしろさをプレゼンテーションしていましたし、定期的に昼の市長とも会議をしていますね。

齋藤精:僕はそこがすごく先進的だなと思って。ちょうど2年前に「六本木アートナイト」というところで、僕がメディアアートディレクターとして、アーティスティックディレクターの日比野さん(日比野克彦氏)と一緒にアーティスティックフュージョンをやったんです。

そのときにナイトメイヤーに来ていただいたんですが、(彼らは)遊び方を知っているんですよね。あとは、そこに対してどういう規制緩和が必要かといった難しいことも知っていて、「すごいなあ」と思ったんです。

軍地彩弓氏(以下、軍地):今、日本でもZeebraさんが、そういう役割をされているとおうかがいしていたんですけど。

齋藤貴:そうですね。渋谷区観光協会の「ナイトアンバサダー」になられていて、それこそアムステルダムのナイトメイヤーサミットにも一緒に行きましたし、その後もテルアビブやベルリンなどいろいろなところと交流をされています。

おっしゃるとおり、遊び方が重要で、あとはいろいろなものに対するリスペクトもすごく重要です。プラスアルファ、行政との働きかけをうまくやっていく能力ですよね。そういう意味では、Zeebraさんはすごく積極的にやられていますね。

夜遊びの面では日本は明らかに後進国

軍地:けっこう、そういう横の繋がりというか、世界のほかの国々との繋がりや、DJ同士の繋がりといった人脈が必要で、それをどうやって日本のなかに持ってくるか。

私も最近、ちょうど海外からすごくたくさんのお客さん、いろいろなデザイナーが来る時期なんですね。ちょうど秋を狙ってデザイナーが来るんですけど、「夜、どこに連れて行っていいかわからない」と必ず言われるんです。この間も、カルティエさんがトランクホテルでパーティーをやったときに、カルティエのパリでのイベントを全部まわす人がいるんですが、その人が来て。

「昔の東京はこんなんじゃなかった。夜通し遊べたし。どこに行っていいかわかんないからむしろ大阪のほうが楽しい」みたいなことを言われて、すごくショックを受けて。だから東京が、夜というところで後進国になっているんじゃないかと、最近すごく感じているんですね。

梅澤:アジアの中央都市で言ったら、明らかに後進国ですよね。

軍地:そうですね。最近、上海に入って行ったところで、だいたい夜通し遊べるエンタメが必ずあって。それはそのクラブだけではなくて、例えば劇場で開いていたり、パリだとムーラン・ルージュみたいな、ああいう大人の遊び場があったり。ニューヨークでいうとボックスオフィスみたいに、ワンストップで行ける場所がわかるようなところが、観光客にすごく開かれているんです。

たまたま韓国から友達が来たときに「どこに行っていいかわからない。ここは大丈夫?」ってすごく怪しい場所を見つけちゃって(笑)。「そこは違う、違う」と言ったっていう。

まずワンストップで言うと、クラブが開いていても「ここはクラブだよね?」「でも何をやってるかわかんない」とすごく言われて。外国人にとっては東京は「夜、歩きにくい場所」になっているんじゃないかなという印象は持っています。

風営法の改正でより自由な夜に

梅澤:「軍地さんを知っていれば、いろいろおもしろいところへ連れて行ってくれるけど」みたいな。そうなってしまっていたということですよね。

軍地:(笑)。そういうのは最近、エアビー(Airbnb)で、夜に連れて行ってもらえるツアーとかがいろいろ出ていますけれども、そういう個人を知らないまでも、例えば行政でボックスオフィスを1つ作るとか、夜の怪しげな案内所ではない東京の健全な楽しみ方をちゃんと伝えられるインフォメーションセンターみたいなものも必要なんじゃないかなと思います。

梅澤:その理由の1つはやっぱり、夜12時以降に踊れる場所というのは法律的に言うとグレーで、なので表立って「夜中遊べます、踊れます」と言えなかったということがありますよね。

