2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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山田玲司氏(以下、山田):(『少女革命ウテナ』の魅力は)あと1個、少女アニメなんだよね。
少女アニメって基本的にイケメン出てきます。イケメンは少女の脳内のイケメンです。これは逆に言うと、おっさんが描く女の子、無垢な女の子。おっさんが描く無垢な女の子というのは本物の女の子からするとクスっていうやつじゃん(笑)。基本的に。
乙君氏(以下、乙君):はいはい。
山田:あれは俺たちの心のなかにしかいねぇんだよーみたいなのがお決まりになってるんだけど。だからこそおもしろいのが、女たちの中にいるイケメン王子みたいなのを男が描くとちょっとツッコミ入れて笑ってるんだよね。
乙君:あ~確かに。確かに。
山田:とくにひどいのが西園寺(莢一)の扱い(笑)。
一同:(笑)。
乙君:西園寺はひどい。かわいいそう。
山田:この緑髪の西園寺さん。ね!
久世孝臣氏(以下、久世):すごいですよ。
山田:この人はね、どこへ行くんじゃろっていう(笑)。最後になるとこの人確か自分で乳首いじってませんでした? あれは(鳳)暁生さんか?
アニメ探偵フジイ氏(以下、フジイ):あ~ありましたね。
山田:最後の最後になると、(桐生)冬芽と西園寺と暁生が車の上に乗っかって謎のポーズをとりながらお互いの写真を撮りながら。
乙君・久世:あー! あったあった!
山田:なってくるわけじゃん。あれは非常にメタ的にツッコミを入れて笑って。
乙君:あ~ナルシストの。
山田:うん。それって笑えるよねって。ただこれの世界にどっぷりいくと「やめて!」って言いながら見てる少女もクスっと笑ってしまう。
山田:しかも『ユーリ!!!』でも出てくるけど、女たちは男の裸を見たいの。
乙君:(笑)。
山田:劇場版は女の裸ばっかりなんだけど、テレビ版だといい感じで半々、もしくは男の裸のほうが多いかもしれないよね。
乙君:男の裸のほうが多いですよ。
久世:うん、多い多い。
乙君:何なんですかね。あの、(服が)バッサーみたいになって、ババババーみたいなふうの。
久世:(服の)前がはだけるみたいなやつね。
山田:だからあれはネタ的に批判してるの。
久世:批判なんですか。
山田:なぜかと言うと、少女の脳内にある男ってこんなに滑稽だよっていうラインが入っている。
久世:あ~なるほど。
山田:だけどやり過ぎると毒になるというか、嫌味が出ちゃうから、ギリギリのところで一緒に遊んでるの。イケメンを使って一緒に遊びましょうっていうことをやってる。だけどそこには悪意が入ってる。
その悪意が男からするとわかるから、おもしろい。だから西園寺はおもしろい。そして冬芽も、めちゃめちゃおもしろい。西園寺と冬芽はそうなんだよ、おもしろキャラとしてなっちゃうところがおもしろいなって。
久世:西園寺退学したままでもよかったですもんね。
乙君:そうなんですよ! 物語に必要なのかっていう。
久世:戻って来てまでふざけてたから(笑)。おもしろかったなぁ。
乙君:ね。
山田:女の子の部屋で匿われている西園寺。
久世:あれは最高だったな(笑)。
山田:おもしろいじゃん(笑)。
久世:ああいうテンプレートもありますもんね。
山田:そう。
久世:テンプレを全部踏襲してくれたから、みんなが。おもしろかったなぁ。
山田:そうそうそう。あれも1個、執着して囲い込んでしまうっていうことを描こうとしている。コンセプトがあって脚本に落としているんだと思うんだよね。
久世:退学するのがもかっこいいみたいなテンプレートもありますもんね。
山田:あるある。
乙君:あるか!?
