100BANCHオープン3ヶ月で思わぬ反響

松井創氏(以下、松井):7月7日にオープンして、3ヶ月通じて自分たちでも想像しないぐらいたくさんの来場と、それから一緒にコラボレーションのご相談をいただきました。主にこの3ヶ月どんなことやったかというシーンを紹介したいと思います。

7月7日にオープンをしまして、当日、各社の、企画3社の代表者がオープニング、鏡割りをしました。400人ぐらいの人たちに来ていただきました。うれしいことにたくさんのメディア取材をいただくことができて、オープンしてから毎日のように取材をしていただきました。

こけら落としイベントというか、これも自分たちでぜんぜん図ってなかったんですけど、MITメディアラボの所長の伊藤穰一さんの出版記念トークイベントが、初めてにしていきなり100人超えとなりました。

第2回目にあたるんですけども、100BANCHオープン後の初めての審査会とメンタリングと初のミートアップパーティというのを開きました。

アップサイクル形式のハッカソンを実施

松井:ここで行いたい活動の、ある意味プロトタイプなどを少しイベント化して実際にここで2日間かけて、こんな未来の働き方というか、モノの生まれ方、コトの作り方できないかなという実験を、「アップサイクル」というテーマを設けて2日間で実行しました。

みなさん聞いたことあるハッカソンというようなスタイルに近いです。パナソニックの社員もいれば、外部のデザイナーとかエンジニアとかクリエイターとか、それから大学生、100BANCHに入居している若手のプログラムメンバーたちが一堂に会して、その場で即席のチームを作って、街中に出て自分の課題、「なにかこの街ってこういうような課題がないかな?」って見つけながら。

実際に課題を解決する素材としては、古くてみんながもう忘れてしまったようなものを題材としてその課題を解決する、アップサイクル形式のハッカソンを実施しました。

(動画が流れる)

これは全部で約8チームぐらいができまして、8チームがそれぞれ自分たちのテーマと、なにをアップサイクルしてみたいかを決める。それを実際にプロトタイピングして、実際アイデアをかたちにして、最後はみんなの前で映像のプレゼンテーション、もしくは寸劇を開いて発表することをしました。

松井:ハッカソンはやってお終いなんですけれども、実際にここでコンテスト形式にしまして、優秀な作品を選んで、その作品をこの10月中旬から開かれる「DESIGNART」という展示会で、実際にさらにブラッシュアップして展示するという出口を作ってコンテストをしました。

(動画終わり)

多岐にわたる100BANCHのイベント

松井:ここの100BANCHのテーマは、コトづくりというのがテーマにして、毎日がこのような働き方とかモノの生まれ方ができたらいいなと思い、テスト的にこういう活動をしています。

そのほか、100BANCHでSDGsのテーマがかなり多く実施されていたりとか、あとは若者の働き方だったり、これからの未来の働き方みたいなことを実際に、これは4,000人の予約待ちのシェフがアメリカから来日するときのイベント会場になったりとか、「Global Goals Jam」という世界同時でやるアイデアソンとデザインワークショップの会場になったりもしています。

先ほど紹介したBANCHプログラムに参加している若手のメンバーたちがコラボレーションして、未来の食をテーマとした「EAT VISION」というトークイベントを開いて、メンターの岩田先生、東京大学の農業の岩田先生がホストになって、食をテーマとした5チームが共催でイベントをしたり、試食会をしたりもしています。

このような日常が約3ヶ月、もう毎日のようにイベントをし、ここでたくさんの人のネットワークとコラボレーションが生まれているような場になっています。

ここからは則武さんと一緒に、100BANCHを作って、これからどうしていきたいか、目指すものというのを4つのキーワードで紹介していきたいと思います。まず1つ目。「つくる人をつくる」。則武さん。

パナはモノをつくる前に「人をつくる」

則武:はい。「つくる人をつくる」ということで、これはパナソニックの考え方の1つに、すごく昔に、「松下電器はなにをする会社ですか?」というのに対して「人をつくる会社です」と。ものをつくる前に人をつくる会社です。「ものをつくる前に人をつくる会社です」と答えていました。

これからの時代、人というのがもっともっと大事になってくるんじゃないかなという気持ちがしています。それは本当に正解がない時代、たくさんの課題があって、それらが複雑に絡み合ってる時代に、どういうところに自分の向き合う課題を設定して、どうそれを解決していくかというところが、一人ひとりの力というのが今までよりももっともっと大事になってくるんじゃないかなと思っています。