軍地:はい。

梅澤:それを変えたのが、齋藤さんがリードした風営法の改正ということなので、その風営法改正でできるようになったことを簡単に説明してください。

齋藤貴:そうですね。昨年の6月に改正法が施行されて、スタートしています。ビフォーアフターで言うと、改正前は夜12時以降、飲食を伴うエンターテインメントが営業としてはできなかったというかたちになります。なので、夜12時以降お酒を飲みながら遊ぶことができなかった。

とりわけダンス、ナイトクラブというダンスコンテンツに関しては、より強い規制が加わっていて、12時前だったとしても営業許可が必要で、その許可を取るのが難しかったというのが以前です。

後は、夜12時前、これはダンスであろうがなんだろうが規制はとくにありません。夜12時以降、飲食を伴うエンターテインメント、ダンスを含むところについては、営業許可を取れば朝5時までやっていいですよ、と。許可を取るハードルがいろいろあったりはするんですけれども、できなかったものが夜12時以降もできるようになっている、というところです。

梅澤:前に比べると、小さい箱も許可が取れるようになったということもありますよね?

齋藤貴:そうですね。前は66平米が最低面積だったんですけど、33平米あれば取れるようになっていますね。

梅澤:だから、線引きされたゾーンのなかである要件をクリアして、ちゃんと申請をすれば許可が取れて。許可が取れると、メディアの上でももちろん、ホームページでも「朝5時までこういうことができますよ」という発信がやっとできるようになったということですよね。

夜を盛り上げるために重要な「情報」と「交通」

梅澤:これを受けて、いろいろと動きがはじまっていると思うんですけど、齋藤弁護士、今は何を仕掛けてますか?

齋藤貴:規制緩和がされてできる新しい夜間市場をどう盛り上げていくかということは、それこそ梅澤さんやライゾマ齋藤さんにもボードメンバーに入っていただいている、ナイトタイムエコノミー議員連盟というところなんですが。

そこで活性化するために、今どういう課題があって、それに対してどういう推進策、政策を作っていくか、ということを年内いっぱい議論をしているところです。

梅澤:メディアでは「夜遊び議連」と書かれていますけど、もう少しまじめに、何をやったらちゃんと市場が作れるかという議論はしています。

齋藤貴:そうですね。例えばその情報がないというのは、まさに今までグレーな業界だったので、ホームページを見ても営業時間が書いていなかったりするんですよね。警察との連携も取れていなかったりするので、例えばそういう情報を出すためになんらかのプラットフォームを作るのがいいんじゃないかということを議論していたりします。

あとは、情報のほかに重要なものとしてナイトメイヤーサミットでも挙げられたのは、交通ですね。例えば、Uberはなかなか難しい日本で、夜間交通をどう作っていくのかという議論をしていたりします。

梅澤:軍地さんはUberをどう思いますか?

軍地:Uberは、この間ちょうど上海に行ってきたところなので、そこで言われたのは、上海はけっこうクラブが点在しているんですね。1ヶ所に集まっていなくて。だけど、Uberが安い。民間の普通の方が週末のバイトとしてやっているので、ものすごく安いし、乗り合いもできるuberPOOLもあります。

なのでホッピングがすごく楽なので、もはや公共の交通機関がなくても、ぜんぜん朝まで遊べるんですよ。これはもう、いろいろな場所で言われたんですけど、ニューヨークもそうだし、ロスもそうだし、Uberがそれほど活発に動いてないのは日本だけなんですよね。

梅澤:確かに。

軍地:それでお金の面で言うと、やはり若い子がある程度、お金を使っていますね。日本だと若い子は非正規雇用が多いというか。なので若い子が12時前にすぐ帰ってしまう。この間のハロウィンも、けっこうみんな地方から来ているので12時ぐらいにサーッといなくなるんですね。夜中に電車で帰らないといけないという環境が、お金の使い方も変えてしまっている。

