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SEKAI NO OWARIのプロデューサーと進撃の巨人の編集のプロデュース講座!(全6記事)

SEKAI NO OWARI“仕掛け人”が意識し続ける恩師の言葉「時代とタイアップしなさい」

多種多様なクリエイターが登壇し、メソッドや哲学を学ぶ学校「QREATOR SCHOOL」で、SEKAI NO OWARIのプロデューサーである宍戸亮太氏と、漫画『進撃の巨人』の担当編集である川窪慎太郎氏によるプロデュース講座が行われました。作品やサービスを多くの人に届けるにはどうすればいいのか? また、ヒットの種をどうやって見つけたのか? 大ヒット作を手がける2人がアーティストや作家との運命的な出会いから現在に至るまでを赤裸々に語りました。

「時代とタイアップしなさい」

佐藤詳悟氏(以下、佐藤):時間がもうかなりいっちゃっているので、最後に僕から質問です。今の話もそうなのですが……PR手法というか、さっきの宍戸くんの話だと、実際に車で九州を回ってみるなど、まさしくこうしたことだと思うのですが。

今この世の中で起きていることや空気など、そうしたものは作品にとって大事だと思っているのか。もし大事だとするならば、今の世の中をどのように感じているのかといった……やっていることなどがあれば、最後に聞きたいなと思います。

宍戸亮太氏(以下、宍戸):難しいことを聞くね(笑)。

佐藤:(笑)。

宍戸:1つは、また師匠が出てくるのですが。彼が一番最初からずっと言っていた言葉があります。「時代とタイアップしなさい」。

タイアップをする順番が3つだけあるとして。3つだけだとしたら、その中でいうと一番下が「企業」、その次が「季節」、そして一番タイアップするべきなのは「時代」なのだということを教えてくれました。それは、ずーっと忘れないし大事にしている言葉です。

今がどういう時代で、どういうモノが求められていて、どういう存在が世の中に伝わりやすいかというのは、村田(積治)さんの言葉からずーっと意識しているし、大事にしていることの1つではありますね。今をどう捉えているのかというのは難しいのですが……なんだろうなぁ。

SEKAI NO OWARIが世の中の人に受け入れられている1つの要素というのは、彼らの強い絆だと思っています。コミュニケーションが、SNSで簡単につながれてしまったり、ライトになっていると思うのですが、その時代において彼らの関係性や彼らの絆はきっと非常に特殊なモノです。それは今の時代において、希薄になっているモノであり、そこに憧れを感じてくれたり、それを魅力だと思ってくれる。

とくに若い子たちが反応してくれる。そうしたところもきっと彼らの魅力の1つだと思います。あの中に入りたい、ああいった関係に憧れるという子たちが、彼らをより身近に感じてくれることによって、どんどん、いろんな人が増えていく。ということは感じている部分ではあるので……ちょっとまとまっていませんが(笑)。そんなことは思います。

佐藤:(笑)。宍戸くんの話を聞いていると、実際に街に出たりして見ている感じですよね。この今の世の中の空気を吸っているというか。

宍戸:いろんな人がいるし、どういう時代なのだろうなというのは意識して、アンテナを張るようにはしています。

漫画家は「世界を誘導していく存在」であれ

佐藤:川窪くんは、どうですか?

川窪慎太郎氏(以下、川窪):僕自身は、誰かに影響を与えたいとは思っていないし、世の中を良くしたい、世の中を変えたいとも思っていないし、それができるとも思っていない。僕個人としては、大前提としてはそうなのですが。

では、漫画家にはどういうことを言っているか。漫画家は僕と同じであったら、困っちゃう。漫画家には、どのように話しているかというと……「世の中からどう見られるか」「世の中が今どうか」より、漫画家には世界を変える人間になってほしいと思っているのです。作品で世界を変えないと、その作品が結果的に売れるということにもならないので。

今はスマホで漫画を読む人も増えてきています。縦読みで漫画を読むモノも増えてきていますね。電車の中で3分くらいでライトに読めるようなモノなどが求められているからです。