久世:あるある。ワルが退学してまだ戻って来るとかもあるじゃん。
乙君:でも不良って感じでもなかったじゃん。西園寺って。
久世:何なんだろうね。生徒会っていうのが特殊すぎて。
乙君:生徒会って、だからそういうね。
山田:あとで説明しますけど、もう1個、その手前でおもしろいのが、繰り返されるセックスのメタファーがあって。前回フロイトの話で話したんだけど、フロイト知らなくたって「これセックスじゃん」っていうのがわかるようになっている。
校舎の奥の森、開かれる門、出てくる水、そして螺旋状に上がっていく、これエクスタシーだよね。そこで薔薇が散るわけですよ(笑)。
つまり、これは処女喪失のメタファー。でもこれおもしろいのが、内なる処女喪失を可視化しているっていう前衛ですね。これは。
乙君:肉体的なものではなく?
山田:だって肉体的な接触はまったくないんだもん。心の中の処女喪失をビジュアル化しましたってやつなの。これがまたおもしろいね。これが第1ブロックであって。
要は、この学園では。校舎の裏の森でセックスが行われている、っていう死者の世界なんですよ。今言っちゃいましたけど。この学園は実は全員死者なんだよね。
乙君:それ本当なの?
山田:それは中盤に描かれるけど、廃墟になっているという。昔ここで人が死んでいると。そしてそこに写真がいっぱい残っている。そこには今出てるキャラクターが出てるということで。フジイ解説は?
フジイ:僕はあれは、根室(教授)から見たものだから、根室が現世と過去を全部ごっちゃ混ぜで見てるから、あの写真になってるだけであって。ウテナたちから見れば、あそこはただの廃墟でしか見えてないと思ったんで。あれは全部1人芝居だと思ってる。
山田:でも、俺はかぶせてるんじゃないかなと思って。メタファー的にやってるんじゃないかな。あれがサインになってて、実は同じものじゃないかっていう。ミラーにしてるんじゃないかなと思ったんだよね。そうすると納得がいくんだよ。
乙君:納得いきますか。
山田:劇場版につながる。最後のセリフにつながっていく。それが死っていうこと。死にながら生きるっていうことにつながる。そうするとあの世界が死で、すべてが棺の中っていう。後半に西園寺が言うよね。「棺の中にいるのは俺たちも一緒だろ」って。
久世:言った。
山田:つまり彼もすべてのキャラクターは実は死んでいるんだと。でも、それはリアルな死なのか、象徴的な死なのかわからないという。だけ、どものすごく象徴的な世界なんだよね。シュールレアリズムみたいな。
だって遮断されてるから。実を言うと、そこは日本そのもの。日本そのものであり、アニメを見ているその世界というか、1つの村みたいな。閉じた世界っていう。ということを象徴している。だからアニメばっかり見てないで外に出なさいっていう。
乙君:(フジイ氏に向かって)お前や!
一同:(笑)。
乙君:なまっちろい顔しやがって(笑)。
フジイ:ちくしょー!
久世:大丈夫、今日、外でてるから。今日はここ来てるから大丈夫。
乙君:お前、夏やぞ! なんちゅう白さやねん。
久世:まじで白いな。すごいな。
フジイ:こんなもんですよ。
乙君:なんかあれなんですよね。根室のところがもっとあとで絡んでくるかなと思ったらさ。ぜんぜん。
ほかの主要キャラ全員、リバイバルしてくるじゃないですか。だけど根室だけがゼミナールって何だったんだろうって俺の中でなっちゃって。
山田:あれはやろうとしたのかもね。だけどサインで終わらせようってふうにしたのかもしれない。わかんない、ここは。
乙君:そしたら新キャラ出たじゃないですか。(土谷)瑠果。青いやつ。あれも、あれとウテナあんま関係ないし。
山田:だからそういうことを繰り返す。
乙君:だからそこなんですよ。『エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)』ってなんだかんだ言って、ガーっと1つの善なるものと一(イチ)なるものみたいなものに向かって行く統一感みたいなものがあるんですけど。
『ウテナ』は象徴が乱立してて。それを統合しようとしてもどうも、矛盾というようりは違うレイヤーにいる。
