2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小野:入ったときは僕が正社員番号1番目で、売上げもゼロだと。CAモバイルって会社は左に、サイバーエージェントのアメーバのロゴがありますが、「CA」ってサイバーエージェントの略で。サイバーの藤田さんが2000年に「最近iモードがすごいらしい、何かやろうぜ、とりあえず会社作ろうぜ」と、完全にノリですね。
それで、2000年5月に出来上がったのがCAモバイルだったんです。僕はそこに4ヶ月後にジョインしていくんですが、当時僕は同じ2000年にIBMって会社に新卒で入ったばっかりだったんです。一方で、たまたま僕は個人でモバイルサイト、iモードのサイトを作ってですね。
田中章雄氏(以下、田中):それって競馬のサイトですか?
小野:競馬のサイトじゃないですけども(笑)、田中さんネタ明かしを先にしてもらってありがとうございます。最初ですね、僕らもともとパソコンのインターネットからスタートしていったんです。
小野:iモードのCMを見て、iモードの端末買いに行ったんですけど、せっかく、当時貧乏学生で高いお金で買ったので、いろいろサイト作ってみようと思って作った最初のサイトが、学生らしいんですけども、居酒屋の検索サイト作ったんですね。
みなさん大学生なので経験あると思うんですが、サークルで飲み会ありますね、2~30人。「2次会行く人ー?」って15人くらい手を挙げますね。「入れるとこ探せー!」 ってことでみんな蜘蛛の子を散らすように走って店を探しに行くってことを当時僕はやっていたんです。
僕は今でこそ走るのが好きなんですが、当時は走るのが大っ嫌いな人間だったので、そんなことはやりたくないと思って。当時、iモードの1番重要な機能は、笑わないでくださいよ……インターネットの端末をクリックして電話がかけられるっていう機能が画期的だったんですね。
パソコンのインターネットじゃこんなのなかったんですけども、当時モバイルのインターネットではそれが画期的だったんです。今じゃ何じゃらほいって話なんですが。これを使って何かできないかなと。
田中:これ自分専用アプリだったんですね?
小野:自分専用に作って、渋谷の駅の辺りをですね、何てことない、これやったことは『ぴあ』とかの雑誌ありますよね? 居酒屋の書いてある雑誌を買って、ひたすらデータ打ち込んだだけなんです。
こんなのからスタートしたわけなんですけど、当時こんなサービスすらなかったので、たまたま雑誌に取り上げられて。というのをIBMをやりながら、新卒で、こういうのを夜なべして作っていたんですね。
田中:IBMって副業OKだったんでしたっけ?
小野:全然ダメなんですよ、ダメなんですけどこっそりやっていたんです。
いいサーバー借りなきゃということで、お金払ってサーバーを借りるんですが、毎月の給料からどんどんサーバー費が増えてきて、これはちょっと稼がなきゃまずいと。そういう中で、CAモバイルの話が出てくるんですね。
CAモバイルに入る経緯はですね、当時、サイバーエージェント、3人のときから作った1人である石川さんっていう僕の共通の友人がたまたまいて、飲みませんかっていう軽いノリでスタートしました。メッセージをもらって、僕は当時IBMにいたんですけども、とりあえず会いましょうってことで。翌日暇だったんで会いに行って。
僕は石川さんに会って、今僕はモバイルサイトを作っているけれども、サーバー代がかかっていて売上げゼロで困ってると。サイバーエージェントって、インターネットの広告を売る会社だから、僕のサイトを買ってもらおうと思ったんですよ。
自分のサイトのことを会ったばかりの石川さんに一生懸命プレゼンテーションをしていたら、最後に一言石川さんが、「小野さんのサイトの広告は買えないんですけども、小野さん、うちに来ませんか?」と言われて。これがそのCAモバイルに入るきっかけだったんです。僕が買われたと。
僕はIBMに新卒で入ってまだ4ヶ月目くらいの新卒研修中だったんですけど、忘れもしない8月22日にその話を聞いて、CAモバイルに行きたいと言いたかったんですけれども、さすがに新卒で入ったばっかりだから、これはまずいだろうと。
明日までに返事をしますということで、いったん夜寝て、落ち着いてから会社に行って色んな人に相談して。結局その日のうちにIBMの人事部長に頭下げて、辞めますというふうに言ってしまって。その日の23時くらいにCAモバイルに電話かけて、行きますって言ったのがスタートですね。
きっかけはほんとノリだったんですね、いろんな人の出会いから。でもやっぱりきっかけはあって、自分でサイトをやっていたと。やっていて、日々、やたら人が来るなというのを体感していたんです。やってみてわかったんですね。当時あんまりニュースや経済紙なんて見てなかったんですけども、よく調べると、こんなことが起きてたんですね。
当時僕はこのへん(2000年あたり)からiモード買って、もちろん当時もそこそこ話題にはなっていたんですけど、とはいえ周りでiモード端末を持ってる人いないし、サイト作ってる人なんかいなかったんです。
僕はその2000年のちょっと伸び始めたときくらいからモバイルサイトを自分で作り始めたんですが、2000年にまさに急成長の辺りで、その時たまたまCAモバイルに入るっていう話がきたんです。
自分でサイトをやってく中で日々のすごいユーザー数っていうのは、この波があったからなんですね。別に僕のサイトが優れていたわけでもなくて、たまたま最初にやったから競合が少なかったんですよね。でもこの成長があったからですね、先ほどのCAモバイルの成長。もちろん僕も多少頑張りましたけれども。
田中:でもこのカーブに非常にマッチしてますよね。
小野:そうなんですよね、これすごい大事なところで。これからみなさん多分、いろんなやってみたいネタだとか事業とか、あると思うんですけども、勝率を上げるには、勝ち馬っていうか、波に乗るのが大事なんですね。
田中:実はさっきの中国のプレゼンで言いたかったこととまったく同じで。なぜ今中国に僕がフォーカスしているかというと、これはiモードの波ですけど、中国で同じような波が経済全体とか、もっと大きなところで来てるんですね。
やっぱり同じことをやって、伸びている。じゃあ中国の会社の人たちがもともと技術力があったかっていうと、必ずしもそうじゃないけど、彼らはこれと同じような大きな波の中で育って勝ち抜いてきた人たちだから、今強いんだと思うんですね。
田中:その敗因は?
