2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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竹中平蔵氏(以下、竹中):(産業だけでなく個人のコネクティビティをどうするかについて)今のは、日本の働き方改革とも通じるんですけれども。日本の場合は、いわゆるジョブディスクリプションがない。要するに、「この人にどういう権限があるのか」がわかりにくい。だから「社長が出てきたら社長」となる。
だから、話が進むようで進まないっていう弁がビジネスの世界ではいろいろあるのではないか。あとからみなさんにもチャンスがありますので、ぜひご意見をおうかがいさせていただきたいと思います。
大臣にうかがいます。今一方で、例えば今年6月に閣議決定された成長戦略のなかでようやく「イギリスが持っているようなビッグデータ整備の司令塔をつくろう」となっている。これは去年12月に基本法が通って、それに基づいてビッグデータをいろいろみんなでつくっていきましょう、と。
これと今、世耕大臣がおっしゃったことっていうのは、ほとんど一致する話だと考えてよろしいでしょうか? その先頭に経産省が立つという意味でよろしいでしょうか?
世耕弘成氏(以下、世耕):まさにその覚悟でおりますし、そういった産業界でデータを蓄積するような組織に対して、例えば税制上の優遇や、あるいは契約のガイドライン、データを預ける関係になった場合の契約のガイドラインをつくって、ビッグデータを貯める組織をしっかり活性化していきたいと思います。
竹中:一般には、まず先ほどおっしゃったような自動走行をするためには、道路の情報が必要で。国道の情報は国が持っていて、県道の情報は県が持っていて。そういうところを集めてビッグデータをみんなで持ち寄って。そして民間の企業が入って、自動走行をやりたい企業はどういうデータが欲しいんだっていうことをやる。
日本でもこれからまさにそういうことをやっていこうということが、いよいよはじまるわけだと思うんですね。
竹中:そこで1つ、お二方におうかがいしたいんですけれども。大臣が最後に言われた、競争と協調の関係です。日本は競争政策が弱い。コーポレートガバナンスをもっと強化して、競争的にして生産性を上げていかなきゃいけないという議論が一方であります。
実はイギリスでも、これから例の規制緩和のためのレギュラトリー・サンドボックスができてくるんですが。これも経済産業省の報告によると、競争政策の一貫として出てきているんだ、といいます。消費者のためにもっと競争してもらわなきゃいけなくて、その効率を高めるためなんだ、と。
その競争は意外と表に出てるような気もしています。企業が相談して協力することが大事だっていうのは一般論として認めるんですが、その競争との関係ですね。これはぜひ政府の側と民間の側と、もう少し深めていただけませんでしょうか?
世耕:「Connected Industries」をですね、まさに経産省を越えて政府のなかで議論をはじめて最初に出てきた問題が「これはカルテルにあたるんじゃないですか?」という議論であります。これはある程度、しっかり政府が主導して、カルテルじゃないよという整理をしていかなきゃいけないと思っています。
競争を促進してる政策との関係ですが、我々はConnected Industriesという概念で、「競争しないでいいですよ」とは言ってないんです。「いらないところで競争しないでください」というところなんです。
例えばですね……もう具体名のほうがいいと思う。例えばトヨタと日産が、自動車の技術で競争するのはいいんですけど、人事や経理で競争しなくていいと思うんです。その人事も、本当に研修のプログラムの中身で競争するのはいいですけども、人事管理システムでお互い競い合ったってしょうがない。
例えば、人事管理システムの開発に人のリソースを投入するよりは、そこはもう同じものを使って、その開発にあてるリソースを自動車の開発にあててもらいたい。これがConnected Industriesの、基本的な競争と協調の考え方であります。
竹中:水野さん、いかがでしょうか?
