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データサイエンスは何を変えるのか?(全8記事)

「データサイエンティスト」に求められるものとは何か? 当事者が語る『機械脳の時代』に必要なスキル

2017年9月1日、BOOK LAB TOKYOにて、トークイベント「データサイエンスは何を変えるのか?」が開催されました。書籍『FinTech大全』の監修を担当し、株式会社マネーフォワードにて取締役兼Fintech研究所長として活躍する瀧俊雄氏をモデレーターに、『機械脳の時代』の著者である加藤エルテス聡志氏と、楽天株式会社の執行役員である北川拓也氏が、テクノロジーが変える暮らしや社会について語り尽くします。

iPadにも幻滅期はあった

瀧俊雄氏(以下、瀧):あと、政策的な注目は確かにピークを超えているはずです。これからって……日本語でいうと「実証期」って言うんですよ。なんかちょっとかっこいい表現なんですけど。

加藤エルテス聡志氏(以下、加藤):スライドの、Slope of Enlightenment.のところだね。

:なので、1回ものすごく幻滅するんで。私よくiPadの事例で言うんですけど、2010年のはじめくらいに、スティーブ・ジョブズがでかいiPhoneみたいなのを持ち出して、「これをみなさんの手元に、このあと3時間後に届けます」みたいなことを言うわけです。

それで、みんなアップルストアにバーって並ぶじゃないですか。5万円とか7万円ぐらい払って「よっしゃ、iPadゲットしたぞ!」「友達に見せびらかすんだ!」って言って家に持って帰て、セットアップの仕方がわからなくて。

「俺のiTunesアカウントってなんだっけ?」みたいな感じでどんどんわからなくなって。せっかくセットアップしても使えるアプリが限られてしまったりするんですよね。

よくある話で、スティーブ・ジョブズって流行期をつくるプロなんですけど、家で設定する間にすごい賢者タイムみたいなところがあってですね……。

加藤:(笑)。

:でもそのあとに、自分はiPadの使い方がわからなくても、子どもがYouTubeで無限にアンパンマンとか見はじめて。うちには子どもいないんですけれども、最近の子どもってテレビを押しにいくらしいんですよね、「ここで止めて」って。そういう、子どもとか、ほかのiPadのユースケースを見ていくと、実はもう家でiPadが手放せなくなってるんです。

ただ、お父さんが最初に夢見ていたような、よりクリエイティブで音楽活動もしっかりできるといった、なんかよくわからないお父さん像にはなれないんだけど。家族はすごくiPadの便益を享受している。

たぶんFinTechもそういう感じなんじゃないですか。

加藤:なるほど。

:「ブロックチェーンで何でもできるぜ」みたいなことを言う人がいるけど、「いや、そんな簡単じゃないぜ」と。

だけど、2023年ぐらいにはけっこうな割合で、みなさんたぶんなんらかのウォレットサービスだけで外に出るし、サザエさんが財布を忘れても指紋認証で決済できる。そういう世の中が来ると思うんですよ。

加藤:なるほどね。買い物しようと街まででかけたら、財布を忘れて指紋で認証と。

:そうそう。……すみません、こういうちょっとシュールな関係なので、ついてきてください(笑)。

加藤:ついてきてますか、大丈夫ですか?(笑)。

天才が1人でシステムをつくっているわけではない

:7時半だから、本当はそろそろ北川さんを迎えなきゃいけない時間なので、ちょっと。

加藤:そうだね。じゃあ、そろそろ。

:すでにかなり脱線してるから。僕からの質問コーナーがあったと思うので、1個だけ。

今日このなかで、データサイエンティストやってますって方、どれぐらいいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

加藤:ちらほら。3、4。でも、大多数はノンデータサイエンティスト。

:ですね。たぶん、『機械脳の時代』は、外から新しくルーチンを取り入れるときのある種の生き方というか、やり方を書いている本だと思います。「読んでいなかったら、本読んで」というのはたぶんあると思うんですけど。

なんかこう、ご自身が会社で抱えているデータセットがあるだろう環境にいるときに「最初にやっていくべき次のステップはどういうことなのか?」というのを意識しながら、このあとの話を聞いていただけるといいのかなと。

