ブームの火付け役がメディアから消費者に変わった

上岡正明氏(以下、上岡):どうも、初めまして! みなさん、今日はわざわざお越しいただきましてありがとうございます。ちょっと暑いですよね。私も前半の挨拶まで着させていただいて、後半でポテンシャルが落ちるのでちょっと脱がせていただきますけども。前半は上着を着たままお話しさせていただければと思います。

今日は広報、PR、またはマーケティングの担当の方、経営者とかマーケッター、あと今は営業の方も多いと聞いております。ぜひこのテーマでお話しいただきたいということで少し長丁場になりますけども、今日はみなさんにためになるお話ができたらと思っております。

この中で広報・PR担当の方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

2〜3名なんですね。では、ほかの方はおそらくマーケッターや経営者、あとは個人で経営されていたりするのかなと思います。そういった方でも非常にためになるとっておきのお話もありますので、ぜひ聞いていただければと思います。では、いきましょう。

今日はみなさんがどういう目的で来ているのでしょうか。質問をするまでもなく、ブームをつくる側にいきたい、PRや広報で商品やサービスをもっと広めたい、これまでのマーケティングが効果がなくなってきていることを実感していたり、などですね。

自分のSNSをバズらせてみたい。あとは右肩上がりの宣伝費を抑えたいなど。私も経営者ですけども、社長に「ちょっと宣伝費を抑えろ」と言われているなど。そういったそれぞれのテーマや課題があると思います。

今日はそういったみなさんにとっておきの情報の広め方や、バズらせ方をご紹介したいなと思います。私の著書でもあります。この『共感PR』という考え方なんですね。

今、消費者は非常に賢くなっていますし、バトンがメディア側から消費者側に移ってきています。ソフトクリームが渋谷で流行っていたり、かき氷やパンケーキなど、全部SNSなどから広がっていますよね。ローストビーフ丼もそうですよね。そこにメディアがついてきているだけになっていますね。

消費者がメディア的な動き、活動ができるようになっています。そういった方々ともちろんメディアをSNSなどで巻き込んでクチコミで広げていく。こういったマーケティングに変えていきませんかというご提案になります。

これのとっておきのいいところは、お金がかからないところなんですね。もちろんうちはPR会社なので、うちに依頼していただくとお金かかるんですけども。自社でやる場合はコスト数万円、それは言い過ぎだとしても、まぁ数百万円。それで数十億の効果を生み出す。実際に、そういった成果も出ています。その事例も踏まえてお話ししていこうと思っております。

というところで、ちょっと脱がせていただきますね。すみません(笑)。(上着を脱ぐ)最近、私は炭水化物ダイエットを始めて痩せることに成功したのです。6キロくらい痩せたんですよね。ちなみにライザップは行ってないんですけども。ちょっとこのへん(お腹周り)邪魔なんですが、このままお話させていただこうと思います。

注目したのは「話題を演出していくこと」

上岡:その前にですね、私が誰なのか。みなさん非常に疑問に思っていると思うんですね。少し私のご紹介をさせていただこうと思います。

(スライドを指して)この写真は7年前くらいの写真で、かなり今と違う印象だと思うんですけども。

うちの社員も「この写真はやめてくれ」「営業に持っていくと恥ずかしい」と言われていますが、なかなか宣材写真を変えにくいんですよね。プロの写真家に撮ってもらったんですけども、「いや、これがいい」ということで。ずっと言い張ってこれを使っていますね(笑)。

私はもともと放送作家という職業をしていました。先輩にはそーたにさんとかおちまさとさん、小山薫堂さん。テレビを見ている方は名前を聞いている方がけっこういらっしゃるかもしれないですけども、そういった方と一緒にテレビを作っていました。作ると言ってもディレクターではないんですね。放送作家というのは、台本を作ったり、コーナー案を考えたり、そういったことをやっています。

例えば「笑っていいとも!」「スーパーJチャンネル」「タモリのSuperボキャブラ天国」でコント台本を作っていました。実際に「Superボキャブラ天国」では、ちゃんとコント台本が用意されているんですね。それを演者さんが選んで、そのままやるかやらないかを決めるかたちでやっています。

ちなみに「笑点」にもちゃんと台本があります。台本がある中で、それを演者さんが話すんですけども、当然話のプロですので使うか使わないかは演者さん次第なんですね。

例えばどうしてもネタが思い付かなかった日は、それを思い出して使ったり、それをさらにおもしろくして話してみたりということをやっています。

「笑点」という番組はスポンサーが付いて1本1億円くらいで作っているのです。そのため、「おもしろくありませんでした」「観客がいるのにうまくいきませんでした」というのはなかなか言えないですよね。エンターテイメントなので、ちゃんと台本、シナリオがあって、その中でプロの演者さんが話すからおもしろいんですね。

