2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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原隆氏(以下、原):みなさん、こんにちは。日経FinTechで編集長をしています、原と申します。これから30分間、「日本のVCは黄金期か?」というテーマでみなさんのお話をいろいろとおうかがいできればと思います。
ここにご登壇されていらっしゃるみなさまは著名なVCの方で、改めての説明は省略させていただきますけども。手前からグロービスの高宮さん、500 Startupsのジェームズさん、YJキャピタルの堀さん、楽天のドーさんになります。この4名にいろいろお話をおうかがいできればと思っております。
まず、高宮さんからお話をおうかがいしたいと思います。
VCの環境は7〜8年くらい前と比べるとだいぶ様変わりしてきたと思うんですね。スタートアップの調達の金額も、昔では想像できないくらいの額になってきたかなと思うんです。今、VCの中で見ているトレンドみたいなところがあったら教えていただけますか。
高宮慎一氏(以下、高宮):なるほど。そういう意味で言うと、今すごく転換点かなぁと思っていますね。
インターネットという大きなテクノロジーのトレンドが成熟化してきて、サービス業化しています。その流れの中で、話にも出ていたブロックチェーンのであったり、IoTであったり、AIであったり、いろんな新しい技術が出てきていますよね。
もう1回、90年代後半のような新しいテクノロジーが世の中を変えていき、10年くらいかけてそのテクノロジーがサービス業化していく。そういうタイミングに来ているのかなと思います。
ここ1〜2年の話で言うと、すごく初期段階のテクノロジーのシードがいっぱいあります。10年後、大きなゲームチェンジャーになりそうなものがいっぱいある一方で、どれが本物か見極めるのがけっこう難しい。
原:今はちょっと難しい局面にある、と?
高宮:はい。あと、原さんが冒頭におっしゃったVC側の環境変化も起きていると思います。5年くらい前は、日本ではうちが2〜3億円投資したら「すげぇでかい!」みたいな話になっちゃったのが、今では簡単に100億円くらい集まっちゃう。
原:そんな感じでしたよね。
高宮:でも、逆に、シリコンバレーだとそれがスタートラインなので、ようやく追いついてきたとも言えると思います。
ジェームズ・ライニー氏(以下、ジェームズ):高宮さんにほぼ賛成です。シードでも、2億円とか3億円なんか普通にありますよね。シリーズAはシリコンバレーだったら「かわいいね」みたいな感じで(笑)。規模がぜんぜん違うんですよ。
原:ジェームズが今、VCを見ていて個人的なトレンドみたいなのはありますか?
ジェームズ:アプリを出して急激にユーザーを獲得できるような時代からは、変わってきた感じがしていますね。
そうじゃなくて、レガシーな業界はまだまだブルーオーシャンがあるなと思っています。もう少し大人の戦いができるベンチャーが増えてきた感じがしますよね。保険業界でもありますし、最近だとリーガルテックもそこそこ出てきています。そこにまだポテンシャルがあると思っています。
IT企業がまだリーチできていない領域にはポテンシャルがあるし、そこにベンチャーが最近出てきた感じはします。これはシードの投資家として見えてきているトレンドです。
原:堀さん、いかがですか?
堀新一郎氏(以下、堀):お2人が話したことがすべてだと思うんですけど。
おっしゃる通りシリコンバレーを見ていても日本を見ていても、9割インターネットのサービスというのはガラケーからスマホにシフトするときにスマホ版のサービスがたくさん出てきたんです。これがだいたい去年くらいからもうあまり新しいものが出てこなくなったなぁという印象なんです。
個人的にトレンドとして見ているのは、YJキャピタルがインターネット産業に投資するヤフージャパンの投資子会社というところもあるので、注目しているものでいくとやはり中国・インド。
とくに中国なんですけど、FacebookやGoogleの影響があまり及んでいないということもあってですね。今まで見たこともなかったようなイノベーティブなコンシューマーインターネットのサービスがけっこうたくさん出てきている。
しかし、これがすべて中国語でコンテンツが書かれているので、日本であまり知られていないというのはあるんですけど。「フェンダー」というようなQ&Aのサービスだったりとか。そういったユニコーンがどんどんBtoCのセンターに出てきています。
今までは、アメリカでイノベーティブなコンシューマーインターネットサービスが出てきたと思うんですけど、最近は中国やインドなどの競争が激しいマーケットからおもしろいサービスが出てきている。そこのマーケットは非常に注目していますね。
原:今はけっこうアジア・中国・インドのほうにシフトして見ていると?
堀:BtoCのサービスはけっこう注目しています。
原:ドーさん、いかがですか?
