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パナソニックと100BANCHが目指す“次の100年の価値”とは(全3記事)

スタートアップが得意で大企業が苦手な「クイック・アンド・ダーティー」 パナソニックがベンチャーとコラボした意味

「100年先の世界を豊かにするための実験区」として、渋谷に「100BANCH」がオープンしました。開設を記念して、10月6日にトークセッション「100年先につながる新しい価値を目指して、パナソニックが100BANCHをつくった理由」が開催されました。今回のパートでは、「パナソニックと100BANCHが目指す“次の100年の価値”とは」というテーマで、Cerevoの岩佐氏とパナソニックの村瀬氏が対談を行いました。

新しい価値をどう提供していくか

則武里恵氏(以下、則武):トークセッションに移らせていただきます。今日モデレーターを務めさせていただきますパナソニック株式会社 コーポレート戦略本部未来戦略室の則武です。

対談テーマは『次の100年に向けて新しいモノを生み出すチカラ』。100BANCHみたいな施設もそうなんですが、新しい価値をどう提供していくかが会社にとっても大事なテーマで、そういう力をどう高めていくかというのが企業の力だと思いますので、こういったテーマでお2人にお話をうかがっていきたいと思います。

今日登壇していただいているお2人、岩佐さんと村瀬さんから一言ずつ自己紹介をいただけますでしょうか。まず岩佐さんからお願いいたします。

岩佐琢磨氏(以下、岩佐):はじめまして、株式会社Cerevoという会社をやっております。代表の岩佐と申します。

私はもともと2007年の末くらいまでパナソニックの社員として働いていまして、2008年から株式会社Cerevoという、今の言葉でいうIoTに特化した小さなメーカーを秋葉原で始めました。今9年目で、もうすぐ10年になる事業をやっております。

ネットにつながる家電ばっかりやっているので、なかなか今風なものをいろいろ作れてると思います。有名なものだと、実はぜんぜんネットと関係ない『DOMINATOR』(注:アニメ『サイコパス』に登場する武器)を作っている会社と言うと、アニメが好きな人は「あぁ、あれか!」と思っていただけるかなと思います。今日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

パナソニックにとっての100BANCHの意義は

則武:では村瀬さん、お願いいたします。

村瀬恭通氏(以下、村瀬):みなさん、こんばんは。パナソニックのコーポレート戦略本部で経営企画の担当をやってます村瀬でございます。

実はちょっと意外かもしれないんですけど、この100BANCHを担当しているのが我々の経営企画部ということで、のちほどお話の中ではなぜパナソニックがこの100BANCHを始めたかと、次の価値も含めてお話したいと思いますので、今日はよろしくお願いします。

則武:村瀬さんは私の上司であります。最初のテーマにいきたいと思います。『パナソニックにとっての100BANCHの意義』。こういうオープンイノベーションの施設とかを作る意義にリンクしてくるかなと思います。このあたりのお2人の意見を聞かせていただきたいです。村瀬さん、お願いします。

村瀬:たぶん同じことを感じられると思うんですけど、実は危機感からこれが来てます。我々の会社というのはご存知のようにハードオリエンテッドな会社で、工業化した会社でございまして。大量に同じものを作っていくことで今までやっていました。

この100年はそれでやってこれたんですけども、次の100年は本当に工業化されたその社会だけでやっていけるのか。どちらかと言うと、工業化されるともちろん不良品を出さないという、「過度な」というとちょっと語弊がありますけど、完璧主義でやってまいりました。

先ほど(セッションで)ちょっとアジャイルの話も出てきましたけども、次の100年は本当に我々の価値観だけでやっていけるのか、別の可能性を探る意味で、この100BANCHというのは我々にとって非常に有意義になると私は思っています。

則武:ありがとうございます。

コラボレーションすることの可能性と意義

則武:岩佐さんは、うちは大変お世話になっているんですけど、今のお立場で企業のオープンイノベーションに関わられることが多いでしょうか?

岩佐:けっこう多いですね。もちろんパナソニックさんに限った話ではなくて、すべての大企業さんがそうだと思うんですけれども。人数が増えて組織化されて強いブランドをすでに持っちゃった会社ってどうしても保守的、防御的というか。

イノベーションに対してちょっと怖いなと思うことが多くなると思うので、そこをうちと組んで、「もうちょっとこんなことしましょうよ」というような事例は今すごく多いですね。

則武:なるほど、なるほど。ちょっと先に次の質問に行っちゃおうかな(笑)。『コラボレーションの可能性』、ここがパナソニックにとってのコラボレーションオフィスという位置付けであること。それはスタートアップに限らず、いろんな人たちがここに集まって、次の未来を作っていきたいという拠点であるところから、コラボレーションがどういう可能性があるのか、おうかがいしたいです。

コラボレーションの意味について、岩佐さんに触れていただいたんですけど、村瀬さんはどう思われますか?