台本があるというのは当たり前のことです。PRも、自然発生的にクチコミや話題を作るわけではないのです。やはり話題を演出していくということが非常に大事です。

PRをがんばれば、上場させることもできる

上岡:28歳のときに会社を起こしました。理由は、「このまま放送作家でやっていって食べていけるんだろうか」という不安もちょっとあったんですけどね。もちろん、放送作家は1本10万円。10万円って1本ですよ? 「笑っていいとも!」だったら週4回あるので40万ですよね。それを10本持てば、月400万みたいな世界なので儲けることはできるんです。

しかし、先が短いんですよね。プロサッカー選手と同じです。やはり40歳、50歳になってくると感性が落ちてくるんです。そのため、おちまさとさんみたいに恋愛評論家になったり、秋元康さんみたいに作詞家にいかないとなかなか食っていけない世界でもあります。

そのため、28歳のときに会社を起こしました。それがPR会社だったのです。初めは苦労したんですけど、今では三井物産やソニー、三菱鉛筆、ドバイ政府などの観光PRをやったりしています。あとはユーグレナさんですね。みなさんもご存知だと思うんですけど。上場の4、5年くらい前からうちがPRしまして、「ミドリムシが地球を救う」みたいなキャッチコピーも私のほうで作りました。そして実際に上場させた、と。

うちの会社からだいたい15社くらいが未上場から上場です。PRによって……と言うと怒られますけども。PRもがんばって上場させることもできています。本も『共感PR』とあります。これが一番売れているんですけどね。

共感PR 心をくすぐり世の中を動かす最強法則

『うねりチャート底値買い投資術』、これが3万部くらいまでいってますが。

うねりチャート底値買い投資術―――100万円から始めて1億円を稼ぐ!

株でも成功もしていますが、やはり今はPRとして会社や社会に役立つご提案をしていきたいということで、会社を14年間経営してがんばっております。

今日はそういった意味では、こういった企業もご支援してきました。はい、すごい人なんですね! 拍手。

(会場拍手)

ありがとうございます(笑)。すみません。

数百万円で12番組に取り上げられたPR事例

上岡:過去にはこういった三菱鉛筆さんのPRを担当しました。「鉛筆削り入社式」をご存知の方はいますかね? 実際に三菱さんから「鉛筆のPRをしてほしい」と言われたんですね。広報の方だとわかると思うのですが、鉛筆のPRは難しいですよね? 

ちょっと神経衰弱みたいな感じでどなたが広報がわからなくなった(笑)。難しいですよね? 広報でいきなり鉛筆やってくれと言われても。

なぜ難しいかと言うと、物だからです。そのため、『モノマガジン』『DIME』といったところにしか出ないんですよね。いきなり「ワールドビジネスサテライト」で「鉛筆特集してください」というのは少し難しい。やはり新規性、新しい切り口、これまでになかった言葉を生み出さないと広がっていかないんですね。

この場合は、鉛筆のPRです。そこで、鉛筆をどうするかというストーリーを作ったんですね。それが鉛筆削り入社式です。

まず、三菱鉛筆の入社する若者たちに集まってもらいます。今の若者は、カッターで鉛筆を削れない。そこで、鉛筆を削ってもらって、入社後の抱負を書いてもらう。それを社長が聞いて、一人ひとりにコメントを話していく。

入社式でそういうことをやっている会社はないですよね。だから「おもしろい」と、メディアがこぞって取り上げてくれるんですね。(入社式のPRは)マイナビニュースから始まって、Yahoo!ニュースのトップに出ました。Yahoo!ニュースに出ると……Yahoo!砲というものを聞いたことがありますかね? ほとんどのメディアが一気に動きます。

そこからNHKのニュースに転載され、新聞が動き始めます。ネットが先で新聞が後ですね。昔と変わってきています。東京新聞や朝日新聞、読売新聞から出て、ここから1週間も経たないうちにテレビによる取材が一気に始まります。「首都圏ネットワーク」「ニュースウォッチ9」「ひるおび!」「Nスタ」「NEWS23」「あさチャン!」ですね。それから「めざましテレビ」「ノンストップ」。

だいたい12番組くらいに取材されています。12番組というのがどのくらいすごいかと言うと、例えばこれを電通さんに頼んで「同じくらいの規模で放映してください」と言ったら予算として30億から40億かかります。

三菱鉛筆さんは、うちにコンサルを頼んでいるのでお金はかかっているんですけども、だいたい数百万で同じことができてしまった。「アジエンス」というシャンプーを出している花王さんだとここまでできますが、普通の中小企業はできないですよね。

