2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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大谷ノブ彦氏:メディアアーティストの落合陽一先生になります。大学の助教授だけではなく、雑誌、TV、ラジオなどメディア露出も多く、マルチで活躍されております。また国内でもグッドデザイン賞や経済産業省での賞などを獲得。さらに世界でも、欧州最大のVRの祭典で2017年まで4年連続5回受賞など、名だたる賞を日本、世界問わず受賞し大活躍の落合先生でございます。そんな落合先生の今回の講義テーマは「人間社会から計算機自然へ」です。それでは落合陽一先生、よろしくお願いします。
(会場拍手)
落合陽一氏:よろしくお願いします。こんにちは、落合です。みなさん、大学生の人ですか? それとも社会人の方ですか?
(会場挙手)
あぁ、半々くらい、あとは20代って感じですか?
僕が好きな小説にジェームス・バリーという人の『ピーターパン』という小説がありますが、読んだことありますか? 読んだことある人?
(会場挙手)
いない? 意外といない。
この前、女子高生向けに講演したら、意外と7割くらい読んだことあるって言われて、びっくりしたんですけどね。
その中に出てくるセリフの一つに「All the world is made of faith, and trust, and pixie dust.」というセリフがあります。みなさん「Faith」と「Trust」の違いって、学校で習ったことあります?
「Faith」は内にあるなにか。「信仰」や「信頼」と訳したりしますが、「Faith」も「Trust」も信頼なんです。「Faith」が内なるなにかで、「Trust」が外在するなにか、証拠がつけられるなにかです。つまり、自分の中になにかを信じることと、自分の外になにかを信じる、これは極めて感覚的な話なんです。
あと「pixie dust」は魔法という意味。つまり「認知できるもの」と「認知できないもの」があって、認知できるものは内在性があるものと外在性があるものでできている。ピーターパンが言うにしては、だいぶ深いセリフなんですよ。
なんで僕が「pixie dust」が好きかというと、僕の博論のテーマは「どうやったら人間は、今後ディスプレイやオーディオデバイスみたいな目で見えるもの、耳で聞こえるもの以上の解像度を使って、人間に対して新しく表現できるか」だからです。これが僕が東大のころ専攻していたテーマでした。そんなことをずっとやっている人間です。
人間の感覚解像度は、例えばですが、あそこに超音波があるんだけど、人間には見えないんですよ。超音波って人間の耳には聞こえないし、人間の目にも見えないから内なる信頼も外からの信頼もないものなんです。
我々のセンサーでは捉えられないものを使って、どうやったら我々が見えるものやカタチになるものを作れるかが、今でもすごく興味あって、そんなことばっかりしています。例えば、これは磁場を使っていないんですけど、全部勝手に動いているように見えるでしょ?
そんな風にこの世の中のものを人間が変わっている横で、勝手に動かせるか? それが、僕が博士時代にやっていたテーマ。それから研究室を作って、ずっとこのテーマは継続してやっています。人間が見えるものと、人間が感じないものを、どうやって使っていくかに、すごく興味があるんです。
僕はピーターパンという小説が大好きなので、大体ウィキペディアからピーターパン症候群とか引っ張ってくるんですよ。「ピーターパンは未熟でナルシズムに走る傾向をもっている。自己中心的で無責任で、反抗的で依存症で怒りやすい」とか言われるわけです。人間的に最悪のレッテルを貼られているわけですけど、2回強調しますが、ポイントはこの人たちがどうやってあぶりだされるかということです。
「ゆえに、その人物の価値観を、大人の見識が支配する世間一般の常識や法律がないがしろにしてしまうこともあり、社会生活の適応の困難になりやすく、必然的に孤立してしまうことが多い」と言われている。まあ、確かに同じところに並べて学校生活を送れと言われたら、ああいうタイプの人間って、そんな簡単に適応できない。今の世の中ではピーターパンは死ぬんですよね。
みなさん、『人間の大地』は読んだことあります? 『人間の大地』に「虐殺されたモーツアルト」という単語が出てくるんですけど、モーツアルトはあそこで虐殺されるし、ピーターパンはあそこで死ぬんです。
なにがポイントかというと、我々は明治から今に至るまで、ひたすら同じものをたくさん、安く作ってきた。大量生産ってやつです。それをずっと繰り返してきて、効率的な人間を育てようとする社会システムを作ってきたわけです。その最高到達点が、みなさんのお手元のスマートフォンやお家に持っているトヨタの車かもしれない。