では「3分ですぐに与えられる刺激だ」といった感じで、「エロ」だとか「グロ」だとか……そうしたものも求められているのかもしれません。しかし、そこで生まれるヒットはたかだか数万だったりするのするんですよね。でも、世の中を変えるヒットにはならないというか、大ヒットにはならないから。

世の中が求めているモノを考えるのも大事なのだけど、「世の中を変える」ということの方がよっぽど大事で。そうした意味では、世の中のことは過度に意識しなくてもいいのではないかということを、作家には伝えています。

漫画は、また音楽とも多少違うというか、ぜんぜん違うのかもしれませんが。アニメともまた違うのは、黙って画面を見ていても、なにも起きないのですよね。音楽は、黙ってイヤホンを耳に入れたら……。

宍戸:飛び込んでくる、進んでいくよね。

川窪:飛び込んでくるんですよね。漫画は「めくる」という作業が必要です。紙だったら手を動かしてめくらないといけないし、Webであってもクリックをしたり……「スワイプ」というんですか? しなければいけないという、その作業があります。「めくらせる」「先に進ませる」という努力が、漫画には必要なの必要なんですよ。

それは待っているだけじゃダメなんです。読者を気にならせなければいけないし、どうすれば人間は気になるのかということを考えないといけません。そうした意味では、求められているモノを提出するというよりは、期待や予感というモノを、こっちが作っていかなければならない。常に世界を変えていくというか、「世界を誘導していくような存在」になってほしいと言っています。

まあ、自分にはできないのですが(笑)。言うのは簡単なのですが、そのように言っています。

「マス化」は重要か?

佐藤:ありがとうございます。もう時間もあれなので。もし、せっかくなので、お2人に質問などあれば、いらっしゃれば。

質問者1:「マス化」は重要なことなのでしょうか?

川窪:マス化……つまり。

質問者1:つまり……。

川窪: 自分がやりたいモノが1,000人に届くだけでも十分ではないかなど、そういうことですか?

僕においてはですが。僕、大前提がサラリーマンなので。これは慈善事業でもありませんし、食い扶持を稼ぐモノでもあるので。そうしたモノを求めている作家とは、仕事はできないとは思ってしまっているので……。そうした意味で、マス化というモノは、僕にとっては残念ながら必要だと思っています。

宍戸:作る人、クリエイターの関係でいうと。クリエイターが「マスにしたい」と望むか、そうじゃないかで判断も変わってくると思います。僕はそこだけです。マスにしたくないのであれば、そうしたやり方もあるし、それはそれなりの理由があるはずです。それは作る人の「想い」に身を任せるだけですね、僕は。

川窪:時間がないのだけど、僕がつまんないことを言っちゃったので、違う話をしてもいいですか?

(会場笑)

佐藤:(笑)。

宍戸:ドライなことを、言ったからね(笑)。

川窪:『進撃の巨人』の諫山さんと居酒屋で2人で話をしていて、「僕はこの作品をおもしろいと思っているから、もっともっとたくさんの人に読んでほしい」「どうすれば読んでもらえるか?」という話をしていたのですよ。でも、諫山さんはぜんぜんピンとこなくて「自分はもういいです」というようなことを言っていました。

「いや、でも3人に人生を変えるくらいおもしろいと思ってもらうより、100万人に人生を変えるくらいおもしろいと思ってもらった方がいいじゃん」と言ったのです。そうしたら諫山さんが「川窪さん、世の中の100万人の人が、川窪さんの指が綺麗だとみんなが毎日思っているのは気持ち悪くないですか?」と。

(会場笑)

佐藤:(笑)。

川窪:「僕にとって、100万人に漫画がおもしろいと思われることは、それと一緒です。僕はだから、3人くらいがおもしろいと思ってくれる漫画で充分なのです」ということを諫山さんが言っていました。

佐藤:(笑)。

川窪:すみません……それだけです(笑)。

宍戸:最初から話していればよかったね(笑)。

「向き合うな、同じ方向を見ろ」

質問者1:宍戸さん、続けていいですか?

