なぜ若者の地域離れが止まらないのか?
彼らが故郷を捨てる、3つの意外な理由

What innovative education has for the future of rural communities #1/2

昨今、地方都市において、若者の地元離れが問題視されています。なぜ彼らは地元を離れ、そして戻ってこないのか? 若者への取材を通してその本当の理由を知った小川悠氏が、課題解決のために取り組んだあるプロジェクトについて語ります。(TEDxTohoku 2013より)

深刻化する若者の地元離れ

小川悠氏:本日はこちら「地域の未来を切り開く主人公はだれなのか?」。この話をしていきたいと思います。

あれは東日本大震災が起きて6ヶ月が経った頃でした。今まで学んできたことを生かして何か東北のために役に立ちたい、そう思った自分は仲間とともに東北の気仙沼という場所に降り立っていました。

今まで自分が学んできたこと、それが「イノベーション教育」です。イノベーション。これを僕はアイデアを作って未来を切り開くことだと思っています。そして、イノベーション教育。それは未来を切り開くアイデアを作るための技術、考え方、そして動機、スキルセット、マインドセット、そしてモチベーション。それを教育を通じて身に付けることだと思っています。

このようにイノベーション教育を学んできた僕は、東北で未来を切り開くためのアイデアを作れないかと思いました。地元の人たちから話を聞き、アイデアを作り、発表しました。しかし、それはどれ1つとして実現まで持っていくことはできませんでした。

地域の未来を切り開く力にはなれなかった。何もできないまま時間だけが過ぎていきました。そんな中、町の人からこの言葉を聞きました。「若者が外に出て行ってしまう。この町はこの先どうなるのか心配だ」。

東北出身ではない僕ですが、ここに来て初めて、今若者が地域から離れている問題について実感しました。もちろんこれは震災前から起きていたことですが、震災によってそれがより顕著になったと思っています。

地元を離れる若者が抱える3つの悩み

気仙沼には大学がありません。高校生は高校を卒業してから就職、または進学ということで、地元を出て行く子たちがかなり多いです。こうした子たちがいったん外に行ってしまうと戻って来ない。これが今、気仙沼で若者の地域離れというものを起こしている。しかし、これは決して気仙沼だけでもない、東北だけでもない。

日本、そして世界の地域が抱えている問題なのではないでしょうか。なぜ若者は地域離れを起こしているのか? なぜいったん出て行って戻って来ないのか? 不思議に思った僕は、仙台や東京に出て来た若者に話を聞きました。僕は最初、彼らが地元を嫌いなんじゃないかと思っていました。しかし、それは違います。若者は大きく3つの悩みを抱えていたんです。その悩みを紹介したいと思います。

1つめは、地域の良さを理解する機会がなかったこと。外に出て初めて地元の良さがわかったりします。しかしその時には外にいて、なかなか地元の良さを理解する機会がない。地元について何がいいかわからない自分が果たして地元に帰っていいんだろうか? そう思う若者は決して少なくありません。

2つめは、地域の人とつながる機会がない。同世代の高校生、そして地域で活躍している先輩方。若者は一旦地元を出てしまうと、こうした方々とのつながりを持つことは難しいです。そして、こうしたつながりを持っていない若者が何か地元でやっていこうと思ってもなかなかできない。仲間がいない。そういった悩みがありました。

そして、3つめは、未来を作る方法を学んだことがない。地元に対して何かしたい、でもどうすればいいんだろう? そんなこと今まで学んだこともなかった。こうした若者もかなりいました。「地元を理解する機会がない」「地元とつながる機会がない」そして、「地元の未来を開く方法を知らない」。

こうした3つの問題を若者は抱えていた。ではどうすればいいのか? 僕は、高校生のうちにこの悩みを解決することが大事なんじゃないかという風に感じました。なぜなら高校というのは、彼らが地元にいる最後の時なのではないかと思うからです。

出身地を「気仙沼」ではなく「仙台」と書く高校生

僕が訪れた港町・気仙沼は、宮城県の最北端に位置する人口約6.8万人の町です。豊かな漁獲と卓越した加工技術で有名です。生鮮鰹はずっと日本一(水揚げ量)を誇っています。こうした魅力あふれる気仙沼、と僕は思っていました。

しかし、必ずしもそうは思ってなかったのが地元の高校生たちです。マックがない。スタバもない。こうした地元・気仙沼はどうもイケてない。そう思う高校生がいました。また、SNSで出身地を書くと思うんですが、「気仙沼」ではなく「仙台」と書いちゃう生徒。

そういった高校生もいました。そして、彼らに共通していたのは、実は彼らは地元を切り開く機会というものがそもそも与えられていなかった。彼らは取り残された存在だったということに気づきました。

だったら、この時こそ僕が今まで学んできた「イノベーション教育」というものを彼らに生かせるんじゃないかと思いました。彼らが自ら未来を切り開く方法を学び、それによって地元への思いも変わる。そう思ったからです。

