「中小企業の65%が賃上げ」 安倍首相、“経済最優先”を改めて強調--所信表明全文

安倍晋三内閣総理大臣 所信表明演説 衆議院本会議 平成26年9月29日

2014年9月29日14:30より行なわれた、安倍晋三内閣総理大臣による本会議での所信表明演説を全文書き起こしました。

災害に強い国づくりへ向けて

安倍晋三氏:所信を申し述べるに先立ち一言申し上げます。一昨日、御嶽山が噴火いたしました。尊い命を失われた方に深く哀悼の意を表するとともに、被害にあわれたみなさんにお見舞いを申し上げます。引き続き救助に全力をあげてまいります。今後の噴火活動に最大限の警戒をし、国民生活への影響にも最大限の対策を講じてまいります。

平成26年8月豪雨による広島での大規模な土砂災害をはじめ、全国各地で甚大な被害が発生しました。亡くなられた方々のご冥福をつつしんでお祈りすると共に、被害にあわれた皆さんに心からお見舞い申し上げます。1日も早い生活再建に向け全力をあげて取り組んでまいります。

土砂災害警戒区域にまだ指定されていない全国の危険場所について、徹底的な調査を行い、国民への情報提供が万全な形で行えるよう制度の見直しを進めてまいります。

今年の災害では、放置された車両が救助活動に支障をきたしました。災害時にそうした車両を移動できるよう災害対策基本法を改定いたします。災害対応には与党も野党もありません。国民の暮らしを守るため、災害に強い国づくりを、国民の皆さんと共に進めていこうではありませんか。

2020年のオリンピック・パラリンピックを「復興五輪」に

福島は今、実りの秋を迎えております。先日訪れた福島の町では、復興を成し遂げた水田に黄金色の稲穂が輝いておりました。来月1日には、田村市につづき川内村への避難指示を解除します。故郷へ帰郷する皆さんが安心できる暮らしを取り戻すことができるよう、健康や仕事などの不安をひとつひとつ解消してまいります。

中間貯蔵施設の建設も福島の皆さんのご理解を得て、大きな一歩を踏み出すことができました。これを期に、1日でも早い福島の復興を進めてまいります。

岩手と宮城における高台移転や災害公営住宅の建設は8割を超える事業がすでに始まっています。被災者の皆さんの心の復興にも大きく力を入れてまいります。

仮設住宅への保健士の巡回訪問、子どもたちが安心して遊べる居場所作りなど、被災者の方々の心に寄り添いながら、きめ細かい丁寧な取り組みを進めます。

7月に宮城の東松島で出会った、安部俊郎さんは地域の人たちと共に、地域に根付いた農業を進めていっています。農地の集積、多角化、6次産業化。それによって、農業者の所得を増やし、地域の賑わいを創出する、私たちが目指す「攻めの農業」の姿がここにあります。

震災で壊滅的な被害を受けた大地から、最先端の農業が花ひらこうとしています。今後も、暮らしを支える生業の復興を力強く支えてまいります。

2020年の、オリンピック・パラリンピックは「復興五輪」としたい。日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけとしなければなりません。開催に向けた準備を本格化します。

6年後には見事に復興を成し遂げた東北の町並みのなかで、三陸海岸から仙台湾を通り、福島の浜通りへと聖火ランナーが走る姿を世界に向けて発信しようではありませんか!

地方が直面する課題への取り組みについて

「桃源郷のような別世界」と東洋文化研究家、アレックス・カーさんは、徳島に広がる原風景をこう表現しました。鳴門の渦潮など、風光明媚な徳島県では、今年の前半に外国人宿泊客が前年の4割も増えました。

外国人観光客は半年で600万人を超え、過去最高のペースです。今年4月には旅行収支が大阪万博以来、44年ぶりの黒字となりました。更なる高みを目指し、ビザの緩和など戦略的に取り組んでまいります。

外国語を駆使しながら、名所旧跡を案内できる人材を自治体の努力で育成できるよう、特区制度を活用して地域を盛り上げてまいります。

昨年度、沖縄を訪れた外国人観光客は過去最高となりました。アジアの架け橋、沖縄の振興に全力で取り組んでまいります。

それぞれの地域が豊かな自然、文化、歴史など、特色ある観光資源を活用できるよう応援してまいります。鳥取県の水の恵みを生かした地ビールは全国へリピーターを広げ、売上を伸ばしています。ふるさと納税をしてくれた人に対して、地元が誇る名産品をプレゼントする、こういった自治体の工夫をこらした努力はふるさとの名物を全国の人に知ってもらう大きなきっかけとなりました。ふるさとの名物を全国への人気商品へと押し上げる支援をさらに強化いたします。

