「自己分析」の方法

佐藤裕氏(以下、佐藤):今日は1つだけ、ご自宅でできるワークを教えます。みなさんが未来じゃなくて今の自分を知りたい場合、本当に簡単なんです。ピーマンが嫌い、という人にインタビューするだけです。例えば「なんでピーマン嫌いなの?」と。「苦い」「まずい」「昔から嫌いなんです」という回答が来たら、インタビュアーは困りますよね。「そんなん知ってるよ、なんで嫌いなの?」、この繰り返し。

だけど、本当の自己分析ができてる人は違うんですね。「小さいときにお母さんに口に放り込まれて、苦くて吐いちゃった。あれがトラウマになってるんで食べれないんです」と言われたら、インタビュアーは「おお、そうなんだ。やめとこうぜ」と。こうやって人に自分のクセ、性格、または習性、このへんを説明できることが、自己分析ができてる状態なんです。

つまりみなさんが今日できることは何かというと、お家に帰って、自分の行動原理、クセ、好き嫌い、ぜんぶ箇条書きにすることなんですね。例えば、負けず嫌い、寂しがりや、なんでもいいです。バーっと書いてください。で、いったんその1つの項目をピックアップして、「なんで負けず嫌いなんだろう?」って、めちゃくちゃ過去に深掘りしてください。

そうすると必ず、親が厳しかった、教育が厳しかった、アスリートやってた、兄弟にコンプレックスがあった、または近所の誰かに、幼なじみにコンプレックスがあった、ということがわかる。それがわかれば、もう人に説明できますよね。その自分と未来は関係ない。人に自分の説明をするための素材を集めるのが自己分析と思っていただければいいです。

「自己理解」とは、「健康診断」と「偏差値把握」

みなさんにこれから考えてほしいのは、自己理解です。今日はヒントだけなので、自己理解というのは2つに分かれると思ってます。

1つは健康診断です。これみなさんのヘルスケアじゃなくて、みなさんのコンディションです。夢があるのかないのか、そんなことも考えられないのか、ということを素直に受け止めること。学生というのは、多くの人が無理に夢をつくってしまうんですね。つくんなきゃいけないから。

じゃなくて、自分が持ってる夢は本物なのか、そうじゃないのか。これはみなさんには絶対にわからない。もし、夢があるという人は、本当にビジネスマンにガンガンぶつけてください。若い人じゃなくて、社会を知ってる人に。

そうすると、その夢はぜんぜん違うアプローチかもしれないし、ちょっとチューニングしたら夢になるかもしれない。社会を知ってる人の意見はとっても重要です。それをやることですね。これは健康診断だと思ってください。

もう1つは、偏差値把握をしてください。これはみなさんスッと入ります。なぜかというと、みなさん大学生、または院生です。大学に行くときに自分の偏差値とかわかったはずなんですね。センターとかあったはずだから。なので、自分は今ここが強いんでここを伸ばそう、弱いんでここは勉強しようとなったはずなんです。それを今からやってほしいんです。

今度は社会です。社会に出るためにみなさんは今どの力が伸びていて、なにが足りないのかをちゃんと可視化して言葉にし、それをどうやって伸ばすか、または開発するかということを、ぜひ、自己理解という概念で捉えて欲しい。

リアルな社会を知り、本当に求められている能力を開発すべし

2つめです。CAMPでご支援したいところは、リアルな社会を知ること。先輩の情報、親の情報、またはネットの情報、それ本当にリアルですか? 就職活動を経験した人はわかりますね、「リアルじゃないよ」と。

実はもっと裏側を読み込まなきゃいけないし、覗かなきゃいけないんですね。でも、就職活動というのは、大人たちが気持ちよくブロックしてますから、なかなか見せてくれない。なので、それをどうやって崩すかということと、一方で、就職活動が始まる前にビジネスマンと接触をして、本当のことを教えてもらう。

僕は、「今日が、うちのパーソルキャリアの新卒採用説明会だったら何をしますか?」という話をよくするんです。みなさんからすると、「いや、人事の責任者は自分の会社をアピールしたいんでしょ?」って。いやいや、そうじゃないですよ。例えば、社会の裏側って違うんです。誰を落とすかを探しますよ。寝てる人はぜったい落としたいし、清潔感なきゃ落としたい。