ただみなさんは、今日はここでそのやり方を知ってもらいます。8つの方法をお教えしますので、ぜひ自社でこれと同じことをやってみたら、いかがかなと思っています。

実際に私は、このセミナーで東京都から呼ばれたり、ついこの間も和歌山県まで行ってセミナーをしました。本当にこれでテレビに出たり新聞に取り上げられて行列になったり、売り上げを伸ばしている会社も実際にあります。絶対に不可能ではないかなと思います。

メディアに出る=営業的資産になる

上岡:弊社では家電もやっています。レイコップという商品ですね。これはアイオスが健康家電という新しいジャンルを作ったんですけども。5年前、布団に掃除機をかけることは誰もやっていなかったんですよね。布団に掃除機をかける。これが5年前だったら、たぶんお母さんに怒られていますよね。「あなたやめなさい!」みたいな。それまでは布団に掃除機をかけるなんて誰もやっていないんですよ。

その文化を作ったのが、レイコップなんです。布団に掃除機をかけるというのは、今では当たり前ですよね。これは韓国のブランドで、当時は撤退寸前だったんです。しかし、それをうちのほうでPRをして「とくダネ」「王様のブランチ」「ワールドビジネスサテライト」など、どんどん出していきました。女性誌、新聞ですね。それからネットニュースにも出て、今では年間200万台を販売しています。

ここの社長は李(誠晋)さんというんですけども、非常にイケメンの李社長なんですけども。一緒に撮影場まで行って、私が台本を作りました。元放送作家なので。ジャパネットたかたの高田(明)社長に私がプレゼンしたんですね。ゴミをこうやって絡めて、「ほら、こんなにゴミがありますよ」と。嘘じゃないんですけども。「そうやったら絶対に売れますから」と伝えました。

そうすると、「それ、いいね。100万台買うよ」。ここから一気にブレイクしたのです。

なぜ高田社長が100万台買うと決めたかというと、やはりすでにメディアで出ていたからですよね。メディアに出ている資料を持っていって「これだけメディアに出ているので絶対間違いないです」「それだったら、買ってやってみようか」というかたちになったんですね。

メディアというのは、とくにバイヤーのみなさまがいたら、こういった営業資料に混ぜることによって相手の信用を引き出したりできます。2次利用が5年6年と続けていけるというのも、1つの強みであると思います。

逆に広告はできないですよね。例えば読売新聞に15段。……15段とは専門用語ですけど。読売新聞にいっぱい広告を出してそれを営業資料に混ぜても「君のところすごくお金を持ってるんだね」で終わってしまいます。しかし、メディアでお話したようなかたちで出ていると「おたくってベンチャーだけど、これだけメディアに出てるので付き合う価値がある」と思ってもらえますよね。

50人の営業マンがいたら、これを持たせれば50人が同じプレゼンができるようになる。これも1つの大きな価値ではあります。PRは、いろんな目線で考えるといろいろな強みを引き出すことができます。

これをうまくやっているのが、すしざんまいさんですよね。すしざんまいの社長は、どこの店舗へ行ってもテレビに出た映像を流しています。これによって非常に売上を伸ばしているんじゃないかなと思います。

メディアは社会テーマに合わせて取材を始める

上岡:(スライドを指して)これはお寺ですね。このお寺は金剛院という池袋の椎名町にあるお寺なんですけれども。ちょっとみなさんに近いかもしれないですね。住職と息子さん2人でやっている本当に小さなお寺なんですね。私の母の檀家付き合いなので、特別にPRをしました。

なにをPRしたかというと、カフェ寺をPRしました。カフェのお寺ですね。でもこれ、なかなか出ないんですよね。(会場の中には)飲食店さんの方もいらっしゃると思うと思いますが、なかなかテレビに出しにくいです。なぜ出しにくいのかというポイントを1つだけ挙げますと、誰もが知っているおもしろくない情報を流してもメディアは絶対に動かないです。よくやりがちな悪い例ですね。

「1杯360円でおいしいコーヒーをお坊さんと一緒に飲める」をカフェ寺でやる。おもしろいですか? 自分がメディアだったら行きますか? 「あ、1杯360円のコーヒーをお坊さんと一緒に飲めるんだな」と思っても、メディアの立場だったらたぶん行かないと思うんですよね。京都にもありますよね。どこにでもある情報は、わざわざ取材しないですよね。

ではどうするか、というところですよね。そこをどう演出するか? ここがやはり肝になります。後半のほうで話ししますが、私たちがこのときやったのは、社会文脈に合わせるということでした。社会性を高めるということですね。

