日本新党での苦杯を回顧

司会者:はい、ありがとうございました。聞けば聞くほどですね、今都知事を辞めたら大変な批判を浴びるんじゃないかという、そういうふうな思いもいたしました。

私の方からいくつか質問をさせていただきます。小池さんとしては、今回の選挙で政権奪取を狙う、そういう意思とういことでよろしいのでしょうか。

小池百合子氏(以下、小池):最初から野党を狙って選挙に臨むということはないわけであります。やはり政権選択選挙が総選挙でございます。

ご存知のように、私は最初スタートしたのは参議院で、そして次に翌年に93年でございますが、日本新党という政党から衆議院にくら替えをして臨みました。

そのときにいろいろと分析をしたのが、なぜ新自由クラブは与党というか政権を取れなかったか、ということでございました。簡単でした。候補者が足りなかったからだ、ということです。

やはり、有権者に選択肢を示すということは重要だと思っております。もちろんその選択肢、誰でも良いというわけではございません。しかしながら選択肢がなければですね、投票先がないということでございますので、その意味でできるだけ多くの候補者を擁立していくという意思を持っております。

民進党と合流という考え方を持っていない

司会者:今日、民進党が事実上合流という話がありましたけども、今のところ何人くらい候補者を立てられそうですか? 3桁とおっしゃってましたけど、100人じゃぜんぜん足りませんよね。

小池:はい、今まさしく精査をしているところでございます。そして今、ご質問の中に民進党と合流という話がございましたが、私どもは合流という考え方は持っておりません。

これから希望の党で戦いたいという、こういう申し込みがあって、初めてこの候補者として選ぶかどうかということでございますので。

ですから、それは希望の党で出たいという民進党の出身の方もいらっしゃるでしょうし、いやいやそんなの嫌だという方もいらっしゃるでしょうし、ですからそれは合流という考え方にはそぐわないと思っております。

司会者:仮にですね、希望の党が過半数をとったと、そういうときに首相はどなたがなるんですか?

小池:はい、それについてはいろいろと考えていきたいと思っております。

司会者:あと、希望の党、いろいろな方が集まってきております。憲法観などですね、基本的なところでズレも目立ってるような気もします。

例えば民進党は、民進党から来る方もいらっしゃるわけですけども、安保法に廃案にするという方針の方もたくさんいらっしゃいます。小池さんとはたぶん見方が違うと思います。

こういう点に目をつぶって、見切り発車というかたちでスタートすると、仮に過半数とったとしても、いずれ空中分解してしまうんじゃないかと、そういうような厳しい見方もあるんですけども、その辺はいかがでしょう。

小池:先ほどお答えいたしましたように、まず希望の党に入るという、希望をされるか否かということで。このご自身がこの安保法制の時に、まったくそれに賛成をしないというような方は、そもそもアプライして来られないんじゃないかというふうに思います。

しかしながら、一人ひとりお話をうかがってみますと、離党などの当時グレーゾーンの問題などが出ておりました。そういったところで、当時の民進党の考え方というのも一理あると考えられ、一方で今、まさしくこの北朝鮮情勢というものが、そしてまた中国の公船などが、非常に活発に動いているというような状況にありまして。

どうあるべきかというのを更にリアルに考える、という方がいらっしゃるかと思います。いずれにせよまず希望して、希望の党に希望するかしないかということをうかがわなければ。実際にお入りになるかどうか、まずエントリーがなければ選びようがないということです。

保守政党・自民党と改革保守・希望は何が違うか

司会者:はい。あと最後に、希望の党の綱領で、「寛容な改革保守政党」ということをあげました。では自民党は、どういう保守政党と位置づけられているのでしょうか。

小池:はい、自民党は伝統的な、そしてこれまで日本の政治の安定などにも寄与してこられたと思います。しかしながら、改革については、私が申し上げている言葉を使わせていただければ、それはもういろんな長い間のお付き合いもこれあり。

それはしがらみというかたちになって、なかなか改革ということ、改革というのは時に、そのある種の産業にはもうこれ以上サポートしないとか、かなり冷徹な部分があるわけです。

