純粋な才能と、プロデュースを兼ねた才能

佐藤詳悟氏(以下、佐藤):だからなんか自分、セルフプロデュース……。僕の場合は、僕を自分でプロデュースするより、人をプロデュースというか、いろいろお手伝いさせてもらうことが逆にセルフプロデュースだなと思っているんですけど。

そういう意味で、ご本人が俯瞰して自分のことを見ているのはすごく大事で。そのときに、その人が世の中のことをどう見てるかもけっこう大事だなと思っているんです。

箕輪厚介氏(以下、箕輪):大事ですね。

佐藤:自分のことを見たところで、今の時代と一致しないこともあるじゃないですか。

箕輪:ある。

佐藤:だから、世の中と自分を見ないといけないから、自分をプロデュースしているときは難しいんじゃないかと。

箕輪:そうですね。人間の才能には2つあると思って。ただただ純粋なそこにある才能と、プロデューサーを兼ねた才能。

本の話でいうと、編集者が必要な書き手と、編集者が必要じゃない書き手がいます。イケダハヤトさんやはあちゅうさんは、プロデュースという視点で言うと編集者はもはや必要ないんですよ。編集者は自分なんですよ。ただ、それこそ……。

佐藤:それ、なんなんですか? その能力って。それはやっぱり俯瞰で見れてるか見れてないかとか。

箕輪:どっちが優れている・優れていないとは違って、やっぱりマーケットにおいての自分を……要は彼らはブロガーなので、どうやったらアクセスが上がるかとか。

佐藤:常に人と対峙している。

箕輪:もう、だから僕なんかよりも編集者としても優れていると思います。

佐藤:日々やっているんですもんね。

箕輪:日々やっている。世の人のインサイトをわかってる人はいないですよね。紙の編集者としても。

佐藤:はあちゅうさんね。

箕輪:はあちゅうさん。なんか……いいですか。最後の1本。

(会場笑)

佐藤:飲み過ぎじゃないですか?

イケダハヤト氏に会い「なんだこの人!?」

箕輪:はあちゅうさんやイケハヤさんをバカにする人は多いし、僕も最初は、出会う前は……ここだけの話ですけど。

佐藤:大丈夫ですよ。編集するので。

箕輪:イケハヤさんとか、ちょっと斜めから見ていて……。

(会場笑)

佐藤:それはどういうことですか?(笑)

箕輪:「なんか宇宙人みたいだな」と思って。僕、なんかいろんなインタビューで……。

佐藤:それどういうことですか? 外見がってこと?(笑)。

箕輪:外見が。

佐藤:外見が(笑)。

箕輪:いろんなインタビューで僕、著者に会う前に死ぬほど調べておくと書いてあるんですけど、イケハヤさんに会う時は、高知行きの飛行機でブログを初めて見たんです。

佐藤:アハハ(笑)。

箕輪:要は、なんで会いに行ったかというと、当時は幻冬舎に転職したばっかりだったんです。あまりにも幻冬舎の空気が殺伐としていて居心地が悪すぎて「出張できねえかな」と思って。そうしたら「高知でいろいろ騒いでる人いたな」と思って。

(一同笑)

それで検索して、メッセンジャーを飛ばして、「来てくれるならいいですよ」と言われて、「行きます」と言って。ちゃんとブログを読んだのは行きの飛行機が初めてでした。

僕はやっぱり生意気で、斜に構えて見るので「なんだこいつ?」みたいな感じだったんです。でも、会って20分ぐらいで印象が変わりましたね。「この人、本物だな」みたいな。

だから、タワマンの……「タワマンってバカだ」みたいなことで大炎上していた時だったので、イケハヤさんにその話題を振ったんですよ。行きの迎えに来てくれた車で。そうしたら「ああ、やっぱりですか」みたいな。見てもいないみたいな。

「あんなの川に大きな岩を投げたらバーンってなるし、小さい小石を投げたらシュッとなるようなもので、自然現象ですね」みたいな。「なんだこの人!?」と思って(笑)。

佐藤:(笑)。

「イケハヤさんは壁打ちの数が多い」

箕輪:なんかもう、イケハヤさんが達人に見えて(笑)。そうしたら自宅案内されたら、正直、いろんな2ちゃんねるのやつが書き込んでるように、「本当にお前、そこ住んでるのかよ?」と思ったんだけど、本当に雲の上みたいなところに住んでいたんですね。

佐藤:へえ。

箕輪:超いいところで。本当に雲を見下ろすみたいなところでした。「バーベキューしましょう」と言われて、バーベキューして。オクラがマジうまくて。

(会場笑)

佐藤:オクラ?