これは5年前のネタなんですけども、当時はインバウンドがすごく話題になっていました。どこの番組をつけても、秋葉原や銀座が映ってインバウンドの話をされていましたよね。あと女性の方だったら知ってますかね? 明治神宮でパワースポットブームだったんですよね。井戸でみなさんが行列になっていた。今行列になってるかわからないですけども。

パワースポットとインバウンド。これが社会文脈として社会性が高かったですね。そうするとメディアは社会テーマに合わせて取材を始めるんですね。実際に私は放送作家だったんですけれども、インバウンドが流行っている時期は、ディレクターが「おい、ちょっと来い。インバウンドのネタ探してこい。来週のこの時間はインバウンド特集するから」と言います。

新聞もそうですね。パワースポットブームだったら、「今日のできごと」みたいなところでパワースポットの特集する。そのため「パワースポットを探してこい!」となる。

メディアは社会性に合わせて初めから枠を抑えている。そこからディレクターや記者を動かしてるんですね。ならば、初めからそこに情報を提供したほうが早いですよね。

「メディアに出る→知名度が上がる→上場」という事例

上岡:この場合どうしたかと言うと、当初の「1杯360円でお坊さんが語りますよ」ではなく、「外国人に伝えたい東京の新パワースポットがオープンします」と言ってPRしたんですよ。これ、切り口がまったく違いますよね。しかも外国人は一切来てないんですよ。しかし「外国人に紹介したい」だったら嘘じゃないですよね。

外国人に紹介したい東京の新パワースポット現る。そうするとどうなるでしょうかね。「それおもしろいな」「今までにないですよね」「取材させてください」となり、そこで初めて1杯360円とかお坊さんが語りますよという話を出します。「これ(料理)5色で、仏教の5色のやつに合わせているんですよ」という話を初めてそこでできるんですね。まず聞く耳を持たせることが非常に大事です。

結果、「ワールドアイ」というNHKから世界100カ国に放映されたり、「あさチャン!」「グッド!モーニング」「としまテレビ」「スーパーJチャンネル」。それから5大紙全部に出ました。日経、東京、読売、朝日、産経、あとAERAですね。こちらでも特集されています。今では本当に外国人が来ます。行列の絶えないお店として、非常に話題になっています。

この場合は特別ですけど、お金はほとんどかけてないんですね。ちょっとした情報の作り方と伝え方。これを工夫するだけで行列を作ったり、いろんなメディアに出したりすることができます。これはみなさんに、このあとのワークショップで実際にやってもらいます。

先ほど、PRしている会社のうち15社くらい上場させているというお話をしました。つまり、上場を手伝ったりしているのですね。アスリート食堂という飲食店を運営しているバルニバービさんという会社があります。そこの佐藤(裕久)社長から話がありました、「これから上場しようと思っている」「ちょっと手伝ってもらえないか」ということで、上場までのPRをお手伝いしました。

こういったかたちで、全部違うテレビ番組ですけども、テレビに出したり新聞に出し、ひとりでに知名度が上がりまして、結果的に上場までもっていくことができた事例になります。

5年後、この中からブームやヒットの仕掛け人が出る可能性が実際にあるんじゃないかな。そんなに難しい方法論や考え方ではないと思っています。ただ、今のままでは難しいですよね。知識もないですし、経験もないです。でも大丈夫です! 安心してください! あ、ここ笑うところなので遠慮なく笑っていただいて大丈夫なんですけども(笑)。

(会場笑)

PRを成功させる「知識・スキル・再現性」

上岡:今日は8×3という8つのポイントでお話するので、必ずできるようになると思っております。今日はみなさんにそのやり方を伝授したいと思います。

まず基本の考え方というのがあります。これは非常に大事なお話でして、私は大学院でも行動心理学を勉強しています。大学院のMBAコースですけれども。

その中で私が研究しているのは、成功する人と失敗する人のパターンを研究しているんですね。その差は3つしかないんですよ。逆にこの3つさえ成功する側に持っていけば誰でも成功できる。これをセミナーのときにはみなさんに必ずお話させていただいています。私の研究テーマでも論文テーマでもあるので、少し聞いていただきたいと思います。

まず1つ目は、ブームや仕掛け人になるための勝者のパターンです。まず「知識がない」、これが勝者になれない理由の1つですよね。知識を身につけることが必要です。知識がないと、わかりやすく言うと電通のいいようにされたりとか(笑)。

博報堂さんに知識をどんどん振られて「その通りだ」と思ってしまったり、博報堂さん電通さんでないとできないなと思ってしまったり。でも本当はそんなことはない。みなさんに知識がないだけなんですね。

