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これからの学校に求められること。 不登校はダメなこと?(全9記事)

今の高校教育では「お金を稼ぐ意味」を学べない? アルバイト禁止にみる、学校への重すぎる負担

不登校は本当にダメなことなのでしょうか? 大阪・心斎橋にあるスタンダードブックストアで 『不登校から高校生社長へ』の出版記念イベント「これからの学校に求められること。 不登校はダメなこと?」が開催されました。登壇したのは約10年の不登校を経験し、高校3年生で起業した小幡和輝氏と、通信制・定時制高校を対象にキャリア教育事業を行う認定NPO法人D×Pの今井紀明氏。モデレーターはスタンダードブックストアの中川和彦氏。引きこもりだったという小幡氏と、通信制・定時制の教育現場を見続けている今井氏は「不登校」をどう捉えているのでしょうか。

「高校のアルバイト禁止は憲法違反」と訴えた高校生

今井紀明氏(以下、今井):最後に、今日のテーマを話したほうがいいじゃないですか。小幡さんとして。

小幡和輝氏(以下、小幡):テーマ、そうですね。

今井:そうそう。学校がどのようになればいいのかということが今日のテーマだったと思うので。そこの部分の話をしたらいいのではないかと思うのですが。

小幡:そうですね。「これからの学校」がテーマなので。

先ほど少し話をしていた社会とも大事なところで少しリンクするところがあります。1つは、アルバイト禁止はありえない、というところです。北海道だったかな? 例としておもしろかったのは「アルバイト禁止=勤労の自由を奪う憲法違反」だと高校を訴えた高校生がいるんですよ。

中川和彦氏(以下、中川):いたね。

今井:そんなのあるの?

小幡:いるんです、憲法違反だと言っていて、それが僕、すげえなと思ったんです。裁判所は、高校の主張を認めちゃったんです。そこで事例ができちゃったのですが。

中川:うん。

小幡:高校は、高校生の健全育成を担保する責任および義務があるから「高校はアルバイトを禁止させる権利がある」と判例が出たんです。

でも、これはおかしいなと思いました。義務教育ですらないわけですからね。生徒は形式上、任意で高校に来ているわけじゃないですか。それなのに、学校以外の時間を高校が縛ることができるというのはわからんなと思ったんです。

中川:「ダメ」ということになっているの?

小幡:一応、学校の校則で「ダメ」となっているんです。憲法をちゃんと調べて「働くという自由を阻害するのが憲法違反だ」と訴えたその高校生はすごいと思うんですが。

中川:でも、負けたの?? 

小幡:負けました。

中川:負けたんでしょ? 不思議だな。

小幡:理由はよくわからない。

義務教育ではないのに「学校以外の時間を縛る」はアリ?

中川:そもそもどうして、アルバイトをやったらいけないの?

小幡:いや、それがわからないんですよ。

中川:あー、わからないの。

小幡:アルバイトをする時間が増えちゃうと勉強が……。

今井:基本的に勉強の話ですかね。

中川:あー。

小幡:例えば、成績が落ちちゃうのではないか。もしくは、15歳、16歳でいきなり働きだして、正しい選択……いい職場かどうかわからないから、そこで騙されちゃうんじゃないか、とかですね。

中川:そういうことか。

小幡:ちょっと変な仕事もあるじゃないですか。それがわからなくて、そのまま変なところに行っちゃうなど、正しい判断ができない、成績が落ちる、といった意味はわかるんですよ。でも「縛られる」はおかしいと思っています。

だって、別に義務教育ではないし、権利として高校に行っているわけですよ。なのにどうして学校以外の時間をそこまで縛ることができるの? でも、法律でそういう判例が出ちゃったので。僕はなんかおかしいなぁ……といったような。

中川:うーん。

小幡:そのあたりはでも、僕はこれからもっと社会とリンクしていかないとダメだと思っています。本当に。

高卒で「アルバイト経験ないです」

小幡:(大学へ行かない人は)高卒でいきなり働くことになるわけですが、会社側からしても「アルバイト経験がないです」と言われて、すぐに採用できなくないですか? 

中川:うーん、どうだろうなぁ。今、高校を出た子がうちで働いてるなあ。アルバイトをやっていたのかどうかは聞いていないけどな。

小幡:あー。

中川:とにかく「働きたいです」と言って。俺は「やめとけ」と言ったんだけど(笑)。

小幡:あははは。

中川:うちはそんなに褒められた企業じゃないからな(笑)。

小幡:でも、ここに電話をしてきたんですよね?

中川:そう。

小幡:それはぜんぜん違うと思うんですよ。いろいろ想いがあって、別に「ハローワークで求人があったから来ました」というようなレベルとは違う。言い方は悪いですが。「どうしてもここで働きたい」という想いがなく「働かなきゃいけないから」という……。

中川:その子がアルバイトをしていたかどうかはわからないけど。昔、髙島屋で本屋をやっていた頃は、ハローワークからの紹介で来た人はちょっと無理だなと思ったことがあったわ。

「この人がデパートの売場に立ったら大変なことになるな」「本人もパニックになるだろうし」みたいな感じの人だったけど、その人はアルバイトしていなかったかもしれないね。確認はしていないけどね。

