少子化と未婚男女の増加

乙君氏(以下、乙君):いや、そうそう。その流れで続いてもいくんですけど。「未婚男女の増加、原因は男性の相対的レベル低下なのか」と。「少子化、触れられない本当の原因」というニュースなんですけど。これはさっきも言ってたみたいに、男が捕虜になっていてというのもちょっと関わってくるんですけども。

「前回の統計に比べて人口減少のペースは緩和されているが、少子化問題は改善されている気配はなく、政府が掲げている2025年までに出生率1.8の実現はかなり困難と予想されます」と。待機児童がどうのという問題もあるんですけれども……。

山田玲司(以下、山田):本当にひでえ話だよね。これとかね。またこういうこと言うかって話だよね。

乙君:「そもそも少子化のなにが問題なのか」とかっていう意見もあり。「少子化でいいじゃないか」と。この男の能力が、要は仕事の……。

山田:相対的に下がってる。だからさっき言ってた話のまんま記事化されているのでピックアップしたんだけど、要は姫になりたい女が重いっていうさ。でさ、これもう結婚のあとに出産育児も控えてて、そして長い長い道が待ってるわけだよ。

そこに「俺が支えていけるだけの経済的な能力があるんだろうか」「精神的な能力があるんだろうか」っていうところで尻込みしているというのが実際で。

レベル低下というよりは、いったん上がってしまったところで止まった女と、現実にはそこを維持できなかった男とのギャップの話だと思うんだけどね。

乙君:女性側からだと、女性側から見ると、自分よりも経済的・社会的に地位が上の男性との結婚を求める傾向が強い。

山田:でも、それは昔からでしょ。王子様を探してるってそういうことだよ。

乙君:このような傾向はハイパガミーと呼ばれて、上昇婚ということなんですけど、景気低迷で男性の収入が下がる一方、女性が働きやすくなっていってるのが反比例している。

だから経済的・社会的に男性に近づくことによって、その結果、結婚したくなるような自分よりもレベルの高い男性が少なくなり、未婚率が上がってしまう。だから結婚がない。だからセックスもない。だから子どもも生まれない。ということですね。

少子化、未婚増加も漫画のせい?

山田:「じゃあ漫画のせいなんじゃい!?」というのを、いきなりやります。

乙君:なんでしょう? こういうことになったのは?

山田:犯人は『島耕作』です。終わり! ……とか言って(笑)。違います、ごめんなさい。ちゃんとやります(笑)。この漫画を見ると「結婚とかもういいかな……」って思う漫画ベスト3をちょっと考えてみました。でも、これ本当は個人的に今浮かんだやつを書いただけなんですけど。

これね、逆に「結婚ありだな」って思わせる漫画ってね、やっぱり鉄板だったのは『天才バカボン』だったと思うんだよ。

乙君:えっ、これもそうなの?

山田:『天才バカボン』って、あんなにうまくいってる家庭ないでしょ。

乙君:あの奥さんの人格、俺、わかんないもん。ママの。怖い怖い。

山田:だから、あれ許してくれるんだったら、「結婚してもいいよって思うのだ」でしょ。これって。そうでしょ。

乙君:うん。

山田:あともう1個、『天才バカボン』って、赤塚不二夫さんの周りにいた女たちの寛容さの象徴としてママがいるんだよ、あれ。なぜならば赤塚さんは2人奥さんいたからね。しかも奥さん2人協力してあの人を助けていたというか。

もしくは、外でもめちゃめちゃやってるし、そのへんにいるホームレスも連れてきちゃったりするじゃん。赤塚先生って。「変な奴を連れてきたのだ」というのが『天才バカボン』で、本当にやりたい放題なんだよね。

勝手に子どもは優秀なやつも生まれるしさ、バカボンみたいなおもしろいやつも生まれるわけじゃん。だから、まあ『バカボン』あったんじゃないのって思うんだけど。

アニメ探偵大好きな、心の支えの『クッパパ(クッキングパパ)』ですわ。

乙君:クッパパ。

山田:俺、クッパパがバブル期から日本の結婚率を下げるのをどんだけ止めてたかと。

乙君:おおー! そうなんだ!?