箕輪:なんかもう……。イケハヤさんが謎の、アフリカの人が使っているような打楽器を叩き始めて(笑)。

(会場笑)

なんか宇宙人。UFOでも呼ぶのかってこう、ポンポンポン。

佐藤:宇宙……(笑)。

箕輪:要は「この人って本当の才能だな」と思ったんです。もう俗世間のイケハヤがどうのとか、マジで気にしてないんですよ。娘も楽しそうに、もう庭といっても校庭ぐらいの大きさのところで遊んでてて、「あ、この人かっこいいな」と俺は思ったんです。

文章も、一緒にやったからわかるんですけど、僕が相対したあらゆる天才的な書き手の中でもトップ・オブ・トップぐらい文章が上手。編集も上手。しかも、「3ページで何十秒かかったので、200ページだと何分で何時間かかります」みたいな報告もしてくる。もうこの人はだから……。

でも冷静に考えたら、中学生の時から異常に文章を書いていて、誰よりもたぶん文章を書いて、トライ&エラーして、壁打ちの数は多いんですよ。「そりゃ、いくところまでいくわ」と思ったんです。

だから、なんの話か忘れましたけど。やっぱりね、あのはあちゅうさんやイケハヤさんなど、結局は世に出る人に偽物はいないし、偽者はどこかで淘汰されますよね。

イケハヤ氏とはあちゅう氏のセルフプロデュースのすごさ

佐藤:そのお2人って、全部自分でやっているんですか?

箕輪:基本セルフプロデュースだから、誰よりもマーケットを見てますよね。

佐藤:そっか、お客さんと直接対峙しているということですもんね。

箕輪:うん。だから編集者なんて……。

佐藤:お客さんにプロデュースしてもらっているというか。

箕輪:そう。だってはあちゅうさん、すごいですよ。インスタで5個ぐらいアカウントを持っているんです。要は別アカウントでずっとトライ&エラーをしているらしいですよ。こういう写真をアップしたら、フォロワーがこの速度で増えるとか。

佐藤:ええっ!

箕輪:だから、あの人たちは、外に言ってないことを延々、もうずっとやってるような。本当にすごい。

佐藤:でも、ネットじゃないところでやってほしいですけどね。

箕輪:リアルで?

佐藤:テレビとか。

箕輪:意外とテレビでやるとね、つまらないんですよね。

佐藤:ダメなんだ。そこはなんなんですかねえ。ネットと……。

箕輪:しゃべりとまた技術が違うんですかね。

強さの秘密は「自分がブレない」

佐藤:イケダさんはお会いして「本物だ」と思った瞬間は、その最初の質問なんですか?

箕輪:まあね、だいたいわかりますよ。

佐藤:それってなんなんですかね。言葉で……。

箕輪:いや、わかりません? 佐藤さんは絶対にわかるじゃないですか。

佐藤:そうなんですけど、あれは……。

箕輪:返答がまったく同じでも、本物かどうかわからないけど、会った瞬間、なんか何回か話していたらわかります。

佐藤:その「なんか」ってなんなんですかね?

