“起業しやすい国”が起業家を増やせない理由は?
先輩起業家ら「上場後も突き抜ける会社が必要」

日本のENTREPRENEURSHIPや社会の将来 #1/3

Tech in Asia TOKYO 2017
に開催

日本で起業家を増やすために作るべきエコシステムとはなにか? アジア最大級のスタートアップ向けのカンファレンス「Tech in Asia TOKYO2017」で、「日本のENTREPRENEURSHIPや社会の将来」というセッションが行われました。しかし、登壇者ら4名が話し合った結果、セッションテーマは本番ギリギリでピポット(方向転換)。参加者らによる質疑応答を中心としたセッションへ変更されました。多くの起業家、またはその卵が集まったセッションで寄せられた質問とは? また、起業家と投資家、メディアの立場にある登壇者らが考える、日本のスタートアップ・システムに必要なものとはなんでしょうか?

セッションテーマを冒頭でピボット!

田中章雄氏(以下、田中):みなさんこんにちは。インフィニティ・ベンチャーズの田中と申します。

このセッションのテーマは「日本のENTREPRENEURSHIPや社会の将来」としていましたが、みなさん、実は先ほどすでにピボットしました。

経沢香保子氏(以下、経沢):ピボット!(笑)。

田中:始まる10分前にですね、こちらの素晴らしいパネリストの方々と話していたところ、もっと良いトピックがあるということになったので、そのテーマに移ろうと思います。そのトピックがなにかというのは、後ほどお知らせいたします。

まず今日はどういうメンバーがパネリストとして揃っているのか、順番にご紹介します。まずは経沢さんから。

経沢:はい、ありがとうございます。

みなさんこんにちは。キッズラインの経沢と申します。私は3年前にスマホで24時間、時給1,000円からベビーシッターさんをUberのように呼べるサービスを始めました、立ち上げたとき、IVSのローンチパッドに出ています。

田中:優勝されましたね。

経沢:死ぬほど頑張ってプレゼンの練習して、優勝をもぎとったんです(笑)。

その前に新卒でリクルート、そのあとは創業間もない祐天寺の頃の楽天、そして26歳でトレンダーズという会社を立ち上げました。2012年に東証マザーズ上場を経験させていただきました。当時は最年少女性上場企業社長でしたが、今もう、塗り替えられてしまいました(笑)。

田中:今までレコードをキープしてたのに(笑)。

経沢:(笑)。最年少女性社長みたいな感じで、いつも言っていただいていてありがたかったですが、もうその記録は塗り替えていただいたので。いずれにせよ頑張ります。今日もよろしくお願いします。

田中:よろしくお願いします。

(会場拍手)

上場したあとの会社を成長させる会社

古田大輔氏(以下、古田):古田と申します。僕はもともと朝日新聞の記者をしていて、海外特派員とかデジタル版の担当をしていました。今はBuzzFeed Japanというメディアの編集長をしています。

BuzzFeedはニューヨーク生まれのメディアで、今世界に展開しているんですけれども、ニュースからエンターテイメントまで幅広く、テキストから動画までなんでもあり、主にソーシャルで拡散させていくっていう手法を世界中でとっています。

その日本版がローンチしたのが去年1月です。1号社員として入社し、当時13人でローンチしました。今は社員数が60人ぐらいになって、読者規模でいうとテキスト系の方で2,000万人、動画で1億回再生数を超えるくらいに育ってきました。がんばっています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

朝倉祐介氏(以下、朝倉):朝倉と申します。私が今、主にやっているのは、スタートアップのアドバイザー、社外取締役などですね。

1つはラクスルという印刷ECの会社の社外取締役をやっております。その他は政策研究大学院というところで、これはアカデミアになりますけれども、「日本でいかにしてスタートアップ・エコシステムを作っていくか」といった研究を行っています。

その他ですと、最近「シニフィアン」という会社を作りました。この会社は「ポストIPOの経営」をテーマにした会社です。

上場したあとの会社、上場して以降もどんどん成長していこうという意欲を持った会社を我々は「ポストIPO・スタートアップ」と呼んでいるんですけれども、そういった会社の成長に貢献できればという活動をしております。どうぞよろしくお願いいたします。

田中:ありがとうございます。

(会場拍手)

参加者らの多くは投資家? 起業家?

田中:先ほどからセッションがピボットしたときに、1つのキーワードとして「今日来てる人はいったい誰なんだ」という話がありまして。

経沢:どんな方が、なにを聞きたいのか、ぜひ教えていただきたいですね!