山田:うえやまさんに会ったことはないですけど、クッパパに描かれている世界は理想的な結婚生活でしょ。これ。

乙君:確かに。

山田:しかも、あの奥さん、旦那もそうだけど、見た目で相手選んでないでしょ。

乙君(笑)。

山田:そんであんだけの幸せな。お前さ、あん時な……。

乙君:この夏一番笑うわ(笑)。「見た目で選んでない」、こんなに納得感あるコメントない(笑)。

山田:あの時の『モーニング』って、クッパパ始まった時の『モーニング』って『右曲がりのダンディー』とか、あとは『ハートカクテル』とかだよ。

乙君:あー、すごい!

山田:そう。そういう「見た目しかねえべ」みたいな人たちがいっぱい時代に、あの主人公で毎日「うめえーー!」って。あれは一種の『けもフレ(けものフレンズ)』ですから。

乙君:確かに! それであいつ、けもフレとクッパパは同じラインなんだ。アニメ探偵は。

山田:そうなの。

乙君:ああー!

クッキングパパと島耕作の対比

山田:ああやってブラック企業の戦士たちはクッパパに助け……。 乙君:クッパパに帰るんだ!? こっちには帰りたくないんだ。

山田:そう。だって耕作なんて子どもに会えないんだから。

だから「結婚しなくたって、社長になれんべ」という、こっちがあるわけだよ。こっちのほうがやりまくりですから。島耕作は、結婚に破綻してるからこそ、あんだけ好き放題やるわけだよ。

でも、これちょっと悩んでるフリとかするわけだよ。耕作は。だけど、やることはやるわけだよ。というか、手当たり次第なわけだ。

これ結婚邪魔ですから。だから序盤から結婚うまくいってない。終わらせてるんだよ。バッと切ってるの。だけど、これとこれ同じ雑誌に載ってた。『コミックモーニング』。

乙君:すごい。確かにすごい! 今、そう言われたら『モーニング』の攻め方やばいよね。

山田:この多様性から。

乙君:多様性だよっていう。

山田:そう。で、俺もデビューするわけ。『モーニング』から。

乙君:うぇーい!

山田:うぇーい! いいんだけど、別にそんなことは。そうなんですよ。

乙君:『釣りバカ』は間ではないんだね?

山田:『釣りバカ』はこっちですよ。『釣りバカ』はこっちだって。双璧だと思う。『釣りバカ』は。

乙君:でも『釣りバカ』って……でも、クッパパって実生活に役立つじゃないですか。でも釣りバカって「いいな」って思うけど、実生活に役立つのってなんか……。

山田:あのな、愛妻家ってあんま会ったことねえじゃん。

乙君:そうなの?

山田:愛妻家ってあんまりいないんだよ。この国では。「うちの愚妻が……」なんてあるじゃん。あんなに愛妻家のキャラクターいないよ。コンテンツ中でも見たことないよ。だからあれ、愛妻家できなかったら『孤独のグルメ』が待ってるわけ。

乙君:なるほどー、なるほど!

山田:だからカウンターです。ラインとしては。

乙君:なるほど。このカウンターがあるわけだ。

山田:カウンター入ってます。

乙君:対角線上に。

山田:対角線上に。この間に耐えてる旦那がいるわけですよ。

磯野マスオの我慢

乙君:耐えてるの? マスオさんは。

山田:だからマスオさん見てて、「マスオさんの部屋ないよな」とか「マスオさん1人の時間ないよな」とか。

乙君:それマジで40年ぐらい前に寺山修司が指摘してましたもん。「サザエとマスオの性生活どうなってるんだ?」と。

山田:駅でお父さんに会っちゃうんだよ。義理のお父さんに。「やあ、お父さん、一緒に帰りますか?」。お前どんだけ人格者なんだよ。

「俺たちはマスオのような人格者にはなれないよね」って思わせてしまうのがサザエさん。日曜日の夕方の憂鬱な時間に、マスオを見てしまうんだよ。「ああ、マスオが待ってる。この夕方の気分が……」。

