人生の勝機は「半径5メートルの獣道」にあり
現代の若者は生き甲斐をどう見つけるべきか

著者と語る朝渋『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 』 #4/5

2017年11月13日、Book Lab Tokyoで毎週開催されている会員制朝活コミュニティ「朝渋」の人気企画「著者と語る朝渋」にて、『モチベーション革命』の著者・尾原和啓氏を招いてトークセッションが行われました。インドネシア在住の尾原氏はこの日、リモートマシンから中継でセッションに参加。現代の若者と36歳以上の間にある世代間の断絶を独自の見地から語りました。

みんな「世界」をデカく考えすぎてる

尾原和啓氏(以下、尾原):もう1つ大事なことは、みんな世界から求められることの、「世界」をデカく考えすぎてるんです。

井上皓史氏(以下、井上):はい(笑)。なるほど。

尾原:例えば僕は、中学生、高校生のときって、ひたすらいろんな国の神話とか訳してたりしたんですね。

井上:ご自身がですね。

尾原:はい。僕が高校生のころだから30年前とか、アフリカ神話なんて好きなヤツが世の中にあんまりいないわけですよ。でも、そのアフリカ神話を好きな人たちというのが、インターネットがなかった時代でも、コミケという場所に行くと何人かはいて。

コミケという場所に行くと、僕の訳した神話が20部ぐらい売れるわけですよ。その人にとってはむっちゃありがたいわけですよ。

井上:そうですね。そんなことやってもらえる方、世の中にいないですもんね。

尾原:それはもう、世界から認められている、求められているっていうことになるんですよね。だから、自分が求められる半径5メートルの世界っていうのがあるわけですよ。

僕のときはコミケだったから20人しか見つからなかったけど。それがありがたいことに、インターネットで繋がっていれば、アフリカ神話を日本語で読みたい方って、日本中にたぶん2000人ぐらいはいらっしゃったと思うんですよね。その2000人からは「ものすごく求めてたものだ」と言われるわけですよ。

だから、あなたにとっての世界はなんですか? っていうこと。

井上:まずは、身のまわり。大きく考えすぎずに、家族や友人を幸せにする、自分の得意なことや好きなものを見つけていくというのが、1ついいのかもしれないですね。

尾原:そうですね。大事なのは結局、友人というリアルの距離だけじゃなく、自分の「偏愛」の世界だとか。あとは、たとえベルパーソンからはじめたとしても、世の中でとくに大事になっていくだろうコミュニティのイベントだったり、ちっちゃいボランティアだったりで活躍できる。探そうと思えばいくらでもあるわけですよね。

井上:なるほど、そうですね。今でいうと、好きを仕事にできていない方。それこそ平日始発で出て終電で帰るような仕事をして、土日は寝溜めする、みたいなサイクルがなかなかうまくいかないような人もいらっしゃるなかで、稼げるというところにフォーカスせずに。なにか1つ、自分の趣味や好きを見つけていけるような環境に飛び込んでいただけたら、と。

打算はめっちゃ大事

尾原:ただ大事なのは、これはGiverはTakeすることを考えないものだというアダム・グラントとか、ほかの人と僕の考えが違うところなんですけど。打算はめっちゃ大事ですよ。

井上:打算ですか?

尾原:打算。

井上:はい。

尾原:だって、言い方悪いですけど、この朝渋だって、ね? 井上さん含めてスタッフの方って手弁当でやってくださっているから、僕らも手弁当でご協力してこうやってお話してますけど。

正直、これを使っていろんな世の中で新しい発信をしている人と繋がっていくことのうまみだったりとか。朝早くわざわざここに集まってくる、『モチベーション革命』なんて読まなくても、モチベーションの高い人たちと繋がることとか。ぜったい打算考えてるでしょ?

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

井上:まあ……僕ですか?(笑)。

(会場笑)

尾原:あ、ここログミーに残さないから、大丈夫だから。

井上:はい。打算、そうですね。僕、社会人3年目で、普通の仕事をしてたら尾原さんとお話できていないから……。僕も、早寝早起きが好きで得意だというところからスタートして、みんなを巻き込んでやっているので。美味しいポジションって言ったらあれですけれども(笑)。

尾原:そうでしょ、美味しいポジションって思ってるわけでしょ?