でも、Uberみたいなことが1つ流行るだけで、本当に夜の町が変わってくる。日本でもバスを夜間運行したりしていますけれども、停まる場所がぜんぜんクラブの場所とリンクしていなくて、ぜんぜん意味がなかったりして。そういう意味では、それこそUberを推進するほうがより速く、週末だけ、夜間だけとか。

梅澤:確かに乗り合いができるのは大きいですね。

軍地:そうですね。

梅澤:東京ってニューヨークよりも広いので、普通にタクシーに乗っちゃうと、とんでもなく高くなるから。乗り合いでみんなでシェアできれば、ということはあるかもしれないですね。

軍地:そうですね。

夜にアートを楽しむことができない現状

齋藤精:僕が思っているのは、クラブで遊ぶというか、交流するということも1つ、うちの会社が最たるものなので、そこで仲間が集まったり、いろいろな議論をしたりする場所になって、それはそれでいいと思うんですけど。

もう1つ、やはり美術やアートなどの表現活動のところもよく日本のなかでも議論されるんですけど、美術館で夜までやっているところはほとんどないんです。暗いところじゃないと表現できないメディアアートみたいなものは多いので、本当は外でやったほうがいいんですよね。

やるべきなんですけど、やはり美術館のなかだと、そういうメディアアートなどが使えるような美術館もほとんどないので、もしも夜にそういう場所、もしくはホッパーの人たちが動けるようなインフラが整うと、もう少し表現のところも……。

日本って実は、世界から見るとアートの分野に関してはすごく先進的なんですよ。ただメディアアートからすると、それをアコモデートするような、受け入れるような美術館があまりないんですよね。

梅澤:確かに。

軍地:たまに8時まで開いていますけどね。さっきのメルボルンのやつなんかも、ホワイトナイトマーケットの日は、1日中美術館も開いてるんですよ。そこで、会社帰りに行って、いろいろなアートツアーに入ったりとか。

今だと5時で終わってしまって、どうしても普通のサラリーマンの人だと平日は行けないですし、週末はものすごい行列。おじいちゃん、おばあちゃんの行列のなかで、見られないんですよね。普通に働いているサラリーマンが、そのアートに触れられない。

だったら、ウィークデイでお酒を持って、よくニューヨークでもアートシャンパンナイトみたいなものがありますけれども、そういうことをやっていかないと、私たち普通に働いてる人がアートに触れられないような環境になっているのかなと思いますね。

齋藤精:別に毎日開いている必要はないんですけど、特定の、文化の日の前後とか。

梅澤:金曜と土曜とかね。

齋藤精:金曜、土曜とか、あとはアートナイトみたいなイベントがあるときだけでもいいんですけど。アートナイトと言っても実は、例えば国立新美術館みたいなところは8時とか10時に閉めるんですね。やはりそれは国の機関なので、なかなかそこまで運営の人たちを動かすのは難しいという理由があると思うんですけど。

もう少し、それを全体的に開けたり、もしくは広場を有効的に活用する。このあたりだと代々木公園もそうだと思うんですけど、そういうところを有効活用できると、もう少し表現の場であったり、あとは新しいイベントができたり、そういう場所になってくるのかなと。

ぜひ渋谷で先陣を切って、それを東京のなかでもやっていただけると、たぶんいろいろなところが(ついてくる)。そういう規制緩和や、場所を作ってあげるだけで、経済効果もありますし、本当に文化ができる瞬間もできるので、渋谷区の方々がなにかはじめていただけたらと思いますね。

新しい文化は夜に生まれる

梅澤:森美術館、森ビルさんがたまに六本木でやっていますけども、ライゾマさんもCulture Vision Japanで、名和晃平さんとか、何人か日本を代表するアーティストの人たちのアート作品が並んでいるナイトパーティーをされた。ああいうものが当たり前にあっていいですよね。

