これから先は「魔法の世紀」になる
落合陽一氏が思い描く、計算機自然の世界観

人間社会から計算機自然へ #2/3

特別講義vol.2
に開催

「学びを遊びに」のテーマのもと、さまざまな業界のトップランナーを招き、新たな学習体験を提供する「MOA大学」。7月23日に行われた特別講義vol.2では、「現代の魔法使い」ことメディアアーティストの落合陽一氏が登壇し、「人間社会から計算機自然へ」というテーマで、現代社会に人工知能などがどう影響をもたらすかを語りました。

複数の肩書を持つ意味

次のスライドは「人間が人間のインターフェイスの方がよい」。僕はいっぱい肩書があるんですけど、アートとリサーチとビジネスと、アートビジネスをやっている人間です。

普通、昔だったら、アートをやっている人はアートだけ、リサーチをやっている人はリサーチだけ、ビジネスをやってる人はビジネスだけやっていました。ですが、そうじゃなくても、うまくいくようになってきた。つまり睡眠と仕事と生活をキレイに昔は切り分けられたんです。働き方は一通りくらいしかなかったから。

つまり「あなたはどんな職業ですか?」と言われたとき、1パターンくらいしかなかったけど、僕は、働くときストレスとストレスじゃないものを切り分けている。例えば、緑のところはビジネスをやって、赤のところはアートをやって、青のところはリサーチしようみたいな。

だって原稿用紙100枚ぐらい埋められる人でも、体力がまだ残っているけど脳にストレス感じていたとしたら、あと50枚埋まらないみたいなことがありえます。

この中でプログラム書く人いますか? 例えば、一日に書けるプログラムの行数って、大体決まってたりするじゃないですか。

そういうクリエイティブワークって、脳に負荷がかかる。体力的には大丈夫でも、頭、使えなくなっちゃう。それをうまく切り替えていくのが多分重要で、それを生活の中でミックスする生き方をしています。

なので、メディアを見ていても俺がなにをする人か、まったくわからないだろうね。だって『AXIS』という結構有名なデザイン誌で、デザイン誌の表紙に俺がなんで載っているんだろうとか。

『Nature』という有名な、サイエンス研究の雑誌になんで俺が表紙に載っているんだろう? 建築とか車の雑誌に載っているんだろう? それなのに、なんでマレーシアで個展をやっているんだろう? みたいな感じになるわけです。

そんな風に生活をミックスしていくと、一日中働いているんです。最近では3人分の働きができるように社会がなってきて、それをうまくやって、そこでシナジーを出している。それが僕の生き方です。

「計算機自然」の世界観

うちのラボと会社で40人の専門家がいますけど、僕は「波動エンジニアリング」と「デジタルファブリケーション」「メタマテリアル」「ディープラーニング」「ヴァーチャルリアリティ」「身体ハック」。この6本柱で戦っていて、1個1個にシナジーがあって、なかなか面白いんですよ。

だって、「波動」が出るなら、出た波動はなにかにぶつかる。ぶつかるなら、物質側もプログラミングできるわけだから、3Dプリンターが作られているし、人間も極論を言えば物質。

なので、どうやったら身体をハックするのかということもやりたいし、身体をハックする人間をコンピューターの中に入れて、人間自体をヴァーチャルリアリティでなにか表現するみたいなことをやりたい。

つまり、この三つ巴の関係を要素要素に分けると「ディープラーニング」とか「波動」をやるとか、そんな関係になるわけです。そういう世界観を、僕らは「計算機自然」と呼んでいる。

今、新しく人間社会がある上に、どうやったら次の自然を打ち立てられるかが勝負です。16世紀以前に我々は人間と自然を対比して、人間は人間社会を作って自然を克服することをテーマにしたけど、そうではなくて、もう1回、自然になっていくんじゃないかと僕は思います。

なぜかというと、我々って、これ(会場に流れている動画)は1902年の映画ですけど、SFの上では、1902年に月に行っていたんです。当時の人からすれば、月に砲弾で行ったって、これ本当なのかな? って思うじゃないですか。嘘っぱちですよね。肉、ミンチになりますよあんなの。重力ないし。

(会場笑)

でも、我々は映像を信じる訓練をずっとしてきて、僕らはアポロが月に行ったことも映像を通してしか知らないですよね。誰か現場で待ち構えてた人いますか? 月でアポロ来ないかなって。いないですよね? みんな映像でしか知らない。

「大抵のことはだいたい嘘っぱち」の真意

だから、映像であったことは本当だと思っているし、週刊誌に載ったことは本当だと思う傾向にある。でも、大抵のことはだいたい嘘っぱちなわけです。そういうことを考えると、約60年前に月に行ったけど、映像でしか知らない。ただ、この世界は、多分変わるはず。

僕らって、今、同じ光と同じ音を聴く、もしくは同じものを見る世界があって、それが映像の世紀。それが20世紀で終わったなら、これから先は違う光と違う音を聴く世界になるんじゃないか。それを「魔法の世紀」と呼ぼうというのが、僕らの持っている考え方のひとつです。

