子どもと過ごす時間とお金、どちらが大切か

安藤哲也氏(以下、安藤):会場のみなさんから、スピンアウトしてしまった人たちになにか質問があれば。(家庭のために転職や副職を決めた時、)そこのところ、実はもっと厳しかったんじゃないですかみたいな。どうでしょう?

(会場挙手)

質問者1:今日は本当にありがとうございました。僕は自分のメンバーに言われて、今日たまたま来ただけなんですけど。僕もたぶんみなさんと一緒で、個人事業主を5年くらいやっているなかで、いろいろ悩んでいることもあるんですけど。

なので、みなさんのお話を聞いて共感できることとか、これから訪れることなのかなと思うことがたくさんありました。ありがとうございました。

質問なんですけど、みなさんの最高価値とか聞いてると、お子さん、娘さんなのかなとすごく思ったんですけど。

安藤:一応ファザーリング・ジャパンだからね(笑)。そこがまずありますね。

質問者1:そうですね。ただそれと引き換えに、収入とか得ているわけじゃないですか。報酬と言ったほうがいいんですかね。そこの最低のバー、みなさんあるんですか? 

もちろん、娘さんとか息子さんと過ごす時間が大事なんですけど、例えば年収100万円だったら、それは続けられない、無理だとかがあるのか聞きたいです。お金を稼ぐのと、そういう(家族と過ごす)時間を取りたいのか。

サラリーマンを辞めたのはバブル経済の崩壊がきっかけ

安藤:一般論的には、子どもの年齢によってかなり違うと思うんですね。子どもが小さい佐藤さんとか尾形君とか、40代のパパくらいだと時間のほうが価値が高い。

もちろん、お金も必要なんだけれども。逆に秋鹿さんや川島や僕らは、子どもがもう受験の時期なのでそれなりに稼がないと、子どもに対しての責任が果たせなくなるというか。

でも、そこにちゃんと経験とか、今までの実績とかがあるかないかだと思うんですよね。やっぱり僕らも自信があるので。大企業を辞めてるので。そこにいくまで、まさに理想の未来に向かうために、お金がかかる理想の未来にいくためには、じゃあ30代40代でなにをやればいいのかっていうのを、僕は考えてましたね。

30代から会社を出て、年俸みたいな感じで自分を鍛えていったっていうのがあるし。フィーがずっと上昇していったから、40歳になったときに、俺の30代は40代のためにあったんだって思ったし。50になったときも、俺の40代は50代のためにあったんだと思ったんで、今もやりたいことができてるかな。

なにかを守る、あるいはリスクを取らないほうがリスクなのかなって考えたときもあったし。逆に、リスクを取ることで成長していけたので。そこで自分のバリューというか、年収も上げることができたのかな。

この考え方とかやり方って、サラリーマンだと難しいかもしれませんね。ただ、僕は生きてバブル経済の崩壊を見たので、これからはたぶん会社にぶら下がってるだけじゃ絶対幸せになれないというのは、30歳のときに思っちゃったので、そこでシフトチェンジした。それで9回転職して、今にいたります。

質問者1:ありがとうございます。

お金は、幸せになる1つの手段にすぎない

川島高之氏(以下、川島):収入っていうのは、もちろん生きる上で当然「ライスワーク」って必要ですけど。あとは妻もどうなってるかっていうのもあるし、自分の将来像がどう描けるかっていうのもあるんですけど。

一番大事なのが、やっぱり妻と自分と子どもを見て、ちゃんとそこで、それこそストレスなく生活できるのっていうのはなんなのか? っていう1つの要因が収入なんだよ。

収入を理由にやるやらないっていうよりは、1つの要因っていう位置づけに僕なんかはずっとしてきましたね。あくまでも。物事を決める判断材料って1つだけじゃなくて、2つや3つあった。

安藤:お金は、幸せになる一つの手段にすぎない。そういう考え方だよね。

川島:一つの手段だけど、これを失くすと他もできないねっていう。ゼロイチではないのでね。だから、1つの手段っていう位置づけにしとくと意外に気が楽だし、絶対これだけ儲けなきゃいけないって言うと肩に力が入って、実は収入ってあんまり得られない。

そうでしょ? 肩に力が入ってるっていうのをわかりやすい例で言うと、できる営業マンは断り上手って言うじゃないですか。売り込まないって言いますよね。できる営業マンって売り込まない。

でも、肩に力が入って1円でも儲けなきゃと思うと、売り込んじゃいますよね。売り込めば売り込むほど叩かれて、収入が下がるっていうのが、営業の原則じゃないですか。

もうちょっと広い意味の仕事への収入も、同じだと思うんですよ。肩に力が入ってると、売り込まざるをえなくなっちゃうから。

佐藤雄佑氏(以下、佐藤):めずらしいというか、トリッキーだと思うんですけども(笑)。さっき独立したっていう話をしたんですけど、僕は新卒のときから独立するって。新卒から同期の奥さんと付き合って。

17年ずっと付き合ってるんですけども。なので、16年「独立する」って奥さんに言い続けて、16年「やだ」って言われ続けて。それでも独立するって言って、したんですね。

3年分のお金を前納し、自分のやりたいことを始めた

佐藤:なので、それなりに奥さんに説明責任というか、説明しなきゃいけない。もともと付き合ってたんで、大企業だからどうのこうのということもなかったですけど。それでやったことは、家にお金を入れるじゃないですか。あれの3年分を前納したんですね。そのお金を貯めました。

なので、事業のお金よりも家に入れるお金を先に貯めて、3年間ほっといてくれって言ったんですね。

安藤:尾形くんも3年だよ。半年じゃ。

尾形和昭氏(以下、尾形):そうですね(笑)。

(会場笑)

佐藤:なのでまず3年間は、奥さんとお金のことでは揉めないという余裕があります。逆に、自分も事業として3年間はやりたいこととかをやれるっていう自信がありました。

川島:目の前の収入目的に、安売りはしないでしょ?