ホーギル・ドー氏(以下、ドー):既にお三方が素晴らしいことを言ってくださったので、私が付け足すことはあまりないと思いますが。
1点、私自身が楽天ベンチャーズで見ている領域は、最近の日本で言うと、医療系やヘルスケア、介護、建築、不動産だったりします。日本独特の課題も大きく、市場も既に大きいビジネスに、スタートアップがちょっとずつ出てきているのを見ていますね。
高宮さんがおっしゃる通り、これは日本にとってティッピングポイントだなと思っていて。こういう日本独特の社会問題というのはたぶん諸外国と比べて、日本が先んじて経験していると思います。こういうところをテクノロジーでしっかり解決すれば、と。
日本では「グローバル企業」というのはさほど出て来ていないんです。そういうテクノロジーで、ほかの国でもテクノロジーカンパニーとしてフロントランナーになれるような技術力を持った会社が出てくるんじゃないかなと思っていまして。そういうことができれば本当に黄金期というのは日本にもやってくると思っています。
原:そういった領域で起業する人というのは?
ジェームズ:増えましたね。この間、僕ともう1人のパートナーの澤山(陽平)でどういうところに投資しているかをちょっと振り返ってみたら、だいたい30代なんですよね。それはなぜかと言うと、やっぱりレガシーな領域になってくると、ある程度の社会経験があってネットワークが必要なんだと思います。
原:すでにどこかで経験をされているという意味ですか?
ジェームズ:はい、経験しているほうが市場の課題点をちゃんと把握できています。その問題を解決ソリューションを提供できる起業家が最近は増えましたね。
ドーさんがおっしゃる通り、日本はけっこうユニークな市場じゃないですか。ですから、C向けのサービスと違い、海外のプレイヤーが参入してきてもなかなか難しいですよね。
海外のプレイヤーにとって、日本市場への参入障壁は高いので、どうしても難しい。なのである程度、レガシーな業界ではキャッシュがチャンリンチャリンと入ってくるようなビジネスの可能性があるのかなと僕は思います。
原:高宮さん、いかがですか?
高宮:完全に一緒なんですけど、加えるとすれば、古いレガシーの業界を変革するという機会においては、その業界のベテランの起業家にとって大きなチャンスだと思います。
そして、事業家として見たときも投資家として見たときも、テクノロジースタートアップって話題性があって、成長性も収益性も高く、資本市場から評価されやすいという話があります。
一方で、古い業界を変える場合、市場はでかいし、業界の抱える負も大きい。古い業界を変えるには時間がかかる、そして資本市場からは、先ほどのテクノロジースタートアップほどは評価されないこともある。その時に、しっかり歯を食いしばって業界を変え切る、腰を据えてやり切るみたいな覚悟と想いがいるのかなと。
つまり、テクノロジーのバズワードにうまくのっかって短期間で上場して、というのはやりにくい一方、地に足がついた本質的にいいビジネスになるという話ですね。
原:先ほどの話からすると、かなり難しくなってきています。しかもレガシーの領域のところにも可能性があるとなってくると、よく言われるクロステックじゃないですけれども、農業だったり、私も担当している金融だったり、それぞれ専門知識が必要となります。VCとしては大変な時代に入ってきたという、そういうことでいいんですか?
堀:そうですね。非常に大変になってきているなと思っています。
ベンチャーキャピタルの中でも、やはり特定の分野における専門家がいないといけない。投資する前にデューディリジェンスを行って検討するんですけど、そこの知識が欠けていて困っちゃうなということで、専門家の育成はけっこう社内でも声をあげて取り組んでいるものではありますね。
もう1つ課題的なほうでいくと、アメリカなどグローバルに見ると「CrunchBase」だったり「CB Insights」だったり、インドのスタートアップの「Tracxn」みたいなものはけっこうあるんです。しかし、日本国内では、残念ながらスタートアップに特化したものがなくてですね。
帝国データバンクや商工リサーチというものが中心で、「この業界でどういうスタートアップがいるんだろう」というときに調べようと思ってもそういうデータベースがなくて見つからない。これは、海外でのエコシステムに比べると、日本のデータベースの難しさというのがありますね。
原:誰か作ってくれないんですかね?