そういうところに挑戦できる場があることで、そういう人たちがもっと増えていくと思いますし、そのスキルも上がっていくんじゃないかなというところで、この実験区はつくる人をつくる場として機能しているというのがあるんじゃないかと思います。

Willから始まり、共創と化学反応が起こる

松井:次に「WILLと化学反応」。

則武:未来はどこから生まれてくるのか、どうやって作り上げていくのかということを考えたときに、すべては野心ある個人のWILL、意思から始まると思うんですね。

それも、さっきの課題の話も同じなんですけど、本当にテクノロジーも進化して、テクノロジーをどう使うかとか、そういうことも良い使い方もあれば悪い使い方もあると思うんですね。

どういう未来を作りたくてどういう方向に進むんだというその個人意思が、そのWILL同士が交わって化学反応が起こったところで、もっと良い未来がつくられていくんじゃないかなというところで、そういう出会いといいますか、化学反応を起こせるような仕掛けというのをたくさんやっていると思っています。

松井:1つ事例を紹介します。さっきで出たふんどしのメンバー、このプロジェクトは最初2チーム2人で応募してきて。2人で入ってきて、孤独に活動してるなと。素っ裸でふんどし一丁で出入りしてたんですけど、

気づいたら今40人ぐらいの規模のチームになっていて。ふんどしビキニのお姉ちゃんみたいのが2階を歩いていたりするんですけど、これがまさにWillから始まって、共創が始まって化学反応が起こっている例だし、先ほどの食のテーマもまさにそうかなと思います。

「働き方の実験」で新しい仲間ができた

松井:次が「働き方の実験」。

則武:これはいろんな働き方の型、未来の働き方のかたちというのが創造されていると思うんですね。

例えば私と松井さんは、私はパナソニックであり、松井さんはロフトワークの社員で、それは100BANCHができる前も今も変わらないんですが、やっぱりこの100年後の未来をよりよくする、その場を一緒に作っているというプロジェクトのメンバーとして、今は組織とか会社の枠を超えたコラボレーション。同僚として働いているなと本当に実感しています。

それは2階のBANCHメンバーに対しても同じように思っていて。さっきも例に出たふんどし部の子たちとかが、どういう未来をつくりたくて、どういう挑戦をしてるのかというのを本当に日々見ていますし。

ふんどし部だけじゃなくて、2階で活動をしているプロジェクトの日々の取り組みの進捗というのを聞くことで、本当に私たちもうれしくなったりとか、なにか協力できることがあったらしようって思ったりとか、そういう新しいかたちの同僚がたくさんできたなという気持ちがしています。

果ては「世界文化の進展」を目指す

松井:それにつながる、「Crossover the Variance」。

則武:この渋谷という街にこの100BANCHを作るというのを決めた理由の1つとして、やっぱりこの渋谷が今とても変わりゆく街であるということと、多様な人たちが集まっていて。

若い人たちもそうですし、クリエイターさんもそうですし、ITベンチャーの集積地だったりとか、いろんな顔がある街で、その多様な人たちが行き交う街で挑戦していくことで、そういう化学反応がよりたくさん生まれるんじゃないかなという気がしています。

松井:といった4つのキーワードを、100BANCHを目指すかたちとして今進めています。最後に100BANCHのコンセプトに通じるものとして、則武さんから1つ紹介してもらいたいと思います。

則武:そうですね、この上に掲げているのがパナソニックの綱領と言いまして、パナソニックのミッションという位置づけです。「産業人たるの本分に徹し、社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与せんことを期す」と。

堅い言葉なんですけど、ここでいろんなメンバーがとてもいいなと思ってくださったこと、残りの2社のメンバーも含めていいなと思ってくださったことの1つに、この「世界文化の進展」という言葉があったなと思います。

文化を作るということはすごく壮大な計画だと思っています。すぐに目に見えるものでもないですし、すぐにできあがるものでもない。

だけれども、ここの100BANCHを通じてなにか後世に残せるような文化が作り上げていけたらいいねということで、それも3社のWILLの1つとして共有できてるんじゃないかなと思います。

松井:ありがとうございます。100年と大きく出ると、すごく途方もなくて見えないものなんだけれども、そして文化も同じで、いつそれが自分の実感としてインパクトになったんだろうってわからない。

でもやっぱり自分たちが今こうやって行動していかないと、その文化というのが未来に生まれないということを信じて、ブレずに世界文化を作っていきたいなと思っています。

則武:では、ありがとうございました。以上でプレゼンテーションを終わらせていただきます。

松井:ありがとうございました。

(会場拍手)