『多動力』は世に出したくなかった

佐藤詳悟氏(以下、佐藤):本を出してお客さんに届くじゃないですか。そのときの快感ってないですか? その瞬間の。

箕輪厚介氏(以下、箕輪):いや、もうさすがにないですね。どっちかといったら……。

佐藤:最初はあった?

箕輪:いや、本当にここだけの話、『多動力』も世に出したくないと思っていたんです。

佐藤:へえ。

箕輪:僕の中では、もう恥ずかしすぎる。クオリティが低すぎるし、「箕輪がこれ出したって思われたくない!」「恥ずかしい、恥ずかしい!」「できるだけ拡散もしたくない」と思って。でも売れたので「えっ、売れるんだ?」みたいな。

(会場笑)

「ああ、よかった」という安堵のほうですね。

佐藤:へえ、それはなんでそう思うんですか? なんでそう思うというか……。

箕輪:正直まったく詰めきれてなくて、もう恥ずかしくてしょうがないという。「こんなの出すんだ」と思われたくないというのはありました。それは『多動力』に限らず毎回。毎回が不安。

もう延々にずっとそれが加速しています。でも忙しいから、もう満足値の2パーセントぐらいで出しています。だから売れてうれしいというよりも、「よかったな」「バレなかったな」という。いや、本気で作っているんですが、不安ですよ。

佐藤:(笑)。

本がヒットしても「よかった! 響いた~!」とは思わない

佐藤:でも、あれを読んで人生が変わる人もいるわけじゃないですか。

箕輪:めっちゃいる。もうだから震えますよ。

佐藤:それに対してはどう思うんですか?

箕輪:「マジか?」と。

佐藤:そっち?

箕輪:いや、正直こんなことを言ったら大失礼ですけど、あれで会社……ダメだな。こんなことを言っちゃ(笑)。

(会場笑)

(『多動力』を読んだ人が)「会社を辞める」とかってすごく言われるんですけど、でも、そういう人は、本を読もうが読むまいが、なんでも会社を辞めると思うんですよ。そのきっかけを探していただけで……。

佐藤:では、そのきっかけを作っていることに対してはうれしいんですか?

箕輪:うれしくもうれしくなくもなくて。単純にエッジが立っているからそうだろうなとは思うけど。う~ん、でも「会社を辞める覚悟が浅ければ、次も成功しないだろうな」とは思う。

佐藤:ああ……それは深いですね。それは深い。

箕輪:最低ですけどね(笑)。せっかく本を読んで会社を飛び出た読者がいるんだとしたら。でも要は本当に歯を食いしばって……。結局、ホリエモンだってなんだって歯を食いしばってがんばっている部分はあるわけで。

だから、編集者がこれを言っちゃ終わりだけど、「よかった! 響いた~!」とは思わないですね。そんなにピュアじゃないですね。

「本を読んで感動しました!」は本と著者へのもの

佐藤:でも、届いていることに対してはうれしいですよね?

箕輪:う~ん……それがそんなにうれしいかな。そんなにうれしくもないんですよねえ。わかんない。本当にそんなうれしくないですね。なんでだろう? いや、うれしいんですけど、本が出るまで頑張って、売るのも頑張って、あとの感想は僕へのものではなく、本と著者へのものです。なので、感想を分析することはあっても、僕個人の喜びにはならないですね。

佐藤:へえ。

箕輪:「読みました。人生が変わりました」と言われても、本にとって、著者にとって誇らしいことだとは思うけど、僕個人の心としてはなんにも思わないです。感想を冷静に分析することはしますけど。

佐藤:それがいいんですかね。その感じが。

箕輪:純粋にうれしいとかはない。

佐藤:僕も一つひとつにうれしいと思えない感じになっちゃっていますもんね。

箕輪:うん。なんか……これ、どこで放送するんでしたっけ?

