お笑いの才能、ほんまにないわ

コンビのときに1回学びがありました。ある程度のところまで来たけど仕事が増えなくて、違うことやってみて、そっから、ちょっと仕事が増えていった。解散したりして、個人になって23歳くらいのときに、自己改革があったんです。

ちゃんと組み立ててしゃべれてるかわからないんですけど、僕、23歳のときにお笑いの才能がまったくないって思ったんですよ。19歳のときにお笑いに入って、いろいろやって、劇場ではある程度はキテました。

だから、もしかしたら戦えるんちゃうかなって思っていたんです。けど23歳のときに、いろんな人を見て、「あ、俺ヤバイ。お笑いの才能、ほんまにないわ」って思った。

でも、お笑いの世界で生きていきたい。どうしようかな? って思ったときに、一生懸命考えたらなんとかなるんちゃうかなと思ったんです。これ、ビジネスと一緒と思って、いろんな社会人セミナーに行ったり、自己啓発の本を読んだりいろいろ考えて、これだけは間違っていないなってことを、僕の中で3つ作ったんです。

1.ビジョン作って、逆算して生活する。今日やることは、10年先からの逆算で決める、明日やることを決める。 2.素直に絶対、嘘をつかないこと。素直に生きること 3.絶対、ポジティブであること

この3つだけは、絶対間違ってないと思いました。先人の成功者が、ほとんど全員やっていることだと、思ったんです。

そこからいろいろと考えてスタートしたら、運がよくて、割と早い段階でポンポンと仕事が決まった。そこから順番にやっていったんですけど、自分が才能ないってわかってからうまくいきだしたというか、ちゃんとリサーチ、マーケティグして才能ない人でも才能あるように思わせる術が、ちょっとわかったんです。自分の特徴がうっとうしい顔やとか(笑)。

お笑いのネタって、いろいろ見たことがあると思うんですけど、こんなネタを作る人はスゲーなと思いません?

僕、いろんな先輩を見ていて「天才やな!」と思うことが、いっぱいあるんですよ。僕もネタでテレビに出させていただくと、他の人に「すごいですね、あんなネタ作れるなんて」って言われるんです。でも、僕は自分のネタをすごく独創性あるネタだとは思わないんです。

いろんなすごいネタをいっぱい見てきて、昔はウケなかったけど、今やったらウケるんちゃうかなっていうボケとか、いろんなものを詰め合わせて作っているようなものなんですよ。 僕のネタなんて、実は本当に参考文献をいっぱい調べて作ったような、どっかで誰かがやってそうなネタなんです(笑)。

童謡に見いだした光明

なんですけど、今の時代の中で見せたら、新しく見える。ちょっと時代の流れも考えているようなネタで、例えば、童謡をカッコよくアレンジして歌うっていうネタがあるんです。

童謡をカッコよくアレンジするなんて、昔から何千回、何万回もやられているんです。ただ、打ち込みの音楽を作りやすくなった時代だから、しっかり歌として作ってみたら、本格的に雰囲気出るんちゃうかって思いました。ちょっと違う感じに見えるんちゃうかということで作ったネタなんです。ちょっとそれ、一回見ていただいて、よろしいですか? 

(会場拍手)

今から、僕のこと、めちゃめちゃカッコイイアーティストだと思って見てください(笑)。

(「雪やコンコン」を熱唱)

(会場拍手)

どうもありがとうございます。イタいんです、コレが(笑)。こんな場所でみなさん真剣に聴いているのに、全力で歌うたうやつヤバイでしょ?

(会場笑)

でも、これで今日見に来たみなさんの中で、今日どんな話だったって考えたときに、あいつめっちゃ歌ってたなって思う人がおるかもわからん。

(会場笑)

この印象を残すことが、めっちゃ大事だと思うんです。それこそ僕は大阪から東京に出てきてピン芸人をスタートさせたんですけど、知り合いは誰もおらんかった。

誰もおらんところで、一番下のオーディションライブから順々に勝ち上がってなんとかしていって、テレビ局のオーディションを初めて受けにいったとき、『あらびき団』っていう番組をちょうどこのスタジオで撮っていたんです。この芝公園スタジオで撮ってたんです。ホント、ココですよ、ここにセット組んで。すごいでしょ? リアクション薄!