田中:会場に何屋さんが来ているのか知りたいと思うので、まず投資家系の人たち、今どれぐらい下にいますか? 自称も含めて(笑)。

(会場挙手)

投資家の人たち(笑)。

(会場反応なし)

……投資家は、いない? ほとんどいない。じゃ、自分で起業している人? 起業家の人たち。

(会場挙手)

経沢:あ、多いですね。1割から2割。

田中:あとはどういった人が来られるのかな?

古田:メディアの方?

田中:あ、メディアの方は?

(会場挙手)

古田:少ないな。

経沢:1割ぐらいですね。

田中:「なんだかわかんないけどとりあえず来た」みたいな人はいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

あ、いますね(笑)。

セッションテーマは「参加者からの質疑応答」

経沢:会社から強制参加とかあるんですかね?

田中:最近はそういう処罰があるみたいですね(笑)。

経沢:処罰(笑)。レポートを書くんですかね?

田中:はい(笑)。

たぶんみなさん、ここ(ステージ)を見ていただくとわかるんですが、すごいメンバーが集まっているんです。「こういう人たちのセッションに来たらなにか質問を聞けるんじゃないか」と期待して来た人、いらっしゃったら手を挙げてください。こういう人たちになにか話を聞きたいなって思う人。

(会場反応なし)

……えっ? 誰もいない(笑)。

経沢:(笑)。

朝倉:セッションが終わっちゃうんじゃない?

田中:もう終わりですよね。

(会場挙手)

田中:あ、いましたいました! ではちょっとマイクをお願いします。今手を挙げた後ろの方。

ここでついに、ピボットの中身がが明らかになります。実はこのセッション、もう質疑応答にしたのです。そのため今、彼(質問者)が聞いてくれることが、まずこのセッションのスタートとなります。

じゃあ自己紹介をお願いします。なにをしてる人なのかも含めて……からお願いします。そしてなにを聞きたいのか、ぜひ教えてください。

田中:こんにちは。

質問者1:こんにちは。僕、本日ボランティアとしてこのイベントで働いてるんですけれども、ちょっとお話を聞かせていただけるということで……。スタートアップのエコシステムや、投資家とのマッチングなどを日本で広めていくためには今なにが必要なのかなっていうところを、パネリストの方にお聞きしたいなと思うんです。よろしくお願いいたします。

スタートアップ・エコシステムに必要な、入口と出口

経沢:田中さん、得意分野じゃないですか!

田中:ちょっと質問の意味がいまいちわからない……もう1回ちょっとまとめてもらえますか? 聞きたいポイントを。ごめんなさい。

質問者1:要はその、新しい事業をどんどん日本から生み出していくためには、どういった環境であったり、どういった人間が今必要とされていたりするのかを、お三方のお考えをお聞きしたいなと思います。

田中:あ、なるほど。これはもう僕というよりも……あまり今日本にいないんで。朝倉さん系な香りがする、この匂いは(笑)。

朝倉:そうですね。それでいうと、僕なりにそういったスタートアップ・エコシステムの形成といったことを研究していて、思うところはありますけれども。

ザザザッと3つぐらい挙げると、1つは圧倒的に起業家の数ですよね。どうやって増やしていくのか。この入口の部分だと思っています。よく日本とアメリカで、ベンチャー投資の額が50倍ぐらい差があるという話があるじゃないですか。起業家の数は50倍じゃ済まないですからね。

田中:そもそもの母数がないという。

朝倉:そうです。下手したら500倍ぐらい差があるんじゃないですか? そうなるとおそらく、日本はかなり起業しやすい国、地域だと思っているんです。世界で見ても有数の。

田中:それはなぜ?

朝倉:資金調達という意味に関して、ですね。やる人がいないんだから。

田中:競争が少ない?

朝倉:そうです。それに関していうと、まず起業家の数をどうやって増やしていくかですよね。

同時に、入口があれば出口も必要なわけです。この出口をどうやって増やしていくか。1つはM&Aの数を増やしていくことを考えていかなきゃいけないと思っています。アメリカのベンチャーキャピタルから出資されているスタートアップの内、8割以上のイグジットがM&Aなんですよね。

経沢:えー。

田中:日本はIPOがメインですよね。

朝倉:そうなんですよね。これをどうするかというのは1つの課題だと思います。やっぱり出口がないと、わざわざそんなリスクを取って事業を始めようという発想にならないじゃないですか。それが1つ。

上場以降も継続して大きく成長する会社を増やすべき

朝倉:もう1つは、我々が「ポストIPO」と呼んでいるところで、「IPOをした会社がどうやって伸びていくか」ですね。

田中:これは朝倉さんの宣伝タイムですか(笑)。

朝倉:そうですね(笑)。上場以降も継続して大きく成長する会社が出てこないと、なかなか社会全体から日本のスタートアップに対する信任が得られないんじゃないかと思っています。

日本の場合、昨年マザーズに上場した会社の上場時の時価総額の平均は、だいたい60億の中盤なんですよ。調達額の平均額がだいたい6.6億円ですね。

田中:初値割れはどれぐらいなんですか?