次は、「技術がない」。知識があっても技術がないとできないんですよね。だったら技術を身につければいい。勝つためにはそういった技術をしっかりと身につけていく必要があります。

知識と技術があり、さらにもう1つ大事なのが「再現性がない」ですね。再現性がないと、成功は長続きしません。経営もそうなんですけども、やはり一発屋的な経営者は長続きしないんですよね。それをしっかりと再現することが大事です。株もそうなんですけれども、運だけでは成功はできませんよということです。

逆を言えば、知識とスキル、再現性さえしっかり手に入れば誰でも成功できます。もちろんPR・広報でもうまくいくことができます。みなさんは今日せっかくセミナーに来ています。そういった戦術と戦略がないわけですから、知識を手に入れるところから始めて、まずは小さな失敗からスタートしていただきたいと思います。

失敗は必ずするんですね。初めての経験なので、失敗しないなんて絶対にあり得ないです。そこから最終的には再現性を高めて、それを知見に変えていくことが非常に大事です。逆に、これがあれば誰でも必ず成功できます。

経験とスキルを積み上げ、再現性を高めていく

上岡:(スライドを指して)本などを読んでいただくと、この御二方は同じようなやり方をしていますよね。宇野さんは再現性があるので、違うビジネスをやってもやはり成功してしまうということになります。これだけでトップ2割に、私の論文のデータの中ではなるかなと思います。油断しないとか野心を持つというのは、そのあとでも十分です。

これは私の人間工学や行動心理学の研究から導き出された1つの結論ではあります。私はPRだけやっているわけではなくて、こういった実際の理論も研究しています。

みなさん、経営者以外の方はこのセミナーに来ているくらいですので、やはりキャリアアップしたいとか、自分の成功に近づきたいという想いもあると思うので。

キャリアアップするためには、この5つの要素が非常に大事になります。しっかりと好奇心を持つ、それをしっかり持続させる。機会に着目をして、止まらずに、リスクをとって行動していく。これもキャリアアップには非常に大事な要素です。これはドクター・ジョンという方が論文で発表しているテーマです。

実際にそういうふうにやっていくと、スティーブ・ジョブズも言ってますが、勝手に自走しながら点が線になって、線が面になって立体になっていくんですね。これをやっていれば、誰でも同じ経緯を辿ります。

というかたちでしっかりとキャリアを積んで、あと今日のセミナーをいいテーマだと思って、できないと思い込まずに。まずは知識がないので知識を手に入れてもらいます。そして、失敗するための経験をスキルを積んでもらい、再現性を高めて、失敗しながらしていけばいいんじゃないかなと思っております。

テレビや新聞は、ネットやSNSのクチコミを追っている

上岡:みなさんはどやってバズる仕掛けを手に入れて、どうワクワクして世の中を動かしたいですか? 実際の本題に移りたいと思います。まずは、「バズる」がよくわからないという方もいらっしゃると思います。そこで「バズるってなにかな」ということをお話させていただこうと思います。

「バズる」とは、話題になっている、拡散する、キュレーションする、シェアされている、炎上しているなど。そういったテーマでよく話されますよね。

バズるというのは、良い意味でも悪い意味でもよく使われます。しかし、やはり企業を目立たせたいとかサービス・商品を売りたいと思ったら、バズったほうがいいです。クチコミで広げるのと同じような使い方ですね。とくに今ネットやSNS、クチコミが先で、テレビや新聞が後になっているんです。

昔は逆でした。昔はテレビや新聞がトレンドの先を行っていました。実際に10年前に放送会議をしていると、「アッコにおまかせ!」などなんでもいいんですけど、放送会議のテーブルの上には新聞や雑誌、『女性自身』などが置いてあるんですね。

みんなで調べながら「このネタおもしろいね」「このお店いいから行ってみよう」というかたちで実際にそこに取材するなどが行われていたんですね。だから「ダウンタウンDX」も10年前の番組とか見ると、構成会議でお菓子があったりすると必ず新聞や雑誌が置いてあって、ディレクターとかみんな読んでいたと思うんですね。

今はまったく風景が違います。今「マツコ会議」みたいな風景です。新聞などほとんどなく、みんなネットを開いて、誰かが「表参道においしいパンケーキ屋さんがあったと思ったんだよね」と言ったら、みんなバーっとネットで調べるんですね。「あ、このお店だよ」みたいな感じでシェアしながら「じゃあここに取材行ってこい」となるんですよ。

つまり、今ネットやSNSのクチコミなどが先なんですね。それを新聞や雑誌が追っているだけなのです。状況が昔とまったく変わってきている。だからブームは今、ネットやSNSで先に出ますよね。これがそういった理由なんですね。

