「やらないことを決める」「とにかくアウトプット」 プロダクト開発の際にチェックしておくべき3原則とは?

プロダクト・イノベーション #2/5

IVS 2014 Spring
に開催

全自動クラウド会計ソフト「freee」の佐々木大輔氏、リクルートライフスタイルで「AirREGI」を手がける大宮英紀氏らが、自身がプロダクトをつくるうえで大切にしているポイントについて解説しました。(IVS 2014 Springより)

創造的ではない作業をテクノロジーで効率化する

小野裕史氏(以下、小野): Googleを飛び出してまで、さらに素晴らしいプロダクトを作りたいという思いで会社を作られた佐々木さんから「優れたプロダクトを生み出すための考え方」というところでプレゼンテーションをお願いします。

佐々木大輔氏(以下、佐々木):はい。freeeの佐々木です。僕たちは、スモールビジネスに携わるすべての方が、創造的な活動だけにフォーカスできるような、そんな環境を作りたいということで。そうではない、創造的ではない部分というのを、テクノロジーで自動化したり、効率化したりと、そういうことをミッションにしています。

僕自身のバックグラウンドなんですが、僕は学生時代にデーターサイエンスを専攻して、その中でどうしてもデータを扱うところに行きたい、このようなことをやってみたいということで、マーケティングリサーチをインターネットでやる「インタースコープ」という会社でインターンを始めたんですね。

その時に、まず社内で当時アンケートをやるんだけれども、やったアンケートの結果っていうのを皆で一生懸命エクセルで使って、集計をしたり、分析をしたりしていくんですけど、そこはすごく効率が悪かったです。

それを見て、何でこんな表ではこんなカッコいいことをやっているのに、裏では、白鳥がバタバタやっているようなことをやっているんだ……というのを見かねてですね。

当時、僕自身はプログラムが書けたわけでも何でもなかったんですけども、その日にプログラミングを勉強し始めて、集計システムを自分で書いて、そこを自動化するということをやった経験があります。

ビジネスを新しくはじめる人にとって経理業務はコスト

あと当時、インターネットで調査ができるということでいろんな新しい調査の仕方というのがあるんじゃないか、ということで新規の調査の開発、手法の開発みたいなことやっていました。

インタースコープという会社は、その後、いろんな再編を経てマクロミルという会社に吸収されているんですけれども。今でもマクロミルのホームページの調査手法、リサーチメニューっていうページがあるんですけど、そこに並んでいる調査書っていうのはほとんど僕が作ったものなんですね。まだ生き残っているんだと思って、ちょっと感動したりしました。

その後、いろんな経験を経てですね、レコメンドエンジンの開発なんかを、ALBERTという会社でやっていたり、またGoogleでは中小企業向けのマーケティングというのを主にやっていて、日本それからアジアパシフィック地域の統括っていうのをやっていました。

今やっているfreeeというプロダクトなんですけれども、どこが特徴かと言いますと、まず1つはクラウドで全てのブラウザから使えるということ、もう1つは簿記の知識がなくても簡単に使えること。簡単に使えるだけじゃなくて、それが自動になるとそもそも全く入力しなくて済むようになる、ということが特徴となります。

今まで経理の業務ってどういうことをやられていたかと言いますと、まずひたすら領収書なり請求書なりというのを手で会計ソフトに入力していく、ということやっていたんですね。

この会計ソフト自体も、決して簡単なものではなくて、いわゆる簿記検定とか、ああいった知識を前提にしたもので。このプロセスを新しくビジネスをはじめて、こんなことをやりたいって思っている人達に、こんなことをやらなきゃいけないと思わせるのは、非常に世の中全体に対してコストなんじゃないかというふうに考えてですね。

リリース前のフィードバックは良くなかった

僕たちがやりたかったのは、この入力のプロセスっていうのを、もっと圧倒的に楽にできないか、というようなタイプのソフトウェアを作ろうとしました。結論としては、銀行やクレジットカード、こういったもののWebの明細から自動的にデータを取ってきて、どんなデータを会計ソフトに登録したら良いかを勝手に推測していくんですね。

