「地域」と「業界」に事業拡大のチャンスがある

藤田功博氏(以下、藤田):仲さんは、こうやっていろんなWeb業界の人に使われるサービスになってくる中で、次のチャレンジというか、現状の課題というのはどういうところにあるんですか?

仲暁子氏(以下、仲):課題は、まずはWeb業界の中でも、まだまだ全然広げられる余地はあるのかなと思っていて、例えば今ユーザーベースでいうと10万弱なんですけど、これはまだ、あと2、3倍にはなるのかなというふうに思っています。あとは地域と業界で広げられるのかなと思っていて。

藤田:地域と業界。

:一応、今英語対応はしていて、東南アジアとかにたまに行って、そっちのスタートアップにも営業とかしているんですけど、最近東南アジアはかなりスタートアップがふえてきているので、そういったところでも使っていただくと、日本と同じくらいの規模のマーケットはまたあったりするのかなというので、ひとつは地域。

あとは業界でいうと、今はWeb業界だけですけれど、Web業界と親和性が高い業界に、ほかの隣の業界とかに広がっていきたいなみたいなのは思っていますね。

石田言行氏(以下、石田):たまに思うんですけど、ウォンテッドリーのユーザーの方って、すごいいい人が多いんですよ、いい意味でも。僕らには合わないけどほかの会社に合うっていうときに、紹介機能とか特にないんで、口頭では紹介するんですけどね。

:それ、Web業界のほかの会社にという。

石田:そうです。とかはよくあったりするので。

藤田:なるほど。

石田:そこらへんもちょっと。

:そういうのがあるといいというような。

働くモチベーションをお金からやりがいにシフトさせたい

石田:地域とかでも、やっぱり僕らは知っている人たちが多くて。なので、なんかそういうのが紹介できたりしたら、もうちょっとコミュニティとしてのサイクルが回っていくのかなというようなイメージはざっくりとありますね。

藤田:実際、ウォンテッドリー自体の根幹サービス以外にも結構アプリを出したり。

:出していますね。

藤田:いろんなチャレンジをされているじゃないですか。あれはどういう考えというか、どういう計画に基づいているんですか。

:もともと、話が長くなるかもしれないんですけど、「働くをおもしろく」みたいな、仕事で心躍る人を増やすっていうのをミッションでやっているんですよね。それは何かというと月~金が、すごく早く終わってくれないかなとか、早く5時になって、定時になって帰れないかなとか思っている人が意外と世の中に多い気がしていて。

人生1回じゃないですか。1回で自分の寿命が早く縮んでほしいと思う人は多分いないはずなんです。伸びてほしいと思う人は多いと思うんですけど。

でも、早く5時になってほしいとか、早く金曜日になってほしいと願うということは、早く時間よ過ぎてくれ、早く寿命よ縮んでくれみたいな。自分の1回の人生をドブに捨てていて超もったいないなと思っていて、そういう人を減らしたいなと思っているんですよね。

そのためにはウォンテッドリーを使うことによって、お金ではなく、さっき条件とか給与とかを書かないと言ったんですけど、お金じゃなくてやりがいみたいな部分への、働くモチベーションのシフトをしてもらいたいなと思っています。

そこに来てもらうために、まずはウォンテッドリーというサービスを知ってもらうという部分において、転職活動をしてなくても働いている人に知ってもらえるという切り口で、今、連絡帳アプリとかをつくったりしています。

共通の価値基準をもって働くために社員みんなでカルチャーランチ

藤田:実際、人数がふえてくると結構マネージメントとか、会社をどう動かしていくのかというところにも時間がかかるんじゃないですか? それこそ面接だったり。

:ウォンテッドリーですか?

藤田:うん。今、社内の人数もふえていると思うんですよ。そういうところって、どういうふうに時間を使ったり、エネルギーとして配分しているんですか?

石田:今、何人ぐらいですか?

:25人とかなんですけど。

石田:社員だと。社員25?

:社員は15ちょっととかそれぐらいです。アルバイトとかを入れて25ぐらいですね。一番重要だと思うのが育成と採用だと思うんですけど、みんなが同じ価値判断基準を持ってそのまま大きくなることだと思っているんです。

要は現場の人が、例えばクライアントからこういうのをやりたいと言われたときに、やるべきなのか否かみたいなのを判断できなくて、毎回上にどうしましょうと言っていたら判断スピードが組織として遅くなるじゃないですか。

だから、全員のカルチャーが一緒だと結構判断スピードは上がるという意味で、カルチャーをいかに浸透させるのかみたいな部分で、みんなの共通意思をつくる会みたいなのは2週間に1回、カルチャーランチとかをやっていますね。