山田:イクニ(注:幾原邦彦氏、『少女革命ウテナ』のアニメ監督)は関係ないよ。それは。
乙君:もしかしたら、それこそが女性脳みたいなものとして作ったんだとしたらすごいことしてる。
山田:それはあるけどね。黒薔薇編でそれぞれのトラウマを散らすっていう展開になるので、それのために瑠果も出てくるの。だから道具に過ぎない。あんまり考えなくていいやつかなって。
乙君:あ、考えなくていいの(笑)。
山田:なぜかと言うと、この物語の核心の1個が、王子の話もそうなんだけど、もう1個が(天上)ウテナと(姫宮)アンシーという女と女の戦いのメタファー。女と女じゃないや、女の中の2人の女。
これ見る人が見ると、この2人は実は同一人物じゃないかなというふうに見てしまうのもよくわかる。ウテナとアンシーというのは1人の人間が分裂して描かれてる。
そういうふうに見てると非常にクソ面倒くさくなるので別として見ていいけど。でも象徴的に1人の女の中にある2つの部分が葛藤してる。
これがオープニングで出て来るこのカットが、2人がシルエットになって回るんだけど、バックに薔薇が出てきてて。薔薇というのは、無垢なるもののメタファーだし、性的なもののメタファーなんだよ。
その上でこの2人はぐるぐる回ってる。つまりこれは一心同体。これは陰陽でもあるわけだよ。陽のウテナと陰のアンシーっていうものがあって。
この薔薇に象徴されるのは、薔薇というのは乙女、無垢なるもの。これは籠の外に出れないという、出たら傷つく、散るかもしれない。だからアンシーは囚われているという意味で、この人はずっとここにいるみたいなので、この2人の関係というのは1つのメインになってくるんだけど。
最初からこれ確信的な犯行だなというのが、実は名前に出てて。主人公の女の子が名前が天上ウテナさんなんだよ。
乙君:はいはいはい。
山田:この名前というのは、天の上のウテナ。ウテナって要するに仏教用語の「明鏡もまたウテナにあらず」っていう。「菩提もとより樹無し、明鏡もまた台(うてな)にあらず」っていうさ、蓮華座のことなの。
乙君:台なんですよね。お釈迦様が乗ってる。
山田:天の上のウテナって、この人は台なんだよ。ウテナには花びらのがくっていう意味もあって。要するにこの人は最初から天の上にいるんだけど、なにかを支える、つまり犠牲者というところがまず最初に名前に刻まれてて。
一方で姫宮アンシーっていうのは、姫の宮なんだよ。もう最初から。
乙君:おえーい。
山田:アンシーはおそらくアンジーでしょ。だから天使でしょ。エンジェル。
乙君:あ~!
山田:エンジェルから取ってるの。そうすると姫の宮の天使なんだよ。だからこれは男側からしたら「彼女は僕の天使だよ」っていう。男側から都合のいい形になるのはそうなんだよ。そして女たちはこれを憧れもするわけ。
山田:こっち(アンシー)の犠牲になるのがこっち(ウテナ)になるわけだよ。台になるから。これ(アンシー)がこれ(ウテナ)に乗っかるっていう。これは女の中にある自立と依存の象徴でもあるわけ。
「男に尽くしたい」「私は女でいたい」っていう気持ちと、自立して誰かを助けたい、もしくは現実を変えたい、解放されたいっていう2つ。これが名前の段階で設定されちゃってるので、ここもなかなか。
乙君:コメントで「スジャータかと思った」っていう。俺そっちだったんですよ。これもしかしてウテナに対する、仏教的だとするとスジャータ。
山田:アンシーが?
乙君:うん。だから色黒で。
久世:それビジュアルの話でしょ?
乙君:ビジュアルの話だよ?
山田:スジャータというのは仏教の中で、お釈迦様が若いときに茨の林の中でボロボロになるまで修行して、出てきて倒れてね。最初でお茶をくれた女の子の名前だよね。スジャータね。
乙君:ミルクじゃなかったっけ?
山田:ミルクか。そうそう、ミルクだ。
乙君:だから褐色の恋人なわけで。
山田:もしかしたら、そういうイメージもあるかもしれないよね。
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