10年以内になくなる仕事で動機づけしても意味がない

藤原和博氏(以下、藤原):僕が気をつけたほうがいいだろうと思うのは、先生という仕事をしているのであれば、塾の先生であっても、キャリアに関わるそうした仕事だし、それからそういった話題(10年以内になくなる仕事)が出るときがあると思うのです。

今、例えば小学校でやっているキャリア教育は本当にプリミティブなもので、「どんな仕事に興味があるのかな?」と聞いて、「美容師」と言えば「じゃあそれを調べてきてプレゼンしてください」などと言ってみる。みんなが同じGoogleにあたって、だいたい最初の1つにしか開けないですよ、子どもたちは。

僕みたいなプロだと「もっと個人でおもしろいサイトがあるはずだ」と2つも3つも、探すのですが、そんなことはしないから。

みんな同じ資料にあたって、それを切り貼りして発表する。そうすると「プレゼンできましたね」などと先生が褒めて終わる。これ、やらないよりやったほうがいいかもしれないけど、僕はまったく意味がないと本当は思います。

つまり「なくなっちゃう仕事に動機づけしないでくれる?」ということ。こうした話と、それからどんな仕事でも絶対にAI化するロボットの影響を受けざるをえない。

税理士の方がここにいますが、税理士なんかは危ないですよね。もう9割方の仕事はおそらく持っていかれるのではないかと思います。あと1割は人間じゃなきゃという部分がおそらく残されると僕は思うの。だから、力のある人は絶対残ると思うのですが。

そういうことで、すべての仕事が変質していく。むしろこうした議論を、僕は小学校の高学年だってよろこんでやるのではないかと思うのですよね。

「長く考えさせる=深く考える」ではない

子どもとやる場合は、テーマを絞ったほうがいいです。なくなる仕事というときになんでもいいと言わずに、鉄道シリーズなどといって「改札はなくなったのよ」「最初はいたのよ」と。最初は人間がいたということをできれば写真かなにかで見せたほうがいいと思いますが。

それで「運転手がどうか」「車掌がどうか」「じゃあ駅の中にあるコンビニみたいなところはどうか」といったように、鉄道シリーズで潰していくほうが意見は出るのではないかと思います。要するに、アイデアを募るときに、子どもの場合はものすごく絞ったほうが深くなります。

それから先ほどからの経験でもうわかったと思うのですが、「長く考えさせる=深く考える」と思ったら大間違いです。2分です。だいたい2分。子どもたちだったら2分以上与える必要はありません。

どんな深いテーマでも、例えば「人間にとって宗教とはなにか?」というテーマでさえも、2分の時間を10回深めたほうがいいわけです20分考えさせるなんていうのはもう愚の骨頂。OK?

ということで、ストロークが早いほうが、今の子どもたちの脳内ヘルツは非常に早いのです。だってニンテンドーDSをやるときに、1秒間に8回もボタンを押しているときがあるのですよ。ヘルツが早いので、ぜひ早いストロークでやったほうがいいです。

最近の最新技術は「目に見えない」

あとね、この図はあの本にも載っている図ですが。子どもたちって実は、ロボットやAIが仕事を奪うなどと言っても「はぁ?」ということがあるのですよ。

要するに、ロボットやそういうものに対するもちろん恐怖感もないし、ぜんぜん馴染んじゃっているから、なんでそれが奪うのかみたいな、わからないことがあるの。この図を示してあげたほうがいいかもしれないなという、その図なのですね。

ちょっと解説しますが、僕らは、ここにいるすべての人は、僕も含めて、左側の社会に育ちました。どういうものかというと、未来というのが目の前に巨大なものとして開けていく、そういう未来感なのですよ。その組成する物質はだいたい鉄とコンクリートでした。つまり鉄とコンクリートによって未来が開けてきたのです。

でっかくてすごい高速道路ができて、そこに車をビュンビュン飛ばす。それから新幹線がどんどん早くなる。それからバンバン高いビルが立つ。大型船が就航する。飛行機がドンドン大型化するといったような。

そうした未来だったじゃないですか。だから大きな夢というのが抱きやすかったとも言えるのですよ。わかります? 大きな未来が鉄とコンクリートで目の前に見えたから、ドンドンニョキニョキ出てきたから。

ところが、今はどうなっているかというと、今の世代というのは半分の建設がネットの中で起こっているのです。ここが非常に大事なところなのです。ネットの中だから、その巨大さが見えないのですよ。本当はすごく強大なものなのだけど、見えないでしょ。

さらに言うと、最先端の技術がiPS細胞だったり、ナノテクノロジーだったりする。今の最先端のものは、全部見えなくなっているわけです。わかります? だから、子どもたちは夢を見にくいの。「大きな夢を持て」と言っても「はぁ?」となっちゃうのです。わかります? 僕らが住んでいた世界と違うのです。