どういうことかというと、どうやって多様性を稼いでいくかだということです。全員で同じ画面を見るんじゃなく、一人ひとりが違う画面を見るにはどうしたらいいかということです。

例えば、それは、アイバン・サザーランドというVRを始めた人。52年前の映像だけど、当時、彼がVRのゴーグルを覗いてて、HMDでそれは立体空間に見える。

この人が論文を書いたとき、「真のVRは物体の存在を表現できる部屋にある」というセリフを言っているんです。これはすごく面白くて、そういう物質性のある光や音は、どうやって作るんだろう? というのが僕の研究のひとつのテーマです。

例えば、3次元、これは裸眼で見ている。そこに立体的なかたちをした光の点を作ってやろうとか、ここに種があったら、そこから芽生えを表現できるような空間に、直接プラズマを作って光を出すための装置を作ったりとか。

例えば、これは今年の研究ですけど、空間のある赤いところだけで音がするようなスピーカーを作ろうとか。スピーカーって、今は全員に音を鳴らす装置じゃないですか。そうじゃなくて、ある一点だけで音がする装置を作ろうと。

「今、僕はあなたの右耳だけに話かけていますよ」と言っても、絶対そんなことないですよね。でも、そういうことができるようになる。

例えば、一人ひとりに中国語と日本語と英語を打ち分けて聞かせれば、同時翻訳して伝えられる。同時翻訳の方は、きっとgoogleが頑張ってくれるから、僕は空間に打ち分ける装置を作ろうというような社会との関わりなわけです。

そういう空間に直接、音を置く装置みたいなものを作っていて、例えばVRにも結構興味がある。ちょっと面白いんだけど、VRって一人ひとりの空間に閉じるじゃない? でも、閉じたVRの空間自体を、どうやったらみんなで見えるようにできるか? 

あの人が、あのゴーグルの向こうでゾンビと戦ってたとして、ゾンビと戦ってるを空間をシェアするようになったら、我々の視点は、たぶん自由に一人称空間、三人称空間が存在できるようになるんだよね。

ソフトウェアと体験価値をどう考えるか

そうなってくると、たぶん、さっき言っていた「Faith」。自分の心の中とか、自分の中で信じているものと、外側で信じているものと、全員がつながってきて、全然違うような価値観に移行していくんじゃないかと思っているんです。

そういうことを考えるときに一番重要だと僕らが思っているのは「ソフトウェア」と「体験価値」です。つまり、(スライドの)赤いとこと青いとこ。日本企業は、緑のところが得意です。

赤いところと青いところをやれる20代がこれから育つと、緑のインフラは車メーカーとか電気メーカーにやたらと残っています。

なので、非常にシナジーが効きます。だから、我々が今、解かないといけない問題は、中高長大なハードウェアを作るんじゃなくて、ソフトウェアと体験価値を、どうやって考えていくかということなんです。

ここを使えるような人を育てないといけないけど、ここの問題ってすごく難しくて、解くのにすごくクリエイティブな発想もいるし、もしくは、うちの学生がやっている「光を透す木を作ろう」というプロジェクト。これは車メーカーと一緒にやっているけど、そういう柔軟な発想でものを考えられることが重要です。

今、みんなスマホって、表面ガラスじゃないですか。ガラス以外のスマホ、持ってる人いますか? たぶんいないよね?

じゃ、皮とか木とか大理石、そういう我々がネイチャー的に持っている素材が、どうやったら光を透せるかという、加工技術それそのものを研究すると、最初のうちはめっちゃ解像度が低いけど、空間に対して光を打ち分けていくということができる。

こっちの人は日本の時間をみて、向こうの人はニューヨークの時間をみているような、光線を打ち分けるような板を作ってやって、そういうものを、どう作るのか考える。

そんなことを考えていくと今、我々は過渡期でいろいろなところにディスプレイをはめているけど、はめないでできる板をどうやって作るんだろう? と、すごく興味がある。例えば、これはアクチュエーターの研究で、モーターとかサーボとか、動くものってあるじゃない?

動くもの自体をどうやったら3次元形状と一緒にして、3Dプリンターで刷るかという研究。

つまり、僕らって今、ロボットと組むとしたら、電気屋でパーツを買ってきてくみ上げるしかない。組み上げるんじゃくて、最終形状を3Dで入力したら、それどおりに動くものをどうやって作るのかにすごく興味がある。

そうじゃないと、大量生産したものをつなぎ合わせることでしかものを作れなくなっちゃう。そうじゃくて、間をどうやってつなぐか。そういうハードウェアをどうやって作るか。

イメージしてほしいんですけど、バネって自由な方向に曲がるじゃないですか? でも、一方向にしか曲がらないように設計したバネがあれば、それって関節とか筋肉になるよね。

そういうものを、どうやって3Dプリンターで、硬い素材を柔らかく作るかとか、これは元東大の大島君、今はうちの研究員やっているんですけど、3人ぐらいで研究していました。

そんなことで、ダイバーシティな高いディスプレイとかアクチュエーターを、ずっと作っています。こういうものやるのは、ベースは数学で、裏ではソフトウェアで動いていてずっとやってくいくようなタイプのラボです。

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