乙君:なるほどー、それがサザエさん現象だったんだ。

山田:そう。それがもうね。だからこれ危険ですよ。サザエさん。いいんですか、このままで? 政府は取り締まらなくていいんですか。しかも……まあ、いいっすよ。そういうことっすよ。

でまあ、これのカウンターとして、「いや、そうは言っても『クレしん(クレヨンしんちゃん)』は楽しそうだよね。地方だけど」。

乙君:え、こっちなの? カウンターは。

山田:『クレヨンしんちゃん』は妥協案ですよ。これ。

乙君:そうなんだ。

山田:だってみさえとそこそこうまくいってるじゃん。

乙君:うん。子どももいて。

山田:そう。あれがだから、地方のローカルの日曜日の公園にいる人たちなんだよ。

乙君:たまにタイムスリップとかするんですよ。劇場版では。

山田:そうやって夢を見るの。

しみちゃん:(笑)。

乙君:そうやって非日常を。

山田:だってドラえもんだって、普通じゃなくて映画版だと非日常あるじゃん。だからクレしんも非日常あるね。で、ちょっとだけ小さく書いてるけど、『あたしンち』も忘れちゃいけないよって。

乙君:家族もの、なるほどね。

山田:『あたしンち』があまりにも完成度高いから忘れてるけど、『あたしンち』は『クッキングパパ』と一緒で愛妻家なんだよ。あのお母さんを愛しているお父さんみたいな。

乙君:確かに。

山田:だから、ありなんだなという。ただまあ、「これで耐えられるか?」みたいな。問題のこのエヴァンゲリオンの話は後半しましょうね。

乙君:めっちゃ小さいね(笑)。

山田:いや、だから……。

結婚礼賛にふたりエッチは?

乙君:『ふたりエッチ』ないの? 『ふたりエッチ』。

山田:あ、『ふたりエッチ』はこっちに決まってるよね。

乙君:おお。ついに子どもがね。

山田:違う。リビドー全開のときに見る、「結婚してもいいかな」って思う段階。

乙君:あ、そうかそうか。対象年齢がね。

山田:人生の序盤に読むものでしょ、あれ。もしくは人生ある程度超えちゃって……。

乙君:人生の序盤? 序盤に読む漫画、「ふたりエッチ」なんですか?(笑)。

しみちゃん:(笑)。

乙君:すげえ。序盤のこの……(笑)。

山田:後半、『少女革命ウテナ』の話にもつながるんだけど。

乙君:『ふたりエッチ』が?

山田:そう。最初になにを信じて日本人は生きていくのかって話の中に、結婚を信じている時期ってあるんだよ。それが島耕作になっていくわけだよ。「困ったことになったぜ」ってなるわけだよ。

日本人は宗教が年齢とともに変わっていくという話で、最も結婚教にはまってるのが18歳ぐらいじゃない。だから18歳ぐらいの『ふたりエッチ』はありなんだと思うんけど。その世界に留まっていたいおっさんたちが時々戻ってくる場所として……(笑)。

乙君:アニマルだよね(笑)。

山田:アニマルは必要ですと(笑)。

乙君・しみちゃん:(笑)。

山田:けものに戻るという。アニマル、よろしくお願いします。そんな感じですね。そうですね。

乙君:いや、出産おめでとうございます。

山田:出産おめでとうございます。出産したんだね。

乙君:出産だっけ? 懐妊だっけ? どっちだっけ?

山田:あっ、やべー。これもやろう。