みなさんもそういった意味では、ぜひSNSやネットをうまく活用して自社のブランディングやクチコミ、メディア誘致をしていくのが一番早いんじゃないかなと思います。

1次メディアに掲載されれば、ほかのメディアにも転載される

上岡:実際にうちにもお問い合わせが来るんですけども、だいたい8割の企業さんがテレビに出したいという要望です。

もちろんテレビでは「ワールドビジネスサテライト」「スーパーJチャンネル」などへ持っていくんですけども、ネットを騒がせたほうが早かったケースが非常に多いですね。このあと事例でもお話させていただきます。

とくにネットは今、拡散力が非常に高いです。例えばキュレーションというのを聞いたことはありますか? (参加者を指して)どういうところを知ってます?

参加者:教育だったら、教育業界のいろんな話題を集めた……。

上岡:そうですね、キュレーションはそういうことになりますね。

キュレーションサイトというのは、いろんな情報を集めるということなんですね。あともう1つ、PR業界からの目線でいくといろんなところに転載されて広がっていくというかたちになります。

例えば、1次メディアというものがありますよね。教育のサイトなどに出ると、ほかの教育サイト、より大きなメディアに転載を勝手にしてくれるんですね。まとめサイトとも呼ばれます。こういうところに転載される。ここからさらに大きなメディアがそれを拾ってくれて転載してくれる。

例えば美レンジャーやアットコスメに出ると、瞬く間に20メディア、30メディア、50メディアと広がっていく。これがネットの今のもう1つの力なんですね。

とくにAntennaやグノシーは、みなさんたまにご存知ない方もいると思うんですけど、自社で記事は書いてないです。先ほどお話したようにまとめているだけです。いろんなところから転載を受けている。ちなみにYahoo!ニュースはどっちだと思います? 自分たちで記事を書いているか、書いていないか?

Yahoo!ニュースも一切記事は書いてないんですよ。全部転載を受けているだけなんですよ。これ、非常に大事なことです。逆を言えばテレビも自分たちで記事をほとんど集めてないです。全部ネットや新聞から情報を集めているだけ。あれも2次メディアなんですよ。そのため、いかに有益な1次メディアに出して、2次メディアに転載させて大きく広げていくかが非常に大事です。

目立てば目立つほど、クチコミやSNSでシェアされる確率も高まりますよね。こういったかたちで世の中を動かしていくんですね、今のトレンドは。

テレビがテレビを呼ぶ情報連鎖

上岡:例えば、うちでやった「花のババロア」という商品が、大丸のランキング1位になったことがあります。これ、知ってます? うちがこの商品のPRをやらせていただいたんですよ。

食べられる花をババロアの中に入れたんですね。かわいらしいので、絵的にもおもしろいということでプレスリリースを送りました。そうすると、やはりネットから出るんですよね。マイナビニュースやナタリーなど、定番ですよね、女性だと。こういうところに出て、それを見た2次メディアが動き出すんですね。

テレビが動いて、それがさらにバーっとに広まっていく。テレビには情報連鎖という言葉があるんですけど、テレビがテレビを呼び込みます。例えば、知り合いの会社さんで「あの会社テレビに出たよ」と言ったら、「その翌週も出たよ」「1ヶ月後も出たよ」みたいな感じです。しばらくしてネットで検索して、その会社のホームページを見ると、ニュースのところに「テレビにいっぱい出ました」みたいな感じで紹介されることがありますよね。

テレビというのは、面倒くさがりなんですね。あと時間がないし、忙しい。だから、自分たちで取材しない。テレビの会社に行くと、モニターが並んでますよね。TBSだとすると、フジテレビがやっていたら「あそこへ取材に行きたい」みたいになるんですよ。そのために、テレビを並べているんですね。

自分たちでほとんど情報を集めていないので、1つのテレビでおもしろいものが出ると、そのほかからも次々と出ます。ここまで持っていくのが大事ですね。結果的に、これ全部違う番組なんですけども、どんどん出ていきました。非常に大きなムーブメントになりました。これが情報連鎖というやり方です。みなさんは情報連鎖を作り出すということを求められたらいいのではないかなと思います。

ユニクロが実践した、シンプルなPR戦略

上岡:では、今度は戦略と戦術編というお話をさせていただこうと思います。

具体的にどうやるのかというところですね。まずは広告とPRの違いです。今日はみなさん、広報の専門家ではないので、知らない方もいらっしゃると思います。そこで少しお話させていただこうと思います。あくまで弊社流です。弊社流の考え方です。

広告は、予算を使えばブームは作れます。実際にそういった会社もあります。広告をいっぱい出してムーブメントを作っている会社。ソフトバンクもそうですよね。あとアジエンスというシャンプーを出している花王。あれもムーブメントになったので、お金を使えばできます。

