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「働き方改革」成功の舞台裏(全3記事)

2018.01.23

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働き方改革のカギは「管理職の人事力」 部下のアウトプットを正しく評価するために上司が考えるべきこと

提供:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

「変化への適応を主導する人事」をテーマとした、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ主催のイベント「RMS Forum 2017」が開催されました。「『働き方改革』成功の舞台裏」と題されたセッションでは、積極的に改革を推し進めてきた3社が登壇し、それぞれの事例を紹介。現場の社員の考えや業績低下リスクなど、さまざまな課題に対して現在の進捗と今後の展望を語りました。

所定労働時間7時間を目指す味の素

司会者:次に、4名のパネリストのみなさまにご登壇いただき、パネルディスカッション形式にてお話しいただきます。それでは、ご登壇いただきましたパネリストのみなさまのプロフィールをご紹介いたします。

本間様は、株式会社野村総合研究所にご入社され、コンサルタントを経て、のちにスポーツナビ(現ワイズ・スポーツ株式会社)の創業にご参画されました。2002年に同社がヤフー株式会社へ傘下入りした際は、主にヤフー・スポーツのプロデューサーとして勤務され、2014年にヤフー株式会社執行役員/ピープル・デベロップメント統括本部長を経て、2016年4月より上級執行役員/コーポレート統括本部長に就任されています。

隈部様は、1991年に味の素株式会社にご入社され、入社後10年間は国内家庭用製品の販売をご担当されました。2001年より現在まで本社、工場、研究所、関係会社2社において一貫して人事労務の業務に携わり、2017年より現職、労務全般・働き方改革推進・健康経営推進・グループ共通基盤整備などに取り組んでおられます。

平田様は、1986年に日本電産株式会社にご入社され、総務部を経て、人事部へご異動されました。その後、教育研修企画運営業務、採用業務、人事関連業務に携わり、2005年12月より「日本電産ポジティブアクション」の事務局としてご活躍されました。2014年10月からグローバル経営大学校、永守経営塾の企画運営など創業者理念浸透教育をご担当され、2016年4月より人事部長に就任されました。また、2017年4月より女性活躍推進室を発足し、室長もご兼務されています。

大山様は、2001年に日本電産株式会社にご入社され、営業部を経て、人事部へご異動されました。その後、人事制度企画、労政関連業務に携わり、2005年12月より「日本電産ポジティブアクション」のメンバーとしてご活動されました。2015年10月からは女性活躍推進プロジェクトをご担当され、働き方改革実行に向けて、在宅勤務、時差勤務、時間単位年休制度の導入に携わっておられます。

なお、モデレーターは古野が務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

古野庸一氏(以下、古野):あらためてよろしくお願いいたします。

では、さっそくパネルをやりたいと思いますけれども、先ほど私の方から非常に大雑把なお話をさせていただいたので、まずみなさまから少し補足説明をいただきたいと思っております。はじめに味の素の隈部様、お願いいたします。

隈部淳二氏(以下、隈部):味の素の隈部でございます。

今ご説明いただいたものに加えて補足をいたしますと、この取り組みを始めたのは2008年になります。本格的に一歩踏み込んで始めたのは2013年ですので、かれこれ10年近く働き方改革については取り組みを進めてまいりました。

最初から人事部だけが主導して進めてきたということではなくて、労使、組合と一緒に手を組んでやってきたというのが1つの特徴なのではないかと思います。

2013年から「Work@A」ということで各種制度を入れて一歩踏み込んだ取り組みにして、2016年もう一段ギアを入れようということで、ワークスタイル改革とマネジメント改革の2つを軸として、更に踏み込んだ施策を展開してきています。

この2016年からのゼロベースでの働き方改革ということで、所定労働時間を短縮しました。具体的には7時間35分あったものを今年から7時間15分に、20分縮めました。最終的には2020年までに7時間に所定労働時間を減らすという目標を置いて進めています。

本年から会社の基本労働時間を8時15分から16時半の7時間15分にしていますが、このことによって、例えば女性の育児短時間勤務の方が、育短を取らずにフルタイム勤務に戻すといった効果なども出てきているということがいえると思います。以上、補足になります。