みんなで御飯を食べながらカルチャー、いろんなトピックについて話すんですけれど、たまに仕事から離れた重たいトピックとかも話したりして、お互いの価値観をいろいろ語り合うみたいな。

この前は臓器売買がありか、なしかを話すみたいな、そういうのをやったりしていますね。強い組織をいかにつくるのか、みたいなのを結構心がけています。

IVSでは上流と会えるチャンスがある

藤田:ちょっとこじつけっぽくなりますけど、そういう組織づくりみたいなこととかで、IVSのスタッフに参加して、IVSのスタッフもボランティアという組織じゃないですか。そういうことで何かヒントを得たりとか、参考になったことってありますか?

石田:結構あります。特にこれは学生さんに多いと思うんで、みんな起業したという学生さんがやっぱり多いじゃないですか。だから……なんて言ったらいいんだろうな、組織づくりとか……なんかそれはちょっと難しいですけど。それは、やめましょう。置いておきましょう。これはあとで話すとして。

話を戻すと、つくり込みはさっきも話したようにすごいですよね。指示とか、どこに何時から集まって、どうすればいいか。自分で考えさせる余地っていうのはやっぱり残していて、何か不測の事態が起こったら自分で考えて即座に行動する。誰に確認するかというのがしっかりできているので、そういう意味でやっぱり小林さんは、さすがだなというところはありますね。

藤田:なるほど。仲さんはどうですか?

:私はスタッフで来ていたときもピンで動いていたので。Zyngaが当時日本に来るみたいな直前で、ジンガジャパンになる予定のロビンという人に、お付きの人みたいな感じでずっと通訳をしていたので、チームで動くというよりはずっとその人と一緒に動いていたんです。

なので、ちょっと違う観点からになっちゃうので、IVSでよかったことみたいな話、ざっくりなっちゃうかもしれないんですけど、今振り返ると、その後起業していろんな人に助けていただいたんですよね。その接点って意外とIVSが多かったなみたいなのは振り返ると思うんです。

その接点、特にスタートアップの社長とか、ある程度大きいメガベンチャーの社長みたいな人とお会いして知り合う機会は普通はないので、そこはすごく感謝しています。

石田:多分、ここに皆さん来ると時間があるから、1日押さえてあるじゃないですか。いつもより心が軽いというか、気軽に話しかけられるし、忙しい普段と違って2日間なので話は聞いてくれやすいと思いますね。

そこの中でチャンスをつかむか、つかまないかは、もちろん自分次第なんですけど。でもここできっかけを得てよくしてもらっている人は、僕も本当に小泉さんとか、今うちの取締役になってもらったんですけどもIVSで仲良くなったし。

:そうなんだ、IVSなんだ。

IVSへの参加でスタートアップとしての成功角度が上がった

石田:その前に出会っていたと思うんですけれど、Launch Padでやっぱり見てくれたりとか。そこから仲良くなってとか、それこそスタッフのときに仲良くなってそこからだんだんとだったので、そういう縁はやっぱりここにはすごいありますよね。

藤田:やっぱりIVSというと一般参加の枠で参加するってなかなかハードルが高いと思うので、そういうベンチャー企業、特に大学生とかで立ち上げた人にとってはスタッフ参加という道はひとつありますよね。

石田:絶対いいと思いますね。交通費と宿泊費以外かからないし、それ以上の価値は十分にあるので、もちろん受動的にやっていたらチャンスは得られないんですけど、能動的にやるぶんには何やっても基本的には、本当に変なことをやらなければ怒られないので、あいさつするぐらいだったら小林さんは絶対に怒らないので、それはどんどん行けるチャンスがここにはあると思いますね。

藤田:やっぱり振り返ってみて、IVSに参加してちょっと人生変わったなというのはありますか?

石田:スタートアップとしての成功角度は上がったと思いますね。

:私はかなり変わったと思います。

藤田:かなり変わった。IVSに参加していなかったら、どうなっていたんですかね。漫画家になっていたんですかね。

:その可能性はありますね(笑)。

藤田:北海道札幌在住の漫画家、仲暁子さんになっていたんですかね(笑)。それはそれで、またひとつキャラクターになっていた気もしますけど。

:そうかもしれないですね。確かに、どうなっていたんでしょうね。

藤田:やっぱりスタッフとして参加してFacebookに入って、そこから起業につながっていったという意味で人生が変わったと。

:かなり変わったと思いますね。

藤田:参加して良かったと。

石田:それは間違いないですね。大きなチャンスをもらったと思います。

組織が大きくなると、軸足はクリエーターではなく経営に

藤田:それを踏まえて今があるわけなんですけど、さっきちょっとお話いただいたんですけども、これからこういうことにちょっと挑戦したいなとかいうことってありますか?

