スピーカー紹介

小野裕史氏(以下、小野):「プロダクト・イノベーション」というタイトルで、積極的にインタラクティブにやりたいなと思っています。

私がなぜこうやってGoogleグラスをかけながら司会をしているかというと、もちろん自慢したいのが8割、残りの2割は今日このスピーカーの面々が、非常に面白い面々になっておりまして。まず1番向かって左側から、Googleの言わずと知れた徳生さんです。拍手をお願い致します。

順番に隣に行きますと、そのGoogleを卒業されて、今「freee」というすばらしいプロダクトを作っている佐々木さん。よろしくお願いします。

僕がこういうふうに眼鏡をかけるような素晴らしいプロダクトを持っているGoogle、Ex-Google(元社員)のお2人に加えて、日本でも実に様々な素晴らしいイノべーティブなサービス、ビジネスを作り続けているリクルートから大宮さん、よろしくお願いたします。

そのリクルートを卒業されて、また同じく「KAIZEN platform」という素晴らしいプロダクトを作られている須藤さん、お願いいたします。

という4名でやっていくということで。Googleグラスをかけながらなんですが、せっかくかけたので、これはもったいないなと思っていまして。ちょっとスライド出してもらえればと思うんですが、これ私のツイッターアカウントなんですが、こちらにメンションをいただけると、自動的に僕のGoogleグラスに浮かび上がります。

何か「こういうテーマで聞いてみたい」ということや質問がありましたら、随時送っていただければ。そういう使い方もできるということでGoogleグラスを使いながらやってみたいなと思います。

徳生健太郎氏、Google入社までの経歴

小野:最初に「プロダクト・イノベーション」ということで、まずそもそも優れたプロダクトとはどういうものか、それを作るためにはどういう考え方、どういう心構えを持つべきかみたいな話を、ざっくりとそれぞれに4名の方にプレゼンテーションしてもらいたいなと思っておりますので、まず最初に徳生さんの方からお願いいたします。

徳生健太郎氏(以下、徳生):みなさん、こんにちは。Google開発の徳生健太郎です。スライド、お願いします。冒頭に簡単に自己紹介と、僕達が作るときの考え方みたいなもの、ご紹介できればと思います。

自己紹介となりますが、ぶっちゃけ、本(『僕がグーグルで成長できた理由 挑戦し続ける現場で学んだ大切なルール』)の表紙になりました。ありがとうございます。そういうことでしっかりQRコードも出しますので、皆さんカメラをとり出して今がチャンスですよ。皆さんスマートフォン出してぽちっと購入してください。ちなみに、僕に印税は入りません(笑)。僕が書いた本ではなくて、僕について書かれた本なので。

写真が出ているんですが、これ実は紙の帯でして、帯を取っちゃうと僕の名前が出てこないという。名前が35ページぐらいまで出てこないので誰かわからない(笑)、カバーを取らないでいただきたいというのが本音です。

簡単に略歴ですが、東京に生まれまして、結構早い時期にコンピュータをやるって決めて、86年に受験勉強が嫌になって、あともうひとつは彼女にフラれたってこともあるんですけれども、それで嫌になっちゃってボストンの高校へ留学しまして、92年からシリコンバレーに行きました。

その後、大学出てから、最初のスタートアップに向けまして、バブル前のバブルですね、それに乗って上手くM&Aを2000年ぐらいにやって、そのあと急に駄目になってきて。味を占めて2番目のスタートアップをした途中で、給料がなくなる。

仕方なく、次の仕事で3番目のスタートアップ、自分で始めた会社なので10人ぐらいとかでやっていたんですけども、このときはレイオフ(一時解雇)で。ということで、今のGoogleに入社、もう入社して11年くらいになります。

Googleで周囲の力を借りることの重要性を学んだ

徳生:2009年からGoogle Japanの製品開発本部長をしています。このGoogleの中で学んだことを、いくつかお伝えしようと思うのですが、まずは「1+1=2より大きくなれる」。これは開発とかのアイデアとか、ブレストとか、戦略とかの話ですね。僕スタートアップにいたので、「なんか自分でやらないといけない」っていうメンタリティーになっちゃうんですけれど。

放り投げてみると、世界中に仲間がいるので、やっぱり自分より良いアイデアが出てくる。個々が考えていくよりもいいアイデアが出てくるし、例えばエンジニアにかかると、エンジニアにあったソリューションが出てくる。

「Wisdom of the crowd」と書きましたけど、もっと周りの力を利用するというところで、イノベーションのアイデアもソリューションも、自分から考えたものが違うものが出てきて、最終的にはその方が良かったということは何度も経験しています。

もうひとつは、「百聞は一デモに如かず」。これはもちろん、「百聞は一見に如かず」を文字ったものですけど、やっぱりデータを扱う製品が多いのでデータをいじってみないと何ができるかわからない。これでなんか検索できるよねと思ってみても、検査方法やデータの量とかで、製品の性質が変わってくる。

試行錯誤の中からしかわからないもの

徳生:この背景に薄くあるのは、僕が昔Googleマップをやっていた頃に、昔は住所と電話番号と名前しか出てこなかったんですけれども、日本人はやっぱりマップはビジュアルだから、ビジュアルでどの店にするかを決めるよねって言うときに、アイデアを投げかけて、「僕はパートナーから写真を撮ってくるから、一緒につなげるよ」っていうふうなことをプロダクトマネージャーらしく貢献しようと思ったんです。

