「幻冬舎をどう変えるか」を考えた箕輪氏

西村創一朗氏(以下、西村):ありがとうございます。じゃあ後ろのメガネの方。

質問者3:シミズと申します。

箕輪厚介氏(以下、箕輪):編集室のエリートです。

前田裕二氏(以下、前田):へぇ。

西村:今日ドタ参加されたらしくて。そうですよね?

質問者3:そうです。ありがとうございます。

前田:箕輪編集室ってもう何人いるの?

質問者3:100人。

前田:そうなんですか。すげー。始めてどれぐらいでしたっけ?

箕輪:始めて2、3週間。

前田:100人ってすごいですね。

箕輪:編集室で思いついたのが、すごいみんな優秀で、デジタルに強くて、いろんなプロジェクトが鬼のように動くんですよ。それでどうなるかなと思って、本当にここだけの話ですが、究極、幻冬舎から見城さんを引き抜いたら最高の会社になるわけですよ。

西村:ちょっと何言ってるかわからないですけど大丈夫ですか?(笑)

前田:本当にここだけの話ですね(笑)。

箕輪:「こんなハックある?」って昨日思いついちゃったんですよね。

前田:それで流通とか取次も押さえて、ネットを使ってビジネスしたら最強ですよ。

箕輪:「幻冬舎NEO」みたいな。

西村:ヤバイですね。

箕輪:前田さんとかをアドバイザーに入れて、あと西野さんとか。「幻冬舎を、どう変えるか」というのをずっと考えてたんだけど、「いや、そうじゃないぞ」と。こっちに優秀な人を全員引き抜いてみたら、最高の会社ができると思って(笑)

西村:もう角川騒動どころのレベルじゃないですね。もはや。

箕輪:無茶苦茶過ぎるからどうしようかなと。

前田:でも見城さんは「極端こそ我が生命」とか言ってるから。

箕輪:今や角川騒動じゃないレベルですよね。たぶん燃えると思うんですよね。

前田:燃えますね。それ、めっちゃおもしろそうじゃないですか。

質問者3:質問は3つあるんですけど1つだけ。

西村:1つだけに絞っていただいて。

質問者3:良質な余白と、そうでない余白の差は、どいう所にあるのかをおうかがいしたいなと思います。

前田:なるほど、「良質な余白と、そうでない余白の差」ということですね。

質問者3:熱量の差というのが、良質な余白であるという話があったりとか。どこに違いがあるんでしょうか? 良質な余白というのは、どうやったらつくれますか?

前田氏の考える「参加可能性」

前田:今までの話に近いかもしれませんが、例えば、高級レストランの余白というか、そこにおける余白の意味は若干広義な意味でもあります。「参加可能性」みたいなことなんですよね。高級レストランは基本的にシェフが選んだ、「この料理は食べてね」という感じで、そこに一切のバッファーがないんです。

フルコースはそもそも、シェフと僕ら消費者の間に情報の非対称性があって、「どういう料理が美味しいのか」「世の中にどんな料理があるのか」という前提知識が僕らにはなかった時代の代物。「シェフが作ったものを一方的に食べる」が最高だった時代があるんです。

それが今の時代はその非対称性が次第に埋まってきて、「この素材はこういうふうに料理すると美味そうになるんだよね」って僕らもわかるようになってきた。最近は本当に見城さんとか、そういう方々と一緒にレストランに行くと、だいたい最初に素材が出てくる。

箕輪:確かに。選べますよね。

前田:「この素材をどうするか言ってください」というようなことを言われるね。

箕輪:うーん、なるほど、なるほど。

前田:「どうしようかな、何があります?」みたいな。例えば「このアスパラガスをボイルして、マヨネーズ付けてもらえます? 卵焼きもつけてもらって。」とか。これって参加可能性が出てきているじゃないですか。「それも美味しいですね」って会話しながら作ってもらって食べる。というのを、広義の意味で余白って言っているんですけど、それは僕に言わせると、質で言えばあまり良質な余白ではなくて。

良質な余白は、僕の中では「お客さんのエンゲージをどれだけ引き出せるか」という度合いで質を測っているんです。その高級レストランは僕のエンゲージもそんなに引き出していないので。「僕がその料理をどう作ったらいいか」「どう作ったら僕が嬉しいか」というアドバイスをちょっとだけするという。これは、エンゲージメントをしっかり引き出しているとは言えない。

僕がよく行く中目黒のスナックは、僕も皿洗いするし。家で料理すらしないのに、皿洗いまでしちゃうという相当なエンゲージメントを引き出しているんです。「どこまで相手のエンゲージメントを引き出せるのか」「前のめりに参加を引き出せるか」っていうのが僕の中で「余白のクオリティ」の定義なんですよね。