井上:はい(笑)。

(会場笑)

井上:はい、そうですね。

尾原:いいんですよ、それで。

井上:はい。

尾原:だって、ほかの人がやろうと思っても、いろんな面倒くさいことがある。だけど、それをやってくださってるわけじゃないですか。最初、僕、めっちゃ冷たかったのに、ちゃんと丁寧に答えてくれて。

井上:(笑)。

尾原:「お前これで金儲けしてんじゃないの?」とか「適当なこと言ってんじゃねえの?」とか冷たい質問しても、きっちり井上さんが丁寧に答えてくれるから。これは打算があるかもしれないけれども誠実にやってる人だ、と思うから、僕はこうやって協力しているわけですよ。

井上:ありがとうございます。(会場に向かって)最初はすごく冷たかったです(笑)。

(会場笑)

申し訳ないです(笑)。本当にうれしい対談をありがとうございます。

世の中の勝ちパターンは2種類に分かれる

井上:ちょっと、時間がもうあれなので。リゾートワーカーの話も詳しく聞きたかったんですけれども。今日は会場に70人来ていますので、ぜひ質問があれば。はい、ありがとうございます。

尾原:はいはい、リゾートワーカーでも、いいですよ。

質問者1:今日はありがとうございます。

尾原:はい、今日はありがとうございます。

質問者1:納得感のあるお話でした。1つおうかがいしたいことが、乾けない世代が希望を持つというふうに本に書いてあって。その希望って、パッと言われても「いや、希望までいけねえよ」みたいな人が、たぶんすごくいっぱいいると思います。

そこは、今お話されていたような、コツコツとやれるとこからというところだと、僕も思ってるし信じてるんですけど。ほかになにか、尾原さんのほうからコメントのようなものがあればおうかがいしたいな、と。

尾原:はい。

質問者1:希望になれるために気を付ければいいこと。

尾原:えっとですね……。本でどこまで書いたか覚えてないんですけど。ぜひ、梅田望夫さんが書いた『Web時代をゆく』という本を読んでほしいんですけど。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

これ15年前に書かれた本なんですけど、素晴らしい本なんですよ。要は世の中の勝ちパターンは2種類に分かれるということを彼は言っているんですね。

「知の高速道路」で戦う道

尾原:1つは、知の高速道路に乗って、永遠とものすごい速度で走りながら世界で戦い続けるやり方。それかもう1つは、獣道という言い方をしてるんですけれども。誰でもは通らない、その生き物しか通らないような獣道で生きていくか。どっちか、と言っていて。

前者を簡単に説明すると、ようは世の中がめっちゃ変化するわけでしょ。みなさん、むちゃくちゃチャンスなんですね。オックスフォードが言った、半分の仕事がロボットとAIに置き換わるという話は、みんな知ってるよね?

井上:言われていますね。

尾原:逆に言うと、半分の仕事が、どうやってAIによって仕事をコントロールするかというような、新しい仕事をつくらなきゃいけないんだよね。僕みたいなリゾートワーカーのような生き方が増えている。ということは、リゾートワークをする人の環境をどうやって整えるの? という仕事であったり。

「そもそもこの仕事、リモートワークでよくないっすか?」というふうに、ぜんぶの仕事をロボットやリモートに置き換えたりする仕事が増えてくるわけですよ。ということは、今はこれのプロはいないじゃない? とくに大手の会社のなかに。

ましてや、ありがたいことにもう1個の話があって、乾けない世代よりもっと上の45歳より上で、今、本部長の人たちって、インターネットを体感してないから。まわりがメールを使ってるから使うか、みたいな人たちで。

インターネットの本質的なところで、どういうふうに好きな人が繋がって、外でもどうやって気軽に仕事ができるか、コミュニケーションができるかって、あなた方のようにネイティブに使ってないんだよね。

ということは、この20年間で仕事がぜんぶ入れ替わるのに、大きい会社であれば大きい会社であるほど、そのプロがいない。ということは、あなたが第一人者になれる、というチャンスなんだよね。

日本語の壁に守られて生きていられるのもあと5年?

尾原:ただ1個気をつけなきゃいけないのは、この大きな流れのなかで第一人者になるという戦い方って、若い人であれば若い人であるほど有利なんです。例えば、このなかでムーク(MOOC、Massive Open Online Courses)で勉強してる人たちっているかな?

井上:ムーク?

尾原:わざとムークという言い方してるんだけど。まあいいや、言い方を変えよう。オンライン大学。

井上:(会場に向かって)オンライン大学で勉強された方。あ、いないです。

尾原:いないでしょ? ね、それが日本の残念なというか、悲しい事実なんだけど。これをハノイとかチェンマイの大学生に質問したら、半分は手をあげるんですよ。

井上:ああ、なるほど。

尾原:これはなにかというと、世界中の大学の一番いい授業が、1ヶ月遅れぐらいで無料で公開されるものって、めちゃめちゃ多いんですよ。

井上:日本人はそれを掴みにいってないっていうことですよね。

尾原:うん。だから世界の人たち、昔だったらインドの人たちとか、今言ったベトナムの田舎の大学の人たちって、人件費が安いからコツコツやるしかないというイメージでいると、もう大間違いで。彼らのほうが乾いてるから、世界最先端の授業をがつがつ勉強している。