「ないものはない」隠岐の海に浮かぶ、島根県海士町ではこの言葉がロゴマークになっています。都会のような便利さはない、しかし海士町の未来のために必要なものはすべてここにあるというメッセージです。

この島にしかないものを活かすことで、大きな成功を収めています。大きな都市を真似るのではなくその個性を最大限に活かしていく、発想の転換が必要です。それぞれの町が本物はここにしかないという気概を持てば景色は一変するに違いありません。

島のサザエカレーを年間2万食も売れるカレーへと変えたのは、島にやってきた若者です。若者のアイデアが次々とヒット商品につながり、人口2400人ほどの島には10年間で400人を超える若者たちがIターンでやってきます。

やればできる。人口減少や地方高齢化など、地方が直面する構造的な問題は深刻です。若者が将来に夢や希望を抱き、その場所でチャレンジしたいと願う、そうした若者たちが危機に歯止めをかけるカギになると確信しております。

若者にとって魅力ある街づくり、人づくり、仕事づくりを進めます。まち・ひと・しごと創生本部を創設し、政府としてこれまでとは次元と異なる政策を実行してまいります。若者がチャレンジしやすい環境を整えます。

地方から世界へ向けた経済戦略

1度失敗する全てを失う個人保証偏重の慣行を脱却させます。今、政策金融公庫と商工中金(商工組合中央金庫)だけで2万件を超える融資が個人保証なしで実行されています。なお、政府調達では創業から10年未満の企業を優先するための枠組みを新たにつくり、新事業をつくる流れを政府一丸となって応援してまいります。

伝統あるふるさとを守り、美しい日本を支えているのは中山間地や離島をはじめ、地方にお住まいの皆さんです。そうしたふるさとを消滅させてはならない。もはや時間の猶予はありません。

この国会に求められているのは、若者が将来に夢や希望をもてる地方の創生にむけて力強いスタートを切ることです。皆さん一緒にやろうではありませんか!

今が旬のさんまは、ベトナムではトマト煮が大人気。北海道根室から輸出されています。地元の漁港や商工会議所の皆さんによる一体となった売込みが根室のさんまを世界ブランドへと押し上げたのです。

北海道の根室から「日本の根室」さらには「世界の根室」へと地方もオープンに世界を目指す時代です。自由で大きな経済圏を作り上げる、引き続きTPP交渉やEU、東アジアとのEPA交渉など経済連携を戦略的に推し進めてまいります。欧州とのEPAについても早期に実現し、経済的な絆を深めてまいります。

安全保障について

「地域と世界の平和と安定に貢献する日本の取り組みを指示する」、就任後主要国で最初に日本にいらっしゃったインドのモディ首相から、日本の積極的平和主義について強い支持を得ることができました。

我が国は、アメリカをはじめ、自由や民主主義、人権、法の支配といった基本的な価値を共有する国々と手を携えながら、世界の安定にこれまで以上に貢献してまいります。

その上で、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしは守り抜く、その決意のもと切れ目のない安全保障の整備に向けた準備を進めてまいります。在日米軍再編については現行の日米合意に従い、抑止力を維持しつつ、基地負担の軽減に向かって全力で取り組みます。

かつて裏づけのない言葉だけの政治が、沖縄の皆さんを翻弄しました。学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場の現実はあの3年3ヶ月、1ミリたりとも変わることはありませんでした。

こんな無責任な政治を2度と繰り返してはなりません。安倍内閣は、言葉ではなく実際の行動で負担軽減に取り組んでまいります。今後も沖縄県の方々の心に寄り添いながら、沖縄県外における努力も十二分に行ってまいります。

周辺諸外国との外交について

さて、総理就任後、49カ国を訪問し、延べ200回以上の首脳会談を行ってまいりました。周囲を俯瞰する外交をさらに積極的に展開し、日本の立場を国際的に発信してまいります。

基本的な価値や利益を共有し、もっとも重要な隣国である韓国との関係改善に向けて努力してまいります。日本と中国は切っても切れない関係であり、中国の平和的な発展は我が国にとって大きなチャンスです。地域の平和と繁栄に大きな責任をもつ、日中両国が安定的な友好的な関係を築いていくために早期に首脳会談を実現し、対話を通じて戦略的互恵関係を早期に実現してまいります。

ウクライナの安定確保のため、国際社会と一致団結し我が国としてできる限りの支援を行います。ロシアには世界の責任ある立場として、国際社会の諸問題に対して、建設的に関与してもらうよう対話を通じて働きかけてまいります。また、ロシアとの平和条約締結に向け、粘り強く交渉を続けてまいります。

北朝鮮には拉致被害者を含む、全ての日本人に関する全面的、包括的な調査を開始しました。全ての拉致被害者の皆さんがご自身の手で肉親を抱きしめるその日まで私たちの使命は終わりません。今回の調査が全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながるよう、全力を尽くしてまいります。