ということを考えたら、みなさんは説明会とかオフのときに、どうやって社会人にアピールするかですよね。受付でちゃんと挨拶ができない人はチェックされてるかも知れない。そういう裏側なんですよ。ブランドとか会社の大きさとかではなくて、そこを今から勉強してほしい。

そして、自分の能力は何が足りないか、今はわかんないんです。就職活動の途中でわかってきます。しっかり話せばアピールできたのに、なぜか不合格が続いたり、評価されなかったり。そこで気づくんです、準備間違えたと。

実は企業は、みなさんの留学経験、英語のレベル、ゼミ頑張った、バイト頑張ったではなくて「能力を見てるんだこの人たちは」って気づくんですよ。それもう遅いですね。なので大学1年生からやってほしいんです。自分の能力を開発することをやってほしい。それを支援したいと思います。

人生の分岐点を前倒しすべし

それから4つめ。人生の分岐点をもっと前に持ってきてほしい。これ、とても大事です。みなさんが悪いわけじゃなくて、日本人の傾向なんですが、大学3年生が近づくと、ああ就職活動だ、じゃあ自分の人生を考えて……、なんてことが起きます。世界で一番遅いと僕は思ってます。

シンガポールでは、小学校6年生から自分の人生を考えなきゃいけない環境がつくられます。兵役がある国は、1年11ヶ月自分の人生と向き合いながら軍隊に入っています。

なので、ちょっと違うんですね。みなさんが悪いわけじゃないです。できればみなさんが大学1年生、2年生、就活の前に、自分の人生を本当に考えてみたら、ガラッと変わるんですね。それを支援していきたいなと思っています。

なので、何と向き合うかというと、親でもないし、就活でもなく、本当の自分の人生と向き合うということを、このプログラムでは提供していきたいと思っています。これがCAMPでやりたいことなんです。

もう1回まとめます。まず自己分析ということは当然やらなきゃいけない。ただ、これは未来を探す、つくるものではないです。新しい、自己理解ということを進めることを提供したいなと思っています。

それから、リアルな社会。これをいかに見るかということですね。それから、本当に社会が求めている能力。これは人によってぜんぜん違いますから。自分は今どこが伸びていて、何を求められているんだってことをちゃんと理解すること。そしてそれを伸ばすこと。

最後は、人生の分岐点を前倒しすること、これをやると学生生活がぜんぜん変わってきます。バイトをどう選択するか、どのゼミに入るか、変わってきます。

こんなことをご支援したいなと思っています。とにかくCAMPは、みなさんそれぞれの何かに火をつけたいなと思っています。なのでたぶん、隣の人とまったく違う方向性のものが僕の支援対象なので、それでいいんです。人によってでぜんぜん違うということもぜひご理解をいただきたい。

「はたらく」を楽しめている人、6パーセント

2つめです。危機感の共有。ここが今日、みなさんにお伝えしたかったポイントなんです。なので今日はしっかりとインプットしたいと思います。 僕の危機感というのは、みなさんにとって初めて聞くことかもしれない。ただ現実的なところです。CAMPを始めたきっかけはまずここなんです。なんとなくネガティブな感覚はわかりますね。(スライドを指して)この写真と6パーセントという数字だけで、何の数字なのかということを30秒かけて考えてください。

ってなるとシーンとなるから隣の人と30秒話してみてください。よく就活でありますよね、30秒で会話せよみたいな。そういう練習だと思ってください。では、30秒でこの写真と6パーセントは何を言いたいのか。はいどうぞ、行きましょう。

(会場、騒がしくなる)

あと10秒。はい終了です。では、その難しそうな質問を答えてみたいという圧倒的に意識の高い人。手をあげてください。……いいね、いました。当てたら抱きしめるよ、僕は。はい。どうですか。なんでしょうこれ。

参加者1:「はたらく」を楽しんでいる人の数。

佐藤:OK。クイズっていうのは、大きく外さなきゃいけない。これはぜひですね、体脂肪って言っていただくと盛り上がる。

(会場笑)

もとい。これですね、みなさん、解答言いますよ。これはですね、いや彼、正解、ありがとう。そうなんですよ。ちなみになんで知ってるの? 