箕輪:やっぱり「自分」があることじゃないですか。要はこっちがヘラヘラとなんか……「イケダさん、炎上してますよ」みたいに。

でも、こちらが完全にナメた感じで言っててもまったく動かないし、別にそこで感情的にならないのが正解なわけでもないけど。感情的になって「お前、失礼だな」が正解かもしれないけど、どちらにしても自分がブレてないですよね。「僕はこれなんで」みたいな。結局は自分を持っているということですよね。

佐藤:イケダさんとかそうなんだ。

箕輪:イケハヤさんはそうですね。もう本当にすごい。

方法論として売れるものを作ることはある

佐藤:今、何冊ぐらい本を出されているんですか? 幻冬舎に来てから。

箕輪:今は、本当にもう把握できなくなっちゃってパンクしてます。リアルにパンクしてます。シューッて。

佐藤:(笑)。著者の方でいうと何人ぐらいと今、新しいもので動いているんですか? 20人とかいるんですか?

箕輪:ぜんぜんいます。だいたい無視してますけどね。

佐藤:あ、来るんですね。

箕輪:もう延々に来るから、全部……。

佐藤:え、もうそのへんの人たちは全員、会った瞬間?

箕輪:ああ、もう最近、だから……ダメです。いろいろ紹介でやって、僕がちょっと前、まだ時間があった時に「いいっすよ、いいっすよ」と言っていたけど今止まっている段階なので。今はもうひたすら終わらせて、フリーになることを目指しています。だから新規は受けないようにしています。

佐藤:その瞬間はさっきと同じですか。自分を持っているかどうか。

箕輪:いや、もう適当に受けちゃった案件がいっぱいあるので、今苦労してますけど。

佐藤:(笑)。

箕輪:そういうときは幸せですよね。自分がいいと思う人とやれれば。今はもうそんなことないことをいっぱい抱えちゃっているんです。サラリーマンですから、「クソみたいな企画を作れ」と言われることもある……クソみたいと言ったのは嘘ですけど(笑)。

佐藤:(笑)。

箕輪:いや。でも……いや、嘘ですよ(笑)。

佐藤:いや、言ってましたね。完全に(笑)。

箕輪:でもね、そこは思考の切替えです。自分が熱狂してなくても、方法論としてその企画が売れるものを作りたいと思い込むことはやってますけど。

まあ、さすがにそうやって自分を騙し騙しやるのも、延々にやるのももう……。もうちょっとで32歳になるんですけど、もうこれぐらいでいいだろうと。あとは自分が本当に好きなことをやりたいと思うので、まあ、できるだけ仕事を捨てようとしています。

「佐藤さん、南国好きですか?」

箕輪:僕、無人島を……佐藤さん、なにかやってくださいよ。

佐藤:無人島?

箕輪:南国好きですか?

佐藤:南国? あまり好きじゃないですけど。

(会場笑)

箕輪:好きじゃないんだ?

佐藤:虫とか嫌いなので。

箕輪:じゃあダメだ(笑)。

佐藤:だから、イケダさんにも会えないかもしれないですね。

箕輪:イケハヤさん家、ダメですね。虫がいますからね。ずっと熱心にスズメバチを殺すやつを作ってますね(笑)。

佐藤:うわっ、もう絶対嫌だ。無理だ! 

(会場笑)

それはもう無理だな。

「会社を辞めて、無人島へ行く」

箕輪:無人島を僕がプロデュースしたいです。

佐藤:無人島あるんですか、今?

箕輪:今、箕輪編集室に。僕のやっているサロンに、無人島を持っている人が参加してくれてて。忙しくてなにもできていないけど、余白ができたらそっちに全力投下したいですね。番組とかで使ってほしいんですよ。

佐藤:いいですね。

箕輪:なんか無人……あるじゃないですか。「バチェラー」みたいな。

佐藤:はいはい。もう辞めて、無人島へ行くんですか?

箕輪:無人島へ行く。

佐藤:辞めて?

箕輪:うん。

佐藤:会社を辞めて?

箕輪:会社を辞めて。

佐藤:(笑)。

箕輪:そんなサバイバルみたいなことじゃないですよ。逆に、もう奇跡みたいなパラダイスを作って。それが今の夢です(笑)。

佐藤:怖いです。僕はちょっと、無人島は嫌です。すみません。

箕輪:マネジメントをしてくださいよ。「無人島行きたい、1年後」という僕の人生プランを。

(会場笑)

編集者は、個人の名前で仕事をするようになる

佐藤:もう1時間を経ちまして。

箕輪:おっ、あと何時間ですか?