女性の活躍とその支援について

先週、アメリカのヒラリー・クリントン前国務長官とお会いする機会がありました。「前進あるのみ、女性が輝く社会を目指す」という安倍内閣の挑戦にヒラリーさんが力強いエールを送ってくださいました。日本から世界を変えていく。今月日本ではじめての女性をテーマとした国際会議を行い、世界で活躍する女性の皆様にお集まりいただきました。日本社会が本当に変わるのか、今や世界が日本に注目しています。

また、待機児童の問題は従来の2倍のスピードで保育の受け皿の整備が進んでいます。子育てもひとつのキャリアです。保育サービスに関わる子育て支援員という新たな制度を設け、家庭に専念してきた皆さんもその経験を活かすことができる社会づくりを進めてまいります。

社会を改革すべきは、その意識です。上場企業では女性役員の数について、情報公開を義務付けます。国、企業が一体となって女性が働きやすい企業を目指します。

先日訪問した、大阪の中小企業では、女性ならではのきめ細かい営業活動が海外展開のチャンス生んだといいます。女性の活躍は社会の閉塞感を打ち破る原動力となる、その認識を共有し国民運動へと展開してまいります。

規制改革、成長戦略について

原子力規制委員会により求められる安全性が認められた原発はその科学的、技術的判断を尊重し再稼動を実施します。自治体をはじめ、関係者の理解を得られるよう、丁寧な説明や避難計画などに取り組みます。徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の活用のより、できる限り原発依存度を軽減してまいります。水素ステーションがいよいよスタートし、全国各地で夢だった水素社会が現実に幕を開けようとしています。

日本の自動車メーカーは世界に先駆け、燃料電池や自動車の販売に踏み切りました。民間のダイナミックなイノベーションの中から、多様性あふれる新たなビジネスが生まれる。大胆な規制改革なくして、成長戦略の成功はありません。農業、雇用、医療などにこれからも果敢に挑戦してまいります。

その突破口が、国家戦略特区です。今月本格的にスタートしたばかりですが、さらに改革メニューを充実します。能力あふれる外国人の皆様に対して、日本で活躍していただける環境の整備をしてまいります。

公立学校の運営を民間に解放し、グローバル人材の育成や個性に応じた教育など、多様な価値に対応した公教育を可能にしてまいります。

安倍内閣の規制改革に終わりはありません。この2年間であらゆる岩盤規制を打ち抜いていくという決意を新たにして、今後国会が開かれるたびに特区制度を更なる拡充を提案させていただきたいと考えております。

内閣発足から600日あまり、有効求人倍率は22年ぶりの高水準となり、就業地別では、35の都府県で仕事の数が求職者の数を上回っています。連合の調査で平均2パーセントを超える賃上げは過去15年間で最高です。

中小企業、小規模事業でも1万社における企業で65パーセントの企業で賃上げがなされています。日本は自信を取り戻そうとしています。しかし、その効果は日本の隅々には行き渡っているとは言えません。

消費税率の引き上げや燃料価格の高騰などによる影響にも慎重に目配りしていくことが必要です。私たちの改革は未だ道半ばです。

社会保障改革、行政の徹底的な効率化など、数々の課題を新内閣の総力をあげて更に前に進めてまいります。成長戦略を確実に実行し、経済の再生と財政の再建を両立させながら、経済の好循環を確かなものとする。そして、景気回復の実感を全国各地に届けることが安倍内閣の大きな使命であります。引き続きデフレ脱却を目指し、経済最優先で政権運営に当たっていく覚悟であります。

地方創生と女性の活躍が日本の可能性を拓く

「天はなぜ自分をすり鉢のような谷間に生まれさせたのだ」、明治時代の農業者は貧しい村に生まれた境遇をこう嘆いていたと言います。

しかし、ある時、峠の上から周囲の山々や平野を見渡しながらひとつの確信に至りました。天は水郷には魚や塩、平野には穀物や野菜、山村にはたくさんの樹木をそれぞれ与えているのだ。そう確信した彼は、職人、養蚕、茶の栽培など土地に合った産業を新たに開発し、その村を豊かな村へと発展させることに成功しました。

今、日本はもう成長できない。人口減少は避けられないといった悲観的な意見があります。しかし、地方の豊かな個性を活かし、あらゆる女性に活躍の舞台を用意する、日本の中にあるありとあらゆる可能性を開花させることで、まだまだ成長できる。日本の未来は今、何を成すかにかかっています。

悲観して立ち止まるのではなく、可能性を信じて前に進もうではありませんか。厳しい現実に立ちすくむのではなく、輝ける未来を目指して皆さん、共に立ち向かおうではありませんか!

ご清聴ありがとうございました。

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