でも、そういう大量生産品でないものを人間側はやっていかないと、次のことを考えられないじゃないですか。だって、こういう仕事って、コンピューターとか、めっちゃ得意。例えば、エクセルを埋めるのなんて、人間がやるよりコンピューターがやるほうが早いし、同じものをひたすら作るんだったら、3Dプリンターで作った方がいいですよね。
つまり機械が得意なことを人間がしても、どうなの? って思いませんか。ただ、今の学校教育って、まっすぐ全員を並べて、整列できるようにしたり、全員で同じ教科書を読めるようにしたり、人と人のクロックを合わせることばかりやっているんです。まずここから離脱しないと、次のことが考えられない。
僕の好きなアニメに『輪(まわ)るピングドラム』という作品があります。この中に「この世界はいくつもの箱で、人は身体を折り曲げて自分の箱に入って、箱に入った後、自分の形がどんな形だったか、なにが好きだったのかを忘れてしまう」という言葉が出てきます。
これって、つまり角砂糖型の人間にパコパコと入れこんでいくってことですよね。最終的に自分のどこが得意だったか、なにが好きだったのかを忘れちゃう。
これが標準化の圧力ってヤツで、世の中は今、標準にしなくても、箱自体はコンピューターを使って、人間の力を直接エンパワーできるかを考えることができる。
我々が江戸時代まで持っていた世界って全員、依存的なんですよ。つまり江戸時代ってゴミがなかったと言われますけど、職業がめちゃくちゃあったんで、いろんな廃材があった。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ってセリフがあるじゃないですか。風が吹くと塵が目に入って目が悪くなるから、猫の皮を剥いで三味線を作って、猫の皮を剥くのに……桶屋が儲かる、みたいな……わかります?(笑)
そういうときに、どこにも無駄がなく、人と人が依存し合ってうまくいっている。だけど、その状況でも、例えばインドの街中って、(スライドを指して)あんな感じなんですけど、スピードが速く自動車が行き来しようと思ったらムリですよね? 人をはねるから。インドに行ったことありますか?
インド行くと、クラクションって、「be careful(気をつけて)」じゃなくて「I'm here」の意味で鳴らすんです。「僕ここにいるよ」って鳴らさないと、人が飛び出してきてひき殺しちゃうからです。
その世界だとGDPが1億くらい下がりそうですけど、あれがもし自動運転の車だったら、すごく高速に、人間を超アクロバティックによけることをイメージできますよね。つまり、あれだけ多様性があっても、どうやったらコンピューターで、多様性のある人間のままでいけるかは、たぶん、次の時代の勝負なんじゃないかと僕は思います。
その中で、例えば、さっきのピーターパンの話ですけど、近代社会が我々に規定したことって「依存的になるな」ということです。怒りやすいとか、ずる賢いとか、他人の見た目。あの中で一番ピーターパンが持っている問題点はウエンディに依存的であることだと思います。
どういうことかというと、ピーターパンを読むと、ウエンディとネバーランドに行って帰ってきてウエンディが母になって、またピーターパンがくるみたいな話なんです。
つまり誰かに依存的でないとピーターパンは成立しない。そういう人って、社会と自分の間にウエンデイみたいな人がいないといけない。
でも、ウエンデイみたいな人がいないと社会が成り立たなくなったかと言われると、そこが今、だいぶコンピューターによって成り立つようになった。それが一番大きい。つまり一人ひとりが割と好きな方向を向いていても社会が成立するようになってきたと思います。
僕が今、目指しているものはそういうことで、コンピューターを使って、どうやったら人間的な近現代、まず人間を標準化して、全員に同じプロトコルをしいて、それによってコミュニケーションコストを下げることを、間にコンピューターを挟むことによって変えられるかが、僕が今一番力を入れていることです。
そうするとなにが違うようになるかというと、例えば、アートとかリサーチとかビジネスの仕組みが変わります。我々が持っているアートとかリサーチって、近代の話なんですよ。東京帝国大学ができたのは、1880年か90年くらいとかですよね。(注:1877年創立。その後1886年の帝国大学令公布後、帝国大学に改組)
リサーチし始めたのは1700年代くらい。それ以前の科学者は貴族の趣味です。ビジネス、資本主義、国民国家が成立したのは、世界史で習いましたね。ウエストファリア条約が1600年代じゃないですか。
つまり我々が今、社会システムとして当たり前だと思っているものは、すべて近代的な標準化と人間が人間の問題を解決する仕組みの中から現れているものなんです。
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