そしたら、エンジニアが、「健さん、それじゃつまんないですよ」って、「日本語でしか動かないし、BDの力で限られちゃうじゃないですか」って言って、「じゃあどうやるの?」って聞いたんです。

「もうWeb検索できるんだから、世界中からイメージを引っ張ってきて、住所で結びつけてできればいいじゃないですか」って言われて、「そんなことできるの?」「とりあえず2週間下さい」と言って、帰ってきて作ったのがこのデモで、世界中の言語で動いちゃったんですね。

しかも、彼もその2週間の中で、やっぱり試行錯誤しながら、専念してアルゴリズムを作ったところで、実際をやってみればできる。でもやってみないと、どうやって作るのかはわからない。

そうすれば、納期とか、どういう問題が予想されるのか、リスクも早くわかるし、戦略のプロポーザルを出すときも必ずデモを作ってからというような習慣がついています。

日本でヒットする製品は世界でもヒットすることが多い

徳生:もうひとつは、ちょっと誤解されているところで、日本のオフィスはローカライゼーションオフィスと思われる方もいるんですけれども、社員の9割、9割5分ですね。エンジニアはグローバルなプロジェクトを作っています。

ただ、そのグローバルでも、僕が教えているって言ったら僭越な言い方ですけれども、「日本でいけるものって、結構世界でもいけるものっていうのがあるよ」っていうところを教えています。

東京でしかできないプロジェクトっていうのがあるんじゃないかと。全部が全部そうじゃないですけどね、うちはサーチもやっているし、AndroidもChromeもやっているし、地図もやっているし、広告製品もちょっとやっているんですけれども。

その中でも、例えば六本木ヒルズに僕たちが引越したときにあの中で迷いに迷いまくって、「Googleマップがあるのに、何で中で動けないの?」っていうアイデアを、東京のチームで思い出して作ったのがインドアマップで、それは実はUSでも同時に展開しています。

小野:これは、日本発案?

徳生:日本発案、日本エンジニアがこのGMMのフロントエンドを全部作っていたんですね。でも、それも世界では「これは別に日本だけの問題じゃないよ」ということで、USと日本でオペレーションを含めて同時公開しています。

右側の2つのカードは終電カード、「Google Now」っていうAndroidで、Jelly Beanの以上の人は使えるんですけれども、スワイプすると、そのときに合った情報が出てくるという製品です。

飲みに行ったりしていて自分の家や、職場から離れているところにいて、「何時が終電なの」っていうときに自分の家を登録しておくと、ちょうど終電の数十分前ぐらい前から、こういうカードがパッと出てきて、今からこの駅に歩いていくと終電に間に合うように乗れるっていう。

マップとかで自宅を登録している人は多いので、出てきます。これはもちろんヨーロッパでも動くので、出してから実はロンドンのユーザーからツイートが飛んできたり、とかいうことがあります。こういったプロジェクトを色々やるようにしている。

震災時に感じたGoogleのミッションの意味

小野:Googleの回し者じゃないんですけど、GoogleNowは本当に便利で、特にGoogleグラスとの組み合わせが最高ですよね。例えば「千歳空港に何時に」ってカレンダーに入れとくと、それに大体間に合う時間前に情報が自動的にあがってくるんですよね。決して回し者ではないんですよ。本当に素晴らしいプロダクトだなと思って、今感動したのではさませてもらいます。

徳生:ありがとうございます。隣に座ってよかったな。これは意義のあるミッションがものをいう。Googleのミッションを日本語でいいますと、「世界中の情報を整理して、万人に価値あるものとして使えるようにする」です。

これが製品を作る上ではなくて、仕事というものを超えたレベルで共感できるミッション、これがあるからいろんな製品の戦略や目的がしっくりくる。それがAndroidであれ、Chromeであれ、情報にアクセスするためにどういう障壁を取り払っていくか、というところでの製品群が並んでいるということになるわけです。

これがあるからこそ、震災の時にも、そのときに必要な情報というのは、「娘はどこにいるんだろうか」とか、「おばちゃんの仙台の家は大丈夫だろうか」とか、必要な情報っていうところを社員全員が意識したので、上層部とかマネジメントとかの指示なしで、全員が普通の通常業務を放り投げて、パーソンファインダーとか、航空写真の更新とか、そういったプロジェクトに取り掛かることができた。

僕もGoogleに11年いるんですけれども、この時ほどこのミッションの意味を深く思わされたことは今までなかったです。今でもまだないです。

「ぶれないミッション」がイノベーションのカギ

徳生:といったところで、「どれだけ社員がぶれないミッションを持つか」っていうところが、イノベーションの方向性を形づくるうえで大事なものになっていると思います。これを読むと、ちょっとかっこよく気取って聞こえるんですけども東京でやっているプロジェクトばかりではないんです。

いろんなところでやっているプロジェクト、風船でインターネットがないところに飛ばしたり、自動運転車で運転をどうやってもっと安全にできるかを考えてみたり、コンタクトレンズで血糖値の測定を何度も針を刺さなくていいようにできないか、そんなプロジェクトが生まれてきます。

ただ、こういうプロジェクトがあるから、この会社って本当に本気で世界を良くできるんだ。ちゃんと目的があれば資金を惜しむことなく出してくれるんだっていうところの勢いが、エンジニアとかプロダクトマネージャーの意識っていうのをどんどん、どんどん高くしていくところで、「発想をでかくできる」というところのメリットがあると思います。というとこで、すごく長くなりました。

小野:ありがとうございました。

制作協力:VoXT