でも、そこがなかなかできないということが、返ってその改革を遅らせて、結果として日本全体の地位を貶めてしまっている、もしくは下落させてしまっている、ということにつながっているかと思います。

ですからその意味では、改革ということについて、アベノミクスも最初は勢いがあったかと思いますが、結局もたついているのは、加計学園もそうでありますけども、お友達優先の特区、であるとかですね。

そういったしがらみの中での改革というのは、それはもう改革とは言わないというふうに思います。ですからしがらみということを越えて、日本がこうあらねばならないということができるのは、むしろこれは新しいからこそできるというメリットだというふうに思っております。

司会者:ありがとうございました。では会場の方から質問を受けたいと思います。じゃあ、どうぞ。所属とお名前をおっしゃって、質問一問だけ、短くお願いします。

消費税増税の凍結を訴える根拠は

記者1:日本経済新聞のタキタと申します。消費税の問題について改めておうかがいしたいと思います。消費税、今の8パーセントを10パーセントに引き上げることについて、知事は凍結というお考えというふうにおうかがいしました。

凍結としますと、予定されている税収5兆円が入ってこないということになると思うのですが、その場合の知事の国の財政の運営についてのお考えをおうかがいしたいと思います。

一方で、今の民主党、民進党は、子育て支援や教育の無償化を、安倍政権同様に唱えてると思います。おそらく、安倍政権と同じような策を講ずるとすると、2兆円くらいのお金は最低でもかかると思います。

そうすると、かなりの歳入の問題が出てくると思いますが、そこについて数字的な裏付けをきちっとおうかがいできれば幸いです。以上です。

小池:はい、私どもがこの消費税の増税、それも2019年の10月の段階の話でございますが、予定どおり行うか否かということだと思います。

これについては、極めてそのお話のとおり、財政の立て直しというのは極めて重要な課題でありながら、今回は安倍総理自ら使い道のことをおっしゃっていますけど。

財政の再建については、むしろ先送りということをおっしゃっておられますので、これについては財政再建を逆に遠ざけてしまっているのではないか、とこのように思います。

それから、これまで異次元の金融緩和であるとか、それから財政出動などをやってきた。しかしながら、株高、円安、それから失業率の低下、などの効果は認めたいと思いますけれども。まだまだ好景気というその実感ということを、いざなぎ超えなどというのは、「え、どこの国ですか」とみなさんおっしゃる。

これは結局、やはりそれぞれの、例えば有効求人倍率なども、人手不足ぐらいなとくに首都圏などはそういう状況になっておりますけど、やはり実際に収入として上がっているのかどうかというと、これはそれぞれの数字を見ますと、まだその実感がないのは当然だなと思うような数字となっております。

それからやはり、正規、非正規の部分での違いが出てきているというふうに感じております。それから、私は今回まだデフレ脱却と言えない中において、個人消費という経済の成長の中で、大きなシェアを占める部分が、まだまだ冷え込んでいる中において、駆け込みの消費は若干あるかもしれませんけど、しかし今の状況の中で大きく伸ばすということは、なかなか考えにくい。

それから先ほどの人口動態が大きく変わる中において、これからますます少子化対策の部分のみならず、必ず増えていく。このままでは、年金、そしてまた高齢化に伴います医療費の増大。

これをもう一度、社会保障全体で実際に放漫経営になっていないかということなどを、きちんと見直しをしてからではないと、ただただ増税ということについては消費を冷え込ませるだけではないか、このように考えているところであります。

よって、今後消費税については、税率のアップ、使い道もいろいろございますけど、しかしそれについては景気条項というようなわかるかたちでもって、それを踏まえるかたちで進めていくのが妥当ではないかと考えております。

それから、財政再建についてはですね、よく、借金も多いけれども、資産もあるねという話で、この国が保有している資産の部分をもう少し整理をするというのも1つではないかと考えております。