佐藤:これは、ちょっとわからないですね(笑)。

(会場笑)

佐藤:生配信はしてないです。

箕輪:それで言うと、『多動力』を読んでもない女の子が、本が売れていることを「すごいね」と言ってくれるほうが、僕個人はうれしいです。

(会場笑)

身を切るような努力をしないと、キャラは成立しない

佐藤:これじゃあ、結局、セルフプロデュースはどうしたらいいんでしたっけ?

(会場笑)

自分のやりたいことを決める。やりたいことというか、自分の本質……。

箕輪:もうまとめますね。それでいうと「なんのためにセルフプロデュースするか」がないと、そもそもする必要がないと思うしできないと思うんです。

僕の場合は、編集者の仕事が今後、映画監督のように個人の名前で仕事が来る職業になっていくと明確にイメージできたんです。そこから逆算すると、セルフプロデュースが必要だとなった。だからまず、セルフプロデュースがなんのために必要かを定義する必要がある。

じゃあそれをどうするかといったら、自分を分析して「この一点のテーマで押せば、名が立つ」というのがどこか見極める。僕の場合、最初は1年目にして堀江貴文、見城徹を口説いた。その一点だなと思ったから、それを短期集中させてインタビューも強引に同日で発信してガッといってそこでバズった。

だから、その2点ですね。自分のために……セルフプロデュースはなんのために必要か考える。必要だとした場合、自分はなんのキャラクターだったら世の中において「◯◯の〇〇さんですね」となるか。それを強引に見極めてやりきる。

佐藤:その2つさえ決まったら、手段は今いっぱいありますもんね。

箕輪:手段、めっちゃありますね。というか、この2つが決まってできなかったら、単純に素材が足りないだけなので自己研鑽を積むしかないですね。

佐藤:しかも今ね、起業とかいろんな今までなかった手段も無数にあると思うので。

箕輪:ある。でも、やっぱりここに来てくださっている方は優秀だから必要ないと思うんですけど。1つあるのは、自分の身を切るようなことをしなければそんなキャラクターにはなれないということですね。

要は、ケーキが好きだからケーキで一点突破しようとしても、ケーキ女子で一点突破しようとしても無理。それは、本当に超カワイイ子がケーキが好きすぎてブクブクに太って、もう糖尿病で死にそうみたいならまだしも、生半可なことを言ってもキャラなんてつかないんです。

やっぱり僕もなんやかんや言って、1年目で見城徹と堀江貴文に行くって、僕はリスクだと思ってなくて無邪気にやってますけど。周りからはすごく止められたんですよ。「本を作ったことなくて、見城さんの本を作りたいなんていって、そこでミスしたらもう一生編集者として生きづらくなるよ」と散々言われたけど、「そうしたら別にリクナビ登録してテキトーな会社行きゃいいや」と思っていたぐらい、もうリスクなんて考えずにガーッ行きました。

そこで成功したから、それがあるわけで。要は、そこで身を切ってまでなにかを成し遂げないといけないというのは前提ですね。

「やめること」を決めると、やりたいことが明白になる

佐藤:さっきの長期スケジュールもけっこう冒険できるんですよ。「ここでやらなきゃいけない」と自分で決められるので、冒険ができる。そういうことが大事ですよね。

箕輪:うん、大事。僕も1年のあれとかは作っていますし。今日の行きの電車でも書きましたよ、僕。やっぱりね、書くって大事ですよ。3大目標。なんだっけな。僕、家を追い出されてて。

(会場笑)

佐藤:今ですか?

箕輪:いやなんかね、週末にやっと帰ったんですけど。

佐藤:それ、さっきお母さんのメッセージがそれなんですか?

箕輪:そう。

佐藤:ダメですよ。浮気は。

箕輪:まったくしてないのに、誤解されてるんです。全家族に。今年後半の目標は、やめる。イケハヤのなんかに書いてあったんです。なんかやめることって大事だなと。増えすぎているんですよ。だから、やめるとやりたいことが明白になる。先送りしないできちんと終わらせる。

佐藤:(笑)。

箕輪:でもやっぱりね、そういう思考を整理するのは大事ですね。

佐藤:書くのが大事ですね。

箕輪:そう、後悔しないですよ。目標を見極めて、やりきった後の失敗なら。