古野:一斉に残業しない日というのがありますよね。たしか水曜日かなにか。

隈部:そうですね。閉館時刻というのは通常19時に設定していますが、水曜日においては閉館が17時になります。

古野:そうですよね。実際、水曜日に行くともう16時半ぐらいから人がいないですよね。もうびっくりするぐらいいなくて。

隈部:出口に向かってダーッと(笑)。

古野:それがいいかどうかは別にして、「いない」ということを痛感しました。

社員の幸せを確保しつつ、会社として成長する

古野:では引き続き、日本電産様、お願いいたします。

平田智子氏(以下、平田):日本電産の人事部の平田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

補足なんですけれども、私どもは、働き方改革という名前がついてスタートしたのは約2年ほど前だったかと思います。「残業ゼロ」というのが表に出がちなんですけれども、残業ゼロが目的ではなくて、生産性を2倍にすることを目的として活動をしています。

弊社も味の素様と同じように、人事部が主導というよりは、人事部と経営企画部、それから弊社は組合組織はなく「親睦会」という社員代表組織があり、一緒に働き方改革をスタートさせているという状況です。

まだスタートしたばかりですので、成果という点ではまだまだこれからというところはありますけれども、今、社員一丸となって一生懸命やっています。

古野:ありがとうございます。では、最後にヤフー様お願いいたします。

本間浩輔氏(以下、本間):ヤフーの本間です。

ヤフーは、なぜ働き方改革をやっているかというと、大きく分けて2つあります。1つは、社員に幸せになってほしいと宣言しようということ。2つ目は、社員の幸せを確保しつつも、会社として成長していくこと。この2つの連立方程式を解いていくというのがヤフーのやり方になります。

社員の幸せについては、これまで「幸せを感じるのは社員なんだから、会社としては十分なお給料と休みと安全な環境を提供する」という考えだったんですけど、これは少し古いかなと。自己責任で任せる時代ではなくなってきたのかなと思って、一歩踏み込んだということです。

それから会社の利益成長についていうと、働き方改革を進めるためにも、会社が成長し続けることが大切で、ヤフーの将来への利益・成長を生み出しているのは社員ですから、社員が働きやすい環境を用意する。言い方を変えると、社員がコンディショニングよく自分の仕事に向き合えるような環境を用意する。

となると、長時間労働や、自分のリズム、コンディションが分かった状況で仕事に向かった方がいいだろうということで、その一端として働き方改革に取り組んでいます。

古野:ありがとうございます。ということで、つっこみたいところもありましたけれども、いったん全体にみなさんにお聞きしたいこととしていくつかの問いを用意しておりまして、その問いを中心にしながらパネルを進めていきたいと思います。

残業ゼロではなく、生産性を2倍に

古野:問いは5つほど用意しているんですけれども、まずは、現場の従業員は働き方改革をどのように思っていらっしゃるかというところです。まずは日本電産様にお聞きしたいと思っています。

2015年、猛烈に働いていたあの日本電産様が、「え、いきなり残業ゼロ!?」と。残業ゼロが目的ではないと分かっているんですけれども、「残業ゼロにするんだ」ということを永守会長が宣言したわけですよね。それを聞いて従業員の方は正直どう思ったのかということをまずお聞きしたいです。よろしくお願いいたします。

平田:最初に聞いたときには、本当に驚きました。ほかの社員も同様だったかと思います。ただ、ハードワークと言いましても、これまではどちらかというと時間で戦ってきたところがありますが、やはりこれからは生産性向上のためのハードワークというような意味合いです。

最初は本当に戸惑う声もたくさんありましたが、「なぜ生産性向上なのか」「日本電産の働き方改革とは」に関して、永守自らが常にさまざまな機会で、あらゆる場面で言い続けてきたということがあります。

先ほど申しましたように、残業ゼロが目的ではなくて、生産性を2倍にすることが目的なんだということ。それで会社が更に成長していくということを、朝礼の場や研修の場、あるいは社内報であったりメールであったり社内ポータルであったり、そういったところで何度も何度も繰り返し言い続けていました。

これによって社員がその重要性を認識し、意識を少しずつ変え、生産性の向上を目指すことによって、実際に時間外の残業時間も段階的に減っているという状況です。

古野:それは、2015年以前もそのような話があったのでしょうか。要するに、もともとあったものを2015年に言い始めたのか、それともそれ以降から突然始まったのかでいうと、どういう感じなんですか?

平田:以前から生産性向上という話はありました。

古野:そうですよね。生産性の向上は大事ですもんね。

平田:ただ、これだけ強く打ち出したのは、2015年頃だったと記憶しています。

古野:なるほど。永守様自身は過去にすごく長く働いていらっしゃいますよね。過去は働いてましたよね?

平田:そうですね。最近は自身も少しずつ変わってきているのではないかと思います。

古野:少しずつ早くなってきている。でも、すごく仕事が好きに見えるんですけれども(笑)。

平田:そうですね(笑)。

古野:でも、そこは一生懸命心がけていると。

平田:はい。そうですね。

古野:永守様じゃないから分からないと思いますけれども、本心として、やはり10兆円企業になるのであれば、あるいはグローバル企業になるのであれば、こういう働き方をしないとまずいんだとすごく思われている感じですか?

