本当のプロジェクトは社外にある

浜田敬子氏(以下、浜田):では、午後のパネルディスカッションに移っていきたいと思います。

今まさに、政府をあげてやっている働き方改革。このセッションでは、この働き方改革によって生まれる新しい価値観や新しい世界とはどういうものだろうかというのを、3人のパネリストの方たちと一緒に議論していきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

最初にみなさんから「あなたにとって働き方の価値観が決定的に変わった出来事」を、ご自身の自己紹介を兼ねて、よろしくお願い致します。では、留目さんから。

留目真伸氏(以下、留目):はい、よろしくお願いします。レノボジャパン株式会社とNECパーソナルコンピューターという会社の社長をやっております、留目でございます。

もともと自分のキャリアは日系の会社から始まっていて外資系にいって。今は外資系半分、NECパーソナルコンピューターという日系をベースにした会社もやらせてもらっているんですけど、もともと外資系と日系のミックスみたいな。そういったダイバーシティというのは自分のフォーカスかなと思っていたんです。

最近、パソコンのビジネスから、スマートフォンやタブレット、それから今、VR、AR、スマートスピーカーというところまで製品が広がりつつあるわけですね。そうなると、本当に外資系とか日系とかじゃなくて、もう社内でも売り方がわからない。そもそも市場にそのまま出してもなにに使えるのかわからない。

価値にならないものをどう価値にしていくのかというところで、会社をコラボレーションしたり、スタートアップの方とやったり、いろんな方からアイデアをもらって、いろんな人とプロジェクトをやる。なんて言うんですかね、社内の仕事をするというよりも、みなさんと一緒にプロジェクトをつくりにいく。そういう意味でダイバーシティもそうですが、私も社員の働き方も、変わっていかなければいけないと考えています。

浜田:そうですね。今までの「自動車の会社」「家電の会社」が、あまり意味がなくなってきたので。今は、自分たちが製品やその中の動きに合わせてどんどんプロジェクト化していく感じですよね。

留目:そうですよね。会社という存在はなくならないと思うんですけど、ただのツールなどを提供しているだけで、本当のプロジェクト主体は外にある。なので、そことどう関われるのかが重要になってきていると思うんですよね。

「主語は自分」になって大きく変わった働く価値観

浜田:また後でくわしくお話をうかがえると思います。そして岡島さん、こんにちは。同い年で仲が良いので「えっちゃん」と言ったほうがしっくりきますけど。いつも「岡島さんの仕事はなに?」と聞かれると「岡島悦子です」とおっしゃっていますが。

岡島悦子氏(以下、岡島):「仕事、岡島悦子」ということで。

浜田:そのあたりも含めてお話しいただけますか?

岡島:今日はありがとうございます。岡島悦子です。株式会社プロノバというコンサルティング会社をやっております。大変わかりにくい仕事なんですが、メディアでみなさんがよくご覧になるような社長の方々のリーダーシップ開発のコンサルティングをやらせていただいています。今の社長さんにもっとリーダーシップをつくっていっていただいたり、それから次の10年後ぐらいの社長をつくるプロジェクトをたくさんやらせていただいています。

専門はリーダーシップ✕イノベーション。今日のテーマと非常に関係があります。いろいろな企業の次の経営チームが、どうしたらもっとイノベーションを起こせるか。その文脈でダイバーシティ推進もかなりお手伝いをしてきています。

今、200社ぐらいの会社でお手伝いをして、女性が多かったりもしますが20,000人ぐらいの方々とダイバーシティ推進のプロジェクトをやらせていただいているという感じです。

今、5社の社外取締役をやっていまして、それ以外にもたくさんの会社のアドバイザーなどをやっています。「個の中の多様性」みたいな話も今日はちょっと出てくるかなと思っています。30ぐらいの役割りをやっている毎日になっています。

浜田:岡島さん自身が最初に三菱商事に入られて、次にハーバードビジネススクールに行かれて、その次がマッキンゼーとなると「キラッキラ」のキャリアのように見えるんですけど。

岡島:世の中には私の経歴が嫌いという人がいて、2chにたくさん書き込んでいただいているようです(笑)。

浜田:ご自身の中で働き方や働く価値観みたいなものが変わったときはあるんですか?

