創造的ではない作業をテクノロジーで効率化する

小野裕史氏(以下、小野): Googleを飛び出してまで、さらに素晴らしいプロダクトを作りたいという思いで会社を作られた佐々木さんから「優れたプロダクトを生み出すための考え方」というところでプレゼンテーションをお願いします。

佐々木大輔氏(以下、佐々木):はい。freeeの佐々木です。僕たちは、スモールビジネスに携わるすべての方が、創造的な活動だけにフォーカスできるような、そんな環境を作りたいということで。そうではない、創造的ではない部分というのを、テクノロジーで自動化したり、効率化したりと、そういうことをミッションにしています。

僕自身のバックグラウンドなんですが、僕は学生時代にデーターサイエンスを専攻して、その中でどうしてもデータを扱うところに行きたい、このようなことをやってみたいということで、マーケティングリサーチをインターネットでやる「インタースコープ」という会社でインターンを始めたんですね。

その時に、まず社内で当時アンケートをやるんだけれども、やったアンケートの結果っていうのを皆で一生懸命エクセルで使って、集計をしたり、分析をしたりしていくんですけど、そこはすごく効率が悪かったです。

それを見て、何でこんな表ではこんなカッコいいことをやっているのに、裏では、白鳥がバタバタやっているようなことをやっているんだ……というのを見かねてですね。

当時、僕自身はプログラムが書けたわけでも何でもなかったんですけども、その日にプログラミングを勉強し始めて、集計システムを自分で書いて、そこを自動化するということをやった経験があります。

ビジネスを新しくはじめる人にとって経理業務はコスト

あと当時、インターネットで調査ができるということでいろんな新しい調査の仕方というのがあるんじゃないか、ということで新規の調査の開発、手法の開発みたいなことやっていました。

インタースコープという会社は、その後、いろんな再編を経てマクロミルという会社に吸収されているんですけれども。今でもマクロミルのホームページの調査手法、リサーチメニューっていうページがあるんですけど、そこに並んでいる調査書っていうのはほとんど僕が作ったものなんですね。まだ生き残っているんだと思って、ちょっと感動したりしました。

その後、いろんな経験を経てですね、レコメンドエンジンの開発なんかを、ALBERTという会社でやっていたり、またGoogleでは中小企業向けのマーケティングというのを主にやっていて、日本それからアジアパシフィック地域の統括っていうのをやっていました。

今やっているfreeeというプロダクトなんですけれども、どこが特徴かと言いますと、まず1つはクラウドで全てのブラウザから使えるということ、もう1つは簿記の知識がなくても簡単に使えること。簡単に使えるだけじゃなくて、それが自動になるとそもそも全く入力しなくて済むようになる、ということが特徴となります。

今まで経理の業務ってどういうことをやられていたかと言いますと、まずひたすら領収書なり請求書なりというのを手で会計ソフトに入力していく、ということやっていたんですね。

この会計ソフト自体も、決して簡単なものではなくて、いわゆる簿記検定とか、ああいった知識を前提にしたもので。このプロセスを新しくビジネスをはじめて、こんなことをやりたいって思っている人達に、こんなことをやらなきゃいけないと思わせるのは、非常に世の中全体に対してコストなんじゃないかというふうに考えてですね。

リリース前のフィードバックは良くなかった

僕たちがやりたかったのは、この入力のプロセスっていうのを、もっと圧倒的に楽にできないか、というようなタイプのソフトウェアを作ろうとしました。結論としては、銀行やクレジットカード、こういったもののWebの明細から自動的にデータを取ってきて、どんなデータを会計ソフトに登録したら良いかを勝手に推測していくんですね。

ユーザーさんは、その結果をクリックして確認する。これだけで、どんどん登録をしていくことができる新しいタイプのソフトウェアというのを作りました。

やはりリリースする前にはですね、「これってどう思う?」っていうようなことを、いろいろユーザーさんに聞いていくんです。ユーザーさんというか、ターゲットになりうる人に聞いていくんですけれども。実は、フィードバックは全然良くなかったですね。

どういうことかというと、まず先ほどご覧いただいたように、みんな一生懸命会計ソフトに情報を入力しているんです。そうすると、そういう人達のニーズは、「もっと入力を速くしたいんだよ」って言うんです。

でもここで本当に問題なのは、入力を速くすることではなくて、入力しなきゃいけないという事実が本当は問題なのです。なんだけど、「もっと入力を速くしたい」というのが実際のユーザーさんが、顕在的に持っているニーズなんですね。

やっぱりここで、そもそも「なくす」という考え方が僕たちは必要だと思って、「それをどう思いますか?」って聞くんですけれども、あんまりみんなピンとこなかったりしちゃうんですね。

実は、プロダクトをローンチするまでの間っていうのは、結構「本当にこれでいいのかな?」と、皆にフィードバックってあんまりよくないんだけれども、「これで出して本当に良いのだろうか?」みたいなことを、結構議論したんです。蓋を開けてみると、1年で7万の事業所にご利用いただくソフトウェアに成長することができました。

従来なら複雑な給与計算をワンクリックで実現

最近は、給与計算ソフトも提供しています。中小企業の方に「バックオフィスの作業で何が大変ですか?」って聞くと、2番目に大変だと出てくるのは、給与計算なんですね。実は小さな会社だと85%の人たちが内製していて、さらにそのうちの半分の会社は、経営者が直接給与計算をしているんです。

そして、1日1人当たり28分かかると。だから従業員が10人いれば、およそ280分かかる。こういうような作業になります。それを何とかワンクリックにできないかといったとこに取り組んだのが、給与計算ソフトfreeeということで。

給与計算の事務って、プロセスがいっぱいあるんですね。なぜ大変かっていうと、いろんなところで入力して転記するというプロセスが多かったんですけれども、それをなくしたんですね。

従業員が直接入力するところ、あとそれ以外は会社がワンクリックでできるようにする。こんなことに取り組んで、新しい価値っていうのを生み出していきたいなというふうに考えています。

優れたプロダクトをつくるために大事な3つのこと

今回のテーマが、「優れたプロダクトのために何が必要か」というところだったんですけれども、僕たちはよく社内でもプロダクトの開発、もしくはサービス全体を考えていく中で、大事にしていることが主に3つあります。

1つ目は、本質的な価値があるのかどうかという、これを何度も自分自身にも、またチーム内でも、常に自問自答するということです。これは先ほどの、本当はユーザーに聞けば、「速く入力したい」っていうニーズが出てくると。

だけれども、じゃあ速く入力できる会計ソフト出して、それが本当に価値があるのかというのを、今回freeeを開発するに当たって、何度も自問自答してきたんです。やっぱりなくす方がいいと、ユーザーが求めているものではないかもしれないけれども、これはなくしてしまった方がいいプロセスなんだということを自分たちでデザインしていったっていうのが1つ目です。

2つ目に、先ほどの徳生さんの「百聞は一デモに如かず」もまさにそういうことだと思うんですけれども、何をやるにしてもとりあえずアウトプットしてみない限り、全然前に進まないんですよね。

「これってもしかして、うまくいかないんじゃないか」というような理由っていうのは、もう山ほどあるので。議論だけをしていると、絶対これってうまくいかないんじゃないかとか、こんなリスクがあるんじゃないかとか、何かこうネガティブな方向に議論がはいってしまう。

なので、絶対何かアウトプットして作ってみて、もしくはもういっそのこと作ったものをローンチしてしまうと。そこから出てきたフィードバックをもとに直していく。こういった考え方を持つことが重要なんじゃないかな。