なぜ『ずるいえいご』になった?

上村潤(以下、上村):今日はそんな青木ゆか先生をお迎えしてお話聞いていきたいと思います。

西澤ロイ(以下、ロイ):『ずるいえいご』って、なぜタイトルが『ずるいえいご』なんですか? だって捨てる英語トレーナーですよね?

ずるいえいご (日経ビジネス人文庫)

青木ゆか氏(以下、青木):そうなんです。最初は捨てる英語でこの本の話が進んでいたんですが、捨てる英語にしようとしたら、読者さんが英語なんていらないんじゃないか、っていうふうに思われるんじゃないかというところで。やっぱり「捨てる」は危険だという話になって。

じゃあどういうタイトルがいいんだろうとずっと考えていて、いろいろ考えた結果、ずっと英語を勉強してきたのにぜんぜんしゃべれないと。そう思っている方が「え! そんなやり方あったの!? ずるーい!」の“ずるい”ですって言って『ずるいえいご』になったんですね。

ロイ:ずるいタイトルですよね。

上村:これは目を引きますよ。

青木:本当ですか。嬉しいです。

ホストマザー寝かしつけ事件

ロイ:ゆかさんがこのメソッドにたどり着くまでにいろんな紆余曲折というか大変なことがいっぱいあったと思うんですけど。「寝かしつけ事件」みたいなものがあるって、そこを聞きたいんですけど。実はですね、寝かしつけるっていうのは僕の中で今ベストセラー作家になる登竜門なのかなって思ってるんですよ。

上村:寝かしつけるが登竜門?

ロイ:ひすいこたろうさんというベストセラー作家の人がいらっしゃって。彼はコピーライターなんですけど、もともと営業をやっていて、営業で商品説明をしていたらお客さんが寝ちゃった。お客さんを寝かしつけたことがあって。

「これはダメだな」と文字でやろうと言ってコピーライターになった人なんですよ。今は何十万部って、本も15冊とか20冊とかいっぱい出していてベストセラー作家なんですよ。ゆかさんも今5万部ですけど、寝かしつけたことがあると?

青木:そうなんです。図らずも、奇しくも寝かしつけてしまいました(笑)。

上村:なるほど、ベストセラー作家にとって寝かしつけるのは通る道なんですね。誰もが。

ロイ:そういう経験がある人はベストセラー作家になる素質があるんじゃないかと僕は思っていて。誰を寝かしつけたんでしたっけ?

青木:イギリスに留学に行ったときのホストファミリーに「日本の文化を教えちゃおう」と折り紙を持っていったわけですよ。一生懸命折り紙を折りながら、「鶴って英語で何?」って辞書調べて、「兜って英語で何?」「そもそも折り紙って英語で何?」みたいにずっと調べてたら1人ずついなくなったんですね。そして誰もいなくなったみたいに。

いなくなって、最後までずっと辛抱強くいてくれた、ソファに座ってたホストマザーがハッと見たら寝てたという事件があって。

ロイ:これ十分なトラウマできますよね。

実は英語は好きじゃない?

青木:辞書を持ちながら調べながらお伝えすることに恐怖心を抱くようになったことがきっかけだったという。

上村:いや~言葉が出てこない身としては背中から嫌な汗が出てきますよね。本当。

青木:そうなんですよね。だから辞書をなくしていかに話すのかというのをその後ずっと模索して、できたのがこれ(『ずるいえいご』)って感じですね。

ロイ:その体験は高校生のときですよね?

青木:そうです。高校2年生のとき。

ロイ:その後、アメリカ留学は大学院のときにされているとプロフィールに書いてあったんですけど。その間の英語をやるモチベーションって何だったんですか? それだけトラウマ体験をしてなぜ続けられたかを聞きたかったんですよね。

青木:勉強嫌いなんですね。私。

上村:そうなんですか!?

青木:嫌いなんです。

ロイ:大学院出ておいて?(笑)。

青木:おやおや(笑)。そうなんです。あんまり好きではなくて。とくに英語に関してはゾクゾクしないんですね。単語の美しさとか文法の美しさにゾクゾクしないんだけど、それを使って人とコミュニケーションを取ったときの楽しさが忘れられなくて。

どうやったらコミュニケーションが取れるんだろうっていうのがやっぱりずっとテーマだったんですよね。話したい! コミュニケーションが取りたい! 異文化の人のいろんなものを知りたい! っていう気持ちがそうさせてたんだろうなと今は思います。……いい話だ。

(一同笑)

上村:また自分で言っちゃうところがね、芸人気質ですよね(笑)。

ロイ:そうそう(笑)。だって出身地関西じゃないですよね?

アメリカと大阪が憧れの地

青木:最近セミナー終わったあとに生徒さん、聞いてくださってた方がワーっと集まって、「大阪のどこですか?」って言われたんです(笑)。

(一同笑)

上村:そこは決まってるんですね(笑)。

青木:そこありきなんだと思って(笑)。「千葉です!」みたいな。まぁありがたい。嬉しいですね。

上村:大阪の中に千葉って土地ありましたっけみたいなね。

青木:憧れの土地なんでね。大阪が。

ロイ:憧れなんだ(笑)。

青木:憧れですね。大阪ね~。

ロイ:アメリカとかイギリスではなく、大阪?

青木:アメリカと大阪が私の憧れの地で。あのしゃべってるだけで雰囲気が出せる言語って、英語か関西弁かみたいな。なんの話してるんだろ、私(笑)。

ロイ:ふーんって聞いちゃってなんか返しづらい(笑)。

青木:すみません、本当に。反応しづらい感じで(笑)。

英語は単語力ではない

ロイ:大学院のときにアメリカ留学して、そこで自信がついたんですか?

青木:そうですね。アメリカに留学に行って、日本人で英語を話す上級者たちの英語をずっと分析した結果、「あれ?」と思って。「単語力じゃないかも!?」っていうのに気がついて。

その人たちの真似をするようになってから劇的に伝えられるようになったんですね。そこから自信が戻ってきたみたいな感じで、そこからしゃべれるということにすごく自信を取り戻すようになったという流れですね。

ロイ:英語の自信って何なんですかね?

青木:今、すごく共鳴してる方がいらっしゃって、心屋仁之助さん。『折れない自信をつくるシンプルな習慣』という本が出てるんですけど、心屋さんがおっしゃるには「他人の評価軸で生きない」というのをおっしゃっているんですね。

折れない自信をつくるシンプルな習慣 (朝日新書)

私もまったく同じだと思っていて、人から見た英語の能力ではなくて自分の中にあるものを使って、それを伝えることによって少しずつ「あ、伝わった」っていうのが自信になっていくんだろうなというふうに思っているんですよね。自分の中にあるもの。

ロイ:大事ですよね、そこは。それを積み重ねていくことでそれが揺るぎなくなっていくというか。

青木:本当にそう思います。英語って恐怖の象徴みたいになっているので。日本人の方はとくに。なので恐怖の象徴を取り除いて、私のミッションが英語への自信を自分への自信に変えて輝く人を作るのがミッションと言っているので、そういう流れで自信を取り戻していく方というのを作っていけたらなと思ってますね。