岡島:手短に、とも思うんですけども。今日の話でも出てくると思うのですが、今の経歴をお聞きになっておわかりの通り、もともと承認欲求が非常に高いタイプで、周りからは「すごいね」、親からは「偉いね」と言われることが大好物みたいな人生を歩んできてしまったので。

自分が会社の社長に15年ぐらい前になったときに、やっぱりそこで「嫌われる勇気」みたいなものですかね。実現したいことはなんなのかという、はじめて主語を自分にできるというかたちになったことは、非常に大きな価値観の変化かなと思っています。

電電公社の民営化とともに変わった仕事人生

浜田:はい。ありがとうございます。それでは中山さん、お願い致します。中山さんはドコモという日本を代表する大企業を代表してきていただいたんですけども。ご自身が働いてきた中で、働き方やキャリア感が変わったときはございましたでしょうか。

中山俊樹氏(以下、中山):もともと会社に入ったときにまだ電電公社と言われていて、ドコモもNTTデータもない一社の時代でした。伝統的な仕事では、ほとんどの人間が組織の中に入れられます。経理、人事、私の場合は営業、そういうことを専属でやっていました。係長の下に10人ぐらいいて、その一番下っ端にいるみたいな感じです。課長は遠い、部長は遠い、ましてや役員なんて雲の上。

そこがちょうど20年前の1997年に民営化でNTTになって、その次の12年後くらいに「海外に出ていい」という話になりました。そのプロジェクトで20〜30人ぐらい集められて。ある日突然、伝統的な仕事から「ポーン!」とプロジェクトの中に入れられました。その中に部長も課長も係長もいるんですけど、みんなただの同僚。基本的に自分の部下もいない。

みんな一匹狼で「とにかく国際事業を立ち上げてこい!」と言われて。そこで、とにかく外の人に頼りました。頼れるのは外のパートナーと外国人しかいなかった状態です。ある意味ではあの時はしんどかったんですけど、自分の人生の転機と同じでしたから。大きく人生観や仕事人生の価値観を変えたのは、やっぱりその時だったんですよね。

それ以降ずっと似たような事業開発の仕事をやってきて、「ああ、あれがなかったらできなかったな」というふうに思いますね。

ドコモが実施する「勤務時間を分断してOK」な仕組み

浜田:ありがとうございます。今日は人事の方もたくさんいらっしゃると思います。企業に勤める人はやはりまだまだ多いので。企業も変わらないといけないけども、企業で勤めている人の意識も、これからどう変わっていかなければいけないのか。それについて、みなさんにお聞きできたらいいなと思っております。

今日は事前に、みなさんに4つのキーワードをお渡ししております。「今の働き方を考える上で、この4つのキーワードで考えてきてくださいね」とお話ししてあります。

1つ目のテーマは「場所と時間からの解放」にしたいなと思っています。

今まさに、テクノロジーの発達によって、会社にいなければ仕事ができない時代から、どこでも仕事ができる時代になってきた。そのあたりを含めて、これから働くという意味、どんな付加価値が生めるのか、場所と時間というものを解き放ったときに私たちはなにができるのだろうか。そういったところをお話ししていただきたいと思います。

今度は中山さんから聞きたいのですけども、ドコモはけっこうリモートワークをやっていらっしゃったり、いろんな働き方を変えていらっしゃるんですよね。

中山:そうですね。私は今、人事の担当でもあります。働き方をどこまで変えられるか、けっこういろいろな試みをしています。もちろん在宅勤務やシフト勤務というのは、かなり過去からやってきまして、だいぶ定着しています。しかし、今はシフト勤務よりはどちらかというと、完全にフレックスの方向に移行していますね。

それから在宅勤務はかなり定着してきて、今、我々の本社の中でも1,000人近くの人間が在宅勤務をユニークに使っている感じですね。

浜田:在宅するときの条件はあるんですか?