水野弘道氏(以下、水野):はい。最近のコーポレートガバナンスの不祥事の件で思うのは、やはり海外の、もともと欧米の競争と協働、協調の考え方は、緊張と緩和で成り立っているんですね。それで言いますと、このような企業の不祥事系の事件は社内での緊張の欠如なんだと思うんです。
だから、日本のガバナンスはやっぱり弱いっていうのが現実としてあると思っています。一方、世耕さんがおっしゃるような、企業間の競争においては、確かに、不要な競争が多いと感じます。
私は、海外の企業のトップとよくミーティングするんですけど。悪口じゃないんですけど、日本の企業の経営者の方と違うのは、彼らはだいたい、顧客のことを話します。「How to change consumer market」みたいな感じで「どう顧客に対応するか」って話すんです。
日本の企業の方のプレゼンを見ると、競合相手との比較のコメントが多いように私は感じています。なので、それが一般論として正しいかどうかはサンプリングの数が足りないんですけれども、ちょっとそこの違いはあるんじゃないかなと思います。
竹中:はい。ありがとうございます。すごく今、いい素材を提供していただいてると思うんですけれども。例えば、世耕大臣ですね。これからそういう話をしていく場合に、私はやっぱりどうしても気になるのは、公取(公正取引委員会)の話なんです。競争政策を担う公取と、そして産業育成を目指す経産省と。
実はですね、これが「Connected Government」になっていない可能性があるんですよね(笑)。
(会場笑)
政府っておもしろいですよね。政府は民間に対していろんなことを要求するんですけど、政府がコネクテッドになっていない。例えば今、地方銀行。これはFinTechと……今日は関係者いらっしゃると思いますけども。
地方の、県単位の銀行でこれからやっていけない、ということで合併の話がいろいろ出てくるんです。しかし、公取が「待った」をかける。このギャップが、これからもいろんなところで出てきそうな気がいたしまして。
世耕大臣が考えておられる大きな構想を、具体的に進めていくときのいろんな障壁が予想されるんですが。どういうスケジュール感で、どういうイメージで、大臣としてはこれを進めていかれるか。その障壁を乗り越えていかれるか。イメージをお話いただけるとありがたいんですが。
世耕:これは公取との関係では、まだちょっとスケジュール感は持ってないです。今ようやく議論をはじめたという感じですから。これは公取とだけじゃないんです。例えば金融庁ともけっこうぶつかるテーマを我々たくさん持ってますし、厚労省ともぶつかるし、国交省ともぶつかる。
これはもう精力的にやっていきたいと思います。
竹中:水野さんにね、ちょっと具体的に。これから本当に、第4次産業革命のなかの重要な一部として、このConnected Industriesの動きをはじめていくわけなんですが。
日本はいろんなチャンスを持っていると思う。しかし、いろいろ規制もあって自ら芽をつぶしているとも思う。今日、これからの担い手のみなさまが揃っておられるんですけれども、それをファイナンスする立場から、とくにどういう分野で日本が成果を上げていけると考えておられますか?
水野:最近、GPIFがESGを推進してるなかで、「SDGs」という逆側の、企業が使えるようなフレームワークも、同じように今プロモートしています。とにかく世界の産業は、どうやって世界の持続的な成長に貢献するか、ということをビジネスにしようという方向にすごい勢いで進んでおります。
私がもともとESGを推進しはじめたきっかけも、CIOになって海外のCIOの人たちとのミーティング出たら、話しているテーマが2つしかなくて。1つはだいたいを通して、オルタナティブ・インベストメントをどうするかっていう話と、もう1つはESGをどうするか。これしかテーマがないっていうことに気が付いて。
この状態だと、早急に日本がその方向にビジネスの舵をきらないと、この投資家の人たちは日本に対して興味を失う。という危機感から、このキャンペーンをはじめてきました。
なので、まず世界の持続的な成長や、インクルーシブな発展のために、コネクテッドの発展でもいいんですけど、貢献するビジネスモデルをつくってるっていうことをアピールしていくことが、GPIFだけではなくて、世界の投資家のお金を引き付ける。そのことを、やっぱり認識していただきたいと思います。
竹中:日本はそれができる?
水野:日本は確実にできると思います。昨日、一昨日もゴア副大統領が日本に来られていて、気候変動の話をしてるんですけど。「とにかく日本は技術を持ってるんだ」「もともと、持続的な成長っていうのは日本のビジネスモデルじゃないか」と何度も言っておられましたので。まさにチャンスは今ここにあるんじゃないかな、と思います。
竹中:私も本当にそう思っていて、今すごく重要な時期だと思うんです。だからそれでちょっと、世耕大臣に2点ばかり要望も含めて、チャレンジしたいと思うんですが。
1つはですね、少し大きな話で恐縮ですけれども、安倍政権が長期政権を目指してがんばっておられる。我々も本当に期待してるし、高い評価しております。一方で、一般的によくある批判は、これから憲法改正に向かうなかでポリティカル・キャピタルが経済政策のほうに向かなくなってしまうのではないんだろうか。
実は私は、そうは思いません。これはもう、安倍総理も菅官房長官も、世耕大臣も、優れた政治家はリアリストなので「経済をよくしていかないと憲法改正なんかできないんだ」とみんなわかってる。
私がむしろ心配するのは、霞が関の官僚組織が「今、政治的に大変だからこれはちょっと待ちましょうよ」という政治の混乱をエクスキューズとして使う。これ、現実にそうなっているんですよね。
加計学園問題で、特区の事務局はもう本当に今はなにも。世耕大臣の耳にも入ってると思いますけど、ものすごく弱くなってしまっているんです。
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