加藤:『機械脳の時代』という本なんですけど、「Googleすごい」「Amazonすごい」という話よりは、「具体的なシステムってどうやってつくられていって、どんな人が関わっているんですか?」とか、「データサイエンティストじゃないんだけど、自分でも活躍ってできるんですか?」とか、そういう話を1個1個書いています。

そこで扱っている大きなテーマの1つが、「天才データサイエンティストじゃなくて、チームでアプローチするのが普通ですよ。その方がいいですよ」という話を大きく取り上げています。

『NUMBERS』というアメリカのドラマがあるんですけど。

  • 天才数学者の兄弟がいて、お兄ちゃんがFBIの捜査官で、弟が数学者なんですけど、もう弟すごいんですよ。もうね、お兄さんの事件、どんなものでも解いちゃうんですよ。

    グラフ理論を使ったり、回帰分析を使ったり、ニューラルネットワークとか、自分でシステムをつくるし、「ロサンゼルスにある全部の監視カメラをハッキングしてみた」みたいな、「マジか」みたいなことができる。

    (会場笑)

    それで、ビジネススキルも持ってるし、どうやって捜査は進むのかとか「この証拠を集めなければ起訴できない」みたいなことをよく知ってるわけです。

    どんなモデルを使うとそれがうまくいくかって話も知っているし、実際のコードを書いたり、センサーとか監視カメラの技術とかすごくよく知ってるんですよね。それが全部あるから「すごい、スーパーヒーローだ」みたいになってるんですけど、そんな人はほとんどいなくて。

  • 1つのプロジェクトには、多くの人が関わっている

    加藤:実際にはデータサイエンスチームというのがつくられます。そこに、ビジネスをよくわかっている人というのと、サイエンス、とくに統計解析だとか機械学習のロジックをよくわかっている人というのと、あとは実際にコーディングをしてくれたりとか、分散処理をしてくれたりとか、サーバをチューニングしてくれたりとかする、テクノロジーに強い人。等々を中心として、もっとたくさんの人がいっぱいわーって関わるんですよ。

    もし「今から4年間とか6年間、大学院にもう1回通ってデータサイエンティストになる、なんてことはできないんだけど、どうしようか?」といったときに、残り2つ方法があるんですよね。コーディング、ガンガンできますよっていう人になるか、ビジネス側を牽引する人になるか。とくにここにいる人は、ほとんどビジネスに当てはまると思うんですよ。

    実際にこういうプロジェクトをやらなければいけなくて、開発しなければいけないものはこれです、とか。例えば、マネーフォワードの自動仕分け機能のように、クレカから自動で取り込んだコスト項目を、ユーザーに負荷をかけないかたちで、自動的に仕分けしてほしいんだけど、と。それを何ヶ月以内に調整しなきゃいけなくて、エラーが発生する率はこれぐらいに抑えてほしいと。

    「これって交際費ですか?」「いや、違うよ」、「これは〇〇費ですか?」「いや、それも違うよ」ということを毎回言われると嫌だから、ユーザーがこのぐらい満足するものをつくらなきゃいけないんだけど……みたいなことをビジネスの人がするわけですよね。それをデータサイエンティストやデータエンジニアがわかる言葉に翻訳して伝える。

    そのときの予算管理だとか、チーム体制をどうつくらなきゃいけないだとか、「この短いリードタイムで、1回クイックウィンをさせておくか」みたいなことを設計したりとか。要はみんなビジネスの仕事なんですけどね。サイエンスの必要な人数よりもビジネスの必要な人数のほうが、当たり前なんですけど、多いんですよ。

    サイエンスの人は少数しかいなくても、マシンパワーを使うとたくさん大きなことができるので。だけど、ビジネスはビジネスごとにずいぶん違うことを理解しなければいけないので、必要な人数はこっちのほうが多いんですね。ビジネスもサイエンスも両方いなきゃいけないと。

    ノンデータサイエンティストとして、家に帰って一番はじめにするべきことは、「こういう構造なんだ」ということを理解して、どこで戦うのか、登るべき山を見つけるということだと思います。

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