齋藤精:そうなんです。そういうところで、人とはじめて会ったり、紹介したり。会議室で名刺交換するのと、ああいうところで握手して名刺交換するのは、やはりちょっと違うんですよね。だからそういう場所がどんどんできてくるといいなと思うんですけどね。

梅澤:さっき事務局に聞いたんですけど、渋谷も「SHIBUYA NIGHT OUT」という取り組みを、渋谷区とNIKEさんがジョイントでやることが決まっているようです。もちろんクラビングの共通パスみたいな話もあると思うんですけど。

あとは、「町中でスポーツみたいなものも絡めてやろう」という話が、今年の12月に起こるらしいです。なのでみなさん要チェックしてください。

齋藤精:スポーツのところでも、最近だとそれこそ、ジムを暗くして、そのなかでバイキングするとか。

軍地:あれ、盛り上がるんですよね。真っ暗なところ、クラブとDJみたいなところでやって、それこそ没入できる。

齋藤精:うん。だからそういう意味でも、やはり夜にスポーツをするというのも1つ、考え方としてはありですし、ナイトメイヤーの方々と話していて思ったのが、齋藤弁護士もおっしゃってましたけど、やはり夜に文化が生まれるというのは、たぶんそのとおりですよね。

昼間は、それをどう推進していくかというところなんですけど。夜に「やろうよ」「あれおもしろいよね」「今度紹介するよ」ということが本当に起きて、やはりそれが昼間にもあって仕事になるというサイクルができるといいですよね。

夜が持つ価値の多様性

梅澤:その「新しい文化を作る夜」どうですか? (弁護士の)齋藤さん。

齋藤貴:そうですね。夜の持つ価値みたいな話になっていくのかなと思うんですけれども、ダイバーシティというところですよね。昼間に名刺交換するとみんな肩書きがあって、肩書き前提で話をするんですけど、夜だとそういう肩書きよりも、その目の前にいる人とどう話せるかというところがおもしろかったりするわけですよね。

なので、肩書きから外れた人たちがフラットになる。それが多様で、本来混じる可能性があまりなかったものが、いろいろなところで混じっていく、それが夜の文化的な価値のおもしろいところだということが、ナイトメイヤーサミットでも議論されていましたね。

そうすると、今まで風俗営業やディスコみたいなところで括られていたナイトクラブに集中していたナイトコンテンツを、どのように町に展開していくかというと、先ほど出てきたような話だと、けっこうシェアリングエコノミーみたいなものに近づいていく。

空いている美術館のスペースにどうやって夜の顔を作っていくのか、夜の公園にどういう顔を作っていくのか、そういう都市政策のBサイドで多様性をどう作っていくのか、みたいな。けっこう夜の話となるとクラバーの話になっちゃいますけど、そういう話になっていくと、けっこう広いんだと思うんですよね。

軍地:そうですよね。先ほど紹介したメルボルンも、決してお酒は出てこないんですよ。実は外でお酒を飲むのはダメなんです。なので、とてもクリーンな夜の遊び方になっています。本当はムービーで出せたらいいんですけど、エンタメでいろいろな大道芸人みたいな人もいますし、サイレントDJみたいなことをやっていたり。

すごく新しい遊びを、そこで交換していて、それがまたライトアップされておもしろかったり。もちろん、マーケットを開いたりするので、ファッション業界は今とても売り場に困っているけれども、そういうエンタメ的なところで、FNOもそうですが、気持ちが高揚したなかでものを買うという体験もできたり。

決して「お酒があるから夜」ではなくて、夜に新しい文化的な楽しみ方、それは子どもも入ってきたり、実際に遊園地で遊んだり、別にお酒が絡んでいるわけではないんです。よく海外から来た人は「なんで日本って外でお酒が飲めるの? なんでお酒を飲んで寝てる人がいるの?」と。

実は最近、週末の渋谷はすごく人が多いんです。センター街に人がものすごく多いんですけど、外国人はどこに入っていいかわからないから、コンビニでお酒を買って、(外で)飲んで。でも彼らにしたら「外でお酒が飲める日本ってすげえ最高!」みたいなところなんです。だから逆なんですよね。

