毎日の料理を楽しみにする、クックパッド

岡根谷実里氏(以下、岡根谷):みなさま、お集まりいただきありがとうございます。クックパッドの岡根谷と申します。

(会場拍手)

今回のクックパッド大学のテーマは「これからのローカルらしさが息づく食卓をつくる」ということで、みなさんと一緒にお話を聞いて一緒に考えていきたいと思います。まず「クックパッド大学ってなに?」「いったいどうして始めたの?」ということを簡単にお話ししたいと思います。

このクックパッド大学は、料理にまつわる生活者の課題を深く知って、料理を通して社会を変えていくためのアイデアを、クックパッドの中の人だけじゃなくて、会社の枠を超えていろいろな立場の人と一緒に考えて、そのアイデアを形にしていきたい。そういう場です。

どうしてこういうことをクックパッドがやるかというところを、小竹さんにお話しいただきます。

小竹貴子氏(以下、小竹):みなさん、こんにちは。今日はお忙しい中クックパッドへお越しいただき、ありがとうございます。

クックパッドは1997年に創業して、今年でちょうど20年になるのですが、「毎日の料理を楽しみにする」という企業理念により立ち上がった会社です。

クックパッドというとレシピの会社というイメージを持つ方が多いかなと思いますが、毎日の料理を楽しみにするための1つの方法、”美味しい食べ方”の提案がレシピであるという位置付けです。

なので、今はレシピを通じて料理を楽しみにすることをしています。「今日、ご飯なににしようかな?」という悩みを解決したり、「自分の作ったおいしい料理をもっと多くの方に伝えたい」という思いであったり、レシピサービスの中には多くの人の思いが込められています。

これから20年、100年と続く会社にしたいなと思っているのですが、レシピ以外にもあらゆる接点で、料理を楽しみにするきっかけを作っていきたいなと思っています。

クックパッド大学とは何か?

今回このクックパッド大学は、「料理ってどういうことで社会問題を解決できるんだろう?」「料理を通じてどんなことが世の中にインパクトを与えられるんだろう?」「どんな楽しい世界が作れるんだろう?」というものを考えるきっかけの場所にしたいなと思っています。

この場所を通じて、料理というものを通じて、みなさん自身がどんな楽しい世界にできるのか、ということを考えるきっかけになればいいなと思っています。今日はどうぞよろしくお願いします。

あと、お手元に「食と料理にまつわる社会課題マップ」というものをお配りしました。

「毎日の料理を楽しみにする」という理念を持つクックパッドは、料理を通じて世の中に大きなインパクトを与えることが可能だろうと信じています。そこでクックパッドが、料理を通じて何を解決できるのかを考えて可視化したものがこちらのマップです。

忙しい人が増えて料理をする時間が減っている・外食や中食への依存が進んでいる・料理文化がなくなってきている、という身近な話題から、食材の画一化・フードロス・孤食、地域の過疎化そして世界で起こっている人口増加まで全て繋がっていることがわかるでしょう。 料理というテーマは多くの社会問題を解決する可能性を秘めていることがわかると思います。

本日グループワークのなかで、どういう視点があるかなと思われたときは、このマップを参考にしていただければと思います。

個人や家族、社会、そして地球というスケールまで、料理というものは本当に多くの課題を解決できる可能性を持っているんだなと、こちらのマップを作りながら私たちも気づきました。みなさんも今日のお話をしながら「あ、このつながりがあるんだ」というものを見つけていただければと思っています。

今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

クックパッドの新たな挑戦

岡根谷:ありがとうございます。こういった思いを持っているクックパッドですが、この場で出てきたアイデアがこの先どうなっていくのか、クックパッドの新規事業や新しい取り組みについて新規事業の担当をしております住から話をしてもらいたいと思います。

住朋享氏:クックパッドの国内事業開発部の住と申します。よろしくお願いします。 今、クックパッドで新規事業創出関係のことを担当しています。

みなさまのお手元に課題マップがあると思いますが、実はクックパッドって大きな事業ではあるものの、その課題マップの真ん中にあるレシピや料理に関するちいさな領域の課題しかあまり解決できていません。

ただ、課題マップを見ると、料理というのは作る前に当然、「食材どこから来るんだっけ?」とか「料理をすることでより健康になります」とか、料理をすることの価値、たとえば「主婦として毎日作っているだけじゃなくて、人のために作ったらどうなるのか?」といったさまざまな課題やその解決のための種があります。

現在「クックパッドアクセラレータ」という、これらの個人や社会の課題を料理をとおしてたくさん解決していって、よりよい地球を作る、よりよい料理の文化を作るためのチャレンジを産み出すことを目的にアイデアコンテストをやっていまして、主にベンチャー企業さんや社外の方を対象としてアイデア募集をしています。

今ちょうど募集期間中で、応募期間は11月20日まで、年明けにピッチコンテストを行う予定です。

そこで採択するチームを決めて、4ヶ月間ほど実証実験をして、そのあと最終的に事業化するという仕組みを作っています。今日出たアイデアでもいいですし、「自分だったらこういうアイデアで世の中変えられると思っています」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ応募いただければと思っております。