宍戸:はい。

質問者1:仮にマス化を、それほど望まないという人はいたのでしょうか?

宍戸:そこまでいくと、先ほどの川窪くんが出てきます。 ビジネス的なところは、考えなければいけないから。

質問者1:客単価を上げるような話ですか?

宍戸:客単価を上げるという単純な話だけではなく……それはなにを届けるのかにもよるのですが。作ったモノに価値があるから、人がお金を払ってくれるわけで。

僕の個人的な大前提だと、いいモノを作ったらみんなに聞いてほしいというのはあります。しかし、それを作る人たちが望まないのであれば、それは僕のエゴになるんです。届けたいかどうしたいかというのは、またそこで出てくる話です。

マス化を望まないとしたら、誰に対して、どのように届けて、それをやったことでご飯を食べていきたいというのであれば、その中で届ける人を増やさなければいけないと思うし。それを望んでいない人であれば、その人たちに対して、どのように、どんな想いでマスにしないことに考えがあるのかどうかを聞いた上で、どうするのかという話をしながらだと思います。

人の言葉ですが「向き合うな、同じ方向を見ろ」という言葉があります。一緒にいたとしたら、同じ方向を向いて、一緒に歩んでいけるのが、僕のマネージャーとしての立場です。それをどうできるかは、そのときに考えると思います。

その人の理由を聞いてみないと、なんとも言えないですね。

作品の価値が時代と共に変わっていくことについて

佐藤:他にいらっしゃいます?

質問者2:プロデュースに対して、ご飯を食べさせていかないといけないじゃないですか。今、CDが出ないことや漫画も違法などがあり、その中で価値を学ぶということに対して、今後どのように考えているのでしょうか?

宍戸:時代が変われば、人のいる場所も変わるし、人が価値を思ってお金を払うことも変わる。というのも、昔はCDが売れていたからね。音楽はCDから聞くものだということで、CDをずっと売り続けるのではなく、聴き方でいってもいろいろあります。それこそ無料でも聴けてしまう。

彼らが広がることによって、音楽でいえば、ライブだったり、いろんなそれに纏わるビジネスはあったりします。時代において、どうした形が一番適しているのかを、変化を感じながら考えていくということですよね。

川窪:難しいですよね。違う部署の人間とご飯を食べながら話していたのが、ファッション誌が売れないというものがあって。でも、ファッション誌の編集者たちは、どうしても「ファッション誌」という、自分たちが育ってきた「紙の文化」にしがみ付いている部分がある。そうした意識が、僕が思っているより、ファッション誌編集者には強いのだなと思ったのですが。今の質問に近いところがありますね。

「ファッション誌とはなんなのか?」と考えると、紙に服が載っていることがファッション誌なのか。その値段が書いてあって、コーディネイトが20パターン載っていることがファッション誌なのかといえばそうではない。

女性ファッション誌でいうなら、「女性の毎日をキラキラさせること」「明日も笑顔で生きてみたい」と思わせることだったり。ファッション誌は紙に写真が載っていることではないということを、きちんと再提起再定義しなければいけないというか……。

それであれば、もしかしたら、Instagramがその役割になりうるかもしれないし、電子書籍でもいいでしょうし。すべては、ファッション誌とはなにか。漫画も一緒だとは思います。

「漫画とはなにか」というときに、紙に印刷されてる絵、キャラクターとセリフが漫画なのか。そこにある物語が持っているパワーや、物語から学べるなにかが漫画なのかなど、考える。そうした意味では、もし漫画というモノが「物語」に置き換えられるなら、「物語」は必ずしも紙で届けなくても、イベントでも届けられるかもしれない。できれば紙で伝えられると、大量生産できるので楽だという部分はあるのですが。

物事の再定義をしていって、それに見合う媒体だったり、出力先のようなもので世の中に届けていくということをしていかなければいけないのではないかなぁ思っています。それは、僕より若い奴がやってくれたらいいのですが(笑)。

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