平田:そうですね。やはり当社は数年前に1兆円になりましたけれども、やはり1兆円企業にふさわしい働き方というのが必要なのではないかということをトップは申しております。時間で戦うというよりはやはり生産性を上げる、世界で戦うためには生産性を上げなければ競争には勝てないという信念があって変化していったと思います。

古野:なるほど。ありがとうございます。

働き方改革を社員はどう思っている?

古野:世界で戦っている味の素様も、今、働き方改革をやられていますけれども、それを社員の方はどういう目で見ていらっしゃると理解すればいいですかね。

隈部:日本電産様とまったく同じで、成果、アウトプットを落として労働時間を減らすということはあってはならない。生産性の向上がまず第一であるということで取り組みを進めてきました。

社員も最初はどう進めていったらいいのか迷っていたところはあると思いますが、いろいろなかたちで制度を使いながら慣れてきて、自分自身の仕事を再設計するというところへ徐々に進んできているのではないかなと思います。

古野:なるほど、分かりました。先ほどのお話のなかでの質問なんですけれども、2008年からやり始めたあとに2013年にもう1回巻き入れてやったという話があると思います。2013年の「Work@A」の改革のときに、なにがダメで、なにを変えようと思ったんですかね。

隈部:2008年から入れた制度というのは、再雇用制度や育児短時間の時間延長であるとか、その制度を使わなくてはならなくなった方だけに限定された制度だったので、それ以外の方は基本的に自分には関係ないと思っている人が多かった。

いろいろなコンセプトを作って各組織に落としてはいったものの、「総論は分かるんだけども、基本的には関係ないと考える社員も多かった」ため浸透しなかった。これらの反省から、2013年に新たな制度を導入しました。在宅勤務やスーパーフレックスといったものを13年から入れたということですね。

古野:それは一部の社員ではなくて、「みんなそうだよ」「テレワーク、在宅勤務をみんな使えるよ、使おうよ」というかたちで進んでいっていると理解していいですか?

隈部:そのとおりです。

古野:分かりました。ではヤフー様にも少しそのあたりをお聞きしたいと思います。もともと「働き方改革ではない」と言っているんですけれども、現状どう思われているかという、雑駁な質問で申し訳ないんですが、お話しいただければと思います。

本間:社員がどう考えているかはよく分からないです。分からないというのは、「これで残業がなくてよくなったな」と思っている人もいれば、そうじゃないと思っている人もいると思うので、そこはさまざまだと思います。

ただ、やはり弊社においても「労働生産性を上げろ」「残るな」と言っていますけど、「じゃあ具体的にどうすればいいのか」という部分については、実は戸惑いがあるような気もします。

古野:少し質問を変えますと、いわゆるマネジメントの改革をやられたわけじゃないですか。要するに360度を導入して部下がもっと輝くようにしていったと理解していて、例えばフィードバックなんかも短期間のなかでフィードバックするというようなこと。しかも、一人ひとりの考え方・価値観、あるいは実際の家庭の状況みたいなものを踏まえながらマネジメントをやっていこうとしている。

それは、なにか社員から「昔に比べるとすごく変わったよ」という話があるのかないのか。「ハッピーにしようぜ」みたいな話もあったので、そのあたりについてどうなっているのかということをお聞きしたいです。

本間:本当のところは分からないですよね。もちろんサーベイもしますし、いろいろやっていきますけど、それがすべての社員に受け入れられているのかはよく分かりません。

ただ、例えば単純に1on1だけを見ても、2週間に1回以上の割合で8割の人が実際にやっているので、これは受け入れなければやらないだろうし。「才能と情熱を解き放つ」という僕らのコンセプトも、6年前に言い始めましたけど、いろいろなところで僕ら以外の人が言ってくれているということを考えると、それなりに考え方は、浸透とまでは言わないけど、理解してもらえているのかなとは思います。

「労働時間を短くしたら仕事が終わらない」という問題

古野:ありがとうございます。では、Q2に移りたいと思います。働き方改革の実行において、当然、業績低下リスクがあります。この場合は「労働時間を短くしたら業績が下がる」というコンフリクト、あるいは「それだと仕事が終わらない」というコンフリクトがあるという話を少しさせていただきました。そのあたりについて「今までどういうふうに扱っていったのか?」「今後どうやってそれを扱おうとしているのか?」というお話をお聞きしたいと思います。

