コンプレックスからスタートした山登り

小林雅氏(以下、小林):では、ここに異彩な人(山田淳氏)がいるのですけれども、長谷川さんから見てこの方をどう思われますか?

長谷川敦弥氏(以下、長谷川):この方やばいですね(笑)。そもそも何で登山というのを思われたのですか?

山田淳氏(以下、山田):山登りを始めたきっかけは、僕はもともと喘息持ちで、体が弱くて、もともとコンプレックスからスタートしているんです。

喘息持ちで体が弱くて小学校では体育とかも全然出られなくて、プールとかもずっと休んでるような子だったので、何とか体を強くしたかったけれど、なかなかそうはならなくて。頭で勝負していくんだなと思って。それで、もうとにかく死ぬ気で灘に入ったんです。

灘に入ったのですけど、灘に入ったらみんなそのぐらいの勉強ができる子たちが集まっていて、これは違うな、これだけでは勝てないんだと思って。それでまた、体を強くしたいと。ただ、サッカーとか野球とかをやるほど、人と競えるほどまでは自信がなかったので、人と競わなくていい中での運動部と、したたかに選んだような感じです。

だから、親も全然登っていないですし、自分自身もスタートは山が好きだったわけでも何でもないんです。たまたまその部活に入って、最初に夏合宿で屋久島と聞いて。中学1年生で屋久島に行って、それではまっちゃったんです。自然ってすごいと、もう圧倒されて。

皆さんこうやって人工物に囲まれて、ほとんどの方がパソコン開いて生活しているじゃないですか。全然それがない世界に行ったときに、やっぱり人間が本当に自然の中の一部なんだということをびんびん感じるようなところに、中学1年生のときに放り込まれました。この感覚はすげえなと思って、それでどんどんはまっていったという感じです。

起業家と登山家はすごく似ている

長谷川:自然が好きで、山が好きで、感動して、そういう方というのは結構いらっしゃると思うんです。僕も屋久島すごく好きですし、登山に行ったりすることもあるのですけれども、命がけでエベレストとかにチャレンジされるというまでは、なかなかいかないんじゃないかなと思うんです。

山田:登山家ってよく聞かれるのですけれど、命を賭けているつもりはあまりないんです。

長谷川:なるほど(笑)。でも、結構いっぱい死んでますよね。

山田:結構死んでるんですよ。確率論でいうと。でも、それは起業家とすごく似てるなと思っていて、起業するときは潰れるかもと思わないじゃないですか。潰れるかもと思って創業する人はいないですよね。だけど、確率論でいったらほとんど潰れているわけじゃないですか。

似たようなもので、やるときには死ぬなんて思わないんですよ。だから狂ってるんです。だから起業家も登山家も狂ってるんですけど(笑)。掛け算で僕はすごく狂ってるんだという自己認識はあるのですけれど。

そういう意味でいうと、やはりそこの最初のモチベーションのところというか、柴田さんの3回やったら4回目をやらざるを得なかったというのは、環境でも何でもなくて自己満みたいな世界ではないですか。山も一緒でマッキンリーまで行っちゃうと「やっぱり、エベレストまで行っとくか」、そういう感じですよね。

エベレスト登山の難易度は別格

小林:山登りの順番にもこだわりがあるんですか。

山田:登った順番は全くこだわりはないです。エベレストは1番難しかったので、自分自身が成長し続けなければいけない。だから、成長した上で大きなチャレンジはできるのですけれども、冒険と無謀は全然違うので。

読めるところまではいかなければいけないし、想像できること以上は絶対できないので、登れる姿が想像できても登れないことがほとんどのときに、登れる姿さえ想像できない山はチャレンジできない。だから、エベレストに登れる姿が想像できたのが、やはり残り6つが終わってからだったので。そのぐらい……七大陸の話をしていていいんですか。大丈夫ですか。

小林:いいですよ。山の話から次の柴田さんにいきますので。

山田:七大陸最高峰というと、7つ並んでるように見えて、1個1個は難易度的にいうと10何%ずつみたいに見えますけれども、そうではなくて、99.9%難しさはエベレストなんです。0.1で残り6つの足し算ぐらいです。そのくらいエベレストだけは圧倒的に難しいんです。

だから、残りの6つを登るまではエベレストなんか想像もつかなかったし。それは資金的な問題も含めて。南極とかはお金はかかりますけれども、登るのは簡単なんです。ですけれども、やはりエベレストだけは技術的にもお金的にも全然想像がつかなくて、残り6つを引っ下げて、スポンサーもあって、ようやくやっとこさお金も集まったという感じだったので。そういう意味では、その順番はそうせざるを得なかったというところがあります。

小林:なるほど。

まず一歩踏み出すことがすべての始まり

小林:今の登山の話を聞いて、起業と似ているという話についてどうですか?