だから、これがわかればわかると思うのですが、例えば10年後と言うけど、10年後にもう1回ここに来ても、五反田の駅前を見ても、僕はそんなに変わっていないと思います。

つまり、AIやあるいは……ごめんなさい。あのスピルバーグの映画の『A.I.』、あるいは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように、このビルの壁を車が駆け上っているようなシーンを見ることはできないと思いますね。30年経っても見ることはないのではないかと僕は思います。

つまり、外見はそれほど変わらないのよ。外見はそれほど変わらなくて、10年後に来てもいつものとおりの五反田かもしれない。だけど、こっちがガラッと変わっちゃっているという。そういうこと。これが要するに、人間の仕事に全部影響していきます。

人間の勘より全データを一瞬で調べ上げるAI

例えばなのですが、弁護士の仕事も絶対に変質しますよね。だって、法律の関連法規を調べたり、「この判例だったらこうだ」と調べるのは絶対AIが得意に決まっているじゃないですか。そのため、対人セッションは残ると思いますが、パラリー以外の仕事はなくなるでしょうね。税理士もさっき言ったとおりだし。

もっと言うと、医者の仕事も変質します。イメージでわかると思いますが、医者の仕事に診断と治療がありますが、治療はともかく、診断のほうにはものすごくAIが入ってきますよね。

どういうことかというと、例えば僕が肺がんの疑いがあってレントゲンを撮りました。レントゲンを見て、白い影か黒い影か知らないけど、医者の前で相談をするときに、どんなに僕がその医者のことを信頼していたとしても、その医者の経験だけで言われては困ると今後の僕は思うでしょう。

だって、世界中にその症例があるわけなので、もう一瞬にして多言語で世界中から僕と同じ症例と段階で、どういった薬を投入すると、どうなったか。どういった放射線投射をした結果、どうなったか。これを一瞬にして調べ上げるAIを信頼したいです。僕は。

逆にいうと、それに例えば保険以外に100万を払えと言われても、自分の命に関わるのであれば払うでしょうし、1,000万でも、もし自分の子どもがそうだったら、それは金を借りてでも使うんじゃない? そのようなニーズがすごく強烈にある。

今、アメリカではIBMのWatsonというコンピュータがもうすでにがんの診断に使われていて、有効だということが確かめられています。

仕事が猛烈に変質していくという、そのことはもう否定できないのですね。ですから「こういう議論をやることのほうが、同じキャリア教育でも大事なんじゃないの?」ということですね。

一条高校で実施した「未来の授業」

今日のメインコンテンツで一番大事なところは、このなくなりにくい仕事について、“車掌”をヒントに、もうちょっと考えてもらいたいのです。

一条高校でこの授業をやったときには、ここで生徒に2✕70センチぐらいで横長のポストイットを配りました。

それから、各班にA3以上の紙を配り、1人5個以上、できれば10個ぐらい、なくなりにくいほうの仕事を思い浮かべて、1枚のポストイットに一個書く。それを自分で溜めていきます。5人いれば50枚、20枚から50枚は集まるので、それをA3用紙に張り込んでいきます。

調べてもらう分類ですね。このとき、求人法やなにやら難しいことを学ばせなくても、3つの原則できれいにまとまります。それはなにかというと、仲間だし、別に先輩後輩だろうとなんだろうと失礼なことは関係ないので、同じものを書いたら上に貼っちゃってと伝えること。

例えば、看護士というのがあったら、そういうのは全部上に貼っちゃう。次に例えば、介護や教育支援が出てきたら、それはもしかすると関連しているので近くに貼っておいてと。それに車掌が出てきたらこれはちょっと違うじゃん。そうしたら、遠くに貼ってという。関連したものは近くに、ちょっと遠いかなと思ったら遠くに貼る。

そうするとなにが起こるかというと、20枚から50枚を貼り終わった段階で、グループができましたね。これを、グルーピング、分類というのですが。

子どもたちはどちらかというと、グループなどと言うよりは、ポケモンカードゲームをみんなやっていますから、“〜系”という言い方をしたほうが一発でわかるのね。水系、火系などがあったじゃないといったように。

そうして、関連で20枚貼られたグループを線を引いてこうやって囲う。そうすると、それに名前を付けていって、今度はグルーピングからネーミングという段階です。名前を付けます。

実際にあるグループは、先ほど僕が言ったような仕事に対して、「癒やし」という名前を付けていました。なるほどなぁと僕は思ったのですが。そうではなくて、3つ、4つ、5つ、6つぐらいあってもいいのです。