「お金を稼ぐことの意味」を学ぶことができない

小幡:そもそも違和感がありますよね、前提として。例えば、クラウドファンディングでお金を集めるなど、チャレンジのハードルはすごく下がっているじゃないですか。

中川:うんうん。

小幡:そういうのも選択肢の1つですよね。だって変な話、クラウドファンディングも禁止なんですよ。クラウドファンディングもアルバイトの大枠の中に入ったりするので。

中川:ああ、そうか。

小幡:僕の友人は高校生で、今は音楽をやっています。シンガーソングライターを目指しています。路上ライブをして、CDを売ったり、投げ銭を集めてアルバイトするのと同じ感じで、月5万といったように稼ぐ子もいます。けっこうすごいじゃないですか。それはでも、学校は止めさせようとしていて。

中川:はー。

小幡:アルバイトを禁止にしているから、それも認められないみたい。1人だけ特別扱いはできないですし。

でも、高校生でこんなことができるなんてすごい才能じゃないですか。このまま本当にプロを目指してがんばったらさらに伸びるかもしれない。それなのに、学校は潰しにくるわけですね。

中川:うーん。

小幡:これってどうなの? と。

中川:そうなんだ。俺の場合は、アルバイトをしていなかったら大変だったもんね。例えば服も買えないし、自分の好きな服はまず買えない。友達と旅行にも行けない。旅行に行くお金は自分で稼がなくちゃ。行かなくていいかもしれないけど、毎日、喫茶店にも行きたい。でも喫茶店に行く金もない。

夏休みにアルバイトをした金で、次の冬休みまでの間の自分のお小遣いをまかなうわけじゃない? だからアルバイトがなかったら、俺はちゃんと高校生活ができなかったような。今から考えると(アルバイトしてなかったら)友達とコミュニケーションできなかったと思う。

小幡:自分で自由に使えるお金があると「お金の大切さ」や「お金を稼ぐことの意味」という、結局それが、社会に出た後に必要な力だと思うんですが、そのあたりがすごく今、隔離されているなと思います。

求められるのはオーダーメイドの教育スタイル

小幡:僕が思うのは、もう少し早い段階で……極端な話ですが「大学に行かない」と高校1年くらいで決めちゃった子からすれば、本当に無駄な制度(アルバイト禁止)でしかないじゃないですか。卒業した後のことを考えたら、むしろ働きまくったほうがいいじゃないですか。だからみんなの状況にもっと合わせるべきだと思っています。

例えば「僕は高校を卒業したら働くと決めています」といった場合に、大学に行く子にとってセンター試験の勉強に近いのがアルバイトという位置付けになると思うんですよ。そのように、一人ひとりに合わせていくといった、オーダーメイド的な教育が求められていくのではないかと思ってはいるのですが。

中川:なるほどなぁ、そうか。僕は年齢がだいぶ違うからね。僕らの学校のときとギャップがあるような気がする。

小幡:私立はもっと酷くないですか?

今井:規制はすごく強いところは強いからね。

小幡:恋愛禁止というのもありますよ。普通に。

中川:そこまできたら、わけがわからないな。

小幡:わけわからない(笑)。男女で手をつないで歩いているのがバレたら停学ですよ。ヤバくないですか(笑)?

中川:それ、誰が見てるの?

小幡:学校以外で。

今井:それはでも極端だけどね、その話はね。

中川:へー。

学校に求められる役割が多すぎる

今井:私学は、その学校の特性があり、それを選んだ高校生達が行っているわけです。だから、それはそれでいいと思うのですが。でも公立学校の場合は、変わっていく必要があると思っています。先ほどのオーダーメイドの話も、もう少し先だと思いますが、結局はそうなってくると思います。

プラスであるというのは、僕らが考えたところでいうと、生徒側が学校に対して疑問に思っている気持ちがたくさんあるんですよね。「学校に通う必要がない」と思っている生徒がかなり多いことが現場で見えているというか。

それは全日制高校に通っている生徒もそうですし、通信制や定時制高校の生徒も同じように思っている。僕らは教員として関わっているわけじゃないので、いろいろな話を聞くんですよね。

先ほども話したのですが、その学校ごとで「自分たちの目指している教育では、こういうことをしていきたいんだ」という理念があるようにする。だから、先生方がそれを自分達でやるのか、もしくは一緒に機関と連携してくような形でやっていくのかという必要性がある。

しかし、文科省には予算がない。日本は、なかなか教育系の予算が出ない。そこ自体が課題だなとすごく感じています。

プログラミング教育などがすごく進んで、義務化されようとはしてきています。しかしそこもどこまで民間企業が本当に入れるのか、という感じもします。先生方だけに負担させると、すごく大変かと……。

小幡:そうですよね〜。

中川:学校でなぜアルバイトも禁止、恋愛も禁止という校則があるのかというと……結局あれでしょ? なにかあったときに、学校側がなにか言われるからそのようにするわけでしょ? 規制しておいて「いや、学校側は禁止しているんですけど」というエクスキューズみたいなね? 

小幡:そうですね。

中川:それを今言っていたみたいに、いろいろなことを全部学校に任せちゃうから「学校に入れたのにこんなことになって!」みたいに言う人がいる。だから校則で縛るようになっていく。そもそもそのあたりから変えないといけない。たぶん学校側もね、なにか言われたら困るわけじゃない。

小幡:学校に求められる役割が多すぎるという。

中川:そんな気がするね。自分の子どもがとんでもないアルバイトに行って「学校が禁止しないからだ!」みたいに言う人がいるということなんでしょ? そのあたりがおかしいような気がするな。

小幡:うんうん。

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