箕輪:前田さんがよく言う、地図か白地図かの話で言うと、AKBのような感じです。僕も博多でAKBの子の取材をずっとしてたんですけど、AKBとかって、選挙対策委員会みたいなのを勝手にファンがやるんですね。

前田:勝手にやります。選挙対策動画とかすごいクオリティの高いものを作ったりとか。

箕輪:それで、「何万票は君が確保しているから」とか言う。そういうのを聞いて、それが白地図に鬼のように自分で書き込んでいる状態ですね。

前田:そうです。そうです。

箕輪:こういうレストランは、白地図にちょっと赤い点の決められたシールを貼ってるぐらいなんですよね。

前田:そうですね。

「お金を払って」仕事をする

箕輪:「何かこの段作りますか?」ぐらいの質問です。

前田:ですね。それも、完成された地図をただ読むよりは、ちょっとしたエンゲージメントは引き出せています。。シールを貼って参加しているんで。でもシールを貼るよりも真っさらな白地図に色を塗ったり、文字を書いたりする方が、さらに参加度は高い。

その人の時間を多く取って、もっと前のめりにしている。そのほうがコンテンツとしてはビジネスにしやすいというか。

特に直接課金系のビジネスをやっているときって、エンゲージメントの大きさがそのままビジネスの規模に繋がっているような気がする。しかもそれは直接課金だけじゃなく、今後クライアント側というか出稿するスポンサー側が、「1インプレッション、1PV当たりの価値って違うよね」って理解始めたら、エンゲージメントの深さが広告の単価にも響いてくる。

「どれぐらい聴衆をのめり込ませるか」という力は、今後稼ぎたいなら1番必要な力じゃないかなと思う。西野さんの言葉で言うと、「信用を得る力」って彼はよく言っているんです。信用を得ると、彼のことを信用している周りの人たちが、西野さんに対していろんなアクションをしてエンゲージしてくれる。

だから「信用の度合いが大事」だと彼は言っているんです。だってすごいですよ。西野さんは、「西野の本を、ゆうパックに詰めて送る」というリターンを設計してるんです。「俺のために働かせてあげる」的なことですね(笑)。

西村 すごいですね。お金払ってまで。

前田:本来だったら、「人にお金を払ってお願いする」作業を、「お金をもらってやってもらう」ってすごいなと思うんです。

箕輪:堀江サロン(注:堀江貴文イノベーション大学校)での話なんですが、僕は編集室から、「箕輪は案件多すぎるから下の人付けるよ」って人を付けてもらって、その人にいろいろ教えてるんです。でも、僕は編集者ライター講座とかで何百人の前で喋ってお金を貰うのに、俺は何でこの人にタダで教えてんのかなって。こんなに教えてコミットして、有名な作家に一緒に付いて回るなんて、本当にやりたい人いるだろうと思って。

西村:お金払ってでもやりたい人は一杯いるでしょうね。

箕輪:お金払ってでもやりたいというモチベーションがあれば、絶対にいいものができるなって思ったんですよ。今はそっちですよね。お金払ってでもやりたいというモチベーションをどれだけ引き出すか。

前田:堀江サロンもそうですよね。前提としてモチベーションが高いことになってる。

箕輪:モチベーションの低い人が、理論的に1人もいない状態というか。お金払ってモチベーション低いっていうのが意味わからないですよ。

西村:そういう人は自動的に退出していきますからね。

箕輪:そう自動的に。でも、会社ではお金をもらう。社員はローンがあったり家族が居たりする。「その給料が大事だから18時までひたすら耐える」みたいなことが生まれちゃうんです。経営者としてモチベーションコントロールしなきゃいけないんだけど、サロンはみんなやる気あるから「やる気出せよ」っていう言葉が必要ないというのが大事ですね。

前向きな制約を持つ

前田:それも制約なんですよね。僕の中では、制約には、前向きなものと後ろ向きなものがあって、「会社で働いているし、給料もらっているからやらなきゃな」っていうのが後ろ向きな制約で。一方で、自分で1万円払っているんだから、「何か吸収しなきゃな」と言うのが前向きな制約なんですよね。前向きな制約を自分に課していったほうが成長すると思う。

箕輪:NOVA理論がヤバイですよね。前田さんの。

前田:NOVA理論って何ですか?