ジェームズ:話は若干飛びますけど、日本の場合、LinkedInがあまり使われていないですよね。米国にはCrunchBaseといった、スタートアップのためのデータベースがあり、さらに人材採用のためにはLinkedInが活発に使われています。
日本の場合、レガシーな業界に参入しようとしても、人を採用したくても、誰がどこにいるのかわからないですよね。
アメリカだったらLinkedInで探して会社名をクリックすれば、その人材がバーって出てきます。その人にリクエストを飛ばしてメッセージして、採用しやすいしスピードがとにかく速いです。日本の場合、エキスパートを採用したくてもどこにいるのかぜんぜんわからないという問題があると思います。
原:人の問題というところがけっこう出てくるわけですね。
高宮:そういう意味で言うと、今日本のスタートアップ業界は、インターネットを中心としたエコシステムとして発展してきたという歴史があると思います。アグリテックだったり、ヘルスケアテックだったり、新しいエコシステムが並列して立ちあがっていくかたちになるような気がしています。
原:つまりインターネットだけのエコシステムが一つひとつに。
高宮:はい、インターネットの初期もインターネット好きが集まってそこから 多くのベンチャーが出てきて、大きくなって次の世代に投資していく。そういうかたちで大きくなっていくように思います。
その業界にいて、その業界の負を感じている人が起業していく感じになると思います。経営として難易度が高いところに関しては、もしかするとインターネットで1回起業に成功した人が、成功した起業家・経営者の横軸機能としてエッジを立てて隣りの業界に行く。そして、新たな大きい機会にチャレンジにしていく。そんな感じになっていくのかなぁと考えています。
原:確かに、人が動かないとそこは難しいですし、VCもある意味バーティカルじゃないですけど、「ここに強い」みたいに分かれていくようなイメージなんですかね?
堀:でも、グロービスさんは全部カバーされてますよね?
高宮:VCとしてと言うとけっこう難しくて。ファームとしてカバーは当然増やすんですけど、ベンチャーキャピタリスト個人としてはなかなかインターネットもわかって、ヘルスケアもわかって、フィンテックもわかって……と全部カバーするのは難しいように思います。
そうすると、僕らキャピタリスト個人としては、どこに強みを持っていくのか、個人としてどうするのかみたいな話に収斂しちゃう気がしています。
原:先ほどの堀さんのお話に「人を育てる」みたいな話があったと思うんですけども。それはそれぞれ担当を決めて、そこの専門知識を身につけていくということですか?
堀:そうですね。「僕がこれをやったほうがいい」と言うよりかは、「なにやりたいの?」と聞く。どの分野に興味があるのかと。
日米のベンチャーキャピタルの比較になってしまうんですけど、アメリカのベンチャーキャピタリストって、ほとんどみんなブログやTwitterをしっかり運用していて情報発信してるんですよね。
「私はこの領域に関して得意」「どういう会社に投資してサポートしている」みたいな情報発信をすることで、起業家から見たときに「自分もこの業界で起業するんだったら、あの人に投資してもらおう」という話になると思うんですよね。
日本では、まだ一部の方しかやってないところがあります。私はここにけっこう問題意識を抱えていて。やっぱり起業家から指名される投資家にならなければいけない。専門領域を持てば、ICOにくわしくなればその人に話が絶対いきますし、BtoBのSaaSにくわしくなったら「この人に話がいく」となるので、なるべく専門領域を持つようにしていますね。
日本って、キャピタリスト自体の人口もそんなに多くないんですよ。そうなってしまうと、今から全部見られる人をイチから教育して育てるのに、5年10年かかっちゃうと思うんですよね。ただ専門領域の投資家を作るのであれば、おそらくその半分くらいの時間でできるなと思っています。
ジェームズ:堀さんのおっしゃる通り、専門家をベンチャーキャピタルとして採用するのは投資先、領域をわかるためだけじゃなくて、やっぱりマーケティングの意味でも価値があると思います。
アメリカの場合は競争が激しいし、年間7兆円くらいのベンチャーキャピタルが集まっている。その中で差別化はやっぱり重要です。だから、特化したファンドが出てきてるんですよね。
日本の場合は、そこそこ特化したキャピタリストが出てきたんですけど、まだそこまでじゃない。2016年は1,000億円くらいで比較するとものすごく小さいマーケットじゃないですか。なのでそこまで領域の差別化をとらなくても、僕はまだいいかなと思います。
原:ドーさんどうですか? 楽天は?
ドー:みなさんがいろいろお話された通りだと思うんですけど。
追加で申し上げますと、投資家間のネットワークも重要だと思うんですよね。すべてのファンドがすべての領域をカバーできないですし、ある程度の専門性の高いキャピタリストを抱えてらっしゃる投資ファンドに、例えばリファレンスチェックをするとかというのは、これからファンド同士の協業では出てくるんじゃないかなと思います。
2つ目は、これはちょっと楽天独特の環境なんですけど。弊社の場合、ヘルスケアだったり農業だったり、保険だったり、いろんな既存のレガシー事業分野へ手広く事業をやっています。そこらへんに関してはけっこう専門家の人材も確保しつつありますね。
原:それは外部から採用しているんですか?
ドー:そうですね。そこから得られる知見というのも、社内である程度は揃っているのかなと思います。
原:おもしろいですねぇ。
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