ただ使っている金額は50億や100億くらいになります。ある程度はメディアのコントロールが効くということが、大事なポイントですね。言えばちゃんとその通りやってくれる。なんと言ってもスポンサーなので。

先に言いますと、メディアのコントロールは難しいです。「このようにやってください」「この日に出してください」と言っても、「いや、それは私たちには言わないでください」と言われます。

ただ、クチコミやバズが狙えたり、あとアーカイブされたりするんですね。例えば、ネット上であれば、どんどん記事がストックされていくんですね。これが非常に大きな違いです。広告はいずれ消えてしまいます。ほとんどお金をかけないでやることができる。ほとんどお金をかけないでやることができるというのは、自社でやればという考え方になります。

PRでの大事なことをシンプルに一言で言えば、目立つことです。やはり目立たない商品はダメですし、目立たない会社もあまり取材されないです。わかりやすく言うと、とことん目立てばいいということになります。

例えば、ユニクロという会社がありますよね。集客を目的とした場合にどうするかというと、目立つことですよね。目立つ戦略をとりました。フリースを100色作って「うちは100色売りました!」ということをやるんですね。

でも、どうでしょうかね。ピンクと赤の間の薄ピンクとか欲しいですか? 買いますか? 100色あってとしても、手に取ったりしますか? あまりいらないですよね。実際に、こんなものは売れないんですよね。売れないんですけども、ユニクロが100色やっていることがおもしろい。だから人が集まりますし、メディアも取材する。これは目立つための集客なんですね。

実際に柳井(正)会長も言っていました。「うちは製造会社じゃない」「情報発信企業だ。だから次々に新しい情報を生み出して、人々に飽きさせないメディアにも飽きさせないことによって、ほとんどCMを使わずにうちは売上を伸ばしているんだよ」と。

CMはやってますけども、実は売上に対してあまり流していないんですよね。あれくらいの規模だったら、花王さんレベルでやっていてもおかしくないんですよね。でも、ほとんど使っていない。これはやっぱり目立つからですよね。

これからPRをやっていく中で2つあります。まずは商品力。プロダクトの訴求力がそもそも強いか弱いか。それから伝え方の戦略がうまいかうまくないか。だいたいこの2つに分かれるんですね。

商品力が弱くても、伝え方さえよければ広がる

上岡:ちなみに製造業の方いらっしゃいますか? 製造業の方はいらっしゃらない。じゃあ自社でコンテンツを発信している会社さんっていらっしゃいます?

(会場挙手)

あ、いらっしゃいますか。物を売っているサービスなど、飲食店の方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

ちなみに何系の飲食店ですか?

参加者:居酒屋です。

上岡:居酒屋さんなんですね。居酒屋さんなど、PRがうまい会社はうまいですよね。昔で言うと……潰れちゃいましたけど、牢屋の居酒屋などもあります。居酒屋さんなんかも非常に当てはまる方程式なので、ぜひ持ち帰っていただきたいと思います。

まずはプロダクト。商品がそもそも強ければ、伝え方さえよければ勝手に広まっていきますよね。これはクチコミも評判もそうです。でもいくら商品力があるお店でも、伝え方が悪いとなかなか広まっていかないんですよね。

けっこう経営者の方で多いんですよね。みなさんは違うと思いますけども。商品力にすごく自信があり「うちは商品力があるからいいんだ」と言ってうまい伝え方をしないのでなかなか広がらない。これは戦略や戦術がなかったり、社長さんがそもそもPRやマーケティングを理解していない。必要性を感じていないことが非常に多いです。

一番いいのは、商品力があって伝え方もうまい。これは勝手に広がります。逆に商品力が弱くても、伝え方さえちゃんとしていれば勝手に広がっていくこともできます。

これはユーグレナさんもそうですね。初めはあまり商品力がよくなかったんですね。

ミドリムシは、当初は芋虫を粉末にしたと思われていたんです。これ、本当の話なんですけ。5年前に「芋虫を売るのか!?」とすごいクレームが女性の方から来たんですね。みんな気持ち悪いと思っていたんですよ、ミドリムシというものを。今はそんなことないですよ。これは文化ができたんですね。

出雲(充)社長に言われたんです。「ミドリムシという名前はやめよう」「ユーグレナという名前は使わない」。でも、たぶんそこじゃないですよ。価値観が違う、もっと価値観を上にして伝えれば大丈夫ですよ、と。つまり商品力が弱いけれども、伝え方さえうまくやれば必ず広まります。

