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孤独感に押しつぶされそう…(全1記事)

2017.11.24

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定年後にわかった、働くことの意義 元銀行員が第2の人生にパン屋を選んだ理由

提供:株式会社BSジャパン

「働くって“だから”おもしろい!」をテーマに、全世代に向け、転職や学生たちの就活など、働き方のおもしろさとその魅力を伝える番組『ジョブレボ!』。今回登場するのは、銀行を定年退職後、第2の人生としてパン屋を始めた村上孝博氏です。定年後も働き続ける村上氏のモチベーションの源泉はどこにあるのか?

なぜ銀行員からパン屋へ?

ナレーション:清々しい朝に颯爽と自転車で現れた男性。

村上孝博氏(以下、村上):おはようございます。

スタッフ:おはようございます。今日はよろしくお願いします。

村上:こちらこそよろしくお願いします。

スタッフ:あれ、いつも自転車で来られるんですか?

村上:そうなんです。

ナレーション:村上孝博さんはおよそ3年半前、ここにお店を開いた。その店とは、パン屋さん。 

8.5坪と小じんまりとしているが、ここが村上さんの城。

スタッフ:まずは着替えられる感じですかね。

村上:そうですね。

ナレーション:コック帽をかぶるとパン職人の表情に。

村上:これでいいですかね。

スタッフ:今日は何種類ぐらい作られる感じなんですか?

村上:今日は13~14種類ぐらいですね。

スタッフ:13~14種類?

村上:はい。

ナレーション:11時の開店に向けて、慣れた手つきでパンを作る。

スタッフ:パンはお好きなんですか?

村上:とくに好きというわけではなかったですね。どっちかといえばご飯で育っていますので。

スタッフ:今はどうなんですか?

村上:今はパンの良さというのがわかったということですかね。

ナレーション:実はパンにはまったく興味がなかったという村上さん。銀行員として長年勤め、定年するまで料理もしたことがなかったという。定年後、なぜパン屋さんを起業することになったのか?

村上:話し相手はいないし、ぶらぶらしてると身体の機能はどんどん衰えていくし、やることがないと本当によくないので。

スタッフ:定年のあと、そこにあったのは孤独と衰え。

村上:人との出会いというのはけっこう大事ですよね。

よかったらまた来てね。さようなら。ありがとうございます。

ナレーション:人との出会いの大切さとは? また定年後も働くというのはいったいどういう意味を持つのか?

この番組は「働くって“だから”おもしろい!」をテーマに、全世代に向け、転職や学生たちの就活など、働き方のおもしろさとその魅力を伝える番組です。

第2の人生にパン屋を選んだ理由

友近氏(以下、友近):こんばんは。

『ジョブレボ!』ですけれども、今回はまた今までと違うパターンで。定年退職されてから新しく起業というか、パン屋というまったく違う道に歩むという。

原田修佑氏(以下、原田):これまで多くの企業や求職者のサポートを続けながら、就活や転職などをテーマに国内外年間200回以上の講演を行ってきました、まさに仕事に関してエキスパートであります、佐藤裕さんです。

佐藤裕氏(以下、佐藤):よろしくお願いします。

友近:よろしくお願いします。なんかいいですよね。夢があって。

佐藤:いいですね。夢がありますね。

友近:もちろん苦労はあったと思いますけれども。ちょっと(VTRに)銀行員の頃の顔映りましたけど、今のほうがすごく穏やかというか。

佐藤:やさしそうな。

友近:やさしそうな顔立ちをされていますよね。

佐藤:そうですよね。

原田:定年後に起業される方って増えてるんですか?

佐藤:はい。今、定年後に働きたくても働けないという環境もたくさんあります。でもそのなかで一歩踏み出して、自分でお仕事を探したりする方も増えていますね。まだまだ非常に元気なので。

友近:でも、お料理もされたことがなかったとVTRでおっしゃってましたけど、その方がパンの世界に行っちゃうという。勇気もいるし、それを自分で食べるんならまだいいけど、人に提供する。そこは本当に難しい問題ですよね。でも、それをやられている。

佐藤:はい。

ナレーション:長年銀行員として働いたあとに迎えた、定年という人生の節目。その第2の人生にパン屋さんという道を選んだ。決してお金のためだけではないという仕事人。いったいなにを求めているのでしょうか?