佐藤:そうです。なので私が去年1年間やったのが、自分が得意だったのはリクルートでやってきたので、しかも人事の責任者をやってたので、リクルートの仕事がいっぱいもらえるんですよね。

だけどまず、「いりません」と。1年間リクルートの仕事を取らなかったですね。全部断った。あともう1個、人材紹介っていう僕の得意なキャリア相談とかの仕事があったんですけど、これもやらないと。

なので、得意なものを2つなしにしたときに、もう仕事がないんですよね(笑)。だけどそうすると、思いっきり生まれ変わるみたいな。

そういう1年を去年やったら、「大学院の仕事をやってくれ」って言われたりとか、「社外取締役やってくれ」「本を書いてみませんか」とか。僕はたまたまめずらしい経歴だったからかもしれませんけど、やったことのない仕事がわんさかきて。

ぜんぜん儲からないです。本なんて書いたってぜんぜん儲からないんですけど、それでもやったことのない仕事はやる。やったことある、お金がもらえそうな仕事はやらない。それをやるんだったら、独立した意味ないもんみたいな。まずそういうことを考えて、去年1年間やってきました。

子どものお迎えは幸福度が高い

佐藤:あともう1個だけ言うと、直近2年は自分の会社を大きくしないっていうことを決めてます。これは子どもが今4歳なんですけれども、お迎えが楽しいからですね。

安藤:お迎えが終わるまでは(笑)。

佐藤:子どもが小学校に行くまでは、事業を拡大しない。要は社員のためにいっぱい仕事を取ってこなきゃっていう状態じゃなくて、自分は3年分家にお金を入れてるし、別に仕事がなくてもなんとかやってはいけるので。それよりは、この2年間は子どものお迎えを大事にするとか、子どもといる生活を大事にするっていうことを決めました。

なので事業を拡大したいって、むしろするほうが自然だし楽なんだけども、あえてしないということを決めている。けっこう「〇〇しない」っていうことを決めるようにしてます。

安藤:それがパパの起業の価値の法則なのかな。

佐藤:どうでしょうね。子どもとご飯を食べたいからっていう理由で独立してるので。

安藤:そうだよな。起業したあとまた忙しくなって、ぜんぜん育児ができないっていう人いるもんね。本末転倒になってくるもんね。

佐藤:そうなんですよね。今朝は全部ですけど、お迎えも週2ロックしてるので、週2回はお迎えっていうので最初に入れちゃってるので、必ず行けるっていう状態を作っています。

安藤:お迎えも期間限定よ。本当に。

佐藤:送りをやってる人が多いと思うんですけども、送りってお別れじゃないですか。子どもと保育園でバイバイって。お迎えは再会ですからね!

(会場笑)

尾形:(会場を隅を指して)あっちから来るんですね!

佐藤:そう、飛んで来るんですよ! お迎えは幸福度高いんですよ。

安藤:けっこうやってる。最近増えてるよ。

佐藤:そこがすごく大事というか、僕にとってこのお迎えっていう仕事は、幸福度が高い仕事だなっていうのに気づいちゃったっていう。

安藤:そこで起業してもお迎えはキープするのは、やっぱりすごいじゃん。

川島:だから、基軸も持ってるってことでしょ。

社長はヒマにしている方がいい

安藤:やっぱり3年間貯めとかないとダメですね。

佐藤:あとはずっとじゃないので、2年間とか1年間とか期間限定でやることを決めるので、だから別に我慢というか……。

安藤:見えてるもんね。トンネルの出口が見えてるからね。

佐藤:あんまり一生こうだとかって決めちゃうというよりは、期間で決めるということをよくやってます。

小津:組織、従業員ができたりするじゃないですか。そうなると、自分がそうしたいということは、自分の時間を作るために人を使うんですよね。ほかの人を使うわけです。となると、自分の仕事をセーブするんじゃなくて、チームで同じような成果をあげるように考え出すことができたりするんですよね。

川島:そうだよね。僕も社長をやってたときは、いかに自分が楽になるか、いかに自分の時間をね。それこそ当時もNPO、ファザーリング・ジャパンとかPTAとかやってたから、その時間をいかに作るか。

作るためには、部下たちに活躍してもらわなきゃいけない。でも部下たちがブラックな仕事をやって俺は早く帰る、これは本末転倒なので、いかにチームで勝てるチームにして、部下も自分もいかに早く帰れるようにするか。完全にそうなるよね。

小津:自然となるんですよ。

川島:社長なんてヒマなほうがいいんですよ。社長がバタバタしてる企業って、僕はダメだと思うな。

安藤:なるほどね。そのへんもちょっとヒントがありますよね。