そこがすごく、お酒=クラブ、クラブ=ダメなものということではなくて、もっと明るい夜の活用の仕方みたいなものを考えてほしいなと思います。そういうことをやっていきたいですし、こういうメンバーがいて、渋谷区でもやれそうなので、ぜひ渋谷区で実現したいなと思います。

日本にはドレスを着ていく場所がない

梅澤:新しい文化という話だったんですが、軍地さんのフィールド、ファッションはもうだいたい、なにか夜の新しいカルチャーとセットで出てくるじゃないですか。多くの場合は音楽ですけど。だから「なんか夜が盛り上がらないと、そもそも新しいファッショントレンドも出てこないよね」ぐらいの話じゃないですか。

軍地:要は、そのファッションを着ていく、オシャレしていく場所がないんですよ。FNO(VOGUE FASHION'S NIGHT OUT)が盛り上がるのを、みなさんも行くとわかると思うんですけど、みなさんもう1年中で一番オシャレして来ていたりします。

日本って今、ドレスが売れないんですね。というのは、ドレスを着て行けるような場所がない。ニューヨークだと、たぶんみなさんご存知でしょうけど、1回お家に帰ってドレスアップして夜に出かける。なので海外で食事の約束、アポイントを取るのはだいたい(夜の)9時、10時からじゃないですか。それがやはり、日本は「電車で帰るから7時からで」となる。会社で着た服を同じまま着て行くとなると、ファッション業界はとても困ってしまって。

世界で売れるドレスが日本は売れないから、「コンサバのものしか売れない」「高額なものは売れない」「日本つまらない」と言われてしまうんですよ。だから私、海外に行くと夜遊び用にボディコン持って行くんですよ。「いまどきボディコン?」と思うんですけど、台湾、台北でも上海でも、シンガポール、バンコクでも、夜はある程度色っぽい格好をして行かないと、格好悪いんですよね。

梅澤:みんなそうですよね。

軍地:それで日本だけ、なんとなく清楚な格好していないとビッチ扱いされたりとかして(笑)。だからこういうことも含めて、ファッションのためにも、もっと夜が盛り上がってもらわないと、オシャレできる場所がほしいなというのはあります。

行政や大企業も柔らかくなってきている

齋藤精:すみません、なんか僕がそろそろ出ないとけない……。

梅澤:次の出番があるんですね。はい。

齋藤精:最後に1つなんですけど、最近僕が思っているのは、一概に行政や大企業がそれに対してアンチなわけではなくて、今回の風営法の改正もそうだと思うんですけど、行政も柔らかくなってきたなという印象を持っています。

僕もずっと頭ごなしに「行政は固い、固い」と言っていたんですけど、比較的柔らかくなってきて、それこそ公園の夜間の有効活用とか、あとは今とある駅の開発のところで、終電が終わってから、地下に「余ってるんだったらそこをイベント会場として使おう」と提案しても、あまりアレルギーがないんですよね。

軍地:へえ。

齋藤精:だから、このなかにも表現者の方がいらっしゃると思うんですけど、そういう人たちはカタログみたいに「これだったら大丈夫だからこれをやろう」というわけではなくて、1回自分のタガを外して、例えば「どうしてもスクランブル交差点でやってみたい」とか、「どこどこで撮影したい」「どこどこでイベントやってみたい」とか。

そういうことをどんどん提案していくと、今の時代だったら、2020年に(オリンピックが)もう決まっていることですし、文化とスポーツの「文化」の部分にしっかり根付かせるいい機会だと僕は思っています。そういうところは僕も含めて表現者の人たちがアクティブにやっていけるといいなとすごく思います。

すみません、僕だけ先に……。

軍地:まだ幕張にいかなきゃいけない(笑)。

齋藤精:ありがとうございます。

梅澤:ありがとうございます。

(会場拍手)

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