箕輪:前田さんに「何で英語をそんなに喋れるんですか?」と聞いたら、「NOVAに通ってました」って言って。普通に通ってたと思ったんだけど、前田さんはNOVAで教える側の講師になってるという。

前田:そうそう。そうなんですよ。英語そんなにできないのに、教える側に回っちゃった。だからとにかく英検1級、TOEIC990点ぐらいとっておかないとまずいと思って。

西村:順序が逆なんですね。取ってから講師じゃないんだ。講師になったからには取らないと。

箕輪:どうにかつじつまを合わせるために、まず講師になると。

前田:講師になってからとにかくまず満点とった。なる前は全然でしたけど。

箕輪:発想がね。英語をできるようになりたいから、講師になるっていう誓約を掛ける。

前田:さらに前提の制約としては、僕は「留学したい」って大学の時に思ったんです。だけど、お金がないから留学できないなって思ったら、「駅前留学」という文字が目に入って。

「駅前留学か。確かにな」「確かにもうそこに外国人が居て話したら海外と同じ環境だよな」みたいな。それから、行きたいって思ったんだけど、ご飯に行くお金すら無かったからどうしようかと思ったら「働いちゃえばいいんだ(笑)」と思って。

受けに行ったら、1個だけ受かった。僕は前は銀座で働いていたんです。「お金がないけど、どうしたらいいんだろう」という、その制約を乗り越えるために知恵を絞ったというのがまず大前提でした。「先にNOVAの講師になって人に教えなきゃいけない」という状況をつくり出したから、頑張っていこうと決心したんですね。だから塾の先生とかもそうですよね。

塾の先生も教える前に予習とかするじゃないですか。それですごく賢くなる。そういう環境をつくり出すと、すごくいいなと思うんですよね。だからNewsPicsアカデミーが超いいなと思うのは、サブスクリプションがすごく良いビジネスモデルだと思ってて。

だって5,000円払うから、その対価をつくらなきゃいけないというのは、すごいいい制約だと思います。やっぱり毎月1冊本出すのって超辛いじゃないですか。でも言っちゃったからやらなきゃいけない。

豆腐屋がサブスクリプションを導入したらおもしろい

箕輪:これはいつまで続くんだろうか(笑)。

前田:それは思いますけど(笑)。

箕輪:「短距離走を永遠に続ける」みたいな。

前田:この道玄坂にあるお店とか、街の豆腐屋さんとかでも、みんなサブスクリプションをやったらいいと思うんですよ。街の豆腐屋さんはずっと同じ豆腐を出しているだけじゃないですか。サービスクオリティを上げるには、月5,000円のサブスクリプションの豆腐屋さんがあってもいいと思うんですよ。

5,000円取ってるから、ちょっと来月は色の違う豆腐出してみようとか、何かいいじゃないですか。そんな感じで運営側が頑張るのは大事じゃないかなと思ってる。

箕輪:本を出して、1,500円で売れるか売れないか。正直言って、売れた売れないだと責任はそんなに生じないけど、アカデミアは1,000人の会員が5,000円を払い続けているから、「このままじゃ今アクティブじゃない人は辞めちゃうよね」とか。じゃあどうしようと常にPDCAを回し続けないといけない。確かに月額は、本当にいい意味での誓約かもしれない。

前田:堀江さんも言ってますけどサブスクリプションの1番重要なKPIは離脱率だといいますよね。

西村:そうですね。チャーンレート(解約率)ですよね。

前田:だから会員数じゃない。離脱率が1番大事ということで、「離脱率を下げるためにどうするんだっけ」ということを考えてアクションしている。サービスクオリティが上がるモデルなので、「どうやったらお客さんが増えるんだろう」って考えて、いろいろ試行錯誤するときのエネルギーを、もう先に足し込む。

5,000円払うと決めてしまった後の自分の試行錯誤のほうが、クオリティが上がる可能性が高い。「だから本を書くと決めてからの自分のアウトプットの量と質が高い」ということを自分でぼんやり考えている。アウトプットを先に決めちゃうことが大事だなって思いました。制約を先に決めちゃう。

西村:やるかやらないかじゃなくても、まず、「やる」という状況に自分を追い込んで、やれる状態に自分を高めていく。そっちですよね。

前田:ですね。制約を課して、さらにその上で、「ワクワクを感じながらやる」ことが必要だと思います。

西村:「やらなきゃ」というよりは「やりたい」という。

前田:アカデミアは結構勢いで決めちゃった部分はあると思うんです。わからないけどね。

箕輪:要はアカデミアだから、「学校だったら4月開校だよね」ということです。だから間に合ってる間に合ってないとかは関係なく、佐々木さんはそういう人なので。いい意味でエンジニアとかが、「これはこうするから」とか言っても「いや、学校だから4月開校じゃないとおかしいでしょ」と。「その技術は関係ない。だって学校だから4月開校だよ」っていう。

前田:すごいですね。

西村:反応不能なロジックですよね。

箕輪:間に合わないなら追加していけばいいんだから、学校が5月開始なんておかしい。そういう、一般の人がどう思うかしか見ていない面もあって、そこは確かに制約を自分でつくってますよね。