定年後、人との接点が途絶え社会から孤立

ナレーション:2013年10月に開業した「カフェらいさー」。

11時の開店に向け、パンの仕込みが続く。

スタッフ:けっこう楽しそうですね。

村上:楽しいですね、やっぱり。ものができていくというのは、子どもの頃の工作じゃないですけど、銀行で札勘定したり営業したりしているよりは、こっちのほうがおもしろいかもしれないですね。

ナレーション:「カフェらいさー」は米粉で作ったパンとシフォンケーキのお店。米粉は水分を吸収しやすく、しっとりもちもちとした食感が人気。しかし、どうして銀行員だった村上さんがパン屋さんを開くことになったのだろうか?

――転職のキッカケ

村上:60歳になった時に、継続雇用ということで65歳まで働けるという選択肢はあったんですよ。ただ、母親が田舎でちょっと体調が悪かったので、長男の務めでもあるし、田舎に帰って看病しようということでいったん帰ったんですね。

ただ、急に悪化して亡くなってしまったので、田舎で1人いてもなにもやることはないし、ぶらぶらしてると健康にもよくないし、話し相手もいないし、これではダメだなということで。

ナレーション:定年後、まだ元気な60歳。しかし、なにもしないでいると心も身体も衰えていく実感があった。なによりも人との接点が途絶え、社会から孤立していた。

村上:本当によくないので、それはなんかしなきゃいけないっていうのはあったんですよ。

ナレーション:ダメになっていく自分。これを払拭するため、仕事を探し始めた。

村上:ハローワークには通ってたんです。なかなかないですよね。60過ぎて、仕事を通じて自分が充実するとか、そういう仕事はなかったと思いますね。

ナレーション:そんなときに偶然出会ったのが米粉パンの無料講座。この時、パンづくりに魅力を感じ、なんとお店を開業することに。

村上:やったことがなかったので、新しいことをやるということについてものすごくやっぱり楽しみがありました。だから、「おもしろそうだな」という感触はありました。

人の役に立っているという実感

焼きあがりました。

ナレーション:開店1時間前、パンが焼きあがってきた。

スタッフ:だいたい1日に何人ぐらいお客さんがいらっしゃるんですか?

村上:そうですね、1日15~20人、多いときで27、28人という感じですかね。

ナレーション:はたしてそれで採算がとれるのだろうか?

スタッフ:あの、一応赤は出ないぐらいっていう感じなんですか?

村上:平均すると、最近はそうですね。

ナレーション:3年目にしてやっと黒字の月も出てきたそうです。

――働く楽しさ

村上:自分が人様の役に立っているという実感が得られるのがやっぱり楽しいというか。それはぶらぶらしていてなにもしていないときに比べると、もう格段に違いますよね。

ナレーション:決して稼ぐということが目的ではなく、人の役に立ち、人とのつながりを求め、大切にしてきた。

スタッフ:村上さんってパンを扱う手つきがやさしいですよね。

村上:やっぱり自分の子どもみたいなものですからね。

ナレーション:村上さんの愛情がこもったパン。そんなパンを求めて近所の人がお店に買いに来ます。

オープン当初からお店を手伝う川西さんは村上さんの起業についてこう語ります。

川西充代氏(以下、川西):老後をどう生きるかということで目標を見つけてなにかされるということはとても良いことだと思います。うちも主人がいますので、定年して家でゴロゴロなにもしないでやることがないよりも、とても人生的にはすばらしい。

ナレーション:次にお店の看板メニューの1つ、米粉のシフォンケーキを作り始めた。このシフォンケーキ、米粉パンの講座で教わったもの。今では少し自己流のアレンジを加えている。

スタッフ:メレンゲなんか作ったことはあったんですか?

村上:いや、ないです。メレンゲという言葉すら知らなかった。これをやるまではシフォンケーキなんて食べたことなかったですもんね。知らぬが仏じゃないけど、知らなかったからできたようなもので、最初からそれを目指してたら、とてもね。

ナレーション:勢いで飛び込んだ、まったく知らなかったパンの世界。実際にお店をオープンしてみてどうだったのでしょうか?

村上:いろいろな人に手伝ってもらってなんとかなったという感じですよね。まあ「やってみればなんとかなる」というのが正直なところですよね。

これから定年後の再就職がカギに

原田:こちらが村上さんのシフォンケーキですね。

友近:うわ、やわらかいね。本当ふわふわ。いただきます。

(シフォンケーキを食べて)う~ん、ふわふわしっとり、最高の食感。

原田:やわらかいですね。

佐藤:おいしい。

原田:スタジオにカフェらいさーの村上さんにお越しいただきました。よろしくお願いいたします。

村上:よろしくお願いします。

友近:よろしくお願いします。本当においしいです。

村上:そうですか、ありがとうございます。

友近:だって今までシフォンケーキとか食べたこともないし、作ったこともなかったんですよね。

村上:そうなんです。はい。

友近:それでお店の商品になるというのが、もう私たちびっくりしてるんですけど、かなりお勉強もされたんですか?