小野:まぁ、早すぎたんですね、簡単に言うと。あまりにも早すぎた。ただ僕の発想は、今のグラフと同じで、日本でこのiモードの成長に乗って成功したんだったら、当時中国のニュースを見ると、ひょっとしたら中国の携帯台数が1億台になりそうだと。1億台って日本の人口レベルじゃんと。しかも、中国はまだ12億人くらい残っている。
これは伸びしろがあるんじゃないかってことで始めたんですが、まぁ決断は早かったんですが、1回それで立ち上げて失敗して。2回目はより勝率を上げるために、やっぱり中国の中のことをわかってる人と一緒にやるべきだっていうことで、中国の北京電通という会社と一緒にやったんですが、それも結果的に潰してしまったんです。
でも、やっぱり中国には可能性があると。これから伸びるだろうと、伸びるところに張るべきだろうと思ってたときに、まさに田中も、そういう仕事をやり始めていて。で小林とも一緒になったという話で。
やっぱり伸びるとこに攻めてくというのはとても大事という話です。起こし方っていうよりは、どう起こすかっていう話なんですけども。もうひとつは、伸びるマーケットで立ち上がった会社がみんな成功したかっていうとそうではなくて、やっぱり戦略も大事なんですね。
なんとか売上げゼロから作らなければいけない。会社に何もないと。どうしようかなと思ったときに、とりあえずサイバーエージェントがなぜ育ってきたのかを学ぼうというところからスタートしたんですね。
これ何の絵かっていうと、要はインターネット広告。たとえばYahooにパナソニックの掃除機の広告が出てるとしたら当然広告主がいるんですが、サイバーエージェントっていうのは、今もやってますけど、当時はインターネットの広告代理店でスタートしてるんですね。営業力があったんです。
で、このビジネスを紐解くと、サイバーエージェントは赤字まみれだったんですね。何でかなと思って調べたら、広告主が10払うお金に対して、サイバーエージェントはざっくり2割くらい、1割から3割くらいしか取れてなくて、残りはメディア、媒体が持っていくんです。
しかも、近くにサイバーエージェントがいるから、売る人がたくさんいる。そこからスタートだったんですね。まず伸びるところに行くっていうのはもちろん大事なんですけど、どうやるかってやっぱ必死に頭使って考えるんですね。どうやるかっていう中で、何を使えるか。
このときはたまたまサイバーエージェントって営業網があると。あとはそのインターネット広告に詳しい人がいる。メディアは儲かる、じゃあやろう。ということで、そこからスタートして。
その戦略がないと多分あそこまでの成長はできなかったのかなと。ですので、みなさん色んなアイデアをお持ちだと思うんですけども、どうやったらより勝てるかとか、周りで何が使えるか、やはりリソースはあればあるほど勝率は上がるので、それはぜひ真剣に考えてみていただきたいです。自分の給料は自分で作る、というくらいに真剣にやってみる、っていうのが大事かと思いますね。
田中:なんでこんなに有名なんだろ?(笑)
小野:そうですね、ちょうどつい先日も、NHKの『あさイチ』で、スクリーンショットはこれが1番良かったんだけど、大雨洪水警報がちょっと邪魔ですね(笑)。こんなふうにジモティーのことが不用品をやりとりできるサイトって取り上げられて、非常にまたユーザー数が伸びたんですね。これがどんなサービスかというと、左上に書いてますが、地元の広告掲示板なんですね。
おかげさまでこのサービスって今もめちゃくちゃ伸び続けているんですけども、月間で250万人くらいが来るようなサイトに育ってきてるんですが、これ実はインフィニティ・ベンチャーズでゼロから立ち上げたんです。
どういうことかというと、通常ベンチャーキャピタルっていうのは、すでにある会社に投資をするんですが、社員もいないし、誰もいないんだけどとりあえずゼロから投機しちゃえと。で、さっきと同じようにお前が社長やれっていう、またおなじみのパターンで僕が社長をやって、ゼロから社員を集めるところからスタートしたんです。
何かの暗号じゃないんですよ、みなさん。これ、いまだに現存するインターネットサイトなんです。Craigslistって聞いたことある人どのくらいいますか?