まず、味の素様の方から、少しお話をいただければと思います。

隈部:業務低下リスクについてなんですけれども、そもそも仕事のアウトプットを落としてまで時短をせよというコンセプトでもないし、そういう指示も出していません。アウトプットは維持しつつ、より生産性を高めてアウトプットを向上させるために、どのように働き方を工夫していくかということだと思います。

古野:そのときによくある話で、経営としては「労働時間を短くしろ、業績は維持しろ」と。そうすると当然「生産性を上げろ」と言うんですけれども、それは経営者が考えるのではなくて現場で考えろというようなことは起こりがちだと思っています。

隈部:そうですね。ですから、その課題をクリアしていくために試行錯誤してきました。1年2年でいっぺんに推し進めていかないということ、相当時間をかけてゆっくり粘り強くやってきているということが、味の素らしさだということが1つあります。

課題をクリアするために、冒頭に組合と一緒に手を組んでやってきたとお話ししましたけれども、職場においては職場懇談会といったところでどういう課題があるのかということ。あとはもう少し大きな単位で支部レベルや中央、全社のなかではどういう課題があるのかということを、階層別に抽出してそれをクリアして徐々に進めてきたというやり方を取っています。

古野:こういう理解で合っているかを聞きたいんですけれども。仕事そのものって、やはりどうしてもたくさん無駄がありますよね。会議や資料の無駄だとか、あるいは「このプロセスはいらない」「この仕事ひっくるめて全部いらない」というものもあると思うんですけれども、そういったものをあぶり出しながら一つひとつを消していくような改革をやられた、と理解していいですか?

隈部:そうですね。現場レベルの改善ではそういうことも多々行われていると思います。もう少し大きな単位で意思決定しないといけないものは、上のところで解決してきたということだと思います。

古野:なるほど。分かりました。その同じ質問を日本電産様にも聞きたいと思います。味の素様はわりと長い時間かけてやられたということですけれども、一方で日本電産様は短期間で1年弱でやられたと理解しておりまして、それをどういうふうにやっていったんだろうということをお聞きしたいです。

大山直子氏(以下、大山):そうですね。弊社は、もちろん時間外を減らすことが目的ではないということで、社内で生産性を2倍にすることを目標に掲げて実践をしています。とにかくトップが常日頃言い続けており、社員一人ひとりが重要性を一人ひとりのレベルで理解して、意識を変えていっているというところです。

生産性2倍をどのようにやっていくかというところに関しては、もちろん各職場、各マネジャー、各社員が考えて実践していることもありますが、全社的には、7つの分科会を立ち上げまして、項目ごとに取り組みを行っています。

古野:7つの分科会をやられていますけれども、2015年に残業を半分にしようと言ったのは、それをやる以前の話だったと思います。短期間で残業を半分にできたというのは、どこにどんな手を入れたからできたんですか?

大山:それは発想の転換をトップが社内に徹底して言い続けたということかなと、一社員としては感じています。

古野:心がければ残業は半分になるということなのか、それともなにか構造的に手を入れていったのか、みんなで話して「この仕事はいらないね」ということを現場でやっていったのか、そのあたりはどうなんですか?

平田:先ほど冒頭に触れましたけれども、私も含めて200名ほどの社員にヒアリングを行いました。そのときに「みなさんの生産性を阻害しているものはなんですか?」の問いに対して、「上司が会議が多くて席にいない」というような声がございました。

まず第1段階としては、会議の時間、あるいは会議に出席する人数を見直しました。今まで1時間会議に使っていたのを45分に。それから30分の会議として設定したものは25分に。それからそこに出席するメンバーについて本当にそれが適正な参加者なのかなどです。あるいは、その会議はなにが目的で行う会議なのかということを明確にしました。

その会議に関しては、総務部がきちんと「各部署が何時間会議室を使った」というデータも全部作って吸い上げ、「前月から何時間減っている」という管理もスタート時はやりました。そこで少しずつ意識が変わってきたのかなと思います。

古野:ありがとうございます。

会社のビジネスモデルを人事が正しく理解すること

古野:本間様、これも聞いてもよろしいですか。先ほどお話があったように、「社員が最も高いパフォーマンスを上げるために頑張らせる、そのために働きやすい環境を用意していく」ということで、連立方程式という話もしていたと思います。たぶんここは上手に扱っているんじゃないかなと理解して、あえて聞いていますけれども、いかがでしょうか?