GitHubとかにコードをあげて、自分たちの努力の成果が認められたら、世界1級の人からアドバイスをもらえて、というふうに。知の高速道路でインターネットというロケットエンジン積んで、あなたを追いかけてくるわけですよ。

だから、この戦いに行くのか行かないのか。ただありがたいことに、日本語の壁というのもあるから、あなたたちは、まだぬくぬく生きれられる。

井上:(笑)。はい。

尾原:ただ、これもあと5年ぐらいすると、ネイティブな音声自動翻訳が完全にできるようになっちゃうから。そうすると、さっき言ったハノイとかチェンマイとかでオンライン大学で、こんな朝渋みたいな中途半端なレベルじゃなくて。

(会場笑)

尾原:僕の話の本家である、そのセリグマンだとか、アダム・グラントとか。そういう人たちの授業を直接受けてる人たちが、あなたたちを追いかけてくるわけですよ。その戦いに乗っかるんだったらOK。まず1個目。

「獣道」で戦う道

尾原:2個目は獣道というやつがあって。この本に書いたかな? 例えば僕の友達で、スイスにいるベンチャーの社長がいるんですよ。まだ彼、29歳かな。こいつ、すげえおもしろいやつで。スイスのジュネーブに住んでるんですけど、日本人相手に美少女ゲームつくってるんです。

井上:本に書かれていましたね。

尾原:あ、本に書いてる? スイスにいたとしても、日本人の美少女についてめっちゃ詳しいから、日本からお金をちゃんともらえる職業ができている。なおかつ、スイスでそんなことをやろうというやつはいないから。

そいつのところに、「え! まじ? スイスにいるのに日本人の美少女のゲームつくれんの?」って言ってエンジニアがめっちゃ安く、めっちゃ優秀なやつがコントリビュートしてくれるから。その会社、めっちゃ儲かってるんですよね。

井上:美味しいポジションですね(笑)。

尾原:そういうことが獣道なんです。だから「世の中の変化なんて気にしなくていい、でも、外国人だけど日本の美少女ゲームをつくりたい」という人たち。その世界では求められて、お金稼げて、得意で、自分が好きで、って生き甲斐が重なってるわけですよね。

そういう半径5メートルの獣道の生き甲斐って、いっぱい出てくるわけですよ、ここから。

井上:半径5メートル。いいですね、その言葉。

尾原:だけどいいのは、昔は半径5メートルは狭い獣道だったけど、今はインターネットで世界中から繋がれるから。だからスイスにいながら日本で商売することもできるし。

九州にいながらイスラエルの技術者を使って、福島の方々にコールセンターをやっていただくというビジネスをしている人もいるから。獣道を通るためのコストというのも、めちゃくちゃ下がってるんだよね。

井上:ゼロ円でもできたりしますよね。

尾原:そうそう。おっしゃる通りで、ゼロ円でできちゃったりすると、もう大手の会社は「そんなコストで俺たちできないから」って言って、獣道に入ってこないわけですよ。

井上:なるほど。

より敏感な人が「獣道」ビジネスでは勝つ

尾原:じゃあ、この獣道を見つけるとしたら、さっき言った、やっぱり4つの交点のあなたが好きなこと、あなたしか見えない獣道はなんですか? ということ。

より敏感な人が「獣道ビジネス」で勝ちます。あなたが好きなことだから、その半径5メートルのお客さんのことは死ぬほどよくわかってるから。

井上:誰よりも詳しいってことですよね。

尾原:そう。だからスイスの人は、スイスに住んでるのに、日本人の美少女ゲームのファンの心を手に取るようにわかってるから。ピンポイントで、そういうイラストとか提供できるわけですよ。

そういう獣道をたくさん探していくということが、けっこう大事。ごめんなさい、ちょっと長くなりまして。

井上:いえいえ。わかりました。(質問者に向かって)大丈夫ですかね。

質問者1:はい。希望になる素養はあるけど、まあ大変だなっていうことがわかりました。

(会場笑)

井上:はい(笑)。ありがとうございます。ほかに……。

尾原:いやでもね、それを大変と思うんなら、たぶんあなたは、まだ自分の好きを見つけられてないんだよ。

質問者1:そういうことだと思います。

尾原:そのへんは楠木建さんの『好きなようにしてください』とか『「好き嫌い」と経営』を読むと、たぶん共感できることがあると思うから読んでみるといいと思いますよ。

好きなようにしてください―――たった一つの「仕事」の原則

「好き嫌い」と経営

質問者1:ありがとうございます。

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