リクルートの人事責任者から起業家

安藤哲也氏(以下、安藤):育休が出たんで、じゃあ次は佐藤さんいこうかな。この人も育休で人生が変わった。

佐藤雄佑氏(以下、佐藤):みなさん、こんばんは。今、ミライフという会社で代表をやってます、佐藤と申します。よろしくお願いします。

私は、後で話しますけど、ずっとリクルートにいたんです。12年リクルートにいて、人事の責任者とかエグゼクティブのビジネスとかをやって。ちなみに僕のやった良い仕事の1つは、さっきいた西村(創一朗)君を採用したことですね(笑)。そのときの人事の責任者をやってました。

安藤:もう辞めちゃってるじゃん。

佐藤:2人とも辞めてるっていう(笑)。でも、それがリクルートっていう会社ですから。別にそれは痛手でもないと。

私は今なにをやってるかと言うと、名前は佐藤雄佑っていうんですけども、佐藤の佐はにんべんに左。にんべんに右が佑(すけ)なんですね。「左右バランスの取れた人間になるように」っていう名前なんですけれども、バランスが取れずに会社を辞めてしまいました(笑)。

今は自分の会社で、ミライフという会社をやっています。これは人事コンサルだったり、人材ビジネスだったり、働き方改革だったり。人事・組織、キャリア系なんでもなんですけれども、一応ここを本業としています。

もう1個は、事業構想大学院大学という青山にある大学院で、プロジェクトディレクターという、いわゆる授業を作る仕事をしています。

3つ目として、ファザーリング・ジャパンで、私はとくにイクボスの企業同盟の仕事だったりイクボスの研修なんかを、まさに安藤さん、川島さんと一緒にやらせていただいているというところです。あとは社外取締役で相手企業に入っていたり、そんなことをいくつかパラレルにやってるような生活をしています。

最近、この『いい人材が集まる、性格のいい会社』っていう本を書いたんですけれども。

いい人材が集まる、性格のいい会社

川島高之氏(以下、川島):けっこう売れてますので、みなさまもぜひ。

「最短最速!」の考えが変わったきっかけ

佐藤:けっこう人事的な観点で書いた本ではあるんですけれども、世の中には性格の悪い会社が多いのか(笑)、意外に買っていただいているようで。ポイントは、昔は外見ですよね。

就職人気ランキングとかで見ても、大手企業、東証1部上場企業とか有名な企業とか、歴史がある企業、お給料が高い企業みたいな、外見で選ぶのがやっぱり多かったし、今も新卒なんかはそうだなあと思うんですけど。

僕はずっとリクルートで中途採用、転職の仕事を12年やってきて、外見で会社を選ぶことはあっても、やっぱり辞めるときは絶対性格の問題で辞めますから。

次に選ぶときは性格で選ぶ。ということは、「性格ってなんだ?」っていう構造を説明して、こういった会社選びができたらいいんじゃないか。逆に言うと、企業はこういう会社を作れれば、いい人材が取れる。そんな構造を作れればと思って、この本を書きました。

私の簡単な経歴なんですけれども、最初はマーケティングの仕事をしていました。3年くらいですね。やっぱり最後は人だって思って、リクルートで人材ビジネスがしたいと思って、リクルートへ行きました。

けっこうご機嫌にやってたんですけれども、2009年のところでリーマンショックのあと、人材ビジネスが厳しい状態になって。私は当時支社長をやってたんですけれども、メンバーの半分を、早期退職にしなければいけないというような状況で、自分の転機が来ました。

それまでは好きな言葉は「圧倒的!」みたいな感じで、「絶対1位じゃなきゃいけない!」みたいなことをずっと言ってました。本当、「最短最速!」って言葉がすごく好きで(笑)。とにかく早くやるみたいな。早く上がるとか。けっこうギラギラしてました、ここらへんまでは。

ただ、そんなやり方はぜんぜん通用しなくて。メンバーを半分失ったっていうのがけっこう自分にとっては転機で、マネジメントスタイルも、絶対このままのやり方じゃ誰も幸せにしないということで、それこそ激ボスから、今やってるイクボスみたいな考え方に変わったのもこのタイミングです。

家族のことはなにもやってないから後悔すると思った

佐藤:そんなことをしてたら、「お前は人事をやれ」と。「全社のことをやれ」ということで、リクルートコーポレートの人事のほうに移って、ちょうどこのタイミングでリクルートが分社統合して、ホールディングスっていう体制を作るタイミングだったので、人事制度、組織、全部改定をするっていうところの人事をやっていました。

書いてないんですけど、ここで2012年にリクルートキャリアっていう会社、あとリクルートホールディングスっていう会社を作ったときに、私の仕事は1つやり切ったというタイミングで、ちょうどよく子どもが生まれるんですね。

2012年10月1日にリクルートホールディングスができて、2012年12月24日にうちの子が生まれる。こんなやり切ったタイミングで生まれたと。

もうやり切ったので、逆に言うとそれまでずっと家族のことに向き合えなかったところがあるので、考えたんですよね。本当に人生後悔するとしたらなんだろう、みたいな話を考えたんですよね。

そしたら、やっぱり仕事のことはたぶん後悔しないと。一生懸命やってましたし、好きだから後悔しないけれども、たぶん家族のことはなにもやってないから間違いなく後悔するということで、育休を取りたいということで半年準備して、半年間の育休を取りました。

戻ってきて、どうしてもやりたかったエグゼクティブのビジネスをやって、今は独立しているということになります。

なので、私は気づくと営業とかマーケティングの仕事からスタートして、人事の仕事をして経営の仕事をしているというふうに、気づいたら輪っかが増えてきたというのが特徴なのと。