このプログラムは主にベンチャー企業や新しいアイデアを実現したい社外の方との取り組みを想定していますが、社内からの新規事業を提案する仕組みもあります。社内全体会議等では「(クックパッド代表の岩田)林平さんに直接提案をしに行けばOKですよ」と言っていると思いますけど、いきなり社長のところに行くのはちょっと大変だと思うので、一緒にアイデアやプランの磨き込みをして、提案をしに行くお手伝いを僕の方ですることもできます。

もし今日アイデアがあったり、「実は私こういう事業やってみたいと思っていて、社内でどうあげていいかわからない」「こういうことをしたいと思うがプランに自信がない」というときは、相談いただければうれしいなと思っております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

モデレーター・参加者の紹介

岡根谷:では、ここから本番に入っていきたいと思います。ワークショップのファシリテーターを紹介したいと思います。

佐宗邦威氏(以下、佐宗):みなさま、改めまして、こんにちは。今回ワークショップのファシリテーターを務めさせていただきます、戦略デザインファームbiotope代表の佐宗邦威と申します。

私は新規事業やイノベーション支援をいろいろな会社でやっています。そういうなかで、やはり1つの会社だけでなかなか新しい新規事業を実現することは難しくなってきています。

そうしたなかで、いろいろな会社の方やユーザーさんを交えた新しい場を作ることで、1つの会社だけでは見えていなかった課題や、それを解決するための切り口のようなものが出てくるのを感じています。

この今回のクックパッド大学に関しても、企画・ファシリテーションをやらせていただいています、よろしくお願いいたします。それでは、今回一緒にファシリテーションをやります、岩本を紹介したいと思います。

岩本美咲氏(以下、岩本):岩本美咲と申します。よろしくお願いします。

最近、銭湯に行っていたら高校生に間違われてしまったんですが、もう少し年齢は上です。

私はもともとアート関係のお仕事をしていて、大学在学中はアートのあるコワーキングスペースの立ち上げをやっていました。去年からbiotopeに参画して、ファシリテーションや場作り、エスノグラフィのリサーチなどをやっています。本日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

佐宗:みなさん、会場向かって右を見ていただくと、実は模造紙がたくさん貼ってあって、すでにいろいろなすてきな絵が描かれています。

今回、グラフィックファシリテーターとして、株式会社しごと総合研究所の山田夏子さんに、みなさんのこれからの議論の内容や講演の内容、ワークショップで出てきたものを可視化していくサポートをしてもらいたいと思っております。ちょっと一言だけご挨拶をお願いします。

山田夏子氏(以下、山田):山田夏子です。今、毎週の土曜日の朝、『週刊 ニュース深読み』という番組で緑のあのジャージを着て描いています。

今日も、みなさんの料理や食べてきたものに対する思い出や気持ちを、たくさんこの場でみえる化していけたらいいなと思っています。どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

佐宗:という面々でやっていきたいと思っております。

地方のレシピの伝承と創造を考える

佐宗:このクックパッド大学、実は今回が2回目です。タイトルには第1回と書いてあるんですけど、実は前回0回目がありまして。ここに「レシピの過去・現在・未来」ということを書いてありますが、第0回のクックパッド大学では、レシピ自体がこれからどう変わっていくのかということを扱いました。

クックパッド大学のテーマは、先ほどお見せした課題マップをベースに作っていまして。第0回では、まさに課題の一番ど真ん中のところ、「料理スキルがいかに減少しているのか?」というサイクルに関して、「じゃあ料理スキルを上げていくレシピってどういうものがあるのか?」ということを考えたのが前回のテーマになります。

今回の第1回は「地方のレシピの伝承と創造」を取り上げたいと思っています。「これからのローカルらしさが息づく食卓をつくる」が今回のテーマになります。

なぜクックパッドでこうしたテーマを扱うのかということなんですが、こちらは課題マップの一部を抜粋したものです。

まずみなさんに日々起こっていることとして、核家族化が起こっていたり、都市では生活が忙しくてなかなか料理する時間が取れなかったり。

そうすると、だんだん外食に時間を使うようになってきて、料理自体を家庭の中でも共有する機会、習慣が減ってきて、スキルが減少していくという悪循環のサイクルがあります。

ではこれがどういうところから来ているかということを考えたとき、都市化と地方コミュニティの喪失という、地方にいた人が都市に来るという当たり前の大きな流れがありますよね。

それが結果的にマクロレベルでどういうことが起こるかというと、核家族化、さらには過疎化を招き、それがおばあちゃんの料理をはじめとした地方の料理が伝承されないサイクルをさらに強める動きになっています。

ローカルなレシピを伝承することの意味

佐宗:一方で、こちら側に料理文化の創出というものもあります。例えば食材。食材ってやっぱり共通のものが多いですし、その共通のものを大きなスーパーで売るためには、たくさんの量を生産しないといけないわけです。そうすると、たくさん生産されているプロダクト(食材)しか基本的には僕らの選択肢に入ってこない。