村瀬:いろんなコラボレーションがあると思うんですよ。例えば先ほど前半で見ていただいた立ち上げなんですが10ヶ月と約1年。7月7日にオープンしたんですけれども、最初の相談から約10ヶ月で立ち上げてるんですよ。

みなさんに想像してほしいんです。うちみたいに堅い会社で、よく10ヶ月でやったなと思いません? これがコラボレーションの世界なんですよ。我々1人ではできないんですよ。

もう1個の事例を申し上げると、これ言うてええのかどうか知らんけど。うち、TESLAに電池納めてるの知ってます? ご存知ですよね? TESLAですよ。イーロン・マスクとやってるんですよ。イーロン・マスクとやるとできちゃうんですよ。

ギガファクトリーという電池のものすごい大きな工場を作ってるんですが、それも電池工場も1年足らずで立ち上げて、もう量産が始まってると。

それがコラボレーションの力です。今の時代、1人で自前で全部というのはなかなかない。いろんなかたちのコラボレーション、お金を出すコラボレーションもありますけど、それよりもやっぱり文化的に刺激を受けるコラボレーションが、一番私がここで望んでいるところです。

則武:なぜ外と組んだら早くできるのかは、どういったところに秘訣があるのか、私も実感してますけど(笑)。

パナソニック社員はかつて「金太郎飴」と言われてた

則武:村瀬さんはどう思ってるのかを聞きたいんですけど。

村瀬:長く同じ組織にいると、同じ文化で。昔、我々の会社は「金太郎飴」って言われたんですよ。どの社員も同じ顔をしていて。あ、顔は違いますね(笑)。

顔は違うんですけど言うことが同じで。これは均一的な同じ価値観で生きていくことが非常に良かった時代、さっき言った工業化された世代というのはそうなんですよ。

想像してください。うちで洗濯機とか作ってて、同じ洗濯機が何個も何個もできたらいいわけで、同じものができたらいいわけです。これは均一化した世界だった。そうすると、そういう文化しかできない。でも、余所と触れることによって、「あぁ、違う価値観もあるんだ」と気づく。そこだと思っています。

則武:ありがとうございます。岩佐さんにおうかがいしたいんですけど、岩佐さんはたぶん大企業の中もよくご存知だし、スタートアップの立場ももちろん今やっておられるのでよくわかるじゃないですか。

その可能性というか、どうしてコラボレーションしたほうがよりやりやすくなるのかというのをどうお考えでしょうか?

岩佐:スタートアップはクイック・アンド・ダーティー(注:「完璧じゃなくてもいいから、早く」の意味)がものすごく得意なんですよね。大企業さんは逆にものすごく苦手。これはパナソニックさんに限らず、たぶん三菱UFJ銀行さんに行っても同じことを考えてはると思うので、特定の会社というわけじゃなくて、みなさん苦手です。

「なんでだろう」とけっこう考えたことがあるんですけど、やっぱりスピードが評価される。それって実は大企業でも「いやいや、わしらスピード評価してるで」ってよく言わはるんですけれども。

スピードの加点が1時間早いと10点みたいなものとするじゃないですか。なにか問題が起きるとマイナス80点とか付けよるんですよ。要は問題とスピードのバランス。スピードをものすごく取れば一気に100点くらい追加されて、問題起こしたら50点マイナスくらいだったらもっとおもろいことできると思うんですけれども。

既存のブランドをお持ちの会社というのはやっぱり既存のブランドの信用、信頼、既存顧客様、そこから推察されるクオリティだったり、問題を起こさないだろう信用みたいなものがあるので。「わかってはいるけど、無理なんや。それ」というケースが多いんですね。

ベンチャー×大企業の化学反応

岩佐:なので僕はコラボレーションがおもしろいかなぁと。よく言ってるのは、先ほどTESLAの話がありましたけど。TESLAの車がオートパイロットでミスって事故が起きても、多少ニュースになるんですけれども、所詮あれくらいなわけですよ。

「いやいや、ベンチャーががんばってすごいスピードでものすごくイノベーティブなものを作ってるんだから、これくらいのことは起きてもしょうがないよね」という。たぶん、どこかに納得感があって。あれをたぶん日系の車メーカーでやったら、だいぶまずいことになりますよね。

ベンチャー、スタートアップにどんどんおもしろいことをやらせる、というとなんか上から目線ですけど。そこを助けてもらって、逆に立ち上がってきたものを大企業さんの仕組みの中にはめ込んでいくと、今度は堅い仕組みでしっかりやれるというので、これはけっこう今流行りのパターンだし、海外では当たり前のようにやられているので。

もっとこういう場所からこれが生まれていったらいいなと思う反面で、パナソニックさんがすごく弱いから大丈夫かなと思っているのがあって(笑)。その育った種をスパッと、ものすごくクイック・アンド・ダーティーで来た人たちをパッと買収して、中に引き込んでっていうのはほとんど事例ないですよね?

則武:どうですかね? 村瀬さん。

村瀬:コラボレーションのかたちはいろいろあるという、買収がないわけではないですよ。買ってるのは買ってますけど、スタートアップを買ってるかと言うと西海岸とかでは買ってるけど、確かに日本ではあまり買ってないですね。

則武:あまり聞かないですね。

村瀬:ただパナソニックになった瞬間にベンチャーの良さがなくなるところもあるので、そのへんはケースバイケースだと思います。

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