もう1つは、育休を取って、MBAを取って、NPOをやってるみたいな。もはやどこを目指してるんだかわかんないみたいなキャリアになってきています。

ただ、なにが言いたいかというと、1つだけの縁じゃないということなんですよね。なので、職種で言ってもいくつかの職種があることで、自分にとってバリューがありますし、育休を取ってMBAを取ってNPOをやってる人とかいないので、そういう意味ではけっこう、こうやってお呼ばれしてお話ができたり。

要は希少性ですよね。希少性のある体験のお話ができるという意味では、1本でセールスマーケティングで日本一になるのは難しいけれども、このくらい6個掛けたらもう俺しかいないみたいな感じで、「意外にいける」みたいな。こんなことを、今特徴づけているところです。

奥さんを怒らせないコツは、「言われる前にやる」

佐藤:育休の話を少しします。うちの娘が6ヶ月のとき。こんなときに育休が始まって、ちょうど離乳食を始めるくらいのときですよね。10ヶ月くらいでつかまり立ちとかして、11ヶ月くらいになると外で遊ぶようになって、1歳になるともうけっこうはっきりしてきます、みたいな感じで。

たった半年なんですけれども、子どもが成長する初〇〇、初離乳食、初寝返り、初つかまり立ちとか。全部の瞬間を全部目の前で見て来たというのは、本当に幸せだったなあと思っています。

なので、「育休を取ってどうでしたか?」とか聞かれることが多いんですけれども、本当に100パーセント育休を取ってよかったかなと思っています。

ちなみに、ちょっとこのプレゼンには書いてないんですけど、育休半年取って1番お伝えしたいノウハウが1個だけあるので、それを先にお伝えしておくと。

どうやったら奥さんに怒られないかっていう話なんですけれども。半年やって編み出したものが、1つだけありまして。これは本当に一言なんですけど、「言われる前にやる」っていうことですね。

(会場笑)

安藤:なんだよ、そんなことかよ(笑)。

佐藤:これね、すごいことを発明しました。半年かかりましたからね(笑)。

安藤:会社ではやってるんだけどね、みんな。

佐藤:そうなんですよ! 新人とかには教えてるんですけどね。「気づけよ」って言ってるんですけど、家ではぜんぜん気づけないみたいな(笑)。そんな感じで。

例えば、家事って基本的には毎日の日常じゃないですか。やって当たり前みたいになりがちなんですけど、言われてやると基本的に0点ですよね。言われてやらないとマイナス点。まあ、バツですよね。

だから褒められようと思ったら、言われる前にやるしかないということに半年かかりましたね(笑)。

安藤:最短最速の佐藤さんが。

(一同笑)

佐藤:一応育休時代はアルバイト勤務っていうことになってますので。家庭にアルバイトとして入って、店長から教わるっていうやり方で。最初、対等でやったときはうまくいかなかったんですけど。

奥さんに「アルバイトだと思って教えてください」ってお願いしたところから、けっこうスキルも高まりましたし、関係性もうまくいって。結局は、言われる前にやることがハッピーなんだということに気づきました。これだけでもお伝えできただけで、本当によかったです。

ミライフという社名に込めた佐藤氏の想い

佐藤:最後ちょっとだけ、宣伝ではないんですけど、想いをお伝えしたいんですけども。会社名がミライフという会社を作りました。埼玉に(同じ社名の)ガス会社があるんですけれども、それとはちょっと意味が違ってですね。

(社名の由来が)「未来+ライフ+if」なんですけども。僕が一番こだわっているのがifで、「もしも」ってことですね。もしも未来がどうだったらっていうことを考えて、そこから逆算してなにをすべきかとか、どういうことをしたら理想の未来に近づけるんだろうかっていう、未来志向のコンサルティングをやっています。これは企業に対しても、個人に対してもやっています。

最後のページなんですけれども、普通考える現状はここでこうすべきだろうとか、こうなるだろうとか、何歳になったら課長になるかなとか、何歳になったらこうなるかなとか。そんなのがありますよね。「想定未来」って僕は言っています。

おそらく、このままいったらこうなるだろうっていう未来ですよね。いいこと、悪いことがあると思います。

だけどそうじゃなくて、「理想未来」。どうなったら自分はハッピーなんだろうかとか、逆に僕はさっきの育休のときなんかそうだったんですけど、後悔するとしたらなんだろうかというのを、もしも未来がっていうことで考えて、ここから逆算して、こうしたいとかこうしなきゃとかっていうやるべきことを決めていく。バックキャスティングで考えるっていうやり方なんですけれども。

そうすることで、本来だったら僕はリクルートの人事の責任者をやってたので、変な話、恵まれたポジションだったりしていたと思いますので、育休を取るなんてありえないみたいな世界だったと思うんですけども。

でも、後悔するとしたらそれしかないってわかっちゃった時点で、それは建設的な意見。世の中からすると無謀なチャレンジとか、意外なチャレンジに見えるかもしれないけど、自分はここを置いてからここを取ってるから、別にここは当たり前。だけど、非連続。世の中からすると珍しいと思われるということですね。

中学の頃から、進む道が決まってしまっていた

佐藤:これがミライフの考え方なんです。ライフシフトという観点でも、みなさんもたぶん「こういったチャレンジをするのって難しいよな」「育休を取るのって難しいよな」って思うんですけど、そうじゃなくて、次はどうなりたいか。そこに行こうと思ったら、逆算してこうしないとここには行けんということに気づくと、もう腹がくくれると思っていますので。

少しお仕事ではあるんですけども(笑)、こんなことをやっておりますので、みなさんよろしくお願いします。

(会場拍手)

安藤:みんな静かに聞いちゃった。

佐藤:すみません(笑)。

安藤:共通点はやっぱ娘だったね。

佐藤:娘でしたね。