柴田陽氏(以下、柴田):ステップバイステップみたいなのは本当にそうだと思っています。1番最初に起業したときは、起業すること自体が目的だったんです。だから、起業してある程度回り始めたら、そこで満足してしまうんですよね。

その次にやると、「じゃあ、もうちょっと世の中に影響を与えたい」という欲が出てきたり。数億円やったら数十億円やりたくなって、数十億円やったら数千億円やりたくなる、みたいなステップの中に僕自身もいて。

まだまだエベレストはすごく先にあるのですけれども、やはりそういう自信をつけていく。想像できることしか、やはりなかなかできないと思うので、その想像力をステップアップしていくというのは、すごく大事だと思います。

小林:ちなみに、その想像力をアップさせる、広げていくトレーニングはないですか、日々心がけていることでもいいですし。

柴田:日々ではないのですけれども、これはやるしかないんですね。やはり、山田さんは屋久島が原体験だったし、僕は20歳のときに先輩に誘われて起業したのが原体験だった。その原体験を持つというのが最初の病に罹る1番最初の部分で、それがあるからずっと熱に侵され続けられるというところはあると思うし。

やってみない限り、結局山に登らない限り、もっと高い山に登れないと思うので。皆さんであれば、例えばスタートアップで働いてみるとか、そういったことはすごく大事なんだと思います。

山田:山に登ってみるとか。

柴田:いや、まぁ……(笑)。

小林:最近、僕も山登りで減量を始めました。もともとの動機というのはゴールデンウィークに、1,500メートルぐらいの山に登ってゲハゲハして。「やばい、北アルプスなんか登れないぞ、これ」みたいな感じでトレーニングを始めました。

さすがに1,500メートルでそれだと、3,000メートル登れないと思いますよね。簡単な挑戦って、クリアにするのにぎりぎりかかっていると、やはり次の行動に準備しようと。それも仕事に通じるところがあるのかなと思いますね。

会社が潰れても死にはしない

山田:先ほどの生死の話もそうですけれども、本当に準備が全てなので。ただ、そういう意味でいうと、ベンチャーやっていても、マッキンゼーに行っても、いつも「まあ、死なないし」って思いますよね。やはり死ぬことはないんですよ。

小林:でも、登山していたら死ぬじゃないですか。

山田:登山は死ぬんです。登山は準備を1個ミスしたら……。

小林:遭難して死ぬじゃないですか。

山田:そうそう。ベンチャーで挑戦だとかいわれますけれども、別に会社が潰れても死なないし、マッキンゼーでどれだけ上司が怖くても、別に怒鳴られておしまいなので死なないし、というのは常に思っています。

小林:長谷川さん、何かコメントとかありますか。長谷川さんから見て、この2人のコメントと自分自身の原体験も含めて何か。

長谷川:自分自身の原体験……起業は確かに死なないというのはすごくわかるんですけれども。山はやはり死ぬな、みたいな。

小林:新卒1年目で社長をやっても死なないですものね。

長谷川:そうですね。それはリスクには鈍感なところがあって。新卒1年目、社長になって最初にやったことは借金の肩代わり。借り入れが、今はもう10億円ぐらいあるのですけれども、全部連帯保証人に入っているんです。だから、連帯保証に入るとか。

小林:そうそう、前に同じ話を聞いたことがあるのですけれども、もともと社長は、社長を辞めた動機は選挙に出ると言って、選挙に立候補したと。

長谷川:そうです。

小林:選挙に落ちてしまったんですよね。

長谷川:落ちました(笑)。

小林:落ちて、戻ってくるかと思ったら戻ってこなかったということですね。

長谷川:戻ってこなかったです。すごく面白い人で、その人は今、アトピー事業の研究とかをやっていて、アトピーの患者が増え出した時期と、人間の体の中に寄生虫が減りだした時期が一緒だとか言い出して、今、寄生虫を飲んでるんです。

寄生虫を飲んだらアトピーが治るかもという人体実験を、日本だと難しいのでカンボジアとかに行ってやっている面白い人なのですけれども、いきなりバトンタッチされて。会社の株も大体5,000万ぐらいを本当に純粋に買い取って、あとは借金を一気に背負うという感じだったんです。

昔から、将来的に100億とか1,000億とかぐらいは背負っていくというイメージはしていたので、24歳ぐらいで背負うというのもあまり違和感はなかったです。

小林:それはすごいですよね。24歳の人って、どれぐらいいます? 24歳以下、24歳から25歳ぐらい。その人がいきなり5,000万の借金を負って、会社を継げと言われて継ぐ人なんていますかね。