ユーザーさんは、その結果をクリックして確認する。これだけで、どんどん登録をしていくことができる新しいタイプのソフトウェアというのを作りました。

やはりリリースする前にはですね、「これってどう思う?」っていうようなことを、いろいろユーザーさんに聞いていくんです。ユーザーさんというか、ターゲットになりうる人に聞いていくんですけれども。実は、フィードバックは全然良くなかったですね。

どういうことかというと、まず先ほどご覧いただいたように、みんな一生懸命会計ソフトに情報を入力しているんです。そうすると、そういう人達のニーズは、「もっと入力を速くしたいんだよ」って言うんです。

でもここで本当に問題なのは、入力を速くすることではなくて、入力しなきゃいけないという事実が本当は問題なのです。なんだけど、「もっと入力を速くしたい」というのが実際のユーザーさんが、顕在的に持っているニーズなんですね。

やっぱりここで、そもそも「なくす」という考え方が僕たちは必要だと思って、「それをどう思いますか?」って聞くんですけれども、あんまりみんなピンとこなかったりしちゃうんですね。

実は、プロダクトをローンチするまでの間っていうのは、結構「本当にこれでいいのかな?」と、皆にフィードバックってあんまりよくないんだけれども、「これで出して本当に良いのだろうか?」みたいなことを、結構議論したんです。蓋を開けてみると、1年で7万の事業所にご利用いただくソフトウェアに成長することができました。

従来なら複雑な給与計算をワンクリックで実現

最近は、給与計算ソフトも提供しています。中小企業の方に「バックオフィスの作業で何が大変ですか?」って聞くと、2番目に大変だと出てくるのは、給与計算なんですね。実は小さな会社だと85%の人たちが内製していて、さらにそのうちの半分の会社は、経営者が直接給与計算をしているんです。

そして、1日1人当たり28分かかると。だから従業員が10人いれば、およそ280分かかる。こういうような作業になります。それを何とかワンクリックにできないかといったとこに取り組んだのが、給与計算ソフトfreeeということで。

給与計算の事務って、プロセスがいっぱいあるんですね。なぜ大変かっていうと、いろんなところで入力して転記するというプロセスが多かったんですけれども、それをなくしたんですね。

従業員が直接入力するところ、あとそれ以外は会社がワンクリックでできるようにする。こんなことに取り組んで、新しい価値っていうのを生み出していきたいなというふうに考えています。

優れたプロダクトをつくるために大事な3つのこと

今回のテーマが、「優れたプロダクトのために何が必要か」というところだったんですけれども、僕たちはよく社内でもプロダクトの開発、もしくはサービス全体を考えていく中で、大事にしていることが主に3つあります。

1つ目は、本質的な価値があるのかどうかという、これを何度も自分自身にも、またチーム内でも、常に自問自答するということです。これは先ほどの、本当はユーザーに聞けば、「速く入力したい」っていうニーズが出てくると。

だけれども、じゃあ速く入力できる会計ソフト出して、それが本当に価値があるのかというのを、今回freeeを開発するに当たって、何度も自問自答してきたんです。やっぱりなくす方がいいと、ユーザーが求めているものではないかもしれないけれども、これはなくしてしまった方がいいプロセスなんだということを自分たちでデザインしていったっていうのが1つ目です。

2つ目に、先ほどの徳生さんの「百聞は一デモに如かず」もまさにそういうことだと思うんですけれども、何をやるにしてもとりあえずアウトプットしてみない限り、全然前に進まないんですよね。

「これってもしかして、うまくいかないんじゃないか」というような理由っていうのは、もう山ほどあるので。議論だけをしていると、絶対これってうまくいかないんじゃないかとか、こんなリスクがあるんじゃないかとか、何かこうネガティブな方向に議論がはいってしまう。

なので、絶対何かアウトプットして作ってみて、もしくはもういっそのこと作ったものをローンチしてしまうと。そこから出てきたフィードバックをもとに直していく。こういった考え方を持つことが重要なんじゃないかな。

目標から逆算して、やらないことを決める

あと最後に、「自分たちとして達成したいゴールっていうのは何か」という柱を立てて、「やらないことを決める」っていうのが大事だと思っています。これ実は、徳生さんの弟さんの徳生裕人さんに教えてもらったワードなんですけれども。