朝倉:それは調べてません(笑)。

経沢:でも、昨年は少なかったんじゃないですかね。

朝倉:この規模感は考えてみたら、海外でいうところのミドルステージだとか、アーリーステージだったりするわけじゃないですか。

田中:シリーズAからBの中間(笑)。

朝倉:そういう意味でいうと、日本のマーケットはすごく不思議なんです。アメリカではアンドリーセンやセコイアのようなベンチャーキャピタルが取っているリスクを、年金暮らしをしているおじいさん、おばあさんたちが取ってくださっているんですよ。

経沢:なるほど。

田中:(笑)。

朝倉:新興市場に限って言えば、「日本人はリスク回避志向だ」という一般的な言説は、実は誤りなんじゃないかということなんですよね。日本にレイトステージのVCが少ないというのは、そんなに不思議な話じゃないんです。

要はマザーズというマーケットが、レイトステージのVCの役割を担っている。そこからさらに突き抜けていくような会社が出てくる手伝いをもう少ししていかないと、まだまだスタートアップが世間からの信任が得られないんじゃないかなと考えているんです。

田中:日本には上場後の経営経験を積んだ起業家がいないということですか?

朝倉:そうですね。日本の市場にはあまりいないじゃないですか。

田中:ここに1人います(笑)。

経沢:(笑)

朝倉:上場したあとも、同じようなところでつまずいて停滞してしまう。そこである程度の知見を共有することができれば、もっとスムーズに成長できるんじゃないかな、というのが今の仮説です。

起業を身近に感じる機会がない

田中:経沢さん、いかがでしょうか(笑)。

経沢:はい。なんというのか、周りに起業する人がいないと起業しようという気持ちになかなかならないと思います。

私の場合は、母親が「これからは女性が働く時代になるから、あなたも自立しなさい」と言われて育ったので、自立しようと決めてました。でも、もし、お母様が「女は家で尽くすものよ」と言えば、それが正しいとお思う場合もあり、……時代とか周りの影響はすごく多いからどのコミュニティに所属するかというのは重要かもしれません。

あと、今の朝倉さんの……。

田中:当時はそういうコミュニティってあったんですか? 女性向けには。

経沢:ないです、ないです。私は結局、創業間もない楽天に入ったときに、社長という生き物を間近に見ていました。当時の孫(正義)さんが専用ジェットでイベントに3,000万かけて来て、ホリエモン(堀江貴文氏)が長髪でダウンジャケットみたいなのを着てビットバレーがあって、そこに私が楽天の人間として行ったときに、学生がみんな起業家だったんですよ。

みんな資金調達しているとか、すごく景気のいい話をしていました。私はどぶ板営業をしている一営業マンで「なんでそんな人がいるの?」「しかも大学生?」と、すごく悔しいと思って。そのときに初めて起業を身近に感じたんです。

田中:悔しいと思ったんだ?

経沢:そうなんです。それまでは「おじさんが社長」みたいなイメージありました。なんか洗脳されてましたね。社長というのは偉くて、すごくて、普通はなれない。でも部長になる方が難しいじゃないですか、本当は。だから発想の転換という。

日本は世界で一番IPOしやすい国

経沢:あと、日本って世界で一番IPOをしやすい国だと聞かされて、衝撃を受けました。「確かに」と。

田中:たぶん、先進国だからそうかもね。

経沢:そうなんですよ。ただ、海外では上場するって相当すごいことで、だから私は、上場したあとすごく光栄におもたのは、海外にビジネスに行ったらすごく大事にされたんですよ。

田中:そうか、海外へ行くとレアキャラなんだ(笑)。

経沢:はい、上場社長ってめずらしい方みたいで。しかも女性だということで大切にされました。アメリカとかに……当時「料理動画がくる!」と思っていたから料理コンテンツを世界中に配信している企業へ行って。

田中:早かったですね(笑)。

経沢:そう、リスティッド・カンパニーのプレジデントだから、すごいVIP待遇でした。例えば、当時の大企業でも、上場してないと相手にされないと聞いていたのでびっくりしました。

田中:えっ? あの大企業でも?

経沢:そう、本当に。だからその「時差」を活用して、世界に進出できる日本っていいなって、私はすごく思っているんです。

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