言葉ではなく、目で挨拶をするカンボジア人

ケム・ケムラ氏:Hi, everyone. I came from Cambodia. I'm really glad that I can have chance to talk about what is in my heart. Today, the topic I wanna talk about is the Happiness, and one part of the mission of my life.

あれ? なんかちょっと通じない……? そういう感じの顔をされてる方も多いみたいですね。日本語も少し話せるので、これから最後まで、日本語でプレゼンさせていただきたいと思います。

私はカンボジアから来ました。カンボジアってたぶんあんまりイメージがないと思いますけれども、基本的にカンボジア語をしゃべっています。カンボジア語はクメール語なんですが、せっかくなので一般的なあいさつぐらいはみなさんに覚えてもらいたいと思います。「こんにちは」は、カンボジア語では「スオスダイ」って言います。「スオスダイ!」。はい、発音いいですよ。

(会場笑)

でも、あんまり使わないんですよ。なぜかというと、カンボジア人のあいさつは、みんな目が合った時に「ニコッ」と。要するに、笑顔があいさつとなっているんですね。

日本人や外国人の友だちから「カンボジア人って、朝会ってもグッドモーニングとかおはようって言わないんだよ。あいさつを学校で教わってないの?」とか言われたりして。それを聞いて、よく考えてみればそうだなぁと思って。「おはよう」「スオスダイ」なんていちいち言わないけど、みんな目が合った時にはニコッとして「おー、元気?」とか「ごはん食べた?」とか「どこに行くの?」って言うのが。、カンボジアのあいさつなんですね。

アンコールワット以外にはなにがある?

カンボジアといえば、アンコールワットという遺跡が有名でよく知られていますね。私も小さい時から「アンコールワットはすごいよ」とかいろいろ話を聞いていたんですが、初めて行ったのは18歳の時だったんです。

やはりすごいですよ、素敵。こんな1個1個のでっかい石を結構遠いところから持ってきて、いちいち彫って……。しかも彫刻刀がないような感じでも結構彫れたっていうことで「ひょっとしたら昔の人ってマジックでも使えたんじゃないかな?」って個人的に思ったりして……。

アンコールワット以外の日本人からの印象としては、何でしょうね? 結構日本人の友だちからも「カンボジアってアンコールワット以外にはあんまり印象がないんだけど、何があるの?」とか聞かれます。

私はカンボジアの首都のプノンペンに住んでるんですが、「プノンペンでも地雷を踏んで死ぬ人とかいるの?」っていまだに聞かれたりして……。「いやいや、プノンペンで地雷なんか踏まないよ!」と思ったりね(笑)。あと「カンボジア人ってみんな銃を使えたり、持ってるんですか?」「いやいや、私だって銃の持ち方さえわからないし、持ってないですよ」って。

「学校がない」というイメージもあると思います。おかげさまで、日本の政府から学校の支援などをしていただいているんですが、今のところは学校そのものよりは、人材、先生、カリキュラムができていないとか、そういうリソースの部分が足りないんじゃないかなと思います。

どちらかと言えば、カンボジアというとまだ日本人のみなさんからは暗いイメージばかりを持たれていると思います。でも実は先ほど言った「あいさつは笑顔」とか、他にもカンボジアにはいいものもいっぱいありますので、ぜひ来てみてください。

豊かだからといって幸せとは限らない

今日話していきたいと思っているのは、「幸せ」について。それから、私の今までの経験のお話です。「人生のミッション」というか……ちょっと大げさですけど。

ときどきカンボジアの田舎に行くと、電気もないし、おいしいレストランもあんまりないから「田舎はかわいそうだなぁ」と思ったりします。日本人がカンボジアに対して暗いイメージを抱くように、私は「田舎はかわいそう」とよく考えたりするんですが、実際田舎に行ってみると、みんながゆったりとした生活をしていたり、子どもたちが心の底から笑っている姿があります。

この子どもたちはみんなすごい笑顔が素敵だし、楽しそうだなぁと思って。だから「幸せってどこでも生まれるものなんじゃないの?」「みんなそれぞれ持っているものなんじゃないの?」と思いました。初めて日本に来て満員電車に乗っている日本人を見たら「今日また仕事かよ……」という顔ばっかりだったので(笑)。日本は発展していても、幸せじゃない部分もあるんだなぁと思いました。

でも幸せって自分がコントロールするものだと思うので「自分はきっと幸せだ」と思えば、幸せな人間になります。じゃあ「幸せってどこにあるの?」という話ですけど、それは先進国にしかないものではないと思いますし、途上国に幸せがないとは思わないです。きっと幸せというものは持ち出せると思うので。

せっかく生きるなら、自分としてはやっぱり楽しく人生を送って行きたいです。でもこの世の中には自分だけが生きているわけではないので、みなさんとうまくやっていかないといけないというところがある。「みんなで幸せになったらいいんじゃないの?」っていう考えも、私は持っています。それで私は決めました。自分も周りも幸せになるために、社会に何か役に立つようなことをしよう、と。

外国人留学生として3.11を経験して決意したこと

それからいろいろ日本の企業からお話があって「日本で3ヶ月間ぐらい研修を受けて、戻ってきた時に、君はカンボジアに何か役に立つような人間になっていればいいんじゃないか?」ということで、日本に来ました。ちょうど2011年の3月、写真の通り大震災の年の、3月7日に日本に来たんですよ。