憲法改正などの議論を広げたい

記者2:TBSのクサカベと申します。たぶん、これはほぼ間違いなく、今度の選挙で、いわゆる保守勢力、自民党、希望の党を含めた保守勢力は大幅に数を増やすんだと思います。

一方で、いわゆるリベラル勢力っていうのは弱体化していくと。そういった中で国の根幹に関わる憲法、安全保障の問題で、自民党と希望の党の差異っていうのはだんだん見えてこなくなるような部分もあって。

例えば、小池さんは、「9条だけじゃない」と言ってるんですけど、これはつまり憲法全体を改革というか、スピード感を持って変えていこうと、そういうお考えでしょうか。

小池:憲法については、常に9条に的が絞られて、そしてそこで神学論争が繰り広げられて何十年と続いてきたと思います。

私は憲法というのは、やはり時代とともに、そしてまた、今後の世界の流れなどを踏まえた上で、どうやってこの国家を、そして日本の主権を、国民を守っていくかという背骨の大切な部分だと思います。

だからこそ、議論を避けてはいけないし、これを単なるYes or Noでくくるということをしていると、議論は深まらないというふうに思っております。

とくに私自身は、実際に知事を1年間やり、地方自治にあたってまいりましたけれども、例えば憲法で言うところの8章、地方に関しての部分でありますけれど、極めて手薄になっているということもございます。

こういったことも踏まえれば、もう少し9条のYes or Noだけではなくて、より多くを健全に議論をしていくというそういう素地を作るということが必要なのではないかと。

護憲がむしろ目的化したり、憲法改正そのものが目的化する、ということはあってはならないと思うからこそ、私はむしろ議論を広げることによって深めていきたい。そういうふうに希望しております。

森友・加計問題で感じた情報公開の不徹底

司会者:ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

記者3:毎日新聞です。情報公開とか、「しがらみのない政治」という2つの柱。それをもうちょっと具体的にお聞きしたいんですよね。小池さんが、24年間の政治生活の中で、もっとも上手くいったしがらみのない政治はいったいなんだったのか。そして、今後国政に場を移した時に、1つの勢力として、何を一番、最初のターゲットにするのか。それは法人税減税なのかですね。それが1点ですね。

もう1つ、情報公開は今後……。例えば森友・加計の問題で、もし小池さんが財務大臣だったら、あの国会でどういう処置をされていたか。あるいは国会で今後勢力を得て、力を持つわけですから、その時、安倍さんのあの問題についてどう処理なさる。

小池:情報公開。これは、私はやはり国政であれ、都政であれ、一丁目一番地であるべきだというふうに考えております。やはり、広く知らしめるということが大前提であることによって、行政の緊張感がそもそもございますし。

また、さまざまな口利きなどについてもですね、そういったことはもう情報公開の対象になるんだといったことはですね、政治の透明化ということに繋がる、信頼感に繋がる。

私は、例えば税率の高い北欧諸国というのは、あれだけ税をたくさん一般国民からいただくには、その分透明度が高いという、このことは学べる点だと思っております。

そして、この北欧諸国の透明度の高さたるや、やはり日本人とは全く比べ物にならない。ですから、今回も、この書類が1年でもう破棄されていたとか、そういったことを聞くにつれ、改めて国政における情報公開の低さとか、それから公文書の管理などが手薄なんだというふうに思いました。

ですから、私はそのことも含めて、また、これまでの都政というのが、よくわからない部分が多いというのを一度明らかにしようということから、情報公開についての条例を改正し。

また、公文書についての条例案をきちっと作ったというので、これがやはり民主主義の政治のですね、基本的なインフラではないかと。これまでハードのインフラにはいつも熱心だったけれども、私は今こそ、社会のインフラということをしっかり進めていくと。

先ほどタキタさんのお話の、ご質問にあった社会保障も同じことだというふうに思っております。ですから、そういったことを見える化するというのが、一番重要なことなのではないか。そのことが健全な日本の政治ということを確立していくのではないか。これこそ改革の一丁目一番地だと思っております。

司会者:はい、ありがとうございました。