食べ物に毒を混ぜて…
かつて本当にあった人体実験

The Poison Squads: The Stupid, Risky First Food Safety Tests

食べ物に含まれる食品添加物が安全かどうか、気になる方もいると思います。しかし100年前は、安全の基準などが明確に決められていませんでした。転機となったのは、「Poison Squads(ポイズンスクアッド)」と呼ばれる、 アメリカ史上もっとも奇妙で悪名高い人体実験。被験者に化学物質を混ぜた食事を提供し、その影響を調べる実験で、1902年に始まり、5年続きました。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、人体実験の内容とその意義について解説します。

かつてアメリカで行われた食べ物にまつわる人体実験

ステファン・チン氏:みなさん、「食べ物は素晴らしい」という意見に賛成していただけると思います。ですから、毎日おいしい食亊を、1年にわたって食べなければならない実験に参加することは夢のようだと思うでしょう。

でも、想像してください。食品の中に隠れているもの、例えばバターや新鮮なさやえんどうにわずかな毒が入っていることを知った上で実験をするとしたら……。

今日でこんなことは考えられませんが、実際に起こったことです。かつてPoison Squads(ポイズンスクアッド)と呼ばれる、 アメリカ史上もっとも奇妙で悪名高い人体実験が行われました。この実験は1902年に始まり、5年続きました。

今で言う化学倫理委員会を通過していないにも関わらず、その実験は革命的なことでした。なぜなら、人々は物を食する前にそれらが安全かを明確にすべきだということに気付き始めたからです。

この実験は、アメリカの農務省の最高位の化学者であったハーヴェイ・ワシントン・ウィレーの発案でした。

話は戻り、食用添加物はテストされる必要、また表示される決まりがありませんでした。そこで彼は、生きていく限り、またこれから子どもたちを育てていく限り、アメリカにいる人が何を実際に食べているのかを知らないことはよくないという考えにたどり着いたのです。

例えば、ホルムアルデヒドは牛乳の酸化を防ぐために普段から使用されていました。この物質は今では、死者を保存するために使用していた発がん性物質だということが知られています。

みなさんはよく肉に、ソディウムとホウ素をまぜあわせたホウ酸という物質が入っているのに気づいていますよね。この物質は肉をより新鮮に見せるような効果があります。とくにひとつまみの塩と赤い着色料と組み合わせた場合、その効果は絶大です。

今日、ホウ素は合成洗剤や殺虫剤といったものに使用されています。

話はこれだけに限りません。実際にはたくさん、このようなことが起きていました。しかし誰もこの食品添加物について、食べるのに安全かどうかを調査しませんでした。気にしなかったのです。

そこで、ウィレーは5,000ドルの政府の援助を得て料理人を雇い、無料でたくさんの食品を与えることを約束し、ボランティアとして多くの健康な男性をリクルートしました。ウィレーは参加者の体重と心電図を計測し、尿や排泄物を採取させ、1週間ごとに健康診断をおこないました。

最初は少量の特別な化学物質を投薬していきましたが、徐々に増やしていき、参加者が病気で続けられない場合にのみ、投薬をやめるように計画しました。

最初はホウ砂から始まり、次にその派生物であるホウ酸に切り替えました。最初、料理人はこの化学物質を牛乳やバターに隠しました。しかし参加者は味を非常に金属的だと感じたため、本能的にその食事を避けるようになりました。誰も金属の食器の味がする食事を食べたくはないですよね。

ウィレーはある程度の投薬量を満たしている男性が必要だったので、彼らには 食事の半分を食べた後に錠剤でホウ砂を飲ませました。この実験の報告によると、1日に2~3グラムのホウ砂を摂取した男性は胃の痛みと空腹を感じないという症状が出ました。1日に4グラム摂取した場合は、非常に疲れ、頭痛を引き起こし、普通に働けなかったという症状が出ました。

この症状は私の平均的な月曜日の症状ですが、明らかに彼らの場合はホウ砂によって引き起こされたものです。

他の場合でも、ウィレーは1グラムの半分のホウ砂を長期にわたって摂取すると同じような症状が見られることを発見しました。今日では、ホウ砂を摂取すると細胞へダメージを与え、やがて吐き気や痙攣を引き起こすとわかっています。よかったのは、誰も長期にわたる問題を抱えることなく実験を終えたことです。

ウィレーは、ホルムアルデヒド、ソディウム、安息香酸エステル、サリチル酸のように、さらに缶詰にされている豆がより緑に見えるよう使われる硫酸銅もテストしました。被験者の様子をみている間に、ウィレーはどの添加物も安全だと言えないと判断しました。

今日におけるこの実験の意義

今日において、この実験をふり返っている科学者たちは、倫理的な観点からだけでなく、科学的に実験の段取りからしても尋常ではないと判断しています。なぜなら、たとえ被験者が知っていたとしても、死に至らしめる可能性のある物質を与えているということは決して了承されるものではないからです。

科学的な観点からいえば、1つには、参加者が毒を食べていると知っているすると、その後に報告する症状が歪む可能性があり、実際の病よりもより重く感じてしまうことがあります。

そして多くの部分で、この実験では制御グループがありません。それぞれの物質を検証している間に、実験を遂行しているSquadsの調査員は数週間の休暇を与えられていましたが、彼らは報告をし続けるよう問われておらず、また尿や排泄物を集め検査することを義務付けられていませんでした。

また、このような小さな範囲での症例で結論できることはできません。ウィレーはもし健康な若い男性がある化学物質で病気になるようであれば、その化学物質は女性や子どもにとって安全ではないと考えていました。しかし生物学はそのように機能するわけではありません。そして多数の白人男性は、確かなアメリカ人としての代表とは言えません。

しかし、たくさんの欠陥がこの実験にあるとは言え、これは食品添加物をテストし、研究していこうというはじめの一歩になったのです。

後の研究では、この実験は信用できるとものだと判断され、オレンジジュースや炭酸などの酸性食品に対する安息香酸ナトリウムをのぞき、ほとんどの食品添加物は食品への使用が禁止となりました。しかしきちんとテストし、安全だと判断されたため、安息香酸ナトリウムは使用されています。

ジャーナリストは、この実験で何が起こったかをレポートするのが大好きだったので、アメリカ中の人々が食品に使用されてるかもしれない添加物について深刻に考え始めました。

1906年に、部分的ですがPure Food and Drug Actが採択されました。これは現代のより厳格な規定を作るための先駆けとなった法律でした。

このような一連の動きは、みなさんが食するものの原材料が死に至らしめるものではないことを調査する組織である、現代にあるFDA(食品医薬品局)の設立へと発展しました。大体の流れはこんな感じです。

みなさんが調理済みの豆の缶詰を開けることを決意したら、それらにできることは何もありません。それはあなたのものです。ウィレーはアメリカの食事を保護することに非常に貢献したので、代行機関の父と呼ばれています。

Poison Squadsは非常に悪質な考えで、科学的には未完成なものでした。しかしそれをきっかけに私たちが進歩してきたおかげで、スーパーマーケットへ行く時は十分に安全だと言えるのです。

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