確か、大震災の起こった日は11日。日本に来た日からレポート、レポート、レポート、と毎日言われていて、やっと金曜日になって「よし、次の日はお休みだ!」と思ったところで、ランチが終わった時にみんなといっしょに揺れて「えー! なんなの、これ?」「私、ここで死んじゃうの?」って。カンボジアには地震がないんですよ。台風もないです。

「せっかくカンボジアの社会に役に立つために日本に来ているのに、ここで私が死ぬの?」と、本当にあの時はすごく複雑な気持ちになりました。「親の恩返しもまだ何にもできてないのに」と思って、やっぱり、生きているうちに自分が人に役に立つようなことは1日でも早くできれば、という考えになりました。日本の大震災で、カンボジア人の私が考え方とか生き方っていうのを変えることになりました。

ボランティアではなく、ビジネスで母国に恩返しを

震災が落ち着いたころにカンボジアに帰ってきて、ネイルサロンを始めました。この写真は私の日本人の友だちが撮りに来てくれました。たくさんの日本人の友だちがみんな応援してくれて。

最初は「BI NAIL SALON」という名前で、ネイルしかやっていませんでした。1年間ぐらいやっていて、日本人のお客さんとか友達が「ネイルサロンだけだったら、3人もスタッフいらないでしょ?」って。でも私からしたら、大震災から生き残っていて、もし日本で死んじゃっていたら自分のお小遣いや貯金も使えなかったので、だったら少ない金額だけど3人の人を雇って、その3人の人たちが自分の家族にお金を回してくれたらと思いました。

カンボジア人は結構自分の親とかにお金を渡して家族をサポートしたりする習慣があります。そういう部分で、少しでも私は社会に役に立てるかなと思って。帰ってきて3ヶ月、早く始めようという考えもありました。せっかく始めたわけなので、ちょっと大きくしていかないと、と思いました。

変な話、もし日本で死んでしまったら、自分の持っている少ないお金を使えなかったのだから、ボランティアでお金を子どもたちに渡すという考えもあるかもしれません。

でも私はあんまりボランティアには興味がないんです。ボランティアに反対するわけではないですが、自分の考えとしては、ビジネスを初めて、それを継続することでカンボジア人にも運営というものをわかってもらって、彼らにもこれから自分の楽しい人生を送ってもらわないといけないと思っているんです。そこで2年目の時に、総合的な美容サロン「BI SALON」をオープンしました。

美しいという漢字の読みで「BI」なんですが、外国人からは「バイサロン」と読まれてしまいます(笑)。「バイ」じゃないです、「ビ」です! 日本語の読み方でお願いします! みたいな……。

(会場笑)

そういう感じで、ヘアメイクやヘアセット、まつげエクステンションといったサービスを提供しております。

この写真は、真ん中は有名な女優さんで、左側が私ですね。実は私は、1年間サロンの経験もあります。よく「ネイルとか(施術を)やってるの?」って言われるんですが、基本的にはサービスを提供する施術者ではないんです。指導者として、スタッフにいろいろ教えたりしています。2年間で、国際的なファッションショーのメイクやヘアセットの担当もさせていただいています。

社会起業家として大事な3つの項目

サロンをやっていくには、私は3つの項目が重要だと考えています。1つはやっぱりスタッフの教育。カンボジアにはまだ人材が足りないので、もっと人材を増やしていきたいと思っています。この写真も、スタッフがお互い交代でモデルになって練習している姿なんですけど、日本とも提携しているので、日本人の美容師さんに来てもらって教えてもらったりすることもあります。カンボジアの今のレベルじゃなくて、もっと上を目指して、世界のレベルで競争してもらいたいと考えています。

2つめは、カンボジアは日本など先進国からたくさん支援をいただいているので、みんながそう思っているわけではないですが「支援はもらえて当たり前」という部分があります。そういうところはちょっとでも変えていきたいと思っています。

だから逆に、カンボジア人がカンボジア人に対してボランティアをするようにしていきたい。完全にボランティアというのはあんまり好きじゃないんですが、ビジネスの中で一部ボランティアをしていくっていう考えで、スタッフを連れて孤児院に行ってカットしてあげたりしています。この写真は、カンボジアの結構大きな孤児院に行って、ヘアセットとメイクのデモンストレーションをやっているところですね。

もう1つは、やっぱり社会のネットワークがとっても重要だと思います。「サロン」と言いながらごはんを抱えていますけれども、これはイベントの時の写真ですね。イベントの主催をしたり、カンボジアの女優さんの業界のパーティーに参加したりしています。この時は身長が低くてちょっと目立たないと思ったので、赤いドレスを着ました(笑)。女性起業家のイベントに出たりすることもあります。

この写真は、日本の美容師さんがカンボジアに来て、うちのスタッフを教育していただけないかということで。つなげてくれたのは私の大切なパートナーのサヤカなんですけれど、ここにも来てくれていますね。

ということで大震災が終わってから、大したミッションじゃないですがここまでやってきました。少しでも早く社会に何か役に立つことができないかと考え続けてきました。大震災が起こって、きっとみなさんも考え方が変わってきたと思うんですが、ぜひみなさんにも考えてみてほしいです。自分の周りの人が幸せだったら、きっと自分にも幸せが返ってくると思うので。その回答を見つけて、みんなで幸せな人になりましょう。

最後になりますが、せっかくなのでクメールのあいさつでお別れしたいと思います。覚えていますか? クメールのあいさつ。「スオスダイ」。ご清聴ありがとうございました。