そうなると地方にあるちょっとユニークな食材、例えば珍しいじゃがいもとか、そういう食材を僕らが見る機会がなくなり、見ないのでなおさら料理をしなくなるということで、結果的に同じ食材ばかりを料理することになり、調理スキルの減少につながります。

こういうことを考えていったとき、やはりクックパッドとしては、食材の多様性や料理の多様性がある世界がいいなと思っているし、そういう文化を作りたい。

逆に言うと、そういう多様性を作るためには都会の中で起こっていることだけではダメで。ある意味、日本全国にある食材や日本全国にあるレシピ、料理の伝統のようなものがうまく伝承されていくと、逆にそれがおもしろいサイクルになって、みんな料理がうまくなっていくサイクルを作れるんじゃないか? というのが今回このテーマを扱う上での前提として考えている問題意識です。

先ほど小竹さんからも料理教室のお話がありましたが、クックパッドがやっているのはレシピサービスだけではありません。料理教室という場は日本中に存在します。日本中に存在するということは、その場がローカルな場所になるということですよね。

そうなると、実は単なるレシピサービスを提供する以外に、例えば新しい料理文化やレシピというものを作って残して広めるということが、実はクックパッドのリソースを使えばできるのではないかというのが、今回このテーマを扱おうと思った背景になります。

じゃあそういう議論をしたいというときに、今回ご参加いただいている方々です。クックパッドの社員の方、手を挙げていただけますか?

(会場挙手)

けっこう多い。半分ぐらいいますね。ありがとうございます。ではユーザーさん。クックパッドのユーザーさん、レシピエールさんの方々、手を挙げていただけますか?

(会場挙手)

4名ですね。それから、これは果たして排反なのかちょっとわからないですが、地域活性や地域プロデュースに関わっているぞという方、手を挙げてください。かぶっているかもしれない。

(会場挙手)

5人ぐらい。地域の食や知恵の伝承に関わっていると思われる方、手を挙げてください。

(会場挙手)

地域の食の生産に関わっていらっしゃるという方、手を挙げてください。

(会場挙手)

2名。今回、地域らしさが残る、そういうレシピを作っていく、料理を作っていく、料理文化を作っていくというテーマに関して、すごく関係ある方が、ものすごくいろいろな切り口の方が関わっていらっしゃいます。

本日はワールドカフェという形式になりますので、グループを超えて話をする機会もありますので、そこでつながっていただくこともできます。終わったあとには懇親会等もありますので、ぜひ同じようなテーマに関心のある方々で集まって、いろいろな方とつながっていただく機会になったらいいなと思っております。

ワークショップの進め方

岩本:まずワールドカフェ形式で今日のテーマ、「これからのローカルらしさを残した食卓のあり方を考える」を考えていただきます。そもそもなぜローカルなレシピの知恵や食卓というのが現在残っていないのか、考えます。

その次に「ローカルなレシピが残らないその背景となるものは?」ということで、みなさんのお手元にある「食と料理にまつわる社会課題マップ」のようなかたちで、課題のサイクルを考えていただきます。

そして最後に、その中でも最も共感する課題、重要だと思われる課題をチームで設定して、そこからアイデアを考えていきます。

本日このワークショップの狙いとしては、地方に残るユニークな知恵や食卓をどう伝承していくかについて、私たちができること、その可能性を多様な切り口で考えていくことです。

最後にチームで発表のお時間を設けます。例えば、今回このテーマ「地方の新しい食卓のあり方を考える」ということで、「沖縄のおばあちゃんの出張お料理教室@東京」のようなかたちで、アイデアの説明とスケッチをみなさんにまとめて発表していただきます。

では、本日のタイムスケジュールを説明いたします。ただいまイントロダクション中です。その次に、ゲストスピーカーの方によるインプットセッションを行います。その次に、ワールドカフェでみなさん実際にチームでこのテーマについて考えていったあとに、最後に全体共有を行います。

佐宗:ちょっとスケジュールのところをフォローアップさせていただきます。先ほど、システムというかサイクルを考えると言ったんですけど、難しそうに聞こえますよね。

ローカルらしさというものというのは実際いろんな課題が混じり合っているので、簡単に「この問題を解決すればいい」というものではおそらくないと思います。そういう意味で、いろいろな人の視点を、まずみなさん自身この場に共有することが必要だと思っています。

最初にゲストスピーカーによるインプットセッションをやらせていただきますが、まず前提として、現在どんなことがわかっているのか。もしくは現場でやっている人はどういうこと感じているのかという、生の情報をインプットさせていただきます。

このワールドカフェというのはいろいろな視点を混ざり合うことができるというメリットがありますので、そこを活かしながら、みなさん個人個人が考えている視点を、みなさんのいろいろな知見を組み合わせて考えてみながら、「なにが本当の課題なのかな?」というのを考えてもらうというのが2番目です。

ここから3番目は一気にアイデア出しになりますので、「クックパッドと組んだらこんなことができるんじゃないのか?」というものを最後に出していただくのが今日の流れになります。

では、本日はよろしくお願いいたします。