どうしたかと言うと「ミドリムシが世界を救う」、これをやっていきましょうと。気持ち悪いとかおいしいとか、これがどうだっていうことじゃなくて、「ミドリムシで世界の食文化世界のエネルギー問題を救うんだ、解決するんだ」という目線でやっていきましょうということでやったら、伝え方がよかったので一気に広まったんですね。

新聞掲載は売上につながりにくい、けれど信用力は高まる

上岡:商品力が弱くて伝え方も悪いと、これは最悪ですね。これはもう広告に頼るしかないです。4つの出口があるので自分たちが今どこにあるのか、どこに持っていけばいいのかというのをしっかり考えながらやっていくのが戦略上大事なことかなと思います。

とくにテレビに出したいというお客さん……お客さんじゃないや(笑)。セミナーの参加者の方も多いと思うので。テレビはやはり一番影響力が高い。ただWebメディアも今非常に力を持っていて、だいたいWebからテレビに派生しています。そのため、Webから攻めるというのは、やり方としては正しいです。なぜかと言うと、派生が早いしお金がかからない。あと、大手だけでなく中小企業でも攻められるところがあります。

逆に新聞は、実はそれほど売上につながらないですね。新聞に出たという参加者の方でも実際に売上につながったということをあまり聞かないですね。

新聞に掲載されるメリットが1つだけあるとすると、やはり信用力が高いんですよね。例えばベンチャーキャピタルから出資の話が来るのは、だいたい日経新聞に出たあとです。対銀行でも非常に評価が高まりますし、採用がしやすくなったり、親御さんが喜んだりするので。

あともう1つ、新聞に出るとテレビが出しやすくなります。テレビは自分たちがどこよりも先駆けて取材したりは一切やらないですね。リスクを負いたくないから。

例えばオウム事件ありますよね。この事件で、TBSがすごく叩かれたことをご存じですかね? TBSがどこよりも先駆けてオウムを取材したばかりに叩かれたんですよね。でも、新聞が先にやってたら「あれは新聞のものをうちが取材しただけですので」と言い逃れができるんですよね。

テレビはすごく影響力が高いので、自分たちにリスクが来るのが一番嫌なんですね。なるべく新聞に出たものを取材しようとします。だから、広報戦略の中では新聞に出すことが非常に大事なんですね。

雑誌はそれぞれカテゴリーが違うので、専門誌業界誌に応じて攻めるのがいいのかなと思います。

テレビに出るための4つのポイント

上岡:とくにテレビの場合は、出るためのポイントが4つあります。1つはメッセージですね。キャッチコピーが優れている。あとはトレンド。先ほど言った社会性に合っているというところですね。それから、やはり絵になるというのが非常に大事です。

なぜ絵になるのが大事かと言うと、テレビは絵で見せるので、絵にならない素材やサービス、企業は紹介しにくいんですね。

わかりやすく言うと、メルカリはなかなかテレビで放映されにくいですよね。あれだけ評判になってるのに。iPhone越しに取材を3分間やるのは、難しいんですよね。飽きちゃいますし、チャンネルを変えますよね。

例えば「めざましテレビ」の天気予報で、「6時55分、6時55分」とやっている。あれでだいたい1分なんですね。テレビの1分ってけっこう長いんですよ。だから、絵になる工夫が必要です。

例えば、私に「メルカリをテレビに出したい」というオファーがあったとします。テレビに出そうとしたらどうするか。やはり準備をします。iPhoneの画面だけだと絶対に取材されないので、メルカリを利用している人を探します。例えば「実際にメルカリを利用して、港区に住んでいるのにこれだけ利用して儲けてます」という奥様を取材できるようにして、「この人を用意してください」とします。

一方で足立区に子どもが3名いて……大家族でもいいです。大家族で40代という人がいて、「メルカリを利用して子どもたちのパジャマとかいろいろ買ってあげて喜ばれている」「こういう取材をオッケーの方も探してきてください」と。

テレビには「メルカリというサービスがあって、港区在住のこの主婦の方も取材できるし、足立区のこの主婦の方も取材できますよ、どうですか?」とします。そうするとどうでしょう、テレビ側は「おもしろいですね」「港区のセレブも使っていて、一方で足立区のこの人も使ってるんですか」「サービスもおもいしろい」「取材させてください」となります。

なぜなら絵になるし、間が保ちますよね。これが非常に大事なんですね。私たちがテレビに提案するときは必ずここまで用意してテレビを攻める。だから、取材がけっこう誘致しやすいんですね。

最後は、得したかどうか。見た人が得するかどうかがやはり大事になります。

こういった感じで成長する企業、上場する企業は、PRが大事です。PRしながら、たまにテレビに出してバン、バンとヒットさせているのがだいたい業界内では通例になっています。