中山:一応、上長の承認ということなんです。だいぶカルチャーとしては定着してきたので、そこはずいぶん自由に使えるようになってきてはいると思います。

浜田:申請すれば?

中山:そうですね。よっぽどなにかある場合にはあれですけど。基本的に在宅はだいぶ自由にできます。それと今チャレンジしているのは……もうちょっといい名前がないかなと、うちのつくっている連中が頭が漢字になっているので「分断勤務」と言っているんですけど(笑)。

浜田:「分断勤務」!? 分断ってあの分断?(笑)。

中山:「分断勤務」とは、例えば午前中は12時まで働きに来て、昼間は介護で親の面倒を見に病院に行く。その後、在宅勤務をするなど。在宅との組み合わせが多いんですけど、その合間に分断する。「勤務時間を分断してもいいよ」という仕組みを、この10月から始めています。

あと、転居を回避する「転居しないでもいいよ」みたいな制度を始めています。これは2年間に限り、もちろん全国型の総合職みたいなキャリアパスだけど「この2年間だけはどうしても子どもの受験があるから」「どうしても親の介護があるので」を認めて、今スタートしています。

たくさん難しいことがあって日々人事担当は悩んでますけど、そういうことをいくつかやり始めています。

課題は、フェアネスとアウトプットをどう評価するか

浜田:「リモート」「分断勤務」など、ある意味、自分で働き方を選択できたりデザインできるということだと思うんですけども。

その場合にすごく大変なのは、私もマネージメントなのでわかるんですけど、マネージメント像や管理職の方の役割は非常に大事ですよね。それから、みんなでコミュニケーションをとることや、長時間労働にならないのかなど、非常に難しいなと自分自身でも思います。

そのあたりで工夫していらっしゃったり、逆に難しいと思っていらっしゃることはありますか?

中山:先ほど申し上げた、分断や転居回避などは、今年になって始めたばかりなのです。やり始めた瞬間に難しいなというのは感じているんですけど、まだ類型化はきちんとできてないと思います。ただ結局、周りから見て、その人のアウトプットがどうか、その人がフェアにやっているか、というところじゃないですか。

浜田:はい。

中山:やはり、チームをまとめる上でフェアネスとアウトプットをどう評価できているかは一番のポイントです。やっている本人たちはそれに甘えないで、チームのためにコントリビュートする感覚は常に持ってないといけない。チームワークの中でそれをやるというのは、やはりいろんな課題が出てきますよね。それでもチャレンジする価値があることだと思っているんですけど。

浜田:「分断勤務」を始められたばかりということなんですけども。リモートを少しやっていらっしゃって「ここが会社の中で変わったな」「いい感じでまわっている」「結果が出てきたな」など感じられていることはありますか?

中山:いい結果が出てきたということは……実は私も在宅しているんですけど。

浜田:そうなんですか? 週に何日ぐらいなんですか?

中山:あまり偉そうなことは言えないんですけど、2週に1回ぐらいなんです。

浜田:社長が来ないとみんなけっこうスッキリしますよね。

中山:気が楽で、僕の場合はかえって喜ばれるんですけど。やり始めて良かったなというのは……先ほど在宅勤務が定着してきたと言ったんですけど、最初の頃は在宅勤務に対してみんな疑いの目で見ているわけなんですよね。フェアネスってさっき申し上げましたけど。

浜田:「仕事をちゃんとやっているのか」みたいな?

中山:「やっているのか?」「なにか別の理由じゃないの?」「あいつはアウトプットを出しているの?」みたいな。アウトプットとフェアネスに関してはどちらかというとネガティブから始まるじゃないですか。それが繰り返しながら定着してくる。そこまでには多少時間がかかりますよね。

上の人間もやる、課長もやる、部長もやるという感覚ができてこないと、なかなか定着は難しい。ようやく少しずつという感じですね。