本間:このQ2に関しては、やはりその会社のビジネスモデルを人事が正しく理解することが必要だと僕は思います。要は、長時間働けばそれなりにアウトプットが出るというビジネスモデルなのか、そうではなくて、イノベーションが起きるとそれによって一気に波及効果が広がるようなものなのか。この理解がとても大切だと思います。

ITの場合は、1人が書いたコード、1人考えたビジネスモデルで数年会社が食っていけるということがあります。逆をいうと、長時間働いたから利益が出るのかというと、そうではない。

なので、業務低下リスクの話をするのであれば、やはり自社のビジネスモデルを人事がどこまできっちり理解するのかが1つ重要だと思います。

古野:そうですか。

本間:働き方改革を進める上で大切なのは、会社が利益を出す構造を考慮せずに、労働生産性を強調して、退社時間を早めることや、会議改革や効率を上げることを強調しすぎることだと思います。例えば、会議改革は働き方改革を進める上では大事だし、弊社も取り組んでいますが、一方で会議に参加する人数が減ったり時間は短くなった結果、本当にそこでするべき議論ができなかったり、言いたいことを言わなくなったり、会議が形骸化するケースもあると思うんです。

労働生産性について考えるのならば、会議だけでなく、上長が部下に対して明確な指示をしないことによってのやり直しだったり、戦略のミスだったり、責任者がいないことによって意思決定が遅れて時間がかかって、生産性が下がるということも範疇に入れるべきだと思う。

少し挑戦的な言い方にしますけど、もうそろそろ働き方改革と共に「生産性、生産性」と騒がない方がいいと思います。これだけ1年2年「生産性、生産性」と騒いで、すばらしい本も出たけれども、現場ではあまりうまくいってないとか、各社それぞれにこれだというソリューションがないということを考えると、どのようにして、労働生産性を改善するかという問いを見直す時期にきているようにも思います。

会議改革が働き方改革の邪魔をしている?

古野:それは生産性ではなくて、なにを持ってきた方がいいというふうに思いますか?

本間:分からないです。分からないけど、でも「働き方改革だ。労働生産性だ。効率だ。会議なくせ!」と言って進みましたかというと、難しかったというのがみなさんの感想ではないでしょうか?

古野:なるほど。おそらくレベルがいくつかあるかと思うんですよね。要するに「そうは言ってもやっぱり無駄な会議はあるよね」「この人はいてもいなくても同じだよね」ということは、それはそれであるだろうなと思います。

一方で、そこにやはりある程度ちゃんと人が参加して、それなりに議論を活発にしていくことにすごく意味がある会議もあって、どちらかというとそのあたりの議論をしていった方がいいかなとも思ってはいると思うんですよね。要するに、レベルが違うだろうなと。ぜんぜん無駄な会議って、やはりそうは言ってもたくさんあるとも思っています。

本間:おっしゃりたいことは理解できます。しかし、会議改革だけで労働生産性が改善し続けるというのは、無理があるのではないかと思います。

古野:なるほど、そこに終始してもしょうがない、というお話をしています? ……ちょっと違う?

本間:あまり労働生産性と言わない方がいいんですよ。あれは結果ですから。この20年で、KPIとかKGIを用いる経営手法が一般化して、それはよい影響をもたらしていたと思うけど、誤ったKPIを追求してしまい本質から外れてしまう例もある。僕は、働き方改革のKPIとして、労働生産性を強調しすぎても、うまくいかないんじゃないかなと思います。

古野:僕自身は……僕自身の意見はあまり言っちゃいけないんですけど(笑)。こう解釈しています。「生産性、生産性」と言ったところで、あまり社員の方や従業員の方はワクワクはしないだろうなと思っています。先ほどおっしゃったように、やはり一人ひとりの社員がパフォーマンスを上げていこうと思ったときになにをした方がいいのか。そのときに、すごくおもしろくて一人ひとりがワクワクする会議はいいと思うんですけれども、出ているだけでモチベーションが下がるような会議もあったり、あるいは資料のための資料を作るみたいなものはモチベーションが下がるのでやめた方がいいなと。

それがもう終わっている段階の会社であればその次を考えた方がいいかもしれないですけど、それ以前の会社もままあるかなと理解しています。大丈夫ですか? 隈部様なにかあれば。

隈部:当社は会議改革をやっていますが、会議改革1本で生産性が向上するわけではなくて、やはりいろいろな施策を打つことによって、それが複合的に絡み合って生産性向上に結びついていくものなんだろうと思っています。ですから、自分が生産性を向上させるためにどの施策をどう使うのかは本人に任せられていると思います。

だから単発の会議改革だけで生産性が大幅に向上するわけないというのは、当然だと思います。

古野:わかりました。

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