例えば仲さんだったら、一面クリエーター的というか、それこそ部屋でじっくり自分の世界で何か考えたり、つくるということも向いていると思うし、そういうことに時間を割くのも結構嫌いじゃないというか、そういう時間を大切に考えたいタイプでもありますよね。

でも、片や会社にどんどんスタッフが増えてきて、対外活動というか会社の外に出て行く、あるいは会社の面々とコミュニケーションをする、こういう外向けの時間も両方必要になってきていると思うんですけど、そういうような状況において今考えていることとかってありますか?

:私に関していうと起業1年目とかは、あまり経営って考えなくていいんですよね、 プロダクトをつくることだけに徹していればいいので、いわばプレーヤーみたいな、クリエーターみたいな感じでいればいいんですけど、おっしゃったとおり組織が大きくなってくると、人、金、物を回すみたいな、ちゃんと利益を上げていくというフェーズに入ってくると、ちゃんと計画をつくってそれを実行していくための経営をやらなきゃいけなくなってきます。

そこに対するチャレンジは1年半ぐらいしてきているんですけど、もうちょっとさらに意識を強く持ってやらないといけないなというのは思います。クリエーターじゃなくて経営にフォーカスするみたいな部分ですかね。

藤田:そういうことがIVSでも学びたいというか、勉強したいなと思う部分でもあるわけですかね、参加する中でセッションを聞いたりして。あるいは直接的に質問をしたりして。

:あとは普段集まらない、同じ時期にできたスタートアップって、みんなジャンプでいうライバルと友情みたいな感じじゃないですか。

石田:まあ、そうですよね。

:だから何かいい刺激には、なるかもしれないですね。

藤田:最近どうなの的なね。

:そうですね。

石田:顔を見られるだけでも、うれしいですよね。

:そうかもしれない。

とりあえずチャレンジしてみて、後で考える

石田:やっぱり生き残ることもひとつ大変なことだったりもするので。元気にやっていると、やっぱり負けられねぇというのは思いますね。

藤田:なるほど。

:あと夜とか結構みんな集まって御飯とか行ったりしますよね。そこで仲良くなったりとかはあるので、新しいつながりも生まれたりとかありますね。

藤田:なるほど、わかりました。じゃ、最後に、これからスタッフをしたいなと、どうしようかなと迷っている人に向けて、最後背中を押すような一言メッセージをカメラ目線でいただければと思います。あのカメラで語っていただければと思いますので、どっちからいきましょうかね。

:私から。一言じゃないんですけどいいですか?

藤田:はい、一言じゃなくても。

:さっきIVSは、たまたまググっていて出てきたからクリックしてエントリーしたっていうふうに言ったんですけど、それがなかったら人生変わっていたかもね、みたいな話があったんですけど、意外と私はそういうことが今までの人生にたくさんあって。

例えば、学生の頃にピースボート(Peace Boat)に乗ったんですけど、それもたまたまググって出てきたからエントリーしたら通って、4ヶ月ぐらい世界1周したんですよね。なので、とりあえずいいかなと思ったら、エントリーしちゃうみたいなところまでやっちゃって、どうなるかは後で考えるみたいなぐらいにしたほうが、いろいろ道は開けていくのかなと振り返ってみて思います。

多分IVSに来てなかったら人生が変わっていたというよりも、そういうスタンス、クリックしてエントリーをとりあえずしちゃうみたいなスタンスを持つか持たないかが人生を変えると思うので、そういうスタンスを持ってチャレンジングになっていくといいのではないかと思います。

藤田:はい、ありがとうございます。

チャンスのにおいを嗅ぎ分けることが重要

石田:仲さんが言ってくれたことがまさになんですけど、僕もそんなに深く考えて……、もちろんここにはチャンスがあるだろうと思っていました。やっぱり起業家を目指す以上、そういったチャンスのにおいを嗅ぎ分けるというのはすごい大事なことだと思っていて、ここに来たからって別に何も損しないと思うんです。

多少のお金と時間を一応費やすことになりますけど、それ以上の価値がここには眠っているので、本当に起業に興味がある人も、どんな人も、まずはチャレンジをここにしにくればいいんじゃないかなというふうに思います。ぜひトライしてみてください。

藤田:ありがとうございました。本日は札幌で開催中のIVS 2014 Springのインタビュールームより特別番組をお届けしました。仲さん、石田さん、ありがとうございました。

:ありがとうございました。

石田:ありがとうございました。

(会場拍手)