地元でイノベーションを起こす3つのステップ

そこで立ち上げたのが、運動部でも文化部でもない、高校生が地元でイノベーション活動に励むイノベーションクラブ活動「i.club」です。高校生は地元をテーマに「気づく」「形にする」そして「伝える」、その3つのステップを踏むことで、地元でイノベーションを起こすことに挑戦します。

まず、最初に高校生はインタビューやフィールドワークという方法を学びます。初めて学ぶこれらのツール。さっそく彼らはそれを地元の人たちと行い、イノベーションの種となる発見を探します。そして形にする。

見つけてきた発見から新しいアイデアを生み出します。時にはキッチンに行って、試作品作りなどにも励みます。そして伝える。効果的な発表方法を学び、地元の方々を前にして、自分たちのアイデアを発表します。

このように高校生は地元の良さを再発見し、そこから新しいアイデアを作り、そして発表をする。伝える。それによって人々の行動や考え方に変化を起こす。そういったことを高校生は受けています。

本日は1つの物語を紹介したいと思います。それは、地元気仙沼の高校生がドライフードの未来を切り開くといった物語です。気仙沼にはドライフードの文化があったことをみなさんはご存知でしょうか? 

ドライフードを、ここでは常温保存がきく食べ物として考えたいと思います。気仙沼には豊かな漁獲、そして冬には乾燥した風が吹く。そういったこともあって、気仙沼ではふかひれやかつお節というものが実は昔から豊富にありました。

しかし今はどうか。今ももちろんかつお節やふかひれはあるんですが、日本全体として、新鮮なものにより価値が置かれるようになって、さらに輸送技術や冷凍・冷蔵技術の発達によってこういったものに価値が置かれることは少なくなりました。そこで立ち上がったのが15人の地元の高校生。何とかこの未来を切り開けないか。高校生による地元へのインタビューが始まりました。そこで彼らはあるドライフードと出会います。

カツオのなまり節を再び気仙沼の食卓へ

それがこちら、カツオのなまり節との出会い。みなさんなまり節はご存知でしょうか? なまり節は簡単に説明するとかつお節の一歩手前。いぶす回数が少なく、身を食べられる。昔ながらのドライフードです。気仙沼の食卓の上では、なまり節ときゅうり、それにマヨネーズをかける。そういった光景がよくあったそうです。

しかし今ではこうした光景も少なくなりました。中には、なまり節の存在すら知らなかった、そういった高校生もいました。このままでは地元の良さが失われてしまう。「本当にこれでいいの?」と、ある高校生が言いました。自分たちでも何かできるんじゃないか、もっとこのなまり節というものが食卓の上に置かれる、そういった未来が作れるんじゃないか、そう考え、動き出しました。

i.clubでは3つの高校、進学校、普通校、水産高校が参加しています。彼らは実はお互いを全く知らない。しかしこのi.clubに来て、初めてお互いの良さに気づきました。そこで気づいたらひとつのチームになっていた。試行錯誤の中、彼らはあるアイデアにたどり着きました。

それがこちら、なまり節をラー油状にして作るアイデア。これによって、調味料として再び食卓の上に置かれるんじゃないか、そういうのを作れるんじゃないかと考えたわけです。はじめはアイデアに過ぎなかったこちらのなまり節のラー油なんですけれども、高校生の一生懸命な「地元を何とかしたい」「地元の文化を守りたい」という思い。

そのうち、大人の中では「工場を貸すよ」「原材料を出すよ」「ここで売ってみたら?」という声が聞こえるようになりました。気づいたら多くの方々と共に、地域の未来に向けて歩き出していました。それは僕だけではできなかったこと、大人たちだけではできなかったこと。高校生の地元に対する思いが地域の未来を切り開いたんです。

地域の未来を切り開くのは高校生

それだけではありません。冒頭で紹介した「気仙沼ってイケてないよね」って言っていた高校生。その高校生が言っていたことを紹介したいと思います。

「私はずっと気仙沼を出たいと思っていた。今でもその思いは変わらない。だけれども、今は色々学んでそれを持ち帰りたい。それを待っている人たちがいるから。だから私は地元を出て大学に行くんです。そのために大学に行ってみたいんです」。そのように大きく変わりました。これは僕たちにとって非常にうれしいことでした。

「地域の未来を切り開く主人公はだれなのか?」。それは地元の未来である地域の高校生たちなのではないでしょうか。取り残されていた彼らですが、イノベーション教育を通じて「未来は自分たちにも切り開ける」という自信を持つことになり、さらには「地元と生きる」という新たな選択肢までも生まれています。

彼らが変わることによって、地元の大人が変わります。地元の大人が一緒に変わることで、地域も変わる。そして地域が変わることで、未来が切り開けるのではないでしょうか。東北だけでなく、日本だけでなく、世界の地域の未来を。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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