どういうことかというとfreeeは会計ソフトをやっているんですけども、会計ソフトってできなきゃいけない機能っていうのはすごくいっぱいあって。僕たちが日々悩むのは、じゃあどういう順序で実現していくか、さらにそれがあまり難しくなりすぎないようにどうしたらいいのかっていうことと格闘しています。

その中で、例えば今年の1月ぐらいまでの間は、確定申告っていうゴールのためにユーザーの役に立つことをしようと。まず、想定するユーザーは確定申告をやるというユーザーだし、ゴールは確定申告を楽にするということなので、全部その時点であった開発のアイデアっていうのをバァーっと並べていきます。

そして、これは確定申告に役立つのか、どのくらい役に立つんだということをまとめていって取捨選択する。こういったようなことをしていったんですね。

逆に言うと、どんなに今、ユーザーさんから求められているものであっても、今のフェーズでは申し訳ないけど遅らせましょうといったことで。やらないことを決めるっていうプロセスを踏むということを大事にしてやっています。話したいことは、もっといっぱいあると思うんですけど、とりあえずこの辺でいったん話を切ります。

多くの起業家を輩出するGoogle日本法人

小野:ありがとうございます。最近「Googleが第2のリクルート」みたいな内容の記事が日経新聞に掲載されたという話がおもしろかったんで、その話を少し紹介いただけますか。

佐々木:これは先日、日経新聞の記事でEx-Googler(Google卒業生)が作った会社についての特集があって、Google日本法人からの起業が増えていると。そんな中で、Googleが第2のリクルート、日本の第2のリクルートになっている、みたいな記事が出ています。

小野:つまりそれだけ、日本の国内でリクルート出身者の方がたくさん起業されているという。

佐々木:そうですね。なのでGoogleが後を追っかけているような形なのではないかな? ただグローバルでみると、Google、もとGoogle社員がファウンダーになっている会社は6000社以上あるといわれていて。

小野:6000社……すごいですね。

佐々木:これは、クランチベースっていう、テッククランチの起業データベースですね。それを調べてみると、何とそのくらいあることがわかったということですので、すごく多いなというふうに思います。

小野:ちょっと4番の方を出してもらえますか。さすが徳生さん、早速もうその記事が載ってますね。これ見慣れた顔も見えます。

徳生健太郎氏(以下、徳生):英語の日経にも出ているんですね、これは。佐々木さんがそこに大きく載ってて、スタートアップの人がどういう人脈でつながっているか、なぜか現役の僕だけが入っているんですけども、あとは全部卒業して、ちゃんとやっている人達ですね。

リクルート・大宮英紀氏の自己紹介

小野:すごいですね。人材輩出のひとつの、プロダクトセンターみたいな形になっているかもしれない、リクルートの大宮さんから一言お願いします。

大宮英紀氏(以下、大宮):リクルートライフスタイルの大宮です。リクルートライフスタイルが運営しているサービスはこちらになります。リクルートの中でも日常お使いいただく、サービスを私たちは運営しています。

ここでこのサービスと共に、ちょっと自己紹介させていただきたいんですけども。私は新卒でNECに入社しました。NECへ入社して、証券会社の基幹システムのリニューアルに携わって大体3年半ぐらいですね、プロジェクトマネージメントというよりもどちらかというとプログラミングのほうをやってました。NECではまれなんですけど、そこをずっとみっちりやって、リクルートに転職しました。

リクルートでやった初めて担当した仕事は「じゃらん」でして、その後に「ポンパレ」の立ち上げを数名でやりました。その後「ポンパレモール」もそうですし、「リクルートID」「リクルートポイント」「リクルートカード」をやり、現在は今日のLaunch padでお話しさせていただいた「AirREGI」をメインにやっています。

美容院の予約数を増やした「サロンボード」

大宮:リクルートはどちらかというと、イノベーションよりも、結構オペレーションが強い会社っていうふうに思われているところがあると思うんですが、例えばイノベーションを生み出すにもやっぱりオペレーションは必要だなと思っていまして。その1つの例がこの「サロンボード」と呼ばれるものです。

