「ダイバーシティ生産」の時代へ

落合陽一氏(以下、落合):我々がなにを目指しているかというと、マス生産です。そのあと、ダイバーシティ生産。つまり、(スライドの)上は20世紀だったけど、下は21世紀的で、どうやったらソフトウェアが個別の問題に対応して、課題ごとの問題解決をしていくのかが、すごく重要です。

つまり、我々は人間が頭で考えて人間のために、人間が人間がという世界だったんだけど、下は人間が考えていることとコンピューターがやっていることが分離されている。

下の、あの真ん中の結合が大量に増えていくと、社会がどんどん便利になっていく。あそこをどうやって増やすのかがポイントだと思います。

エジソン、フォードの時代にはたぶんできなかったことで、彼らは大量生産をやった人です。フォードは自動車を作った人だし、エジソンは電化製品を作った人です。世の中のすべて……すべてじゃないけど、ほぼ世の中、だいたいそれでしょ?

それを、どうやったら個別生産に変えられるかが、我々の勝負です。僕らはまず考え方を、一般的には「人間と自然」とか「人間と社会」という考え方を突破します。この突破の仕方は簡単で、「波動」「物質」「知能」の3つに分けます。

これは具体例があれば、わかりやすいんですけど。(動画を見て)まずは、この人、Aに向かって歩いているんですよ。本人は今、Aに向かって歩いていると思っているけど、人間ラジコンなんでBに着いちゃう。でも、あの人はまだAに向かっていると思ってます。

というような人間を操れるヘッドマウントディスプレイを頭にガチャっとかぶせて、ちょっと歩かせてみようと。この問題は非常に面白くて、人間って足が2本生えていて、眼球の前にカメラがついているロボットだととらえることもできる。だから、人間って、脳と目と足は分離できるよね。

それを別々に制御するのに、3DカメラとHMDが人間にはまっていたら、こうやって動かせるんじゃないのと。Aに向かって歩いているときに、足の幅を超えないくらいの早さで動かしていったら、本人はAだって思っているけどBの前にいるんですよね。

こうやって視点を動かされちゃったら、人間は気づかずに身体が動くから、こんなことをやってみる。

そんなふうに、人間が五感で持っているものと筋肉でもっているもの、脳でやっているもの、会話でやっているものと、センサー、アクチュエーター、プロセッサー、ディスプレイを、どうやって混ぜるか。これが次の時代の勝負なんですよ。

パラメーターが世界の標準となる

例えば、Amazonがうまいのは、人間が牛乳の残量を調べて、筋肉で持ち上げて、「あ、牛乳発注しよう」ってボタンをピッて押す。最後、電信計だけ、ハードウェア。それ以外は人間が判断してるんですよ。

あれ、どこまで、どれを使うかがすごく重要で、例えばうちのラボではエビちゃんっていう女の子がやっているけど、右手三拍子、左手四拍子で叩くのってみんな難しいですよね? ドラマーの人は叩けるかもしれないけど。

これって、腕に電気を流したら勝手に動くじゃないですか。ムチャクチャなこと言ってるけど、僕(笑)。カエルの足って電気を流したら動く。人間の足も動くんですよ。

ポイントは、これで腕に直接出力してやったら、この後、電流を外しても動かせるようになるんです。実際にそうなるんです。

なぜかというと、筋肉を入力にして脳に入れると、人間の腕はロボットが動かすけど、頭は人間の脳のままでいられる。そう考えると、人間って機械じゃなくて、機械知能と人間知能をハイブリットして、ハードウェアも混ぜ込むことを考えたい。

そういうダイバーシティは、今後めっちゃ増えていきますよ。例えば、マイクロソフトのアバターも最近、腕全部、義手に替えられるんです。あれは、そういう人が替えてるわけじゃなくて、カッコイイから。腕、金属のほうがいいじゃんみたいな。

つまり、僕らは、カッコイイから足を車輪にしたり、カッコイイから腕を鉄にしていって、身体自体がハイブリットになっている。標準化から、どうやったら多様性にいけるかがポイントです。

話のまとめですけど、(スライドの)真ん中は、今までで言うと「マスの世界」。マスメディアの世界、マスプロダクションの世界、タイムマネージメントの世界で、誰が標準で、どうやって統一性があって、人間の問題は人間の知性で解決して、我々のメディアは、すべて視聴覚である。

その世界から、どうやったら僕たちは個人化、ハブ&コミュニケーションの世界に行けて、ストレスマネージメントの世界で、パラメーターでものを考える。これはちょっと難しいですけど、例えば、腕を自由にはやすことができる世界だったら、あの人は腕4本、この人は0本、この人は2本みたいな世界観のパラメーターです。