田中:みんな勉強してますね。
小野:そうですね。でも半分くらいの方が知らないんですが、このサイトどういうサイトかっていうと、こんなシンプルなサイトの今右側に見えてるのは、アメリカのAlexa調べなんですが、アメリカのトラフィック順のランキングです。
小野:1番にGoogleがいて、2番にFacebookあって、YouTube、Yahoo。
田中:TwitterとPinterestの間ですね。
小野:AmazonもあってWikipediaもあって、LinkedinもあってEbayもあってTwitterもあって、なんとその下にあるのがこのCraigslistっていうサービスなんです。その下にはBingっていうマイクロソフトの検索エンジンがあったりだとか、その下にPinterestがあるんですけども。こんな古臭いテキスト中心のサイトがいまだにアメリカのトラフィック順位で上位なんですよ。
田中:ちなみにデザインは20年くらい前からほとんど変わってないです。
小野:そうですね。ちなみにグローバルのランキングでも60位、全世界のあらゆるインターネットのサイトの中で、60位くらいになるトラフィックを集めてるサイトなんです。
これ何かというと、まったくジモティーと同じというか、こっちが本家なんですが、たとえばサンフランシスコとかの地元での物のやりとり、いらないものがあるんだけど買いませんかとか、譲りますだとか。もしくは仕事。
ローカルでのこんな求人案件あるんですがやりませんかだとか、応募したいですだとか。あとルームシェアだとか不動産だとかの、いろんな(情報を集めた)地元の掲示板なんですね。これがめちゃくちゃ伸びていると。これが原点なんですね。
このCraigslistっていうのは、日本には合わないんだと言われていたんです。でも、ここで我々はひとつまた新たな事実を見つけたんですね。
これは中国版のCraigslist、いってみればコピーですね。似たようにテキスト中心で。左上は部屋のやりとりだとか、携帯のやりとり、中古品のやりとりだとか、これを北京でできるだとか、上海でできるだとか、いわゆるエリアごとのローカルな掲示板で、これもめちゃくちゃ伸びていて。
実はこれと同じようなサービスが中国ではあと2つくらいあって、中国にいる田中のネットワークをもとに知って、今この、58.comって会社は上場まで果たしているんです。ナスダックですね。
アメリカでも流行っていて、中国でも流行っているんだったら、日本で流行らないはずがないというところから、スタートしてるんですね。やはり成功事例に学ぶというのはとても大事で、アメリカでCraigslistがこれだけ長く成功しているんですから。
そこで日本でも、上手く行ってないんだって諦めずに、いろいろとリサーチしてくると他に成功事例が見つかってきて、中国でも流行ってると。
それだけで始めてもまだ危険で、結果的にジモティーを立ち上げてなぜ伸びたかというと……学びに行ったんですね。
小野:はい。田中が中心となってこの58.comとあとふたつのライバルの3社にですね、強引にアポイントを取ってもらって、なぜ流行ってるのか教えてくださいと、何も無害な振りをして。まぁもちろん我々中国に行くつもりはないので、彼らにとってはコンペティター、競合にはなり得ないんですけども、教えてくださいみたいなかたちで。
田中:けっこうみんな親切に教えてくれましたね(笑)。
小野:教えてくれましたね。言ってみるもんだなーということなんですが、それでやっぱり外側だけじゃなくて、なぜ彼らが伸びたのかっていうのを学びに行ったのが非常に重要でした。
やはり外側だけを見て真似をするのは誰でもできるんですけども、どう伸びたかっていうのを実際に聞きに行く、見に行くというのはとても重要なんですね。ということがあって、それからジモティーが徐々に伸び始めて。
田中:小野さんこの前の前のグラフに1回戻してもらえます? ジモティーの成長のグラフみたいなの。
小野:これですね。
田中:当時、中国に学びに行って、3社のみなさんが言われたのは、最初のこの部分がキツイって言われたんですね。(売上げの上がらない時期を示して)そこでやめちゃダメだって言われたんですよ。
小野:これをよくよく調べると、アメリカのCraigslistはあまりにもインターネット黎明期から始まっていて、94年くらいですか? そこから始まっているのであんまり参考にならないんですが、中国で同じようなCraigslistのコピー3社は2005年に立ち上がって、2010年くらいですかね、我々が行ったの。要は5年くらい経ってようやく花開くっていうことを学んだんですね。
田中:知らなかったら、やめたかもしれない(笑)。
小野:実際にすごい時間がかかったんですけれども、こういう伸び、急速に最近伸びてきてるんですが、耐え忍んでいれば必ず活路が開けるっていうのは、知らなかったらつらいんですけど、単純な話で知れば恐れずにやれるんですね。
なので何が言いたいかというと、立ち上げようとしたときに成功事例に学ぶということと、その成功事例っていうものの中身、外側だけじゃなくて中身を見るということがとても大事です。
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