ハトは羽でコミュニケーションをとる?

ステファン・チン氏:森林に5分もいると、鳥たちのさえずりが聞こえますよね。このように、動物が口や喉を使って発している、話をしているような音や咆哮、ニャーニャー言っているような音は、動物が行っている口頭意思伝達方法です。

「この素敵な羽を見てくれ!」から「逃げろ!」に至るまで鳥のさえずりに関する記録は、何トンにもなるぐらい報告されています。

ところが約150年ほど前にチャールズ・ダーウィンが立てた仮説では、鳥は羽を羽ばたかせるといった行動でもなんらかの意思伝達を行っているというのです。

科学者はこの説についての答えを探し研究を行ってきたのですが、今週、オーストラリア国立大学がダーウィンの説が有力だとの研究結果を発表する様子なのです。

オーストラリアのメインランドで過ごしてみると、タテガミバトの声が聞けるのですが、その音はくちばしからではなく、羽をぱたぱたする時に発せられています。笛音の翼を持ったハト、という愛称もうなずけるでしょう。通常の5倍速の翼、です。

2009年の記録によると、研究者はとても大きな発見をしたと言います。なんとほかの種類のハトもその笛音に反応するのだそうです。それを受けた過去に発表された論文の作者を含む生物学者たちは、羽ばたき音が本当に意思伝達に一役買っているのかどうかを調べ直そうとしています。

2009年の研究では、研究者はタテガミバトの翼の羽を測定し、一風変わった薄い羽を初列より8番目の羽にはっきりと発見したのだとか。

それぞれの研究における測定では、ハトは片方の羽を他の羽よりもより高く振るわせることで、2つの際立った音色を羽ばたきで造り出していることが示されています。また、鳥が急いで飛び立つ時はより速く羽を動かすので、音はより大きくなります。

研究者たちは、科学の名の下に、その一風変わった羽を何匹かの鳥から注意深く取り除きました。羽はまた生えてくるから、まあ、大丈夫なのでしょう。

その細い羽をなくすと、羽が出す高い音はしなくなりましたし、風洞実験の結果、羽がふるわせられている時に確かに音を作り出していることが判明したのです。

研究者たちは、その特別な羽のないタテガミバトとそうでないタテガミバトが飛ぶ際に出す音に、ほかのタテガミバトがどんな反応をするかを、録音したそれぞれの音を用いて比べたのですが、明らかに反応の違いが見られました。

ほかのタテガミバトが高い音を耳にした時はなんらかの警告音が鳴り響いているかのように早急にその場を飛び立ったのに対し、その警告音がしなかった方の音を耳にした時は、固まり合っているだけか、慌てずに飛び立っただけだったのです。

この結果によって、鳥が出す音はほかの鳥に対して意思表示を示すために故意につくられていて、それに対してほかの鳥が反応しているということがわかりました。すなわち、ダーウィンによる、言葉を用いない意思伝達が鳥たちにはある、という説は正しかったのだということをはっきりと裏付けたのです。

研究者たちによると、このことは進化論的にも合点がいくのだとか。ハトたちは身近に何か危険がせまっている時に、ほかの仲間たちに音によってそのことを知らせ、より多くの仲間を危険から逃れさせ、命をながらえさせることができるのですから。科学者がやって来て、肝となる羽を切ってしまわない限り。

寝不足に関する科学

鳥に関してはもう十分でしょう。人について話しましょう。あなたがもし学生だったり、親だったり、とにかく誰かだとしたら、寝不足を経験したことはあるのではないでしょうか。なんだか意識が霧の中を泳いでいるようなだるい感覚で、なにかを決めたり、なにかをしたりすることがとてつもなく重荷に思えるような……。

今週、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者たちは背後にあるこの感覚を生物学を掘り下げて考察しました。あなたが疲れている時、神経は眠りにつこうとしますよね。

『Nature Medicine』誌に掲載された記事によると、神経科学者班は電極の入った12人の患者の脳活動の観察を行ったそうです。いぶかしく思われる前に言っておくと、それらの患者たちは元々てんかん治療のために病院にいる人たちです。

てんかんは広範囲に渡る脳の異常活動で、突発的な発作を引き起こす病気です。てんかんの原因や兆しには様々な要因が挙げられるとされているのですが、それはつまりは治療法もさまざまだということにほかなりません。

時として、脳のどの部分が影響を及ぼしているのか特定できないこともあるので、医者は電極を移植し、電気信号を患者の脳に走らせるのです。そうすれば、発作が起った時に脳の手術が有効か、なにかを取り除くことが瘢痕組織のように発作を引き起こす原因にならないかどうかなどを決める手だてになるのです。

医師が管理された病院で発作を意図的に起こそうとする際に、カギとなるのは睡眠不足です。脳の電気活動は眠っている時と起きている時では異なっています。眠っている時と起きている時の電気活動の循環の乱れが発作に影響を及ぼすのです。

この観察は研究者にとって大いに役立つものでした。研究班には脳信号を観察されている人々がいて、無理矢理起きている時に神経になにが起こっているかを見られるのですから。

また、無理矢理起きていない時の側頭葉での脳活動を研究者たちが観察していると、患者たちの脳が与えられた情報をできる限り速く仕分けているということもわかっています。

かいつまんで言うと、側頭葉は感覚的な情報を意識的な情報へと転換します。

基本的に、脳が得た情報がどのように伝達されるのかというと、例えば私が上に茶色い軸のついた丸っぽい赤い何かを見たとしたら、側頭葉がそれがリンゴだと認知させてくれる、といった具合です。

科学者は、患者が遅くまで起きていた時には、側頭葉にある神経はゆっくりと働き、微弱信号を伝達していることを突き止めました。

研究者たちが脳波の測定も行ったところ、数ある神経が繰り返し送っている伝達と脳波の動きが脳のある部分では遅くなっていることがわかったのです。ということは、眠りと密接な関係にあるということではないでしょうか。

私たちは睡眠不足が自分の行動にどんな影響を及ぼすのかということは百も承知です。しかし、生物学的になにが起こっているのかは初めて知ったのではないでしょうか。

研究者たちは基本的な眠りが神経に及ぼす影響についての言及を行っているのですが、神経は酔っぱらっている時と似通った状態になるので、運転などに深刻な影響を及ぼすのだとか。予想だにしていない、道路を歩いている歩行者を認知し、それに反応する、といったことに脳は対応しきれないのです。

というわけで、次にNetflixを見るときは、少なくとも午前3時までにしておいたほうがよさそうですよ。