だってみなさん、眼鏡かけているか、かけてないかで職業決定になった時期もあるんですよ。でも、今は眼鏡ってただのお洒落じゃん。そういうように、パラメーターにしていくか。そうすると、多様性が増すし、人機が融合していくことがポイントです。

エモさと合理性の先に

そういう世界は、個人の能力を最大化する。つまり、共依存する世界なんです。全員がピーターパンなので、お互いにもたれかかっている世界なんです。それで、ウエンディみたいなとばっちりをくらう人はいなくて、それをコンピューターにどうやって置き換えていくかが、すごく重要なわけです。

だからタイムマネージメントから、どうやってストレスマネージメントにできるかがすごく重要。僕もそうやって生きています。そういうときに、例えば、僕がアートをやっているときは研究と違って、非合理性の世界にいるんです。

「玉、浮いてたらキレイだな~」とか言いながら、作っている。わかる? 普段はすごく合理的なことを考えているけど、アートをやっているときは、「全天球が貼りついた球が作りたいわ~、窓に置きたいわ~」みたいなこと考えて作っている。要は、テクノロジーの無駄遣いを、猛烈にしている。

でも、そんなことをずっとやっていると、合理性のあるところとないところの差が、だんだんわかるようになってくる。それをやっていくと、エモーションを追求していくには、どうやってやっていくかがすごく重要。

そういうエモさと合理性の先には、人間が社会に標準化して切り捨ててきたものが計算機自然になってけっこう戻ってくるんです。これが面白い。

人間社会は、今まではなにが標準かを決める考え方で、世界史で偉い人たちが決めてきたけど、健常者がいるから障がい者がいるんです。全員ダイバーシティだったら、そんな人、誰もいないですからね。

男女が結婚するって決まっているからLGBTがいる。つまりそういうものがなければ、標準がなければ、そういうものは出てこない。

僕らが考えているのは、我々は今後必然的にダイバーシティ化するということ。高齢化社会にすごくネガティブなイメージを持っているけど、そうじゃなくて、それを「ダイバーシティ」ととらえようと。

例えば、目が見えなくなる、耳が聞こえなくなる、手が動かくなる、それはダイバーシティです。それをどうやってテクノロジーを使って置き換えていくかさえできれば、我々は人口減少国家だけど、めっちゃ成長もできるんです。

つまり、効率性を追求するところと、その上で、エモさを感じるところをうまく切り分けて今後やっていければ、僕らの未来は、もうちょっと明るいんじゃないかなと思います。

今、20代の人たちがたくさんいるんで、みんな(スライドの)左だって習ってきたでしょ? 僕らの周りは「キミたち、あとのことは知らない。僕らは死ぬから、よろしく」みたいな無責任なおっさんばっかりじゃないですか。そんなの関係ないので、どうやったらテクノロジーで解決できるかだけを考えよう。

まずは、テクノロジーで老人を支える。そのあとは、みんなが機械と融合して誰も働いてないひとがいない。そういう世の中を、どうやって作るかが大切だと思います。ありがとうございました。

AIが人類を駆逐する時代はくるのか

大谷ノブ彦氏(以下、大谷):いや~、おもしれ~。スゲー、おもしろかったっす。

落合:ありがとうございます。

大谷:落合さん、俺、バカなんで、単純な質問だけしていいですか? もし、SFとかでもあるロボット、AIがめちゃめちゃ知能発達していって、人間よりも知能を超えるみたいなときがきたときに、人間を排除したほうがいいみたいなことって、起こったりしますか?

落合:インターネットの寿命って考えてみると面白くて、人間が生きている間に殺すよりは、長期的な一人っ子政策を考えそうですよね。つまり、5億年くらいかけて人を減らしていくプロセスのほうが賢い。

大谷:あぁ~、なるほど。SFみたいに一瞬で終わらせるんじゃなくて。

落合:戦争になったら、地球に対してのコストが高いですから。

大谷:なるほど~(笑)。超おもれ~な~。

落合:全体最適だから、じわりじわりとですよ。日本人が例えばインターネットしていて、女の子とデートしないとか、その兆候かもしれませんよ(笑)。

大谷:ああ、今まさにそれが始まってるんじゃないかと?

落合:150年くらいしたら、超少子化が進んでいて、あれ? いなくなっちゃったけど、なんのせいだったんだろう?って、振り返ったら、「クソ、エロ動画サイトのせいか! インターネット、クソ!」って、思っているかも知れませんよ(笑)。

大谷:そこが始まりだったんだって(笑)。ちょっと片足突っ込んでいるんだな……。面白い、もっといろいろと聞きたいです。俺、この話聞いて、宗教の話とか思っちゃって。そこがすげー聞きたかったっす。

落合:あぁ、そうですね~。

大谷:また、よろしくお願いします! 落合先生、本当にありがとうございました!