村上:いえいえ。

友近:されてない?

村上:職業訓練の講座で2日ぐらいやっただけですね。

佐藤:2日やってできるんですか。これが。

友近:すごい!

村上:一応レシピみたいなものがあるので。

友近:でも、やっぱりセンスがもともとあったんでしょうね。

村上:いやいや。

(一同笑)

友近:否定はしますけれども。

村上:どっちかというと不器用なほうなので。

友近:不器用で本当になにも知らなかったから、逆に成功したということなんですかね。

村上:そうですね。きっと。

原田:最近やっと黒字になってきたとお話しされていたんですけど、なかなか黒字にするのは難しいんですか?

村上:銀行でも、やっぱり創業赤字といって3年間の赤字は仕方がないという1つの基準みたいなものがありまして、最初からある程度覚悟をしてましたので、ほぼそのとおりという感じですね。

友近:銀行員をやっていてよかったですね。そういう計算とか、あとはそういうビジョンがあると焦らずにできますよね。

村上:そうですね。わかってますからね。それはものすごく役に立っています。

友近:素敵。

原田:では裕さん。今回の定年退職からの起業、見えてくるのはどんなキーワードでしょうか?

佐藤:はい。ずばり「セカンドキャリア」ですね。セカンドキャリアというのは、もともとアスリートが引退したあとの就職だとか、子育てを終えた主婦の方のもう1回目の就職がフォーカスされていましたが、今は定年後の方々の再就職がセカンドキャリアという話で盛り上がっていますので、まだまだ増えるんじゃないかと思っています。

原田:どういう人が向いているとかはあるんですか?

佐藤:志が強い方だとか、今回のように社会とつながりたいという思いが強ければ強いほど、一歩は踏み出せるんじゃないかなと思いますね。

コミュニティに欠かせないのは「場所」と「食」

ナレーション:11時、開店の時間。

村上:いらっしゃいませ。

ナレーション:近所で働く常連さんが来店です。

村上:ありがとうございます。

スタッフ:よくこちらに来られるんですか?

客1:そうですね。おいしいので。

村上:ありがとうございます。やっぱり小麦のパンとはちょっと食感が。

客1:ぜんぜん違います。本当はパンはそんなに好きじゃないんですけど、ここのパンはやっぱり食べやすいというか。

村上:ありがとうございます。

スタッフ:ああいう言葉を聞くとうれしいですか?

村上:そうですよね。「あんまり食べないんだけど、ここのは食べる」って言われると、結局、存在価値があるということですもんね。

ナレーション:3年目にしてお店もやっと知れ渡ってきました。

客2:私は知らなくて初めてうかがったんですけれども、そしたら「なんかもちもちしてて普通のパンとは違うのよ」ってお友達が。

客3:先週買っておいしかったので(笑)。

スタッフ:あ、買ったんですか。ここのパン好き?

客4(子ども):うん、好き。

スタッフ:おいしい?

客4(子ども):おいしい。

ナレーション:カフェらいさーでは喫茶スペースも設けている。

村上:一応コーヒーと紅茶をお出しする。コミュニティに欠かせないのは「場所」と「食」ですよね。それだけじゃないんですけど、それがあると集いやすいし、食べ物を食べながら話すと話も弾む、ということです。

だから、そういうものが各地域に少しずつでも広がっていくといいなと。とくにこれから独居老人というのはどんどん増えていくので。

ナレーション:自らが孤独感で押しつぶされそうだった時期を振り返り、コミュニティ、つながりを広げたいと考えている。

このあとは、村上さんが自転車でおでかけ。いったいどこへ行くのだろうか? 

「昔の銀行員時代とぜんぜん違うね」

ナレーション:米粉パンのお店、カフェライサーの村上さん。これから近くのコミュニティセンターにシフォンケーキの納品に行きます。

スタッフ:銀行員時代の知り合いの方はなんておっしゃってます?

村上:「考えられない」「よく踏み切ったね」とか、「昔の銀行員時代とぜんぜん違うね」という感じですね。銀行員からパン屋という、あまりにも違いすぎることにやっぱりギャップがあるんでしょうね。「あの村上が?」という感じですよね。

ナレーション:こちらのコミュニティセンターのカフェでシフォンケーキとパンを置かせてもらっている。

カフェ店員:おはようございます。

村上:おはようございます。

カフェ店員:ありがとうございます。いつも。

村上:すいません。いつもお世話になります。ありがとうございます。

スタッフ:どうですか? 村上さんのシフォンケーキ。

カフェ店員:とても評判がいいので、切らさないように追加をお願いしたりしながら。

ナレーション:つながりが徐々に広がっていくと、心や身体に変化が現れてきたそうです。

村上:気持ちがそういうふうに前向きになっているので、身体も健康になっていきますしね。けっこう出かけるじゃないですか。イベントだとか、マルシェだとか、セミナーだとか。やっぱり身体を動かすし、新しい場所へ行けば、それなりに刺激も受けるし。