(会場笑)

その『あらびき団』のオーディションを受けに行ったときに、そうそうたる面々、そこそこテレビ出ている面子もいました。それこそ1年目の若手もいましたけど。何千人ってオーディションを受けにくるわけです。

どうやったらテレビに出られるねん

対策をどうしようと思って。どうやったらテレビに出られるねんって。それこそ、さっきジョーブログさんがいろいろ考えたって言ってましたけど、同じことです。

プロデューサーがおってディレクターがおって、僕、ネタをやります。ネタやって、そのネタがどうかで、番組に出られるかどうかが決まる。僕これ、プロデューサーやディレクターやとしたら、誰を選ぶやろと。

そのときにバーっと、オールラインアップの中からエハラマサヒロを取ろうと思わないと、アカンわけでしょう? 有名人もおる中で、無名の僕を拾い上げる理由が、どこにあるのって。

その拾い上げる理由を、自分で説明できへんかったら、多分、オーディションなんて受かることないやろなと。だから、入るときからいろいろ考えて、いろんなネタ持っていって、要はもう、なんでもできますねんっていうことを、前に出そうと思った。

僕、なんでもできるんですよって。普通、みんな謙虚になるんですけどね。「いろいろできるね〜っ」て言われても、「いえいえ、そんなぜんぜん……」とかって。でも、僕は「なんでもできます」って(笑)。「歌、歌えて、ダンスできて、めちゃくちゃすごいでしょう? 太ってなかったら、完璧でしょう?」って。

(会場笑)

そんなテンションでいったら、なんやコイツ鼻につくな〜ってなるんですけど、印象には残る。いろいろオーディションに行かせていただいたら、結果、半数以上は受かったんですよ。これは間違っていないかもしれないと思いました。

R-1準優勝がさらなる飛躍の種に

2009年のR-1グランプリ、ピン芸人の大会で準優勝させていただいて、運がいいことにゴールデンの放送が1発目だったんですよ。だから、注目度がすごくて。そこで準優勝させていただいたことがきっかけで、ちゃんとごはんが食べられるようになったんです。今でも、約10年間くらい、お笑い芸人としてやらせていただいてます。

そのときも、この「雪やコンコン」をギター弾きながらやったんです。やったら、準優勝して、帰ってきてブログを見たら、めちゃくちゃ褒められてるやろうな〜思った。「ファンになりました」とか「めちゃくちゃ面白かったです」とか「初めて見ました」みたいな。

あと、『あらびき団』とか見ていた人は、「深夜番組だけやと思っていたけど、ゴールデンでスターですね」みたいな。そんなコメントあるかな思ったら、1万件の批判が入っていたんですよ。

(会場笑)

ヤバくないですか? 1万件も「死ね」って書かれたんですよ、俺。

(会場笑)

そんな何回も死なれへんぞと(笑)。「オモロない」やら、「うっとうしい」とか「鼻につく」とか「ゴールデンで流すな、テレビ出るな」って書かれた。そんなに出てないのに、まだ。

(会場笑)

1回しか出てへんのに言われたんですよ。まー、へこみましたよ。当時25歳ですから。うわーって思ったけど、そのあとテレビ番組に呼ばれるようになって、謙虚にしとかなあかんと思って、静かに座ってたんですよ。

ほんなら何もせんと、その回が終わって、また別の現場行って、普通のコメント言ってたら、なにも起こらず終わって。結果、テレビのオンエア観たら、なにもしゃべってないんですよ、僕。カットされた。うわ、こりゃ、なんかせんとアカンって思った。

みんなが俺のことを、うっとうしいと思っていると、自分でも思ってた時期なんですけど、当時『雑学王』というクイズ番組があって、座っているときのシンキングタイム中にBGMが流れたんです。

そのときBGMに合わせて、「ふぁ〜」って、歌ったんですよ。そしたら「なんやねん、お前」って言われた(笑)。ただ、それがオンエアにのったんです。うっとうしいなみたいなヤツが。あ、コレなんやと思た。そっから、MCの人から話を振られるたびに、うっとうしい返しを考える。「そーっすね、まぁ、いいでしょ!」みたいな。上から言うな! みたいなね。

そういうことをやって、やっと仕事を続けていけるようになったんです。そうか! 嫌われてイヤですけど、ここが俺の戦える特技なんだなと。しゃーないなって(笑)。

だから、「イタい」ことって大切だな〜って、ひとつの個性になるんだなって考えるようなったんです。人に対して、普段の生活の中でちょっと不快感を与えちゃうけど、笑いとるためとかだったら、「イタい」っていいと思うんですよ。

出る杭は打たれるけど、出すぎたら人は寄ってくる

僕ね、品川庄司の品川さんって、若手のころ、ものすごく尖っていたと思うんです。僕らもすごい怖って思ってたし。なんか雰囲気も、お前らに負けるかって感じでいて、みんなからイタいイタいって言われていたらしいんです。