ヘアサロン(美容院)ですね、すごくアナログで運営されているところに、そういったサービスを提供していまして。何が価値かといいますと、通常であれば髪を切る時に今までは電話をしなきゃいけなかった。それって仕事をしていても、お店が開いている時間に電話しないと予約ができないということで大きな不都合だったんです。

そこで、こういったサロンボードを入れながら、ホットペッパービューティーの予約だけじゃなくて、電話の予約とか、ウォークインみたいなすべての予約を管理できるようにしたんです。それによって、ネットへの予約が積極的に行えるようになりました。

そしたら、夜11時とか12時とかですね、本当に会社帰りの際にネットで予約をする人が増えた。そういう例がありますし、今日お話しさせていただいた「AirREGI」も同じような考え方で店舗の業務を楽にしていく、そういうことをやっています。こちらが実際AirREGIが今入っているお店でして。

真ん中が、石垣島の乗馬体験牧場ですね。石垣島は離島なので、カード決済を入れるにも、今までであれば電話回線を引きながら、通知しないといけなかったようなものが、簡単にスマートフォンで決済をできると。

特に石垣島は新国際空港とか新空港ができて、海外の旅行者が増えてきて、こういったスモールビジネス向けのプロダクトを入れることができ、非常に喜ばれています。リクルートが持っているBtoB向けのノウハウがここにつながっているんじゃないかなと思っています。

AirREGIでリアルとデジタルをつなぐ

大宮:先ほどお話したサロンボードと、AirREGIの件数ですね。左側からサロンボードは予約件数なんですけれども、ヘアサロンで予約する人も、このぐらいいます。AirREGIも順調に今、伸びています。

AirREGIなんですけども、先ほどの手を動かすと同じだと思うんですが、1年前ぐらいの。ごめんなさい、すごくいっぱい出てきますけど(笑)。

小野:人気者ですね。

大宮:はい。1年前ぐらいに本当にベータ版として10店舗ぐらいでオープンしました。これって本当に、「やる、やらない」というよりも、「まずはやろうぜ」ということで、数名で店舗さんを見つけてきながら、ヒアリングをしながら、アプリを作って、実際にお使いいただいたんです。

それをフィードバックして、「AirREGI」というサービス名で数ヶ月後に世の中に出す。ですので、結局僕らが考えるよりも、マーケットに聞いた方が早いなと思っていることが、いっぱいありまして。

こういったこともやっていますし、先ほどお話させていただきましたが、このAirREGIっていうのは、今後ラストワンマイルとかなんですかね。ECショッピングの「ラストワンマイル」は、デリバリーとも言われているかもしれないですけど。

やっぱりECだけ、ショッピングだけではなくて、人とお店とか、人がお店に行くっていう行動もラストワンマイルに非常に重要だと思いますので、それをAirREGIで実世界とデジタルとを全てつないでいきたいなと思っています。

1人1人のサービスの使い方を知ることが重要

すごくざっくりと書いているんですけど、新しいイノベーションを起こすのに、まず僕が思うのは人であり、それを人が積極的に受ける制度かな、と思うのが1点目ですね。これは先ほどいろいろ言われているのでやめます。

2点目、オープンネス×コネクティビティとあるんですけれど、今後で言うとアプリとかが増えてきたときに、人々のアテンションというのが、アプリに直接行くようなると思います。

そういう意味で言うと、アテンションがいっぱい分かれてきている。そこには、できるだけ繋いでいきながら、根っこというかですね、最終的には僕らの方で店舗さんの業務も支援する。そういうこと考えて、新しいイノベーションを起こしたいなと思っています。

3番のペルソナとストーリーは、先ほどベータテストの話もさせていただきましたが、やっぱり4万人のクライアントではなくて、1人1人のクライアントがどう使っているか、どういうストーリーでこのサービスを使っているかを知ることが大事なんですね。

それが掛け算で4万クライアントがいると。やっぱり1人の人をちゃんと見ていかないと、本当に使われるサービスはできないなというふうに思っています。私からは以上です。

小野:ありがとうございます。

制作協力:VoXT

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