参加者1:社会人の方とお話したときに聞いた記憶がありまして、それで知りました。

佐藤:なるほどうちの会社の人ですね、ありがとうございます。

(会場笑)

えーこれですね、覚えてください。今、1億2,500万の人口に対して働いてる人、労働人口は6,500万人です。そのうち、なんと6パーセントしか働くことに意欲がない。働くことを楽しめていないという、そういう国なんです日本は。彼大正解です。つまり、94パーセント の人が、働くことにネガティブだったりするというデータです。

ちなみに、アメリカは32パーセントの人が働くことを楽しんでいます。アジア圏10パーセント、世界平均13パーセント。データ的には139ヶ国中、日本は132位です。ほぼ最低水準。

自分事として捉えてほしい

なぜ、これをCAMPで伝えるか。大人たちは就職活動の話のなかではこんなこと絶対言いません。「うちの会社はすげーハッピーだぜ」「はたらくの楽しいぜ」って、みんな言ってきます。でも、現実を知ることのほうが僕は重要だと思うんです。なぜかというと、6パーセントに入りたいと思ったほうがアンテナを張れるから。

だって94パーセントの人が働くことを楽しめていないんですよ。みなさん、えーって思いますよね。そんなことはない、もう見てますよ、毎日。大学に行くときに電車乗りますよね。朝8時台とか9時台の1時限に行こうと思ったら満員ラッシュ、乗りますよね。あのときにぜひ、この意識を持って電車を見回してください。近くのビジネスマンの顔面どうですか。社会人の方、下向いてますけど大丈夫ですか。

(会場笑)

そうなんです、元気ないんですよ。それからお酒飲める人は、東京でいうと新橋、有楽町あたりでビジネスマンの近くで飲んでください。または一緒に飲んでください。もうなにかの愚痴とか、そんなことでお酒を飲んでるんですよ。カラオケ館でネクタイ巻いて歌う人もいるんじゃないですか、まだまだ。

ということを見たときみなさんは「やだな」って思うはずなんですよ。それを来年、再来年やりたいかっていうこと。であれば、6パーセントに入らなきゃと。そう思ったときにすべてが動き始めます。伝えたいことの1つはこれなんです。

そしてもうみなさんご存知の通り、3年30パーセントという数字です。就職活動は今、長い人では1年半くらいかかります。データによると、そこで人生を決めても、入社して3年以内で30パーセントから40パーセントの人がドロップアウトします。これおかしくないですか? なのでこれも解消したいし、みなさんにはちゃんと自分事として捉えてほしいんです。

10年プレイヤーの社会人、転職したい率40パーセント

(スライドを指して)このデータはちょっとおもしろいです。同じ状態のネガティブな社会人がいます。そして40パーセントという数字があります。当然、働くということにかかわることかもしれない。(先ほどの回答者を指して)彼は回答権がありません。

(会場笑)

では、30秒考えてください。用意スタート。

(会場、騒がしくなる)

はい、あと10秒です。……はい、では終了。では同じように「自分は意識高い系です」という宣言できる人いますか? ……いました。ありがとう。明らかにサクラではなさそうなんで期待してますよ。はい、40パーセントってなんでしょう。

参加者2:仕事辞めたい人。

佐藤:うん、ちょっと近いな、危ないなそれも。

(会場笑)

でもね、そういうことなんですよね。まあ流れ的にそうなりますよね。これは、もうちょっと細かく言うと、転職したい10年プレイヤーの社会人。つまり、今振り返って就職活動を後悔してるんですよ。

彼女正解、ありがとう。女性には優しいんでね、ぜんぜんOK です。へんな空気になりました、ごめんなさいね。

(会場笑)

つまり、社会人10年で就活を後悔する人、40パーセントです。もう当然辞めてる人もいます。これから転職活動しようとしている人もいます。一番よくないのは、もう諦めてしまってる、もういいやという人もいる。ということは、誰も幸せじゃないんですよ。会社の人もその人自身も。

なので、これを現実として捉えたときにみなさんは危機感を持ってほしいんですよ。「自分もそうなるんじゃないかな」と。これがスタートになります。