ただある日一回飲みに行ったときに、「出る杭は打たれるけど、出すぎたら人は寄ってくる」って、あの人言ったんです。あ、すごいいい言葉だな〜って思った。

もちろん、人より突出している、ちょっと人より変わっているって自分でいったらみんなに叩かれる。でも、出すぎたら、これは認めるしかないな〜って、思われるようになっちゃったらいいんだって。

僕、ミュージカルやらせていただいているんですけど、宮本亜門さんのミュージカルに出たときに、すごく僕のことを嫌っていた先輩が、たまたま観にいらしてたんです。

劇が終わった後、僕の楽屋に挨拶に来て、「お前のこと、ほんまにイケ好かんな思ってたけど、これみせられたら、認めなしゃーないなって思ったわ」って言ってくれたんです。俺もう「やっててよかった!」って思いました。公文式ばりにね。

(会場笑)

これでいいのだと思って。ちょっとバカボンみたいでしたけど(笑)。本当に、これは個性になるんだなと。マイナスもプラスも、飛び抜けているものは、すべて個性として、全部プラスに持っていけると、僕は思うんですよ。

僕はめちゃくちゃ昔嫌われましたけど、今、楽しくやらせていただいてます。それこそポジティブに生きてます。自分の楽しいことだけやって、自分をポジティブにしようと思ったら、自分の周りをポジティブな人で固めたり。

そうやっていたら、モチベーションも自ずと上がってきます。自分のやっていることは間違いか正解かわからないですけど、もしかしたら、正解かもと思ったら、そっちに突き進んだら、なにかええことあるんじゃないかなって思いますね。

今日、僕がここで話をさせていただいてるのもそうです。今まで、こういうお話をすることもなかなかなかったんですけど。トーク番組ももちろん呼ばれないですし……やかましいわ(笑)。

本当は怖かったんですよ、めちゃくちゃ。ここに立ってしゃべることが。けど怖かったから受けようと思って、ここでやったら、またもうひとつの自信にもなるし。出るからには、ちょっと他の人とは違うことをやろうと思って歌ってみたんですけど、結果、成功でした。ありがとうございます!

(会場拍手)

ということで、もし、自分がちょっと人と違ってるなとか、変わっているなと思っている方がいたら、そっちのほうを伸ばしてみてもいいんじゃないでしょうか。ということで、エハラマサヒロでした。ありがとうございました!

「さむい」はむしろ、誉め言葉

大谷ノブ彦氏(以下、大谷):ありがとうございました。エハラくんでございました。素晴らしい! いや〜、ガッツリやりましたね(笑)。

エハラ:いや~、歌わせていただきましたね。

大谷:気持ちよかった。面白かった。フルでやるんだと思って(笑)。

エハラ:ハハハ。大谷さんにここから見られているのも、ものすごいプレッシャーだったんですよ(笑)。

大谷:俺、超面白かったよ。それに、さっきのミュージカルの話なんて、他の芸人はできないですからね。エハラくんしかできないですから。すごいことです。宝ですよ、ホントに。ここに出てくるっていうのも、そういう人たちからすると「イタい」ことって言われちゃうから(笑)。

エハラ:そうそう(笑)。

大谷:私が吉本で一番「イタい」って言われていますから。一番嫌われてます(笑)。 でも、考え方は同じ。言ってほしいことを、すべて言ってくれてた。

エハラ:結果、普通のことやっていると、消えている人が多い。上におる人って、大体昔「イタい」って言われてた人が多いですよね。

大谷:確かにね。だから、この「イタい」って言葉を投げかけた人って、どうなんだろうね?

エハラ:そうなんですよね。もうちょっとこの言葉をポジティブにとらえていただきたいんですよね。

大谷:なるほど。ここにいる方も、新しく何かを始めようとしてるなら、もしかしたら「イタい」「さむい」って言われるかもしれない。けど、それはむしろ、誉め言葉であると。

エハラ:そう受け取ったらいいかなと思います。

大谷:最後にふさわしい授業だったんじゃないでしょうか。エハラマサヒロ君でございました。

エハラ:どうもありがとうございました!

大谷:走り方がスターですね(笑)。ムカつくな〜(笑)。最高ですね、エハラ君、品川も独自の活動をやっておりまして、まさに個の芸人だという感じがします。

2回目でございますけど、それぞれが本当に違う授業で、非常に楽しめたなと思います。ぜひ、みなさん、ハッシュタグMOA大学で感想をつぶやいてくれるとありがたいと思います。

(会場拍手)