大学職員が一番しわ寄せを食っている

質問者3:私大の職員なんですけれども。

先生の『「大学改革」という病』を読んだんですけれど、大学改革という病にかかっているのが、私大の……、私大にかかわらず、職員側だと僕は思うんです。

「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する

常見陽平氏(以下、常見):うんうん。

山口裕之氏(以下、山口):そうですね。

質問者3:中途半端に、政策などに対して、こう……、意見と言うか、鵜呑みにしがちなのが逆に職員だと思うんです。大学職員界隈に対してなにかあれば教えていただきたいなと思います。

山口:そうですね。一応私も、教職員組合の書記長をずっとやっていますんで(笑)。ただ、国立大学ってもともと国家公務員だったこともあって、職員の人が組合に入らないんですよね。それで、実態を見ていると、やっぱり国家公務員時代から仕事がバーッと増えている。しかも定員削減で、定員が減らされて非正規にどんどん置き換えられている。

それで、1人頭の、毎年残業時間の最高値とか平均値とか出させているんだけれど、例年、とくに年度の変わる時期には、ものすごい量の残業をしている。

だから、やっぱり大学職員が一番しわ寄せを食っている。

結局、僕らも教員なので教員目線で考えちゃうんだけれど、教員はなんだかんだ言ってけっこう守られている。自由もある。自己裁量で授業をやったりできるし。だから、一番割を食ってるのはおそらく職員だろう、と考えてますね。なので、そこはなんとかしていかなきゃイカンな、と今考えています。

大学職員の労働環境改善を

常見:今、先生がおっしゃったとおりなんです。大学の先生が「予算も減らされて、やることも増えていて大変だ」と言うけれど。

1年半前かな、準レギュラーで出演している『文化系トークラジオLife』で、2016年4月が「あえて大学のコスパを問い直す」という特集だったんですね。ぜひアーカイブが残っているし、書き起こしも、音源も残っているから見てほしいんですけれど。

これ、すごくいい番組で反響があって、僕は一応その教員側の意見を言ったんですけれど。その時に、斎藤哲也という今すごく売れているライターからツッコまれたのが、「いろいろ言うけれどね、大学の専任教員って待遇ええやん」と、いろんな意味で。2ヶ月ずつ休みがあって、なんだかんだ言って、ミドルリスク・ミドルリターン、「給料安い」と言いつつ大企業の社員ぐらいの給料をもらってるんですよ、大学教員って。結局そこで、「職員と非常勤講師がかわいそうじゃないか」って。

山口:まったく。

常見:そのとおり。僕はだから、大学職員は労働環境を少しでもよくする。実はある大学で今度、働き方改革の講演に行くんですけれども、いろんな大学ですごく問題が起こっているんです。よくあるのが、2月とか予算を使いきらなきゃっていう時期に、予算の申請がめちゃくちゃ起きる。

山口:まったくですね。

自分が「いらない」と思う仕事は、こっそりやめても大丈夫

常見:僕が思うのは、青くさい議論だけれど、やっぱり大学職員に求められるのは、「自分の顧客って誰なんだ?」ということ。まあ、僕の意見を押し付けるわけじゃないけれど、「次の社会だよね」という話で。

結局、文科省の方針だとか、手柄を取りたくて、しかも、研究をあきらめてアドミで成果を残したいという一部の教員たちの影響を受けすぎちゃいけないと思いますよ。

山口:あと、こっそり耳打ちしているのは、「自分が『いらない』と思う仕事は、あなたしか見ないんだから、こっそりやめても大丈夫」って。「それで、次、ポストが変わるでしょ。異動した時に後任者は『これしかやらないんだな』と思ったら、もうそれが2、3代後には定着するから。それで仕事減らしていこうよ」って耳打ちしています。

常見:今ね、僕の大学で誇れることは、職員がとっても優秀。

山口:なるほど。

常見:しかも、「え、こんな人たちが民間企業を断って来てくれたんだ」というぐらい、若手職員が優秀。しかも、学部のスタッフ全員優秀。なんのストレスもない。

しかも、こういう言い方は語弊があるけれど、有名というか大きな私学、偏差値の高い私学じゃない大学の職員のほうが、みんな「やりがいがある」って言ってるんだよね。「なんとかしないといけないから」っていう。

山口:そうですね。

『「大学改革」という病』は、今後、議論の土台になる

質問者4:いや、もうとりあえず、本があまりにもすばらしかったので。

常見:おー!

山口:ありがとうございます。

質問者4:話もすごくおもしろいし。何が言いたいかというと、超簡単に言うと、1章で「結局、何が問題なのか」という話をしていて、5章で「日本は今、グローバル化とか言ってるけれど、100年前のアメリカの真似をしても無理」という話ですよね。

山口:まあ、そうですね。

質問者4:それで、この本で本当にすごく勉強になったのは、2章の大学の歴史ですね。(大学は)そもそもヨーロッパで、イタリアとか、ボローニャとかでできたという話とか。フランスとドイツの違いとか。そうした流れがこんだけクリアに、これだけの短いわかりやすい文章でまとめられている本って、なかなかないんですよ。

僕は一応、大学史や法制史もやっていたので、すごく興味があって読んだんですけれど、これだけコンパクトに凝縮してまとめてて。

それで、歴史を書いているだけじゃなく。第3章のアカデミック・キャピタリズムの話で、資本主義の、まあ、アメリカの大学は株式会社化していることについて、日本としてどう答えを出すのかという話だと思うんですけれど。

あまりにもいい本だったので。ちょっとこれ、議論の土台に十分なりうる。というか、たぶんこの1冊を見たら、他の本は別にいらない、と。

とくに2章、3章がすごい

常見:おっしゃるとおりで。すいません、ちょっと先生がいる前であれなんですけれど。まさに、新書で大学論の本は死ぬほど出ているんですよ。いろんなレベル感でね。というか、もっと言うと、年に何回か大学特集が組まれて、やっぱり「一番売れた号だった」とか、東洋経済の人に聞いたら「増刷がかかって」とか。雑誌で増刷がかかるってすさまじいんだけれど。

質問者4:誰でも言えますからね。

常見:そうそう。誰でも言えるし、言いたくなる。もっと言うと、やっぱり大学論って、冒頭でも言ったけれど、ネットで炎上する。だけれど、(『「大学改革」という病』は)議論のたたき台としてすばらしくて、実は読みどころって、おっしゃった通り2章と3章。

とくに2章。実は1章とか4章がいかにも問題提起しているようで、キャッチ―でウケて、僕はそこも共感したんだけれども。2章が極めてよくて、こういうしっかりとした本をもとに大学って論じられるべきだな、と思いました。

個人的ルサンチマンとか、理想だとか、「俺はこうだった」論とか、まともじゃないんですよ。

質問者4:学生は、大学にとって顧客と言えば顧客だけれども。(大学の起源において、教師を)学生が雇っていたことなんて、たぶんほとんどの大学の先生は知らない。