佐藤:あともう30分ぐらいですね。なにかあれば質問を受けるみたいなコーナーなんですけど。でも、「セルフプロデュースとはなんぞや」をちょっと最後まとめてもらっていいですかね。ちょっと酔っ払っちゃって(笑)。

(会場笑)

箕輪:セルフプロデュースとは……まあ、なんのためのセルフプロデュースかをまず最初に強引に定義して、みなさんが普通の……。

佐藤:でも、決めることは大事ですよね。僕、最近それすごく思っているんです。決めないとなにも始まらない。

箕輪:佐藤さん、意外と決めないですよね(笑)。

佐藤:いや、決めますよ。僕は最近(笑)。決めないかな?

箕輪:僕も決めないんですけど。決めることが大事?

佐藤:決めることが大事だなと最近思ってて。結局は決めないとなにも始まらないなという。……大丈夫ですか?

箕輪:Tシャツが、これがすごく延々に、ワッペンが取れ続ける。まあ、いいいや(笑)。

佐藤:ちゃんとしてもらっていいですか?(笑)。

(会場笑)

箕輪:なんだっけな。まず、なんのためにセルフプロデュースが必要かというのが大事です。僕はそれは明確に定義してました。要は、その時はそんなに偉そうに思ってないですけど、1年後に目標を書いた紙を見ると「すげえ意識してるな」と思って。

要は「編集者というのは、個人の名前で仕事をするようになる」と自分のなにかに書いてあるんですよ。「名前で仕事をするには、自分の名を立たせなきゃいけない。『双葉社の〇〇』『幻冬舎の〇〇』ではなく、『箕輪だからやってほしい』という案件しか受けないようになる」みたいなことを書いていたんです。

であれば、自分の名を立たせないといけない。だから、メディアにも出ていかなきゃいけないというのがあったんですよ。もう突破口はなんでもよくて、それが僕にとって最初は「大物を口説く」だったし、今は「SNS時代にヒットする〇〇」に変わるけど。

そんなものは求められているから言っているだけであって、僕としてはやっぱり「箕輪さんにお願いしたい」とならなきゃいけないという課題意識があって、そのための手段としてセルフプロデュースを使うんです。

「個人として仕事を頼まれる人」が生き残る

佐藤:有名になるというか、人に知られた先になにがあるとか決めていたんですか?

箕輪:まさに僕しかできない仕事を増やすこと。でも、そうなった結果、仕事が増えすぎて無人島に行きたくなっているのでなにが正解かよくわからない。

佐藤:ハハハ(笑)。根本的に、なんかその……。

箕輪:最初はでも、僕は危機感だと思います。このまま編集者をやってて生きていける気がしなかった。周りの編集者を見ても、冷静に考えてこいつら全員……。要は、畳職人のように生き残ることはあっても、「好きなことをやっているからお金がなくてもいい」みたいな感じで生き残ることはあっても、普通のビジネスパーソンとして生き残ることはないだろう編集者は、と思ったんですよ。出版のこの時代に。

「であればどういう人が生き残るんだろう?」と思った時に、個人として仕事を頼まれる人。二極化すると冷静に思ったんんです。「じゃあ個人として突き抜けなきゃ」と思った感じですね。

だから、危機感でしたね。どっちかといったら「そうなりたい」というよりも、「編集者として生きるならその道しかないな」みたいな。

佐藤:一番根本的に言うと、「斜めに社会を切っていきたい」というのはあるんですか? その本を……。

箕輪:う~ん、一番根本的にいうと、別になにもやりたくないですね。

佐藤:(笑)。

箕輪:マジで。佐藤さんが1億円くれるなら、もう。1億じゃ足りない。2〜3億くれるなら、俺は本当になにもしないです。いろんな成功者としゃべる。僕が違うのはそこですね。みんな何億あろうが仕事が好きだって言うんですけど、佐藤さんもたぶんそうだと思うんですけど、僕はまあ、もう明日辞めます。