そこで話を聞いてくれば、また新たなことをやろうとか、がんばっている人を見ると、やっぱり自分もそれでさらにがんばろうという気になるので、そういう人との出会いはけっこう大事ですよね。

小さな子どもが来るとうれしい

ナレーション:夕方、棚のパンもほとんどなくなってしまいました。

スタッフ:今日はもう閉められますか?

村上:そうですね、一応開けておいて、シフォンケーキを作らなきゃいけないので、もしお客さんがいらっしゃったら……あれ、手振ってる(笑)。

(子連れの客が来店)

村上:こんにちは。いらっしゃいませ。

客5:すいません(笑)。

村上:もうパンがあんまりなくて、ごめんなさい。

客5:いえいえ。大丈夫です。(パンを選んで)これを。

村上:はい。ありがとう。ちょっと待ってくださいね。

客5:味がしっかりしていて、今の買った3つのやつも、なにもつけなくてもおいしいので。

(子どもにパンを渡す)

村上:よかったら、また来てね。さようなら。ありがとうございます。いやー、小さいお子さんがいらっしゃるとうれしいですよね。本当に。

スタッフ:しかも、うれしそうに買ってましたね。

村上:ですよね。でも、本当にこういうのがあると「やっててよかったな」って思います。

働くということは、社会とのつながり

友近:いいですね。お子さん、村上さんをめがけてわーっと走って来てましたもんね。

村上:そうですね。

友近:ああいうのはうれしいですよね。

村上:うれしいですね。本当にやってよかったという。

友近:表情に出てましたもんね。

原田:出てました。

友近:だって、銀行員をやってた時では味わえないことをたくさん経験できるわけじゃないですか?

村上:そうですね。はい。

友近:ねえ。

原田:しかも、最近は小学校からの依頼もあったということなんですよね。

村上:そうですね。うちのパン屋の看板を見て。総合学習という授業が今あるらしいんですけど、学校の花壇のところに田植えをやって、それを育てて刈取りをして、そのお米を粉にしてシフォンケーキを作るところまで、小学校5年生がやるんですよ。私にとってこれは本当にやってよかったということの大きな1つですよね。

友近:そうですよね。元同僚の人もやっぱり「あの村上が?」って言ってるわけですか?

村上:ですね(笑)。本当に私自身が想定していなかったことですもんね。だから、起業というのは、やってみないとわからないことがいっぱいあるんですね。いくら頭で考えて本を読んでも、そうでないことがいっぱいありますよね。だから、楽しいですね。

友近:これからどういう展開を?

村上:もともとはコミュニケーションの1つの場所として、私がやっているようなことを地域でやってもらうと、コミュニティがつながっていくのかなということがあって、そういうことをやろうという人たちがいたら、ノウハウを伝えてやっていこうかなと思っています。

友近:なるほど。さあ裕さん、今日のジョブポイントは?

佐藤:村上さんの話を聞いていて、働くということが人生にどこまで影響するかということを改めて考えるということと、意外と気づいていないんですが、働くって社会とのつながり、コミュニケーションだということに気づいたので、ふだんからこの意識を我々が持たなければいけないんだということを感じました。

友近:なるほど。ずっと続けていただきたいですね。

原田:本当ですね。

友近:お身体のほうは、病気とか大丈夫なんですか?

村上:今のところ大丈夫です。

友近:大丈夫ですか。もうこういうお仕事は本当に体がね、資本ケーキですから。

(一同笑)

これが言いたかったんです(笑)。

ナレーション:長年勤めた銀行を定年退職。新たなにパン屋さんという第2の人生を見つけた村上孝博さん。

――将来の目標

村上:モデルづくりということでこの店舗を作って、それが採算的に成り立って、なおかつ人の役にも立つということを広めていくということ。大きな目標があるので、やはり途中で頓挫してしまったのでは意味がないので、そういう意味では慎重に継続していかなくてはいけない。

ナレーション:人と人。人と社会がつながる仕事。定年後、心も身体も衰えていく自分に耐えきれず、求めた仕事。でも、それかきっかけで人とのつながりが広がり、心身ともに健康でいられる楽しいセカンドライフ。そんな村上さんにとって仕事とは?

BSジャパン「ジョブレボ!」にて6月2日(金)放送

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